2021年7月30日金曜日

松竹伸幸氏のブログ「拉致問題と左翼の責任」より思う

「2000年の不破さんの党首討論があり、拉致は『疑惑段階のもの』となった時点で、橋本質問は証拠もないのに拉致が北朝鮮の犯行だと断定している立場なので間違いだということになり、しばらく(日朝平壌会談まで)お蔵入りになる」。

 拉致問題と左翼の責任・上 | 松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Ameba (ameblo.jp) より抜粋。 

松竹伸幸さんは、日本共産党本部職員として長く勤務された方です。お若い頃は全日本学生自治会総連合で国際関係の仕事をなさっていたのではないでしょうか。

私の記憶違いかもしれませんが。

日本共産党の「政策委員会」という部署に長くいたそうで、日本共産党本部の政策決定過程をよくご存じです。

上記は、私が十九年前に旧HPで指摘していた事を裏付けています。

これは、本ブログ「真の共産主義者とは何か」に再掲しています。黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 真の共産主義者とは何か〜不破哲三氏による路線転換によせて(平成14年5月執筆より) (blueribbonasiya.blogspot.com)

日本人拉致問題での不破氏の路線転換は、兵本達吉秘書(当時)の調査結果に基づき、北朝鮮が相当数の日本人を拉致しているとほぼ断定した橋本敦参議院議員(当時)への批判という意味もあったのです。

この件も、私は十九年前に指摘しました。

橋本敦氏は日本人拉致と朝鮮労働党の革命路線の関係について思考と議論をできない


三十三年くらい前、兵本達吉氏は柏崎、小浜、鹿児島の被拉致日本人家族を訪問し、これは北朝鮮の所業と認識しました。

橋本敦さんも兵本達吉氏の調査を信頼し、北朝鮮による拉致と確信したはずです。これは、宮本顕治さんが大韓航空機爆破を北朝鮮の仕業と断定した手法と同様です。

橋本敦議員、木島日出夫議員の対談「88年以来、質問を積み重ね解決の道開いた日本共産党国会議員団」(「赤旗」平成十四年十一月十八日掲載)を読みました。

橋本・木島対談でも明らかですが、日本共産党には朝鮮労働党による日本人や韓国人の拉致が、日本や韓国のチュチェ思想化、全社会の金日成・金正日主義化(昔は南朝鮮革命と言いました)の一環として行われたという視点がありません。

橋本、木島両氏は、ご自身が国会で取り上げた日本人拉致問題と日本共産党の綱領路線、あるいは朝鮮労働党の革命路線(日本、韓国のチュチェ思想化)との関係を説明していません。

日本共産党の大会決定には、橋本、木島両議員の質問の話など全く出てきません。赤旗編集局編「北朝鮮 覇権主義への反撃」(平成四年刊行)という本にも出ていません。

日本共産党員なら、日本人拉致問題を日本革命との関係でどう見るかという点を思考せねばならないはずですが、橋本、木島両議員にはそれはできなかった。

昔の日本共産党は、朝鮮労働党による日本のチュチェ思想化策動の危険性を訴えていた

朝鮮労働党の在日非公開組織は、日本のチュチェ思想化、全社会の金日成・金正日主義化を策しています。

橋本敦さんは御存知と思いますが、朝鮮労働党の在日非公開組織が、金正日と朝鮮労働党の工作組織の指令で日本人を拉致したのです。これはチュチェ思想化策動の一環です。

以前の日本共産党は、朝鮮労働党による日本のチュチェ思想化策動の危険について、第十七大会で指摘していました。

「国際友好・連帯運動と覇権主義」(昭和62年日本共産党中央委員会出版局刊行)という本に「『労働新聞』の乱暴な覇権主義の論法」(昭和59年8月24日掲載)という論考が掲載されています。

この論文は、朝鮮労働党による日本のチュチェ思想化策動の危険性を指摘しています。

橋本、木島両氏は朝鮮労働党による日本のチュチェ思想化策動の一環として、朝鮮労働党在日非公開組織が日本人拉致を断行した事実から目を背けています。

この話をすると、不破さんの路線転換が明確になってしまうので内緒にせねばならないのでしょうか。

不破氏は、路線転換で中朝との「反ファシズム統一戦線」結成をはかった

21年くらい前に不破さんは、日本共産党第十七回大会決議や上記の本にある朝鮮労働党の覇権主義、チュチェ思想批判を不適切と判断したと考えられます。

日本共産党第十七回大会決議は、自国指導者の名を冠する「主義」や「思想」を世界的な指導思想として礼賛し、あれこれの追従組織を育成して、それを我が国に押し付ける覇権主義的行為を断固として拒否すると述べています。

