朝鮮学校の教職員の皆さん。朝鮮商工人の皆さん。在日本朝鮮人総連合会傘下の各団体で働く専任職員(일꾼)の皆さん。
朝鮮大学校社会科学研究所が監修している「チュチェ思想叢書」〈全十五巻)の第十二巻「主体的社会変革論」を見て下さい。
著者は朴龍朝鮮大学校社会科学研究所副所長です。この本のp216は次のように述べています。
「チュチェ思想が具現された朝鮮民主主義人民共和国では、社会の全成員が集団の生命である社会政治的生命をもち領袖、党、大衆が一心団結をなして生き、社会と集団のために自分のすべての精力と才能をつくすことに生きがいと誇りを感じている」(白峰社1995年発行)。
マレーシアのクアラルンプールで、ベトナム人女性とインドネシア人女性によりVXガスで殺された金正男氏は、金日成の孫、金正日の長男ですが、金正日や朴龍氏の説く「社会政治的生命体」から離れて、自由奔放な暮らしをしていました。
金正男氏はディズニーランドに行くために偽造旅券で家族と訪日しました。金正男氏は日本だけでなくマカオや欧州、東南アジアでいろいろな商売をしていたようです。
金正男氏は、「主体的社会変革論」と無縁の生き方をしていたと思えてなりません。
金日成の孫、金正日の愛息子金正男氏は「社会政治的生命体」から離れ、「自主的な生活」をしていなかった
金正日は次のように述べています。
「人間にとって肉体的生命も貴重であるが、より貴重なのは社会政治的生命である。肉体的生命よりも社会政治的生命を重んじることは、社会的存在である人間の本質的要求である。」
「人間の最も価値があり、生きがいのある生とは、みずからの運命を社会的集団の運命と結合させ、社会的集団のために献身的に服務しながら社会的集団の愛と信頼のなかで自主的に創造的な生活を送ることである。」(「社会主義は科学である」より抜粋)。
金正日の言う「社会的集団」とは、朝鮮労働党のことです。韓国で「社会的集団」と言えば、政党や市民団体はもちろん、企業や学校、趣味の同好会も意味します。
金正日が、韓国・朝鮮人に韓国の政党や財閥、企業のために献身的に服務することが創造的な生き方であると主張しているわけがありません。
金正男氏は「あんな国の後継者になるのはアホだ」「三大世襲に反対する」などと言う発言を、日本のマスコミ関係者に電子メールなどで繰り返していました。
金正男氏は、みずからの運命を社会集団たる朝鮮労働党と結びつけていなかったから、「自主的な生活」をしていないと解釈されてしまったのでしょう。
朴龍氏の「主体的社会変革論」によれば、ブルジョア民主主義は個人の生命を最優先させる点で個人主義的生命観に発する個人的民主主義です。
社会主義的民主主義は集団の生命を最優先させる点で集団主義的生命観に発する民主主義、集団的民主主義です。朝鮮民主主義人民共和国では、社会主義的民主主義が全面的に実現されています(同書p220より)。
「主体的社会変革論」によれば、朝鮮式社会主義のもとで勤労者はみな政治組織生活を通じて貴い社会政治的生命を輝かしています(同書p221)。
そうであるなら、朝鮮労働党の「政治組織生活」とほぼ無縁の暮らしをしていた金正男氏は、社会政治的生命体と無縁の「宗派分子」なのでしょうか。
金日成の孫、金正日の息子である金正男氏は北朝鮮工作員の使」使嗾で外国人女性によりVXガスで死んで然るべき存在だったのでしょうか。
金正日は父金日成に、金正恩を紹介できなかった―金正恩の母高英姫が元在日朝鮮人(帰国者)だから
私見では、金正男氏は父金正日を尊敬し深く愛していました。金正日は金正男氏を「困った奴だ」くらいには思っていたでしょうが、深く愛していました。
金正日は長男金正男氏が生まれたとき、どれだけ嬉しかったことでしょう。金正男氏の母親は成ヘリムさんという、韓国出身の北朝鮮女性です。
金正日は父金日成に、成ヘリムさんと金正男を妻子として紹介したそうです。ところが、金正日は三代目金正恩を父金日成に紹介することはできなかった。
皆さんも気づいていらっしゃるでしょうが、金正恩には金日成と一緒に写っている写真や映像が全くない。
これは、金正恩に対する尊敬感を北朝鮮国民に広まるために絶好の材料です。北朝鮮国民に公開して都合が悪いはずがない。
なぜ金日成と金正恩が一緒に写っている写真や映像がないのか。
金正恩の母親、高英姫さんが元在日朝鮮人(帰国者)だからです。金日成も元在日朝鮮人を毛嫌いしていたのです。
