「わが党は、憲法違反で対米従属の自衛隊を解散させて『憲法の平和的条項を完全に実現させる』ことを主張するとともに、
安保条約を廃棄し、民主的な政府ができた後でも『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』ことを規定した現行憲法のもとでは、たとえ真の自衛のためのものであっても、『現在の憲法のもとで国が軍隊をもつことは正しくない』という立場を明確にとってきた」(同書p150より抜粋。「前衛」1969年1月号掲載論文)。
日本共産党はかつて、自衛隊即解散論を主張していたのです。
この論文を執筆した頃、不破哲三氏は38才くらいです。不破氏は若き理論家として、将来を嘱望されていました。
当時の社会党委員長、成田知己氏がいろいろな機会に、日本共産党を批判したようです。この論文はそれへの反論です。
民主的な政府ができた後でも、自衛隊を維持すべきではない旨、若き不破哲三氏は断言しています。
当時の日本共産党は、綱領でソ連や中国、北朝鮮など社会主義国が平和勢力であると規定していました。
平和勢力が、日本に侵攻するわけがない。米帝国主義以外に、民主的な政府ができた後の日本に侵攻しうる国はない。
レーニンの教えによれば、帝国主義が侵略戦争を起こすのですから。
若き不破哲三氏ら当時の日本共産党員はこのように、ソ連や中国、北朝鮮を盲信していたのです。
志位和夫氏ら今の日本共産党員も、中国、北朝鮮は途上国だから侵略戦争をしない、という類の盲信を抱いています。
若き不破氏は、社会党の自衛隊改編論を徹底批判した
さらに若き不破氏は、当時の社会党の綱領的文書「日本における社会主義への道」の中の自衛隊改編論を次のように厳しく批判しました。
社会党は、最終的には「自衛隊の解散」を目的とするが、社会党政権下ではそのための「過渡的措置」として
①文官統制の強化②自衛隊員の民主的権利の確保③国民警察隊と平和建設隊への再編成④自衛隊員の思想改造による軍国主義的治安的性格の一掃などを目指すとしている。
こうした部分的措置で、上から下まで対米従属と人民弾圧の軍隊として組織されている憲法違反の自衛隊が、社会党政権の支柱となる民主的な軍隊に改造されると考えること自体、
自衛隊の反民族的反人民的な実態と本質についての社会党の認識不足を暴露したものである。
要は、自衛隊は直ちに解散させるべきだということです。
将来、自衛隊を「解散」しうるときがくるまでは、社会党政権のもとでも、現憲法下での軍事力保持というこの憲法違反の事態を「過渡的措置」として容認するという立場に立っている社会党。
これに対し日本共産党は、現憲法下での「戦力」の保持を認めない。
将来「真に民主的な独立国家日本」に、軍事的な自衛措置を必要とする情勢が生まれたときには、国民の総意基づいて憲法上の制限をのぞいたうえでその措置をとるそうです。
不破哲三氏は社会党の自衛隊改編論を取り入れた
昔の社会党の自衛隊改編論は、今の日本共産党の自衛隊論と似ています。
今の日本共産党は、将来自衛隊を解散しうるときが来るまでは、現憲法下での軍事力保持というこの憲法違反の事態を「過渡的措置」として容認するという立場ではないでしょうか。
日本共産党は平成12年の第22回党大会で、自衛隊活用論を打ち出しました。
歳月が流れれば、人の心は変わる。
若き不破氏が徹底批判した昔の社会党と同じ見解に、齢を経た不破哲三氏は到達したのです。
今の日本共産党は、急迫不正の主権侵害時、自衛隊が防衛出動することを認めるそうです。これは22回大会決議に明記されています。
今の不破哲三氏は、昔の社会党より一歩進んだともいえる。
私は若き不破氏のこの論考を最近まで知りませんでしたが、執筆者不破氏がこの論考を覚えていないはずがない。
不破氏は齢を経て、昔の社会党の見解は適切だったという結論に達したのです。
不破氏は昔の社会党の自衛隊改編論を日本共産党の政策に取り入れたのですから。
不破哲三氏は、今の日本共産党の自衛隊改編論、活用論が正しいと思うなら、昔の社会党委員長、成田知己氏の先駆性を認めるべきではないですか。