第九条 現在の過渡期において期待されるロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法の基本的な任務は、ブルジョアジーを完全に抑圧し、人間による人間の搾取をなくし、階級への分裂も国家権力もない社会主義をもたらすため、強力な全ロシア・ソヴェト政権のかたちで、都市と農村のプロレタリアートと貧農の独裁を確立することである。
ロシア革命とは、いったい何だったのでしょうか。
1918年7月10日、第五回全ロシア・ソヴェト大会でロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法が採択されました。第九条は上です。
「ブルジョアジーを完全に抑圧」することを憲法が任務としているそうです。「強力な全ロシア・ソヴェト政権」とやらが、搾取と国家をなくすために必要なそうです。これでは大変ですね。
本ブログは、レーニンが「穀物徴発」と称して「富農」の財産没収、粛清指令を出していたこと、ロシア正教の教会財産没収、聖職者殺害指令を出していたことを指摘してきました。
革命により権力を掌握したレーニンとボリシェヴィキは農民と宗教者への徹底弾圧を断行したのです。
穀物や財産を没収された人は生活できません。数百万とも言われる規模で餓死者が出ました。
私見では、民主主義とは見解の違いを話し合いにより決定していく仕組みのことです。
レーニンとボリシェヴィキにより「富農」「黒百人組」「ブルジョアジー」などとレッテルを貼られ、殺されてしまった方や餓死した方が話し合いに参加できません。
ソヴェト共和国憲法九条に明記されているように、「ブルジョアジー」を、完全に抑圧することが「プロレタリアートと貧農の独裁」なのです。
ソヴェト共和国憲法七九条には、ソヴェト共和国の財政政策は、ブルジョアジーを収奪し、富の生産と分配で共和国市民の全般的平等の条件を準備すること、という記述があります。
ブルジョアジーの「完全抑圧」「収奪」に抵抗する人は、共産主義理論では「反革命」です。この時期に、チェーカーという秘密警察もつくられています。
チェーカーとは、今の北朝鮮なら国家安全保衛部のような組織です。
ロシア革命の時期のレーニンの宣伝文句がどうあれ、レーニンとボリシェヴィキが断行した殺戮と大量餓死は民主主義の根本的否定です。
映画「ドクトル・ジバゴ」(David Lean監督)でも、ジバゴが住んでいた屋敷をボリシェヴィキに没収されてしまう場面がありました。
「ブルジョアジーの収奪」とは、単なる略奪行為です。
聴濤弘氏(元日本共産党参議院議員)はいまだにロシア革命を礼賛している
ところが、聴濤弘氏は著書「レーニンの再検証」(2010年大月書店刊行、p34)で次のようにロシア革命を礼賛しています。
「ロシア革命とはツァーリ(皇帝)専制を打倒し、民主主義革命を成功させ、引き続いて社会主義革命の勝利をかちとり、
人類で初めて資本主義とは違う新しい社会があることを事実によって世界に証明したロシア人民の闘いの歴史である。」
「民主主義革命」とは、レーニンとボリシェヴィキ(後のソ連共産党)が権力を掌握することを指すようです。
ところが当時のロシア社会で、民主主義が成立していたか否かについては、聴濤氏は一切説明していません。レーニンの宣伝文句を引用しているだけです。
聴濤氏には、ボリシェヴィキにより殺された人や餓死させられた人は話し合いに参加できないから、当時のロシアには民主主義などなかったということが理解できていない。
ソ連共産党の宣伝文句が、骨の髄までしみついてしまっている年配の日本共産党員は少なくない。齢を重ねると、思考方式を変更することは困難です。
聴濤弘氏の「レーニンの再検証」が描くレーニン像は、「ソ連邦共産党史」(日本共産党中央委員会宣伝教育部訳。大月書店昭和35年刊)と大差ありません。
在日本朝鮮人総連合会には、金日成、金正日の「教示」「お言葉」を絶対の命令と思い込んでしまっている老活動家は少なくない。
日本共産党員と在日本朝鮮人総連合会関係者の思考方式はよく似ています。
宮本顕治氏は、日本のソビエト化=日本の「人間抑圧社会」化実現のために長年獄中闘争をした
宮本顕治氏は、「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」を主張した「32年テーゼ」が、民主主義革命から社会主義革命への道を解明した、などと信じ込んでいました。
内乱を起こしたら、話し合いができなくなります。民主主義の前提がなくなってしまう。宮本顕治氏が入党したころの日本共産党は、内乱を起こすことを策していたテロリスト集団でした。
当時の日本共産党は、内乱を起こすことを英雄的行動とみなす「理論」をクーシネンらソ連共産党から伝授され、多額の活動資金と武器(ピストル)まで受け取っていたのです。
物騒な連中ですから、逮捕されるのは当たり前です。逮捕されて「転向」した共産党員は、内乱を起こすことの愚かさを悟ったのです。
当時の日本共産党が目指していたのは日本のソビエト化です。スターリンのソ連社会は、今日の不破哲三氏によれば「人間抑圧社会」です。
日本を「人間抑圧社会」にするために、宮本顕治氏らは獄中で長年頑張ったのです。
ソヴェト連邦共和国憲法では「賃労働を利用するもの」「商人」「修道僧および僧侶」(ロシア正教会の聖職者を指すのでしょう)らが選挙権、被選挙権をはく奪を明記しています。
この憲法はレーニンの時代に作成されていますから、レーニンの「民主主義論」を十分に反映しています。
「ソビエト型民主主義」「プロレタリア民主主義」とは、「搾取者」「ブルジョアジー」「富農」の人々を徹底抑圧することにより、労働者と農民の権利が保証されるという「理論」なのです。
下記です。聴濤弘氏なら、この憲法の条文を御存知のはずです。
聴濤弘氏に問いたい。「搾取者」や聖職者から選挙権、被選挙権をはく奪することは「民主主義革命」ですか?「プロレタリア民主主義」の実施は民主主義革命ですか?
吉良よし子議員、池内さおり議員ら若い共産党員には、ロシア革命でのレーニンとボリシェヴィキによる蛮行の史実を、文献をしっかり読んで学んでいただきたい。
映画「ドクトル・ジバゴ」は良い作品です。「ラーラのテーマ」は、ソ連共産党による過酷な弾圧の時代を生きたロシア人の哀しみを思い起こさせる名曲です。
ソヴェト連邦共和国憲法 第四篇積極的選挙権と消極的選挙権 第十三章、第六五条
上にのべられたカテゴリーに入っているものでも、次のものは選挙したり、選挙されたりできない。
(イ)金もうけ目的で賃労働を利用しているもの。
(ロ)資本からの利子、企業からの収入、財産からの所得というような労働によらない収入でくらしているもの。
(ハ)私的な商人、および商業ブローカー。
(ニ)修道僧および僧侶。
(ホ)以前の警察、憲兵隊および秘密警察の勤務員とそれらの手先、ならびに旧ロシア皇族。
(ヘ)定められた手続きで精神病者あるいは精神薄弱者とみとめられるもの、および禁治産者。
(ト)破廉恥罪によって有罪とされたもの、ただし、法律あるいは裁判所の判決で定められた期間。