2021年12月31日金曜日

G. ボッファが語る新経済政策(NEP)の時代の飢饉とロシア正教会弾圧ー「ソ連邦史1」(坂井信義・大久保昭夫訳 大月書店昭和54年刊行)より

 この本を、私は四十年ぐらい前に購入しました。

この本のカバーにある紹介によれば、Giuseppe Boffaはイタリア共産党の機関紙「ウニタ」の記者でした。

この本のp191-199に、新経済政策(New Economic Policy)の時代のソ連史が記されています。

不破哲三さんら日本共産党員は、この時期のソ連で社会主義への真剣な探求がなされたと高く評価しています。

新経済政策が始まった1921年、ウラルなどで大飢饉

ボッファによれば、新政策は1921年の春から夏にかけて行われました。

ロシア平原の定期的旱魃により、ヴォルガ河沿岸とウラルの広大な地域、北カフカース、ウクライナ、クリミアの一部が破滅的な飢えにあえぐことになりました。

2300万の人口を擁する22の県が絶望的な飢えに苦しめられました。

難民の群れが飢饉地帯を脱出しようとしました。

内戦の影響もあり、浮浪児がいたるところにあふれました。1922年には浮浪児の数は550万人に及びました。

絶望的な状況は1922年夏まで続きました。小泉信三教授は、どこかでこの大飢饉について情報を得たのでしょう。

この夏の収穫が良好だったので、農村は徐々に平穏になり、政権は一息つけました。

ネップのもう一つの顔は弾圧でした。ソヴェト・ロシアにおける単一政党の存在が承認されたのはこの時期です。

ほかの政治勢力の残存者は、他国への移住や、追放の強制がなされました。国内に居残って宣伝、扇動を続けるものは逮捕されました。

左翼人士はボリシェヴィキによるロシア正教会弾圧をどう評価するのか

1922年には、ボリシェヴィキとロシア正教会の対立が激化しました。

宗教関係施設から金銀財宝を没収し、外国から入手する穀物とそれを交換するというボリシェヴィキの決定が原因でした。

これに抵抗する聖職者は弾圧され、信徒の農民との衝突も引き起こしたとボッファは述べています。

ボリシェヴィキによるロシア正教会弾圧については、森安達也「神々の力と非力」(平凡社平成6年刊行)が詳しいので、簡単に紹介します。

この本によれば、1921年にヴォルガ川流域で起きた旱魃により、深刻な飢饉が生じました。穀物の徴用をめぐって農民との間で流血の惨事が繰り返されました。

政府は布告を出して、教会の聖器物の徴用を始めました。ロシア正教会のチーホン総主教はこれを激しく非難。

徴発隊と市民の間で1400件以上の流血の惨事が起きました。聖器物徴用を妨害した聖職者や信者は逮捕され、裁判にかけられました。

ペトログラード府主教のベニヤミンは1922年秋に銃殺されました。総主教チーホンは逮捕され、1922年5月にモスクワ郊外の修道院に禁固されました(後に釈放)。

まさかと思いますが不破哲三さんら日本共産党員は、ロシア正教会弾圧も社会主義への真剣な探求と評価しているのでしょうか。

教会の聖器物を徴用したら、聖職者と信徒が激しく反発するのは当たり前です。

日本共産党員の皆さんは、革命運動のためには宗教弾圧も必要とお考えなのでしょうか。

この件について文献を調べていくと厄介だから黙っておこう、という判断をしている左翼人士が多そうです。

新経済政策の時期に共産党と国家が一体化

ボッファによれば1922年2月、チェカーはゲ・ペ・ウすなわち内務人民委員会の一部局に改組されました。

共産党と国家の一体化が進展し、共産党政治局が国の真の指導機関になりました。

