2016年8月21日日曜日

聴濤弘「レーニンの再検証」(大月書店2010年刊行)への疑問。ロシア革命における「民主主義革命」とは何なのか?「ロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法」(1918年採択。岩波文庫「人権宣言集」掲載)より思う。

第九条 現在の過渡期において期待されるロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法の基本的な任務は、ブルジョアジーを完全に抑圧し、人間による人間の搾取をなくし、階級への分裂も国家権力もない社会主義をもたらすため、強力な全ロシア・ソヴェト政権のかたちで、都市と農村のプロレタリアートと貧農の独裁を確立することである。


ロシア革命とは、いったい何だったのでしょうか。

1918年7月10日、第五回全ロシア・ソヴェト大会でロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法が採択されました。第九条は上です。

「ブルジョアジーを完全に抑圧」することを憲法が任務としているそうです。「強力な全ロシア・ソヴェト政権」とやらが、搾取と国家をなくすために必要なそうです。これでは大変ですね。

本ブログは、レーニンが「穀物徴発」と称して「富農」の財産没収、粛清指令を出していたこと、ロシア正教の教会財産没収、聖職者殺害指令を出していたことを指摘してきました。

革命により権力を掌握したレーニンとボリシェヴィキは農民と宗教者への徹底弾圧を断行したのです。

穀物や財産を没収された人は生活できません。数百万とも言われる規模で餓死者が出ました。

私見では、民主主義とは見解の違いを話し合いにより決定していく仕組みのことです。

レーニンとボリシェヴィキにより「富農」「黒百人組」「ブルジョアジー」などとレッテルを貼られ、殺されてしまった方や餓死した方が話し合いに参加できません。

ソヴェト共和国憲法九条に明記されているように、「ブルジョアジー」を、完全に抑圧することが「プロレタリアートと貧農の独裁」なのです。

ソヴェト共和国憲法七九条には、ソヴェト共和国の財政政策は、ブルジョアジーを収奪し、富の生産と分配で共和国市民の全般的平等の条件を準備すること、という記述があります。

ブルジョアジーの「完全抑圧」「収奪」に抵抗する人は、共産主義理論では「反革命」です。この時期に、チェーカーという秘密警察もつくられています。

チェーカーとは、今の北朝鮮なら国家安全保衛部のような組織です。

ロシア革命の時期のレーニンの宣伝文句がどうあれ、レーニンとボリシェヴィキが断行した殺戮と大量餓死は民主主義の根本的否定です。

映画「ドクトル・ジバゴ」(David Lean監督)でも、ジバゴが住んでいた屋敷をボリシェヴィキに没収されてしまう場面がありました。

「ブルジョアジーの収奪」とは、単なる略奪行為です。

聴濤弘氏(元日本共産党参議院議員)はいまだにロシア革命を礼賛している


ところが、聴濤弘氏は著書「レーニンの再検証」(2010年大月書店刊行、p34)で次のようにロシア革命を礼賛しています。

「ロシア革命とはツァーリ(皇帝)専制を打倒し、民主主義革命を成功させ、引き続いて社会主義革命の勝利をかちとり、

人類で初めて資本主義とは違う新しい社会があることを事実によって世界に証明したロシア人民の闘いの歴史である。」

「民主主義革命」とは、レーニンとボリシェヴィキ(後のソ連共産党)が権力を掌握することを指すようです。

ところが当時のロシア社会で、民主主義が成立していたか否かについては、聴濤氏は一切説明していません。レーニンの宣伝文句を引用しているだけです。

聴濤氏には、ボリシェヴィキにより殺された人や餓死させられた人は話し合いに参加できないから、当時のロシアには民主主義などなかったということが理解できていない。

ソ連共産党の宣伝文句が、骨の髄までしみついてしまっている年配の日本共産党員は少なくない。齢を重ねると、思考方式を変更することは困難です。

聴濤弘氏の「レーニンの再検証」が描くレーニン像は、「ソ連邦共産党史」(日本共産党中央委員会宣伝教育部訳。大月書店昭和35年刊)と大差ありません。

在日本朝鮮人総連合会には、金日成、金正日の「教示」「お言葉」を絶対の命令と思い込んでしまっている老活動家は少なくない。

日本共産党員と在日本朝鮮人総連合会関係者の思考方式はよく似ています。

宮本顕治氏は、日本のソビエト化=日本の「人間抑圧社会」化実現のために長年獄中闘争をした


宮本顕治氏は、「帝国主義戦争を内乱に転化せよ」を主張した「32年テーゼ」が、民主主義革命から社会主義革命への道を解明した、などと信じ込んでいました。

内乱を起こしたら、話し合いができなくなります。民主主義の前提がなくなってしまう。宮本顕治氏が入党したころの日本共産党は、内乱を起こすことを策していたテロリスト集団でした。