朝鮮労働党の指導でこれを実行してきたのは、在日本朝鮮人総連合会の皆さんです。

在日本朝鮮人総連合会の幹部の皆さんは、「学習組」など朝鮮労働党の在日非公開組織に加入しています。不破さんのいう、あれこれの追従組織、に該当する方々です。

21年ぐらい前なら、朝鮮労働党の在日非公開組織を指導していたのは康柱日という方だったようです。

在日本朝鮮人総連合会編「金正日略伝」(雄山閣出版平成七年刊行、p124)によれば、金正日将軍はチュチェ偉業と世界自主化偉業に大きく貢献した革命の領袖であり、卓越した思想・理論家であり、人民の真の指導者です。

この本によれば、1970年代末から金正日将軍の名が朝鮮人民はもとより、世界的にもあまねく知れ渡るようになりました。

多くの進歩的な人々の間で、「導きの星」「時代の星」とたたえる声が聞かれるようになったそうです(同書p69)。

第十七回大会決議の見地なら、チュチェ思想を世界的な指導思想として日本に普及し、追従者を増やそうとしている在日本朝鮮人総連合会と交流を再開するなどありえない話ですが、不破さんはこれを実行しました。

不破さんによれば意見が違う問題が起きても、敵対的な論争はしない、とお互い確認しあったので交流を再開したそうです。

チュチェ思想を世界的な指導思想として日本に普及し、追従者と追従組織を育成して日本人に押し付けることや日本人拉致は、覇権主義ではないと不破さんは判断したのでしょう。

朝鮮学校では金日成の教育テーゼに基づき、チュチェ型の革命家を養成する教育を行っていますが、日本共産党はこれを無視しています。

朝鮮学校無償化を熱心に主張している大山奈々子神奈川県議は、朝鮮労働党在日非公開組織がチュチェ思想を世界的な指導思想として日本に普及し、追従者と追従組織を育成していることなど想像もできないのではないでしょうか。