1922年3月22日から4月2日に行われた共産党第十一回大会の後、スターリンが書記長になりました。

新経済政策の時代に起きたことはこれだけではありませんが、飢饉の後に限られた範囲ですが市場経済化がなされ、経済が安定化したことは間違いない。

市場経済化と宗教弾圧、共産党と国家の一体化が社会主義への真剣な探求、とは変な話ですが、日本共産党員と左翼人士には素晴らしい時代に思えるようです。

不破哲三さんはレーニンとボリシェヴィキによる赤色テロルをどう擁護したかー「レーニンと『資本論』干渉戦争の時代6」(新日本出版社)より

 レーニンとボリシェヴィキによる赤色テロルすなわち皇帝一家処刑、ロシア正教会高位聖職者の処刑、貴族と地主、富農の財産没収と処刑をどう見るか。

ソビエト権力を守るためには、反革命分子、および反革命分子に協力する可能性が高い人々の処刑は正当化されるのか。

この問いに対し不破さんは、レーニンとボリシェヴィキによる赤色テロルを帝国主義諸国による干渉戦争という非常事態の下で、それに対抗する軍事的手段として余儀なく採用されたものだと擁護しています(同書p191)。

不破さんによれば帝国主義が大規模な干渉戦争に乗り出したので、その戦争や反革命に対抗するため、ソビエト政権が軍事的な対抗手段をとることを余儀なくされた時期がありました。

この時期の、レーニンの文献の断片的な引用はレーニンが大量弾圧を統治の手段にしたことの証拠にはならないと不破さんは力説しています(同書p193)。

私見では、この類のテロ正当化はレーニン以来、ソ連共産党の伝統的な宣伝です。

これで赤色テロルが正当化されるなら、現代の中国共産党や朝鮮労働党による政治犯弾圧も反革命に対抗するためにこれを余儀なくされているのだ、と正当化できます。

中国共産党による香港の民主派弾圧も、反革命や帝国主義に対抗するために余儀なくされた手段という水準の話です。

中国共産党によれば、香港では一国二制度が完全に維持され、香港市民は十分に民主主義を享受しています。中国を批判する人は祖国分離主義者、帝国主義の手先です。

不破さんもソビエト政権による非戦闘員処断は正当化できないと認めた

さすがの不破さんにも、レーニン以来のソ連共産党宣伝と同じではまずいな、という気持ちがあったのかもしれません。

同書p192でソビエト政権の行動の中に非戦闘員に対する処断など、非常事態だからと言って正当化することのできない問題点が含まれていたと不破さんは述べています。

非戦闘員に対する処断、としてロシア皇帝一家やロシア正教会高位聖職者、富農の処刑を不破さんが想定しているかどうかは不明です。

不破さんは厄介なことをあまり説明したくなかったのでしょう。

ロシア皇帝一家やロシア正教会高位聖職者は戦闘員ではありえない。武装していませんから。

貴族や地主、富農、も通常は戦闘員ではない。

ボリシェヴィキにより財産を没収され、家屋敷から追い出されてしまったので反革命軍とやらに入っていった方はいたでしょうけれど。

レーニンが出した弾圧指令はレーニンのプロレタリア民主主義論と表裏一体

不破さんが想定する断片的な引用、とは一体何でしょうね。1918年頃のレーニンの著作を読めば、過酷な弾圧指令が次から次へと出てきます。

過酷な弾圧指令は、レーニンが「プロレタリア革命と背教者カウツキー」などで提起したプロレタリア民主主義論と表裏一体です。

レーニンは出版の自由、集会の自由などをブルジョア民主主義だから偽善と断じました。不破さんもこの本でレーニンのプロレタリア民主主義論を極論と批判しています(p317)。