当時の日本共産党は、内乱を起こすことを英雄的行動とみなす「理論」をクーシネンらソ連共産党から伝授され、多額の活動資金と武器(ピストル)まで受け取っていたのです。

物騒な連中ですから、逮捕されるのは当たり前です。逮捕されて「転向」した共産党員は、内乱を起こすことの愚かさを悟ったのです。

当時の日本共産党が目指していたのは日本のソビエト化です。スターリンのソ連社会は、今日の不破哲三氏によれば「人間抑圧社会」です。

日本を「人間抑圧社会」にするために、宮本顕治氏らは獄中で長年頑張ったのです。

ソヴェト連邦共和国憲法では「賃労働を利用するもの」「商人」「修道僧および僧侶」(ロシア正教会の聖職者を指すのでしょう)らが選挙権、被選挙権をはく奪を明記しています。

この憲法はレーニンの時代に作成されていますから、レーニンの「民主主義論」を十分に反映しています。

「ソビエト型民主主義」「プロレタリア民主主義」とは、「搾取者」「ブルジョアジー」「富農」の人々を徹底抑圧することにより、労働者と農民の権利が保証されるという「理論」なのです。

下記です。聴濤弘氏なら、この憲法の条文を御存知のはずです。

聴濤弘氏に問いたい。「搾取者」や聖職者から選挙権、被選挙権をはく奪することは「民主主義革命」ですか?「プロレタリア民主主義」の実施は民主主義革命ですか?

吉良よし子議員、池内さおり議員ら若い共産党員には、ロシア革命でのレーニンとボリシェヴィキによる蛮行の史実を、文献をしっかり読んで学んでいただきたい。

映画「ドクトル・ジバゴ」は良い作品です。「ラーラのテーマ」は、ソ連共産党による過酷な弾圧の時代を生きたロシア人の哀しみを思い起こさせる名曲です。

ソヴェト連邦共和国憲法 第四篇積極的選挙権と消極的選挙権 第十三章、第六五条


上にのべられたカテゴリーに入っているものでも、次のものは選挙したり、選挙されたりできない。

(イ)金もうけ目的で賃労働を利用しているもの。

(ロ)資本からの利子、企業からの収入、財産からの所得というような労働によらない収入でくらしているもの。

(ハ)私的な商人、および商業ブローカー。

(ニ)修道僧および僧侶。

(ホ)以前の警察、憲兵隊および秘密警察の勤務員とそれらの手先、ならびに旧ロシア皇族。

(ヘ)定められた手続きで精神病者あるいは精神薄弱者とみとめられるもの、および禁治産者。

(ト)破廉恥罪によって有罪とされたもの、ただし、法律あるいは裁判所の判決で定められた期間。

2016年8月14日日曜日

70年代の日本共産党のスターリン、ソ連評価について思う(上田耕一郎「先進国革命の理論」大月書店昭和48年刊行、小林栄三監修「科学的社会主義 上」新日本出版社昭和52年刊行より)

第一次世界大戦中における偉大な十月革命の勝利、そして第二次世界大戦後、東ヨーロッパとアジア、さらにキューバでの社会主義革命の勝利によって、社会主義は国際体制を形づくった。このことによって、マルクス・レーニン主義の真理性は、すでに最終的に実践によって証明された(上田耕一郎「先進国革命の理論」p6より抜粋)。


吉良よし子議員、池内さおり議員は上田耕一郎氏の「先進国革命の理論」や小林栄三監修「科学的社会主義 上」を御存知でしょうか?

