2017年12月30日土曜日

共産主義者と「祖国擁護」について―レーニン「プロレタリア革命と背教者カウツキー」(全集第28巻、大月書店刊行)より思う

「『祖国擁護』をみとめることは、プロレタリアートの見地からすれば、現在の戦争を弁護し、この戦争の正当性をみとめることである。

ところで、現在敵対する軍隊がどこにいるか、自国にいるか、それとも他国にいるかにかかわりなく、戦争は依然として帝国主義戦争であるから、祖国擁護の承認は、実際には帝国主義的・強盗的ブルジョアジーを支持することであり、社会主義を完全に裏切ることである」(全集第28巻、p300より抜粋)。


金正恩と朝鮮労働党の核ミサイル攻撃に対し、どうやって日本国家と日本人を守るべきか。

朝鮮労働党は繰り返し、日本への核攻撃を明言しています。朝鮮労働党の蛮行の歴史を考慮すれば、これは根拠のない脅かしではない。

この問題については政治家はもちろん、知識人、社会運動家、日本国民なら真剣に議論し、見解を表明すべきことでしょう。

私見では、日米軍事同盟の抜本的強化と巡航ミサイルの大量保有がどうしても必要です。

日本攻撃への徹底的な反撃力の存在を、金正恩と朝鮮労働党に誇示すれば、金正恩は朝鮮人民軍に指令を出しにくくなる。

共産主義者は朝鮮労働党の核ミサイル攻撃に対し、ミサイル防衛網を発動することに反対する


志位和夫氏ら日本共産党議員と支援者の皆さんは、安倍総理に金正恩、朝鮮労働党と対話をせよというだけです。

核ミサイル攻撃が現実のものとなった場合、安倍総理がミサイル防衛網と日米安保を全面発動して金正恩に反撃することには、日本共産党は断固反対らしい。

これでは、日本共産党は日本人は朝鮮労働党の核ミサイルにより溶けてしまえ!と主張しているといわれても仕方ない。

共産主義者が信奉するレーニンの「祖国擁護=社会主義への裏切り」論


志位和夫氏ら日本共産党員に限らず、左翼知識人や運動家は、朝鮮労働党の核ミサイル攻撃にどう対処、反撃するのかという議論と思考を嫌がる。

これは共産主義者と左翼知識人、左翼運動家が、上に記したレーニンの「祖国擁護=社会主義への裏切り」論を信奉しているからだと考えると、わかりやすい。

共産主義者にとって、米国は帝国主義、日本は国家独占資本主義です。従って日米政府が行う戦争は全て、帝国主義戦争です。

金正恩の核ミサイル攻撃に対し、ミサイル防衛網と日米安保を全面発動して反撃することは、帝国主義戦争を開始することに他ならない。

北朝鮮は途上国です。北朝鮮には金融資本がないので、海外侵略を行う経済的基盤がない、という結論がマルクス主義経済学なら導かれる。

レーニンの論文「プロレタリア革命と背教者カウツキー」は良い論文です。戦争と革命の際に共産主義者がとるべき態度が、明白に示されています。

レーニンは敵軍が自分の国土に侵入してくる場合でも、祖国を守るべきでないと断言した


この論文でレーニンは、さらに次のように述べ、「祖国擁護論」を唱えたカウツキーらを徹底批判しています。

「ドイツのカウツキー派、フランスのロンゲ派、イタリアのトゥラティ派はこう論じている。社会主義は民族の平等と自由、民族の自決を前提とする。

だから、自分の国が攻撃される場合や、敵軍が自分の国土に侵入してくる場合には、社会主義者は祖国を守る権利と義務がある、と。

しかしこの議論は、理論的には、社会主義をまったくばかにすることであるか、ペテン師的な逃げ口上であり、実践的=政治的には、戦争の社会的・階級的性格についても反動的な戦争の時期の革命的政党の任務についても考えることさえできない、全く無知な百姓の議論と一致している」。

ロシア農民の素朴な愛国心の方が、共産主義者の奇怪な理屈よりどれだけましだったろうと思うのは私だけでしょうか。

志位和夫氏ら日本共産党員が、中国共産党、朝鮮労働党の日本侵攻策動に対し具体的な反撃策を一切議論しないのは、レーニンの理論を信奉しているからです。。

日本共産党員がレーニン主義者であるならば、祖国擁護に断固反対せねばなりませんから。




2017年12月28日木曜日

レーニン「プロレタリア革命と背教者カウツキー」(1918年10月―11月執筆。全集第28巻掲載、大月書店刊)より思う。

「印刷所と紙がブルジョアジーから没収されているから、出版の自由は偽善ではなくなっている。りっぱな建物、宮殿、邸宅、地主の家についても同様である。ソヴェト権力は、こういうりっぱな建物を何千となく搾取者から一挙にとりあげた」(全集第28巻、p262より抜粋)。


