「平和とは、水や空気のようなものです。存在して当たり前だと皆が思っている。だからこそ、大事なのです」(私が記憶する、昭和58年春の東京都知事選挙での松岡英夫氏の発言より。不正確ですが)。
日本共産党大阪府委員会のHPを見ました。
日本共産党は、来る大阪市長、府知事選挙では「維新政治」打破のため自民党の候補者を支援するそうです。
立憲民主党のHPも見ました。私の探し方が悪いのか、大阪市長・府知事選挙で同党が誰を推すのかわかりませんでした。
現状では、大阪で左翼の平和運動や住民運動に参加している運動家や知識人は、恐らく自民党の候補者に投票するのでしょうね。
他の選択肢がなさそうですから。立憲民主党の著名議員も、府知事選では自民党に投票するのでしょう。
昭和58年春、昭和62年春の東京都知事選での松岡英夫氏、畑田重夫氏の訴えは何だったのか
ふと、昭和58年春の東京都知事選挙を思い出しました。
この選挙では松岡英夫さんという、毎日新聞記者だった方が社共から推薦され立候補されました。
上記のような事を、松岡さんは選挙で訴えていらっしゃったと記憶しています。
恥ずかしながら私はそのころ、早大政治経済学部の左翼学生でした。社会を善悪二元論のように考えていました。
都知事選挙の最終版、池袋駅前で街頭演説会がありました。
宣伝車の上で小田実氏が、「社会党、共産党は既成左翼になっている、抑圧反対という視点がない」というような訴えをしました。
ぼーっと立って聞いていた私は、あれ、そうなのかなと思いました。
この少し後の「赤旗」に小田実氏への批判論文が何度か掲載されました。
河邑重光「反共市民主義批判」(新日本出版社刊行)にそれらが掲載されています。
その四年後の都知事選挙では、国際政治学者の畑田重夫氏が立候補されました。
畑田重夫氏は、日本共産党の平和理論の立場から横田基地の問題などを訴えていました。米帝国主義が戦争を起こす根源だ、という理論です。
松岡氏、畑田氏に共通する主張は地方の首長選挙でも、平和と安全の問題が候補者を選別する重要な基準であるべきだ、という事です。
日本共産党の路線転換―構造改革論(故江田三郎、故春日庄次郎氏らの主張と政策)への移行
今の大阪の日本共産党や左翼人士の言動は、三十数年前の松岡英夫氏、畑田重夫氏のそれと大きく異なります。
安倍自民党が推薦する候補者を、大阪市長と府知事選挙で応援するのですから。
「平和の課題」では、立憲民主党、日本共産党が主張している事と正反対の主張をする方々を応援することになります。
安倍内閣は「戦争法」とやらを作ったから最悪の内閣だ、一刻も早く野党と市民の共闘で安倍内閣を打倒せねばならない旨、両党は主張、宣伝しています。
平和と安全の問題は、地方の首長選挙では問われるべきではない、という発想が背景にあるのでしょう。
私見では、志位和夫委員長が日本共産党の路線転換を少しずつ進めています。
私見では今の日本共産党綱領は、漸次的な改革の積み重ねにより独占資本主義の経済構造を変え、社会主義に移行する、という話です。
早大政治経済学部の学生だった頃の私は、早大近くの古本屋で「構造改革論」関連の本を少し買って読みました。
今の日本共産党の綱領は、昭和36年7月の日本共産党第八回大会で春日庄次郎氏、内藤知周氏らが唱えた「構造改革論」と瓜二つです。
石堂清倫・佐藤昇編「構造改革とはどういうものか」(昭和36年青木新書)によれば、構造改革とは独占資本主義の政治経済構造を民主主義的に改革する闘争です(同書p11)。
今にして思えば、池上淳教授の財政民主主義論も「構造改革論」に近いように思えます。
田口富久治教授がだいぶ前の「週刊金曜日」で日本共産党の近年の政策が「構造改革論」に近づくのではないか旨、指摘していました。
宮本顕治氏は春日氏を「革命の平和的移行唯一論であり、社会民主主義への完全な移行である」と強く批判しました。
宮本顕治氏は日本革命の最終的な形態は敵の出方により決まる、という「敵の出方論」を唱え、八回大会でこれが採択されました。
今の日本共産党は、宮本氏が強く批判した革命の平和的移行唯一論になっているのでしょう。
漸次的な改革の積み重ねにより独占資本主義の経済構造を変え社会主義に移行する、という立場なら、自民党とも一致する課題で手を組む、という話になりえます。
自民党と協力して改革を積み重ねれば良い、という話です。
想像ですが、構造改革論者だった故長洲一二神奈川県知事にはそんな発想があったように思えます。
長洲一二神奈川県知事は、自民党からも支持される政策を実施されたようですから。
大阪の日本共産党は、構造改革論のような見地から反維新のためなら安倍自民党の候補者を支援しようという結論になったのでしょうね。
清水ただし氏、わたなべ結氏は「構造改革論」と上田兄弟によるその批判を御存知なのか
大阪で日本共産党の幹部として頑張っておられる清水ただしさん、わたなべ結さんにお尋ねしたい。
日本共産党第八回大会の頃の文献に頻出する「構造改革論」を御存知ですか。
若き上田兄弟の著作「マルクス主義と現代イデオロギー 下」(昭和38年大月書店)は「構造改革論」批判の本です。
大阪の日本共産党の路線は安倍内閣打倒のためには、大阪市長・府知事選挙では安倍自民党を全力支援する、という話になっていませんか。
「構造改革論」の立場だと、何事も一歩一歩進めて行けば良いのですから、反維新のためには安倍自民党を支援することになりえるのです。
安倍内閣は日米安保の強化を進めていますから、結果として大阪の日本共産党は日米安保の強化に手を貸す、ということにもなります。
立憲民主党も他に候補者を出さず、自民党の候補者を支援するなら同じことです。
大阪の左翼人士は、今は安倍内閣により日米安保強化されてしまってもやむを得ない、という気持ちなのでしょうか。
日本共産党員であるなら、日本共産党の文献や、マルクス主義の政治学、経済学の文献を読むことが大事ではないでしょうか。
日本共産党の国会議員や幹部の方々のtwitterを散見すると、日本共産党やマルクス主義に関する基本的な文献を殆ど読んでいない方がかなり多いように感じます。
北朝鮮について語るなら、金日成、金正日の文献を読み込むことが大事です。
日本共産党が昔出していた「世界政治」に、「党の唯一思想体系確立の十大原則」の翻訳が出ています。
これは恐らく、故萩原遼さんが翻訳したのでしょう。
若き上田兄弟の著作は、宮本顕治氏の「日本革命の展望」とならび、マルクス主義政治学の本としても貴重な文献です。
マルクス主義の政治学とは、革命理論ですから。
金日成の「すべての力を祖国の統一独立と共和国北半部における社会主義建設のためにーわが革命の性格と課題に関するテーゼ」(1955年4月)は朝鮮労働党の南朝鮮革命理論の基本的文献です。
これらは左翼運動家、政治家なら必ず読むべき文献と思いますが、どうでしょうか。