ほぼ同時期に、不破さんは中国共産党と関係を再開しました。

不破さんは、日本がアジアで最大の戦争国家であり、中朝にはいろいろ問題があっても日本の防衛費増加を批判するから平和勢力だ、と見たのでしょう。

そこで不破さんは、昔々の反ファシズム統一戦線結成ぐらいのつもりで、中朝両党との連携強化をはかったのでしょう。

不破氏は海上防衛強化、スパイ防止法制定を求める世論の高まりを恐れた

日本共産党第十七回大会決定の見地を敷衍すれば、日本人拉致も覇権主義の一環だという話になるはずです。

チュチェ型の革命家、朝鮮労働党の在日非公開組織の連中が、潜水艦や船で侵入してくる屈強な工作員と連携して日本人に襲い掛かり、袋に入れて拉致したのですから。

日本にはスパイ防止法がないので、朝鮮労働党の在日非公開組織を取り締まることが困難なのです。

潜水艦などで日本に北朝鮮工作員が侵入できるのは、海上防衛が不備だからです。

不破さんは、スパイ防止法制定と海上防衛強化を求める世論が高まるのを恐れたのでしょうね。

日本共産党は、自衛隊解散、日米安保廃棄で日本国家の国防力を皆無にすることを目的とする政党です。日本革命のためには、日本国家の国防力をなくさねばなりません。

日本共産党第十七回大会決定に、日本共産党の綱領路線、日本革命理論と矛盾する記述があったのです。不破さんはそれを察知し、路線転換をはかった。

共産主義者なら、不破さんが選択した路線転換を断固支持するべきと私には思えます。反ファシズム統一戦線とやらの結成は、共産主義者なら当然です。

ディミトロフ、野坂さんも反ファシズム統一戦線結成のために尽力したではないですか。日本共産党の平和理論なら、ソ連共産党は平和勢力です。

松竹伸幸さんは不破さんの路線転換や、朝鮮労働党の日本のチュチェ思想化策動をどうお考えなのでしょうか。

松竹伸幸さんなら、「国際友好・連帯運動と覇権主義」掲載の諸論考を御存知でしょう。

機会があれば、お尋ねしたいものです。










2021年7月27日火曜日

レーニンの「青年同盟の任務」(柴田順吉訳、いづみ書房刊)より思うー搾取制度廃止のためには共通の計画、共通の土地、共通の工場で働くー全体主義を準備

 すべての人が単一の共通の計画で、共通の土地で、共通の工場で働くようにしなければなりません(レーニン)。

生産手段の社会化、搾取制度の廃止のためにはどんな経済運営方式が必要なのか。

この件について、レーニンは「青年同盟の任務」で上記のように述べています。

これは土地と工場を国有化し、中央計画当局が作成する計画と指令に基づき財とサービスを生産、配分するという話です。

スターリンとソ連共産党は、「青年同盟の任務」などで示されたレーニンの理論に基づき、計画当局とそれを指導するソ連共産党が強大な権限を持つ体制を作っていきました。

日本共産党と、同党を支援するマルクス主義学徒は、スターリンはレーニンの教えに背いたなどと宣伝しています。

志位さんは「青年同盟の任務」を忘れたのでしょうか。

レーニンの搾取制度廃止論は、「青年同盟の任務」からも明らかなように全体主義体制を育む理論です。

株式と資本設備を一部のものが持てば搾取者が存在する

レーニンによれば、社会の一部のものが工場と株式、資本を持ち、他の一部のものがこれらの工場で働いているなら、資本家階級と労働者階級が存在します。

レーニンによれば、農民が余分な穀物、彼自身にも家畜にも必要でない穀物を自分のものにしているのに、他の人々が穀物をもっていないならその農民は搾取者です。

レーニンによれば、ロシア皇帝、地主と貴族を追放しただけでは労働者階級の闘争は終わりません。

労働者階級は農民を再教育し、他人の困窮で金もうけをしている金持ちの農民の反抗を撲滅せねばなりません。

他人の困窮で金もうけをしている金持ちの農民の反抗を撲滅する、とは強烈な表現ですが、上記本のp102にある英訳では次になっています。撲滅、はcrushです。

crush the resistance of those peasants who are rich and are profiting from the poverty and want of the rest

レーニンは余剰穀物を持つ農民を富農、搾取者と定義しました。

マルクス主義経済学の見地では、搾取者は他人の困窮で金もうけをしています。

そこで労働者階級は、余分な穀物を隠している農民は再教育せねばなりません。政治犯収容所連行、囚人労働により再教育という話です。

スターリンはレーニンの愛弟子、ソ連共産党は、レーニン主義の党だったと改めて思います。

聴濤弘氏(元日本共産党参議院議員)は「青年同盟の任務」をどう読んだのか

聴濤弘さんは「200歳のマルクスならどう新しく共産主義を論じるか」(かもがわ出版、pp. 88-89)でマルクス、エンゲルス、レーニンの農業社会主義政策(集団化と機械化)は革命前も革命後も農民から支持されなかったと述べています。

しかし、マルクスとエンゲルス、レーニンのように生産手段の社会化、搾取制度の廃止を社会主義の第一目標とするなら、農業も工業も商業も集団化、共有にするしかありません。

レーニンが明言しているように金もうけをする人は搾取者、なのですから。農業集団化を支持しない農民は、レーニンが示したように再教育の対象です。

市場的社会主義、でも各企業は他企業と競争し、金もうけ、利潤を求めて行動します。

したがって市場的社会主義は資本主義経済です。

聴濤弘さんが「青年同盟の任務」を読んでいないなどありえない。

聴濤弘さんは、レーニンがこの論考で示した搾取制度廃止論をどうお考えなのでしょうか。この文献は厄介だから、言及しないでおこう、という立場なのでしょうか。

レーニンを無視して社会主義を語れるのか

聴濤弘さんは、著書の「マルクスならいまの世界をどう論じるか」(かもがわ出版、pp. 32)で国有企業が収益を経済活動の基準とするなら、それを社会主義的企業と言えるか疑問であると述べています。

これは、レーニンの「青年同盟の任務」の見地です。しかし市場経済なら、収益を重視しない企業は競争に敗退し、倒産しえます。

利潤=売上―総費用、ですから、国営企業が利潤を重視しなければ無駄な費用、国民の負担が増えるだけです。

小原隆治早大教授は、地方自治体問題の専門家ですからレーニンの「青年同盟の任務」を御存知ないかもしれません。

生産手段の社会化は全体主義を招くと主張した音喜多議員を批判するなら、レーニンの「青年同盟の任務」をじっくり読んでいただきたいですね。

近年の日本共産党は、レーニンの文献読解をあまり奨励しないようです。

私は四十年程前、早大の学生だった頃にレーニンの「青年同盟の任務」を読みました。

当時の民青同盟では、「青年同盟の任務」は必ず読みましょうという文献になっていました。

私は当時、聴濤弘さんが講師の社会主義国の動向についての勉強会に一度参加しました。

民青同盟の主催ではなかったと思いますが、はっきりしません。社会科学研究会とかいう組織がありました。

この十年くらい後、ユーゴスラヴィア報道で著名になった方も参加なさっていたような気がしますが、間違いかもしれません。

私は聴濤弘さんに、周恩来が新中国成立期に行った外交は立派だったと思うが、どうですかという質問と、社会主義国の人権状況はなぜ酷いのか、ユーゴスラヴィアは少しましではないかと質問をしました。