出版の自由や集会の自由を偽善とみなしたレーニンが、反革命分子の自由を抑圧するのは必然です。

不破さんが歴史を語るとき、参考文献があまり出てきません。E. H. カーの「ボリシェヴィキ革命」程度です。

ロシア革命当時の史料を不破さんが読んでいないのは仕方ないですが、今は数えきれないほど研究成果が出ているのですから、もう少し読んでロシア革命史を語るべきです。

私には、不破さんのロシア革命論の基本はソ連共産党の昔の教科書と同じに思えます。岡本博之さんの「科学的社会主義」も同様です。




2021年12月28日火曜日

日本共産党は自衛隊解散、日米安保廃棄、皇室廃止を宿願とするーレーニン主義の継承者ー

 日本共産党は自衛隊解散、日米安保廃棄、皇室廃止を宿願とする政党です。

近年の日本共産党は自衛隊解散、日米安保廃棄を憲法九条完全実施、という語で表現しています。

皇室を天皇の制度、と表現し、国民の合意が得られたら廃止すべきと主張しています。

これらは日本共産党がレーニンの思想を継承していることを示しています。

レーニンは、反革命分子、富農を徹底弾圧する指令を出しました。これは、レーニン全集や近年のソ連研究から明らかです。

ボリシェヴィキはロシア皇帝一家を殺害した

ボリシェヴィキはロシア皇帝一家を殺害しました(1918年7月17日、大正七年)。

これは、レーニンの指令ないしは承認なしにはありえません。

この件、左翼人士は一体どう評価しているのでしょうね。聴濤さん、松竹伸幸さんのレーニンとロシア革命に関する著作には、私が見た限り言及がありません。

不破哲三さんの著作にもありません。左翼人士は、ロシア革命の凄惨な現実を内緒にしたいのでしょうね。

日本共産党はレーニンが指導者だった時期のソ連を高く評価している

日本共産党はレーニンが指導者だった時代のソ連では社会主義への真剣な探求がなされたと高く評価しています。

この時期はロシア皇帝一家殺害、ロシア正教会高位聖職者処刑、貴族と地主、富農の追放、財産没収などの野蛮行為が断行された時期でした。

レーニンの時代に餓死者が二百万人程度出たという説もあります。

一体何人の貴族と地主、富農が追放、財産没収となったのかは私にはわかりません。

財産とは、居住している家屋敷も含まれます。別の住居を配分された方がどれだけいたのかもわかりません。

ボリシェヴィキの幹部の中には、貴族出身者もいました。そんな方なら、ロシア革命後も良い住居に住めたかと思いますが。

追放、財産没収となった方々の中にはレーニンとボリシェヴィキに強い反感を持ち、反乱軍に加わった方が少なくなかっただろうと考えられます。

ロシア革命後の飢餓と内戦、テロの時代に社会主義への探求がなされたというのなら、1990年代の北朝鮮でも金正日により社会主義への探求がなされたと評価すべきです。

日本共産党はレーニンとボリシェヴィキを模範とする

日本共産党の皇室廃止論は、レーニンとボリシェヴィキを革命運動の手本とする見地に由来しています。

勿論、今の日本共産党員が他人を処刑せよ、と考えているわけではないでしょうが、昔の日本共産党員は必ずしもそうではなかった。

内乱を訴えて武装していた昔の日本共産党員なら、とんでもないことをやりかねなかった。

オットー・クーシネンが作成し、当時の日本共産党員やマルクス主義者が心酔した32年テーゼは帝国主義戦争の内乱への転化を主張しています。

皇室制度の廃止など、当時の日本共産党員には当然のことです。

帝国主義戦争の内乱への転化、という見解は第一次大戦の頃のレーニンの主張そのもので、革命的祖国敗北主義に由来しています。

レーニンによれば、共産主義者は帝国主義戦争で自国が敗北することを願います。

自国政府が弱体化し、革命の可能性が高まるからです。

レーニンは貴族や地主の財産を没収によって、社会主義が建設できると考えたのでしょう。

1918年頃にレーニンが出した指令を、近年のソ連史研究の成果と併せて読めば、ロシア革命の凄惨な現実が徐々に把握できます。

日本共産党、左翼人士はレーニンによる蛮行指令を直視すべきだ

レーニンの指導により断行された赤色テロルと、この時代の飢饉については、梶川伸一教授の次の論考が大変参考になります。