「団塊の世代」くらいの日本共産党員、あるいは50代の日本共産党員なら、これらを熱心に読んだ記憶があるはずです。藤野保史議員なら、きっとこれらの本を御存知です。

上田耕一郎氏によればソ連、東欧、中国、ベトナム、北朝鮮、キューバが社会主義国になったので共産主義理論の真理性が証明されたそうです。

当時の日本共産党員は殆ど皆、そう思っていたのではないでしょうか。

ソ連と東欧、中国が資本主義化した今日、上田氏の論法からすれば共産主義理論の誤りが最終的に実践により証明されました。北朝鮮も市場経済化しつつあります。

上田氏は、マルクスやエンゲルスの予想と異なりなぜ資本主義の発達が遅れたロシアで革命が起き社会主義が建設されたのかをこの本で縷々説明しています。

スターリンは資本主義包囲のなかで、一国における社会主義革命と社会主義建設の勝利の可能性にさらに明確な展望を与えたそうです。

スターリンは世界の革命運動との連帯と相互支持のもとでソ連の社会主義建設をおしすすめましたそうです。

「一国でも社会主義は建設できる」というスターリンの主張は基本的に正しく、ソ連における社会主義建設の前進にとって大きな指導的役割を果たしたそうです(同書p13)。

吉良よし子議員、池内さおり議員は御存知ないでしょうが、1970年代になっても日本共産党はスターリンにそれなりの評価を与えていたのです。

1970年代には、スターリンによる大量虐殺の史実は明らかでしたが。

上田氏らは、社会主義建設には試行錯誤と犠牲者は避けられないという程度の認識だったのではないでしょうか。共産主義者には、共産主義国による人権抑圧を傍観する体質があります。

ソ連崩壊後不破哲三氏は、スターリン以後のソ連が「覇権主義の巨悪」であり、人間抑圧社会だったとそれまでの評価を変えました。

上田耕一郎氏の「先進国革命の理論」が間違いだったと御本人や不破哲三氏が認めたわけではありません。

しかし不破氏の「ソ連=覇権主義の巨悪、人間抑圧社会」論の観点からすれば、「先進国革命の理論」はスターリン礼賛本でしかない。

今日の日本共産党が下部党員に「先進国革命の理論」を推奨していない理由はそのあたりでしょう。

クーシネン「マルクス=レーニン主義の基礎」の観点で日本共産党は宣伝をしてきた


「先進国革命の理論」のスターリン評価は、クーシネンの「マルクス=レーニン主義の基礎2」(日本共産党中央委員会発行、p318-319)と基本的に同じです。

「マルクス=レーニン主義の基礎」が刊行された時期のソ連共産党の最高指導者はフルシチョフです。フルシチョフとは、1956年にソ連共産党の大会でスターリン批判を行った人物です。

日本共産党はフルシチョフ、クーシネン流のスターリンとロシア革命、ソ連観を長年宣伝をしてきました。

クーシネンは優れた宣伝・扇動者です。大嘘を読者に真実と思い込ませる文章力がある。

「マルクス=レーニン主義の基礎」には、レーニン、スターリンが何度も強調したクラーク(富農)の財産没収、撲滅が必要不可欠だという話がありません。

クラーク(富農)のレッテルを貼られた農民は政治犯収容所や遠方に連行ないしは処刑されました。犠牲者は100万人を越えるでしょう。

クラークというレッテルを恐れた農民は、家畜を殺しました。ソ連農業は大打撃を受けました。

ボリシェヴィキ(後のソ連共産党)による穀物徴発、富農というレッテル貼りに耐えかねて、沢山の農民が反乱をおこしたことも、「マルクス=レーニン主義の基礎」は一切ふれていません。

反乱を起こした農民たちはボリシェヴィキの「赤色テロル」の対象にされてしまいました。これらの史実をクーシネンは隠ぺいしたのです。

ロシア革命に対抗して、国内反革命勢力と国際大ブルジョアジーの広範な連合軍が行動をおこした、と、「マルクス=レーニン主義の基礎3」にあります(p555)。

「マルクス=レーニン主義の基礎」のロシア革命観を「科学的社会主義」(岡本博之・小林栄三監修、新日本出版社刊)も継承しています。

「科学的社会主義」「先進国革命の理論」は、ソ連や中国、北朝鮮の政治犯収容所の存在について完全に沈黙しています。「マルクス=レーニン主義の基礎」と同じです。

穀物徴発に反抗する農民、教会の財産没収に反抗する聖職者、トロツキー、ブハーリンも「反革命」


「反革命」とは便利な語です。レーニン、スターリンとソ連共産党の蛮行に反抗する人間はすべてこの中に含まれてしまいますから。

殺されると思えば、誰しも可能な限り反抗するはずです。「富農」「反革命分子」「スパイ」容疑で監獄に連行され、死刑判決を出されてしまえば反抗などできませんが。

レーニンとボリシェヴィキによる教会の財産没収、聖職者投獄や処刑に反抗したロシア正教会の聖職者たちも、共産主義理論から見れば「反革命」です。

トロツキー、ブハーリンも反革命です。ソ連工業化の原資についての彼らの主張は大きく異なっていたのですが、反革命というレッテルをスターリンに貼られた点では同じです。

「マルクス=レーニン主義の基礎」「科学的社会主義」には、トロツキーやブハーリンがロシア革命で果たした役割については一切触れられていません。

「ソ連邦共産党史」(日本共産党中央委員会宣伝教育部訳、大月書店昭和34年刊行)にはトロツキー、ブハーリンは10月革命で否定的な役割を果たした人物として記述されていますが。