前者については、聴濤弘さんはそう思います、と答えました。

後者については、社会主義国の人権状況はどこも同じような水準で、これを大問題としても仕方がないというような答えをなさったかと思います。私の記憶違いかもしれませんが。

四十年前の私は、中国共産党の反右派闘争やチベット弾圧、国民党関係者の処刑など一切知りませんでした。

今の日本共産党、志位さんは民青同盟の皆さんに、「青年同盟の任務」読解を奨励していなさそうですね。

レーニンの「青年同盟の任務」も、宮本顕治さんの「日本革命の展望」と同様、今の日本共産党には都合の悪い文献となったのでしょう。

以下は、上記の「青年同盟の任務」の一部です。






2021年7月22日木曜日

生産手段の社会化(搾取制度の廃止)と株式会社制度は両立しないー日本共産党と同党を支援するマルクス主義学徒に問う

 日本共産党は全体主義政党かー生産手段の社会化を目指すならソ連型経済

少し前に、国民民主党の玉木雄一郎代表が日本共産党は全体主義政党だから、政権をともにできない旨語りました。

日本共産党はこの発言に強く反発しました。綱領を読んでください、民主主義を守ると書いてあります、という調子です。

これに関連して、音喜多駿議員(維新)が、you tubeで大略次のように述べています。

日本共産党は綱領で生産手段を社会化すると述べているが、その具体的中身がない。

生産手段の社会化とは会社を国有化しソ連のような計画経済にすることを意味するから、全体主義になるのではないか。

音喜多議員はtwitterでも大略このように発信しています。

小原隆治早大教授の音喜多議員批判には、生産手段の社会化の説明がない

音喜多議員の呟きに対し、小原隆治早大教授が「マルクスが株式会社を生産手段の社会化の一歩手前と言ったことなどご存じないだろうね。株主総会は統制経済だとか言い出されたらお手上げだけれど」と呟きました。

生産手段の社会化とは一体どんな企業経営方式を意味しているのか。

日本共産党が訴えている生産手段の社会化は全体主義に導く理論なのか。

音喜多議員が提起したこの件は、日本共産党と同党を支援するマルクス主義学徒には極めて重要な課題のはずです。

小原隆治教授ご自身は、この件をどうお考えなのでしょうか。

生産手段の社会化とは何か、という音喜多議員の問題提起に、小原教授は答えていません。

マルクス、エンゲルスは生産手段国有化、市場廃止論者だった

この件については、私は「共産主義国の戦争政策とマルクス主義経済学」(「幻想と批評」第一号、pp. 147-178、はる書房平成十六年刊行)、「社会主義はソ連邦で完全な最後の勝利をおさめた」(「幻想と批評」第七号、pp. 9-28、はる書房平成十九年刊行)で私見を縷々述べました。

マルクス、エンゲルスが想定した生産手段の社会化とはエンゲルスの「空想から科学へ」を引用するまでもなく、生産手段の国有化と市場の廃止です。

不破哲三氏も、マルクスには市場経済を通じて社会主義へ、という考え方はなかったと断言しています(「党綱領の理論上の突破点について」p78、日本共産党中央委員会出版局平成十七年刊行)。

生産手段を国有化し、市場を廃止するなら中央計画機構が財とサービスの配分を指令することになります。

エンゲルスは「空想から科学へ」であらかじめきめられた計画にもとづく社会的生産が可能になる、と述べています。

ソ連型の計画経済は、マルクス、エンゲルスの構想に沿って実施されたのです。

レーニンは晩年に新経済政策を実行しますが、これはあくまで一時的退却、という位置づけでした。

ソ連が一貫して全体主義だったとは言えませんが、スターリン全盛期には相当な独裁体制が成立していたことは間違いない。

株式会社が存在するなら搾取は存在する

今の日本共産党は、社会主義は市場経済だと言いたいようです。

私はtwitterで繰り返し論じていますが、市場経済で株式会社が存在するなら搾取制度は存続します。

株主は働かずに、利潤の一部を配当所得として受け取ります。

株主は企業経営の危険を資金を提供して負担しているのですから、配当所得を受け取るのは当然ですが、マルクス主義経済学なら配当所得は搾取と把握されるはずです。

まさかと思いますが小原隆治教授は、株主は搾取者ではないとお考えなのでしょうか。

エンゲルスの言う、生産の無政府的性格と取得の資本主義的形態の矛盾、を株式会社が数限りなく存在する経済で解消できますか。

株式会社制度を法で禁止したら、企業はどうやって資金を調達するのですか。借金ないしは自己資金しかない。

国有企業なら、国家予算から資金を受け取れば良い。これはソ連や中国、北朝鮮と同じです。

日本共産党と同党を支援するマルクス主義学徒の皆さんの、お答えを待っています。