「軍事境界線だけでなく、経済水域に入っていたかどうかはわからない。操だ室の船長が狙い撃ちされた。だ捕されたときは、全員が殺されると思った」(朝日新聞1984年8月27日記事より抜粋)-
北朝鮮による日本人への蛮行、テロは日本人拉致だけではありません。
北朝鮮は国際法を無視して勝手に設定した「軍事境界線」なるものに日本のイカ釣り漁船が「侵入」したとレッテルを貼り、問答無用で銃撃しました。
北朝鮮の警備艇は石川県のイカ釣り漁船「第36八千代丸」の行泊貢船長を銃撃して殺害しました。
もう30年も前の事件ですが、石川県の漁協の方々なら決して忘れていないことでしょう。
平成8年10月9日、私は外務省アジア局北東アジア課を訪問し、拉致された日本人の返還要求や行方不明になった日本人妻の安否照会問題などを要請した
いささか手前味噌ですが私は18年ほど前に外務省アジア局北東アジア課を訪問し、この件について要請、質問しました。
当時すでに、様々な文献で北朝鮮に少なくとも13人の日本人が拉致・抑留されていることが明らかになっていました。
私は日本政府としてあらゆる外交ルートを通じて「拉致・抑留している日本人を返せ」と要求することや、少なくない日本人妻、帰国者(元在日朝鮮人)が行方不明になっていること、
この人たちの安否照会を北朝鮮に行うこと、
日本政府として北朝鮮当局を人権抑圧という点で批判することなどを要請しました(「現代コリア」1996年11月号掲載拙稿「日本政府は拉致日本人救出になぜ消極的なのか」)。
外務省アジア局北東アジア課担当者の回答「国交が正常化されれば話をするルートができる。日朝間は不正常なのでなるべく早く正常化したい。」
外務省アジア局北東アジア課の担当者は私の要請に対し次のように答えました。
「北朝鮮とは国交がないから、正式に政府のレベルで接触できない。国交が正常化されれば話をするルートができる。日朝間は不正常なのでなるべく早く正常化したい。
今は話し合うルートがない。要請の件をいろいろな経路を通じてという気持ちはわかるが、四者協議にはなじまない。駄目でもともとというより、現実性がある方法が必要だ。
相手がどう対応するかということを考えねばならない。事件の存在、人物の特定化が出来ていないときは外交交渉で取り上げることはできない。
日本共産党の橋本敦参議院議員から、有本恵子さんの件で呼ばれた。この問題は国交正常化交渉の中で取り上げていくことになる。
八千代丸の事件の際は1984年10月30日に、海上保安庁の捜査結果が出たのを受け外務省は事件を「国際法上、過剰な措置」と判断し、『この事件によって生じた賠償請求の権利を留保する』との波多野外務報道官談話を発表した。」
外務省担当官の話を聞いていた私には、国交がないので、日本人を拉致、殺害する権利が北朝鮮にあると日本政府が認めているように思えてしまいました。
真に残念ですが、日本政府、外務省の現在の対北朝鮮政策の基本は18年前と大差ないように思えてなりません。
日本政府は北朝鮮により殺害された日本人の損害賠償要求を事実上放棄した
北朝鮮により殺害された日本漁船員に対する損害賠償を、その後日本政府は一切要求しなくなってしまいました。
いつのまにか忘れ去られ、マスコミでも全く取り上げられなくなれば政府や国会議員は日本人の生命をいとも簡単に放棄してしまうという典型的な例のように思えてなりません。
残念ですが、拉致問題を大事だと主張する国会議員の多くはテレビで取り上げられ、支持者に受けが良いからそう主張しているだけではないでしょうか。政治家は票にならないことはやらないのでしょう。
北朝鮮による日本人殺害事件を今取り上げれば、間違いなく「日朝交渉への障害」になります。
「日朝交渉を頓挫させてはならない」という国会議員や朝鮮問題の研究者は口が裂けても北朝鮮による日本人殺害事件についてコメントしないでしょう。
「日朝交渉」とやらを続けると、なぜテロ国家北朝鮮は披拉致日本人を返すことになるのでしょうか?
何度も何度もお願いにお願いを続ければ、金正恩やテロ国家の最高幹部が心を改めると大真面目に日朝交渉推進論者は考えているのでしょうか?
日朝交渉推進論者は単に、この問題についての具体的、実証的な思考と議論を拒否しているだけだと私には思えてならない。18年前の外務省担当者がそうでした。
「圧力と対話」路線の大失敗を安倍総理は認めるべきだ
現在の日本政府には「拉致問題の解決がない限り国交を樹立しない」という方針が一応あるようですから、「国交樹立が最優先」という発想ではなくなったのでしょう。
「駄目でもともとというより、現実性がある方法が必要だ。相手がどう対応するかということを考えねばならない」という視点からはテロリストとの対話路線という非現実的な「政策」しか導かれようもない。
安倍政権の対北朝鮮政策の基本は「圧力と対話」です。
「対話」をするという名目で制裁を緩和したら、国家安全保衛部の徐某が出てきて外務省幹部と多少話してそれで終わりだったのです。
「圧力と対話」路線では、「対話を続けるためには制裁をもっと緩和しよう」という話になるだけです。
「圧力と対話」路線の大失敗を安倍総理が認め、「圧力と思想攻撃」路線に転換することを改めて訴えます。
テロリスト国家北朝鮮との「対話」「交渉」とは思想攻撃だ!
日本政府は対北朝鮮ラジオ放送で金日成、金正日を批判するべきです。
海外衛星放送で、例えば藤本健二さんの諸著作を連続ドラマ化して中国、朝鮮半島方面に放映すべきです。
中国朝鮮族はこれを録画し、北朝鮮国内に運ぶでしょう。これを放置すれば、国家安全保衛部や対南工作機関が労働党組織指導部に責任を問われます。
「日朝交渉」は必ず頓挫します。同時にとんでもない脅迫を北朝鮮はあらゆる経路でやってくるでしょう。
そのとき、日本政府は「番組の放送をやめてほしければ横田めぐみ、増元るみ子、有本恵子さんらを返せ」と言えば良い。金正恩や朝鮮労働党最高幹部は次の選択に直面するのです。
披拉致日本人を返すか。それとも日本政府により北朝鮮の一般国民や朝鮮人民軍兵士に金日成や金正日の贅沢三昧を暴かれ、忠誠心をより減退させられてしまうか。
武力を持っている人間が金正恩への忠誠心を無くせばどうなるのか
朝鮮人民軍兵士や国家安全保衛部員、金正恩の親衛隊も番組を観れば金正恩への激しい反感を抱くことは間違いない。
武力を常時持っている人間が金正恩への忠誠心を失えばどう動くでしょうか?労働党組織指導部や宣伝扇動部は武力を持っていません。
「学校秀才」ぞろいの外務省高官にはこうした発想ができないのでしょう。
外務省高官には,暴力団の抗争史に関する諸文献を読んで頂きたい。