日本共産党元参議院議員の聴濤弘氏は近著で、十月革命は地主の土地の没収や8時間労働制・全般的社会保障の導入などを実現する「ブルジョア民主主義革命」だったと主張しています(「ロシア十月革命とはなんだったか」本の泉社、p76)。

民主主義革命ならば、当時のロシアには民主主義が確立していたのでしょうか。

民主主義の大前提である、人々の生存権はどうだったのでしょうか。

当時のロシアは、経済が破たんしており相当数の人々が失業し、飢餓状態でした。

革命期のロシアについては、長谷川巌「ロシア革命下ペトログラードの市民生活」(中公新書)が詳しい。

ペトログラードでは革命期に社会秩序が崩壊し、犯罪が蔓延していきました。生存権の確立とは程遠い。

1918年には内戦が激化します。

8時間労働制や社会保障制度など言葉だけで、実体は何もない。ロシアの現実と無縁の宣伝に過ぎない。

そもそも社会保障制度があれば、飢餓状態になるはずがない。

失業者は働き場がないから8時間も労働できない。

衛生状態が悪化し、赤痢やコレラが流行し、暴力事件が頻発しているのが当時のロシアだったのです。

土地や住んでいた邸宅を没収された地主、貴族はその後、どうなったのでしょうか。

放浪して餓死した方は少なくなかった。

聴濤弘氏はそもそも、レーニンの「プロレタリア民主主義論」を御存知ないとしか思えません。

ボリシェヴィキはブルジョアジーと地主の邸宅を一挙に没収した


レーニンはプロレタリア民主主義について、論文「プロレタリア革命と背教者カウツキー」で詳述しています。

上記によれば、レーニンはブルジョアジーとレッテル貼りをした人たちに紙を印刷所の使用権を剥奪しました。

ブルジョアジーと地主の邸宅を何千となく一挙に没収したのです。これは私有財産制を保障するブルジョア民主主義ではありえない。

レーニンはプロレタリア民主主義の立場から、搾取者を暴力的に抑圧することを正当化しました。以下です。

「ロシアでは、官僚機関は全く破壊され、一物も残さず破壊しつくされ、旧裁判官は全部追放され、ブルジョア議会は解散された。

そしてとくに労働者と農民とにはるかに近づきやすい代議制度が与えられ、官吏は彼らのソヴェトと取り換えられるか、彼らのソヴェトが官吏のうえにすえられ、彼らのソヴェトは裁判官の選挙人とされた」(全集第28巻、p263-264より)。

レーニンはこのように認識していたのでしょうが、官僚機関が完全に破壊されたとは考えにくいですね。うまく身を処して生きのびた役人もいたはずです。

現実がこの記述どおりなら、1918年頃のソ連の裁判所はソヴェトを通じてボリシェヴィキの完全な支配下にあった事になります。

ともあれ、レーニンのプロレタリア民主主義論では、裁判所はソヴェトに従属すべき組織です。

レーニン「階級としての搾取者を暴力的に抑圧せよ」


さらにレーニンは次のように断言しています。

「独裁の欠くことのできない標識、独裁の必須の条件は、階級としての搾取者を暴力的に抑圧することであり、したがって、この階級に対して「純粋民主主義」を、すなわち平等と自由を破壊することである」(全集第28巻、p271)。

階級としての搾取者、すなわち地主、貴族、富農やロシア正教会関係者を暴力的に抑圧する事が、プロレタリア民主主義であるとレーニンは考えていたのです。

レーニンとボリシェヴィキの暴力を強く批判したカウツキーの理論は、「純粋民主主義」であるからマルクス主義と無縁である旨、レーニンはこの論文で繰り返し述べています。

住居が邸宅であれ、突然暴力的に没収されたら怒らない人がいるでしょうか。

住居から追放されたら、寝泊まりする場所がなくなってしまいます。酷寒のロシアで、長く生きられるはずもない。

地主や貴族、富農がボリシェヴィキに抵抗するのは、自らが生きのびるためだったのです。

レーニンのプロレタリア民主主義論は、愛弟子スターリンに継承されました。

ソ連はスターリンにより変質させられた、などと志位和夫氏らは宣伝しています。

レーニンの「プロレタリア革命と背教者カウツキー」や、富農撲滅を唱える諸論文を志位和夫氏、聴濤弘氏らは一体どのように読んでいるのでしょうか。

レーニン全集を真面目に読めば、レーニンの教えをスターリンが忠実に実行したから、多くのボリシェヴイキ幹部に支持されたのだと考えるべきです。