ソ連共産党の内部抗争に勝利したスターリン、フルシチョフの都合の良いようにソ連の歴史が修正され、世界各地で「教科書」として共産党員により宣伝・普及されてきたのです。

「32年テーゼ」を誰が作成したのか、今日の日本共産党中央は下部党員に説明できない


今日の不破哲三氏によれば、スターリン以後のソ連は人間抑圧社会で、ソ連共産党は覇権主義の巨悪です。

この立場を徹底するならば、スターリンの指導下にあった世界共産党(コミンテルン)もその存在自体が覇権主義の産物であり、各国の共産党員は覇権主義者の手先ということになります。

覇権主義者が作成した「日本における情勢と日本共産党の任務に関するテーゼ」(32年テーゼ」を、小林栄三監修「科学的社会主義 上」は「わが国の革命運動が進むべき道をしめす画期的な指針」と高く評価していました(同書p14)。

そんな素晴らしい指針を宮本顕治氏ら当時の日本共産党中央に授けて下さったのなら、やはりスターリン、クーシネンとソ連共産党は偉大だったという話になってしまいます。「巨善」です。

このあたりを問いただすと、厄介なことになりますから、最近の日本共産党の文献では「32年テーゼ」を誰が作成したのかについてはふれられていません。

小林栄三監修「科学的社会主義 上」では、「32年テーゼ」は片山潜、野坂参三、山本懸蔵ら党代表が参加してコミンテルンで決定されたと記述されています(同書p14)。

野坂参三氏は、不破哲三氏により近年「覇権主義者の手先、内通者、党の破壊者」等と規定されましたから、「32年テーゼ」作成者の一人として下部党員に紹介することはできません。

「32年テーゼ」作成者は隠ぺいするしかない。共産主義者にとって歴史は、宣伝材料なのです。

旧ソ連はもちろん、中国、北朝鮮でも、宣伝・扇動を担当する部門が強大な権限を保持しています。在日本朝鮮人総連合会にも、宣伝・扇動を担当する部署があるはずです。

吉良よし子議員、池内さおり議員は「32年テーゼ」について何か御存知なのでしょうか。

この程度の文書について何も知らない方が日本共産党の国会議員をやっているなら、日本革命などできるはずがないですよ。

追記


「マルクス=レーニン主義の基礎」や、「ソ連邦共産党史」の朝鮮語版もあったのでしょうね。昭和36年ぐらいの北朝鮮なら、「主体思想の確立」前です。黄長ヨップさんなら、御存知だったでしょう。

ソ連共産党の本が当時の北朝鮮国民に紹介されていてもおかしくない。北朝鮮はソ連により解放されたとこの時期の金日成の著作には明記されていました。

ところで、満州で山賊行為をしていたときの金日成は中国共産党員でした。金日成は満州の治安を維持すべく尽力した日本軍に討伐され、ソ連領に逃げました。

朝鮮学校関係者はこれを御存知かな。







2016年8月13日土曜日

「マルクス=レーニン主義の基礎」(ソ連邦国立政治文献出版所1959年刊、日本共産党中央委員会発行)より思う

マルクス=レーニン主義を死んだ教条としてではなく、生きた行動の指針として身につけようとするものにとっては、これを統一した完全な一個の体系としてまなぶことが、なによりもまず肝心なことである。それゆえ、本書をまなぶさいには、この教科書の全体の構成と叙述にしたがって、忍耐づよく系統的にまなんでいくことが望ましい(日本共産党中央委員会議長 野坂参三の「マルクス=レーニン主義の基礎 日本語版の出版にあたって」1960年1月より抜粋)


吉良よし子議員、池内さおり議員ら若い共産党員の皆さんは、「マルクス=レーニン主義の基礎」というソ連共産党がつくった本を御存知でしょうか。

この本を日本共産党中央委員会が翻訳して「教科書」にしていたのは史実です。

当時の日本共産党中央委員会議長、野坂参三氏が「教科書」として党員や労働者に推奨しているのですから。

この本の執筆責任者は、オ・ヴェ・クーシネンというソ連共産党の大幹部で、スターリンの側近の一人です。

クーシネンは日本共産党が崇めていた「32年テーゼ」作成の中心人物でした。フィンランド人です。

スターリンの側近で、フルシチョフによるスターリン批判(1956年)以後もソ連共産党の大幹部で居続けたのですから、かなりの政治力をもった人物だったのでしょう。

本ブログでは何度も、宮本顕治氏、上田耕一郎氏、不破哲三氏、聴濤弘氏らがソ連を礼賛したことを指摘しました。

社会主義はソ連邦で完全な最後の勝利をおさめた、と昔の共産党員は信じていたのです。

この本が日本語に翻訳された昭和36年(1961年)ころ、1927年生まれの上田耕一郎氏は34歳、1930年生まれの不破哲三氏は31歳、1935年生まれの聴濤弘氏は26歳くらいです。