帰国者と北朝鮮の住民間の感情的対立―「アパッチ」「原住民」
帰国者は北朝鮮の人々を、「原住民」「アパッチ」などと呼びます。帰国者から見れば、北朝鮮の人々は入浴する習慣があまりないので、汚らしい。
帰国者から見れば、北朝鮮の人々は人生には選択肢があるという発想が弱く、上の人々の言いなりになっている。
帰国者の親戚を持つ在日朝鮮人なら、「アパッチ」「原住民」という3隠語を御存知でしょう。
北朝鮮の人々から見れば、帰国者は朝鮮語が下手な癖に金の力で成り上がっている。日本の親戚から送金を受けている帰国者のイメージがあるのでしょう。
北朝鮮の人々には、帰国者(元在日朝鮮人)は日本人の血が混じっている連中で、親日派だというような真におかしな価値観を持っている方が多いのです。
これは全く間違った考え方ですが、そう思っている人が多いのはどうしようもない。
三代目金正恩の母が帰国者(元在日朝鮮人)であることが北朝鮮国民にばれたら、金正恩は「白頭山血統」ではなく、「富士山血統」または済州島の「ハルラ山血統」と陰口を叩かれてしまいます。
「富士山血統」「ハルラ山血統」で何か悪いのかな?と私たち日本人には思えてしまうのですが、北朝鮮国民には重大問題です。最高指導者は白頭山血統の方でしかありえない。
成ヘリムさんは著名な女優でしたから、北朝鮮国民としては金正男氏、あるいは金正男氏の息子の金ハンソル氏のほうが最高指導者にふさわしいということになります。
「正統性」があるということでしょう。「正統性」という言葉を、どういうわけか朝鮮半島の皆さんは好みますね。
金正日は招待所で奢侈生活をしていた。「金正日の料理人」藤本健二さんの著作は真実だった
在日本朝鮮人総連合会の皆さんは金日成、金正日の妻子を御存知なのでしょうか。「金正日略伝」(在日本朝鮮人総連合会編)には、金正日の妻子について一切記載されていません。
金正日の女性関係、子供の名前は絶対的な機密なのです。これを話題にしただけで、「山送り」(山間僻地への追放)となりえます。
三代目金正恩の存在を、私たちは「金正日の料理人」こと藤本健二さんの著作で知りました。
著作が発表された後も、金正恩は藤本さんと会っています。藤本さんの著作が全くのねつ造なら、金正恩が会うはずがない。
在日本朝鮮人総連合会の皆さんも、金正哲、金正恩と妹金予正の存在を藤本健二さんの本で初めて知ったのではないでしょうか。藤本さんに感謝すべきでしょう。
藤本さんの本がなければ今でも、金予正が金正恩の妹であることがわからなかったはずです。
金正日とその家族は、90年代後半の「苦難の行軍」の時期でも、「招待所」で豪華なことこの上ない生活をしていました。
在日本朝鮮人総連合会の皆さんは、朝鮮学校で金正日、金正恩らが住んでいる「招待所」とそこでの豪勢な暮らしについて教えるべきです。
海外で長年暮らした金正男氏も、北朝鮮の一般国民から見れば想像もできないような贅沢な暮らしをしていました。北朝鮮社会は、日本や韓国とは比較にならない「格差社会」なのです。
「主体革命偉業」「全社会の金日成・金正日主義化」により形成されたのは、資本主義社会よりももっと極端な「格差社会」だったのです。
金日成の孫、金正日の愛息子金正男氏殺害は「主体革命偉業」「全社会の金日成・金正日主義化」なのか
王子様のごとく育てられた金正男氏は、父親以外の誰かに命令されることなど想像もできなかったでしょう。金正男氏が幼少時に住んでいた屋敷では、パンダを飼っていたらしい。
金正男氏は異母弟金正恩の何らかの命令に逆らった可能性はある。だから金正男氏は「宗派分子」なのでしょうか?
再び在日本朝鮮人総連合会の皆さんに問います。
金正日の論文「社会主義は科学である」に次があります。
「人間は社会的存在として自主的な権利をもち、自主的な要求を実現しながら生きてこそ、社会政治的生命をもち、尊厳ある生き方をしているということができる。
人間が自主性を失い、他人に隷属されれば、生きているとしても社会政治的には死んだも同然である。」
自由に生きていた金正男氏は、「自主性を失い、社会政治的には死んだも同然である」から、「肉体的生命」を失わせることが「主体革命偉業」「全社会の金日成・金正日主義化」なのですか。
朝鮮学校教職員の皆さんは、金日成の孫、金正日の愛息子金正男氏の死を子供たちにそのように教えるのでしょうか。
金日成の孫、金正日の愛息子を外国女性をそそのかし、VXガスで殺害することは「共和国の自主権」なのでしょうか。