日本を必ず、ソビエト化するぞ!という志に燃えていた彼らは、「マルクス=レーニン主義の基礎」を何度も繰り返し読んだのではないでしょうか。

クーシネンの「マルクス=レーニン主義の基礎」と岡本博之・小林栄三監修の「科学的社会主義 上下」


私見では、岡本博之・小林栄三監修の「科学的社会主義 上下」(昭和52年新日本出版社刊行)の「理論」部分はこの本と大差ありません。

生産の社会的性格と取得の資本主義的形態の矛盾からの唯一の出口は、生産手段の社会的所有、すなわち社会主義への移行だそうです(「基礎」2、p227)。

労働者階級は権力を握った後、旧国家の諸機関(警察、裁判所、行政機関等)をどう処理するかという問題にぶつかるそうです。

どんな条件のもとでも、古い国家権力機関を破壊し、新しいものを創設することが、プロレタリア革命の第一の条件になすべき任務であることにかわりはないそうです(「基礎」2、p295)。

上田耕一郎氏、不破哲三氏らの若い頃の「理論」も、この「教科書」に依拠している部分が多々あります。上田耕一郎氏の自衛隊即解散論は、「古い国家権力機関の破壊」論と同じです。

現在の日本共産党は、公安警察と公安調査庁の解体を要求していますが、これもクーシネンの、「古い国家権力機関の破壊」論の影響によるものです。

現在の日本共産党は、中国や北朝鮮、〇〇〇〇原理主義者の策動から日本国家を守るために必要な諜報機能(インテリジェンス機能)の抜本的弱体化を主張しています。

共産主義者が、「米帝国主義と日本の独占資本による階級的支配の機構」である日本国家の弱体化と滅亡を策するのは当たり前です。

政府の諜報機能(インテリジェンス機能)がなくなってしまえば、政府が北朝鮮工作員や〇〇〇〇原理主義者によるテロを未然に阻止することは不可能です。

スターリンの側近、クーシネンが作成した「指針」を日本共産党は信奉してきた


小林栄三氏は、「科学的社会主義 下、p14」でクーシネンが中心になって作成した「32年テーゼ」を「わが国の革命運動の進むべき道をしめす画期的な指針」と高く評価しています。

今日の不破哲三氏によれば、1930年代以後のソ連は「人間抑圧社会」であり、「覇権主義の巨悪」です。

今日の不破哲三氏の観点からすれば、戦前の日本共産党は、「覇権主義の巨悪」が作成した指針を盲信して活動していた御仁たちということになります。

小林栄三氏は、「覇権主義の巨悪」が作成した指針を礼賛した御方ということになります。昭和52年当時の不破哲三氏も「32年テーゼ」を同様に評価していたのでしょうけれど。

ソ連が崩壊し、ソ連共産党員が落ちぶれると手のひらを返して罵倒するのが、共産主義者の生き方なのです。

日本共産党のソ連評価は、「マルクス=レーニン主義の基礎」が発行された昭和36年当時はいわば「巨善」だったのですが、およそ30年後には「巨悪」に変化しました。

「巨善」と評価していた時期に、野坂参三氏がソ連の秘密警察の諜報活動やスターリンによる殺人に協力するのは、共産主義者として栄えある活動だったはずですが。

今日の不破哲三氏の視点で昔の日本共産党員の活動を評価したら、「巨悪」の手下どもの妄動、愚行という話になるだけです。

今日の不破哲三氏の視点から、昔の日本共産党員に今の規約を適用すれば全員除名でしょう。野坂参三氏は長生きをしたことが災いしたと言えそうです。

ソ連を礼賛した若き不破氏も処分対象になりえます。

日本共産党は中国覇権主義に屈服した


中国は農村出身の労働者(農民工と言います)を二束三文の賃金で酷使して高成長しました。中国共産党員は国家による許認可などの権限を利用した利権あさりで巨額の資産を蓄積しました。

今の中国共産党員は、農民をこき使った昔の中国の地主のような存在です。

中国共産党との関係を正常化をすることにより、不破哲三氏は「野党外交」ができるようになりました(不破哲三「時代の証言」p194)。

不破哲三氏は、中国人民解放軍に射殺された「赤旗」記者の生命と人権を無視して、中国共産党との関係を正常化しました。

今日の不破哲三氏は、中国政府による過酷な人権抑圧、チベットやウイグル、モンゴルなど少数民族抑圧に沈黙しています。長いものにはまかれろ、ということなのでしょう。

宮本顕治氏は天安門事件の頃、中国の人権問題を強く批判しました。明治人の頑固さが、宮本顕治氏にはあったようです。中年以上の日本共産党員なら、この史実を覚えています。

日本共産党は、「中国覇権主義」とやらとの「生死をかけたたたかい」は敗北しました。

今でも、日本共産党が日本革命をやると主張していること自体、ソ連共産党の「マルクス=レーニン主義の基礎」の枠内にあると言えます。

「ソ連覇権主義との生死をかけたたたかい」とやらに日本共産党が勝利したわけではない。依拠している「理論」が大同小異なのですから。

不破哲三氏は結局、レーニン、スターリン、クーシネンの弟子なのです。吉良よし子議員、池内さおり議員には、「マルクス=レーニン主義の基礎」を読んでいただきたい。

2016年8月10日水曜日

朝鮮学校の生徒規則「生徒たちは、偉大な首領金日成大元帥様が開拓し、敬愛する金正日元帥様が継承開拓していく、主体偉業や総連愛国偉業の代を継いでいかねばならない」

北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会(山田文明代表)の理論誌「光射せ!第15号」p125-138掲載の朝鮮学校生徒手帳(主体90年(2001)学年度)より。


以下は同誌に掲載されている朝鮮学校の「生徒規則」の抜粋です。

一、生徒たちは、偉大な首領金日成大元帥様の教示や、敬愛する金正日大元帥様のお言葉を深く学んで、その志を自分の骨身に刻み、元帥様に限りなく忠実な息子、娘にならなければならない。

二、生徒たちは、偉大な首領金日成大元帥様と、敬愛する金正日大元帥様の幼いころの栄光燦爛たる革命歴史について深く学び、我が国の革命伝統や総連の愛国伝統を、代を継いで輝かせて行かねばならない。

三、生徒たちは、敬愛する金正日大元帥様に対する信念、社会主義祖国に対する信念を胸に深く抱いて、社会主義祖国を熱烈に愛し、祖国の自主的平和的統一を早めるための活動に積極的に貢献しなければならない。

「生徒生活準則」の「課外時間」の、「授業が終わったら、次のような活動に参加しなければならない」に次があります。

「偉大な首領様の教示や敬愛する元帥様のお言葉の学習に、熱心に参加しなければならない」

「金日成大元帥革命歴史研究室」「金日成大元帥革命活動研究室」の運営計画に従って行われる研究集会に、誠実に参加しなければならない」

「少年団および朝青生活に真面目に参加し、組織から与えられた任務を着実に遂行しなければならない」。

詳しくは、「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の理論誌「光射せ!」第15号をご覧下さい。朝鮮学校の教育内容に関する貴重な内部資料がいくつも掲載されています。

左翼人士はなぜ朝鮮学校での金日成・金正日主義化教育を批判しないのか


これが「洗脳教育」でなくて何なのでしょう。「民主主義教育」とやらを叫ぶ左翼人士はなぜ沈黙しているのでしょうか。

「ヘイトスピーチ反対」を叫ぶ知識人や政治家には、朝鮮学校の洗脳教育に沈黙している方が殆どです。

在日本朝鮮人総連合会との人脈を維持したいからでしょうが、情けない話です。左翼政治家、知識人は節操がないと言われても仕方がない。

チュチェ思想学習を「民族教育」と思い込んでいる生徒・学生の皆さんは、「金日成民族」の一員としての誇りと自覚を持ってしまうのでしょう。

「金日成民族」の方を日本人や韓国人が毛嫌いするのは当たり前ではないですか。「ヘイトスピーチ」は不適切ですが、普通の韓国人は金日成民族ではありえない。

朝鮮学校では北朝鮮へ帰国した朝鮮学校の元教員や元生徒・学生の中に、「山送り」「学習に行った」方が少なからずいることなど教えていません。

朝鮮学校では、「苦難の行軍」期(1990年代後半)にも金正日が「招待所」で贅沢三昧の暮らしをしていたことも教えていません。

「喜ばせ組」(キップムジョ)という金正日お抱えの美女踊り子集団の存在など、朝鮮学校では一切教えていません。

朝鮮学校の副教材に「金正日の料理人」藤本健二さんの著作を採用するべきだ


朝鮮学校では副教材として、藤本健二さんの「核と女を愛した将軍様」(小学館文庫)を採用するべきです。この本のp190-195に、「喜ばせ組」の普段の生活と、金正日との交流が描かれています。

藤本健二さんが、素顔の金正日と高英姫との愛情生活を著作で克明に伝えたから、息子金正恩は藤本さんを平壌に繰り返し招待したのです。

どういうわけか、金正日は在日本朝鮮人総連合会の大幹部より、藤本さんを信頼していたのです。これは金正恩、金予正も同じです。

朝鮮学校で学ぶ生徒・学生に、素顔の金正日と高英姫の姿を伝えることを、息子金正恩、娘金予正は内心で願っているはずです。

北朝鮮の公式文献では、金正日の奥さんが誰だったのか、子供は何人いたのかすらわかりません。金正日は高英姫を、金日成に紹介できなかったらしいのです。

高英姫が元在日朝鮮人(帰国者)だからです。血統を何より重視する北朝鮮社会では、元在日朝鮮人(帰国者)は嫌われ、蔑まれることが多い。

元在日朝鮮人も、北朝鮮の人たちを「原住民」「アパッチ」という隠語で呼びます。これも、朝鮮学校で学んでいる生徒・学生に教えるべきではないでしょうか。

「ヘイトスピーチ反対」で在日本朝鮮人総連合会と協力している左翼政治家、運動家は朝鮮学校での洗脳教育の実態を直視するべきです。









2016年8月2日火曜日

金正日の朝鮮学校論「在日朝鮮青年を愛国偉業の頼もしい継承者に育てるために―朝鮮労働党中央委員会の責任幹部との談話―(1990年4月5日)、金正日選集第10巻掲載」より思う

「在日朝鮮青年にたいする思想教育で基本となるのは、チュチェの革命的世界観を確立することです。...総連は各階層の広範な同胞青年のあいだでチュチェ思想の原理教育を強化し、かれらがチュチェ思想の原理を深く体得してそれを自分の確固たる信念とするようにしなければなりません」(前掲論文より抜粋)


左翼の皆さんは在日本朝鮮人総連合会の皆さんが運営している朝鮮学校に、地方自治体が補助金を出すべきだと主張しています。

補助金支出に反対する私のような人間は、極右翼だそうです。レイシストとか言われそうです。

左翼の皆さんは、朝鮮学校での教育方針に関する金日成や金正日の文献を読んでいるのでしょうか?在日本朝鮮人総連合会の皆さんの言動を「理解」するためにこれは欠かせないはずです。

ある弁護士は、朝鮮学校への補助金支出を訴える記者会見で「朝鮮学校の教育内容は関係ない。在日朝鮮人の教育に日本の自治体が補助金を出さないのは差別だ」旨主張したそうです。

〇〇〇〇原理主義や、〇〇〇真理教の方々が「学校」をつくったのなら日本の自治体は補助金を出さねばならないのでしょうか?

北朝鮮、朝鮮労働党は大韓航空機爆破、韓国要人暗殺、拉致や覚せい剤の密輸など無数のテロを断行してきました。テロ国家を礼賛する「学校」に自治体は補助金を出すべきなのですか。

朝鮮学校の基本的教育方針は金日成の「社会主義教育テーゼ」と金正日の「労作」「お言葉」


私見では朝鮮学校の最も基本的な教育方針は金日成の「社会主義教育テーゼ」です。

これの具体化を、金正日が著作(労作、로작と言います)や「お言葉」(말씀と言います)で出しています。

「お言葉」は朝鮮労働党の担当部署から在日本朝鮮人総連合会関係者に様々な経路で伝えられるだけですので、部外者にはわかりません。非公開ですから。

しかし私たちは金正日の著作から、朝鮮学校の教育方針と内容をある程度知ることはできます。「お言葉」には、詳細な指示があるはずですが、そこまではわかりません。

金正日は「労作」で繰り返し、金日成と朝鮮労働党への絶対的忠誠心を在日朝鮮青年の間に培わねばならないと強調しています。

金正日によれば、北朝鮮は偉大なチュチェ思想の祖国であり、領袖、党、大衆が混然一体となった偉大な社会主義国だそうです。

「労作」を発表したころ、金正日は招待所で贅沢三昧の暮らしをしていた


「金正日の料理人」だった藤本健二氏の各著作によれば、この「労作」を発表したころ金正日は各地にある「招待所」で贅沢三昧の毎日を過ごしていました。

混然一体どころか、金正日と一般国民は隔絶していたのです。

飢餓状態だった北朝鮮の一般国民の苦しみなど金正日は全く考えていなかった。朝鮮学校では金正日の「招待所」暮らしとそのための莫大な経費についてどう教えているのでしょうか?

金正日によれば、在日本朝鮮人総連合会の各級学校は単なる学びの場ではなく、学生と生徒を民族幹部に育てる学院です。

金正日は在日本朝鮮人総連合会の初・中級学校で少年団組織を強化し、生徒が幼いときから組織生活に習慣づけられるようにするべきと述べています。

朝鮮大学校と朝鮮高級学校の朝青組織を強化し、学生を朝青組織生活を通じて絶えず鍛えねばならないと金正日はこの「労作」で述べています。

要は、朝鮮学校で生徒と学生の革命家養成教育を、授業だけでなく「少年団」「朝青」という組織を通じても行え、という話です。

朝鮮大学校の卒業生はチュチェ型の革命家、チュチェ朝鮮の永遠なる同行者なのか


金正日によれば朝鮮大学校は、在日本朝鮮人総連合会の強力な民族幹部養成組織です。

金正日がこういうのですから、朝鮮大学校の卒業生の皆さんは「我々の領袖が一番、わが祖国が一番、わが民族が一番」であるというゆるぎない信念を抱いて社会主義祖国を熱烈に愛している方々なのでしょう。

そういう方々をチュチェ型の革命家、チュチェ朝鮮の永遠なる同行者と言います。

「チュチェ」(주체)とは主体という漢字語なのですが、どういうわけか北朝鮮の近年の文献では片仮名を用いています。日本人には不気味なことこの上ない。

チュチェ型の革命家の方々なら、金正日とその取りまきに奉仕する「喜び組」の女性の装飾品や衣服を金正日に献上することを至高の喜びと受け止めていることでしょう。

金正日によれば、在日朝鮮青年が身につけるべき世界観はチュチェの世界観です。在日朝鮮青年にたいする思想教育で基本となるのは、チュチェの革命的世界観を確立することです。

地方自治体が朝鮮学校に補助金を支出するべきと主張する左翼の皆さんは、チュチェの革命的世界観とやらについて何か御存知なのでしょうか。

地方自治体は大韓民国滅亡策動に資金支援すべきなのか


チュチェ型の革命家の皆さんは、「南朝鮮解放」「全社会の金日成・金正日主義化」、要は大韓民国滅亡のために日夜戦っています。

そういう方をつくる教育に資金を出すべきということは、大韓民国を滅亡させる策動を地方自治体は資金支援すべきということです。

普通の韓国人からすれば、日本の地方自治体が朝鮮学校に補助金を出すことなど内政干渉そのものです。

金正日によれば、在日朝鮮人は在日本朝鮮人総連合会の組織によって社会的・政治的生命が保証されています。

別言すれば、在日本朝鮮人総連合会を何らかの件で批判し、その組織から離れている在日朝鮮人には、「社会的・政治的生命」とやらが保証されていないことになります。

在日本朝鮮人総連合会の皆さんが、北朝鮮と金日成、金正日、金正恩を批判する方々に「民族反逆者」「宗派分子」などという罵詈雑言を浴びせるのはチュチェ型の革命家としての使命感に依拠しているのでしょう。

朝鮮学校の副教材に藤本健二さんの著作を使うべきだ


腹が立ちますが、拉致された日本人の中には「南朝鮮解放」「全社会の金日成・金正日主義化」に何らかの形で協力させられていた方が相当数いたはずです。

田口八重子さんは、大韓航空機爆破犯人金賢姫の「日本語教育係」でした。「金正日の料理人」だった藤本健二さんも、金正日に美味しい寿司をふるまって貢献しました。

在日本朝鮮人総連合会の皆さんは、朝鮮学校の副教材として「金正日の料理人」藤本健二さんの著作を使うべきです。

晩年の金正日にとって最愛の女性だった元在日朝鮮人高英姫の生き方を、朝鮮学校の子供たちに教えるべきではないでしょうか。

これをやれば金正恩と妹金予正は、内心で喜ぶでしょう。藤本さんは亡き父母の「忠臣」の一人でした。

金正日は在日本朝鮮人総連合会の皆さんより、日本人の藤本さんを信頼していたのです。推測ですが、金正日に天ぷらを揚げる料理人もいたのではないでしょうか?

佐藤勝巳さんの本にそんな話が出てきます。

追記

佐藤勝巳「北朝鮮 『恨』の核戦略」(光文社1993年刊行、p102)で、故佐藤勝巳氏は金正日が握り寿司が大好物で日本人の寿司職人を抱えていること、天ぷらを揚げる日本人職人もいるらしいと指摘しています。