「レーニン支配と『赤色テロル』」(「史学」Vol. 82, No4.(2014.1)pp445-487, 三田史学会発行)。

この論文によれば、1918年8月、ベンザ県ベンザ郡クチキ村で農民の蜂起が起こりました。

8月9日に県執行委員会の書記ボーシからクチキ村の農民蜂起を知らされたレーニンはその日のうちに県執行委員会宛てで次を命じました。

「クラーク、坊主、白軍兵士に容赦のない大量テロルを行使し、疑わしい者をラーゲリに収監する」

クラークとは、富農のことです。どんな農民が富農とされるのかは不明です。1918年に、ラーゲリ、収容所が存在したようです。

レーニンはクラーク、富農を縛り首にせよという指令を出した

蜂起が拡大したとの県執行委員会からの知らせを受け、レーニンは8月10日に次の指示を出しました。

「最大限のエネルギー、迅速さ、無慈悲さによってクラーク反乱を鎮圧し、決起したクラークの全ての財産と全ての穀物を没収する」

8月11日付で、現地のソヴェト執行委員会議長にレーニンは次の書簡を出しました。

「同志諸君!クラークの五郷の蜂起を容赦なく鎮圧しなければならない。革命全体の利害がこれを求めている。というのは、今やいたるところでクラークとの『最終決戦』が行われているので、手本を示さねばならない。

一 100人以上の名うてのクラーク、富農、吸血鬼を縛り首にせよ。必ず民衆が見えるように縛り首にせよ。

二 彼らの名前を公表せよ。

三 彼らから全ての穀物を没収せよ。

四 昨日の電報に従って人質を指名せよ。周囲数百キロの民衆がそれを見て、身震いし、悟り、悲鳴をあげるようにせよ。」

左翼人士は、梶川伸一教授のソ連研究論文を読みたくないでしょうね。富農を抹殺せよという類の指令は、大月書店から出ているレーニン全集にいくつも掲載されています。

不破哲三さんはレーニンによる蛮行指令についてどうお考えなのでしょうね。レーニンは、スターリンの良き師匠でした。

大量殺人を断行したスターリンはレーニンから沢山学んだことでしょう。







2021年12月26日日曜日

日本共産党は日米が台湾有事を起こすとみなすー中国共産党は覇権主義だが、大局的には平和勢力だからー

日本共産党はレーニン主義の党

本ブログでは何度も論じてきましたが、日本共産党はレーニンの帝国主義論の視点から国際情勢を把握します。

レーニンによれば、帝国主義、金融資本が戦争を起こします。

国際共産党書記長だったディミトロフのファシズムの定義も、レーニンの帝国主義論の見地を継承しています。

左翼人士はこの定義も好きです。これは実際にはクーシネンが作ったものだった可能性が高いですが。

日本共産党もこの見地を継承し、世界の帝国主義たる米国が世界各地で戦争を起こすとみます。

米国に従属している日本政府は、アジアで最大の戦争国家です。

日米安保の強化や憲法改正を批判する中国共産党、朝鮮労働党は覇権主義ですが、大局的には平和勢力です。

不破さんはこの視点から、中国共産党、在日本朝鮮人総連合会と交流を再開し、戦争国家の日本を包囲する反ファシズム国際統一戦線結成を目指したと考えられます。

レーニンの帝国主義論の見地なら、米帝国主義と戦争国家の日本が台湾有事を起こすという話になります。

志位さんは台湾有事が日本の有事であることを断固否定

志位さんによれば、自公政権が米国の対中国軍事戦略に追随して空前の大軍拡を進め、敵基地攻撃能力を保有して安保法制を発動しようとしていることが最大の問題です。

台湾有事は日本の有事、などと叫び、自衛隊を派兵して軍事介入を図ろうという動きは地域の平和を脅かす最も危険な道だそうです。

12月20日の赤旗記事に志位さんのこの話が出ています。「Cゼミ」で志位委員長が講義 千葉・船橋/21世紀の世界――構造変化が生きた力を発揮 (jcp.or.jp) 

保身術に長けている左翼人士

日本共産党と左翼人士には、中国共産党が台湾や尖閣、南西諸島に侵攻する事を想像すらできません。

想像したら、厄介な話になってしまいますから。左翼人士は厄介な件についての思考と議論をしない。

左翼人士としての立場を危うくすることには首を突っ込まないという保身術に長けている方は多い。

中国共産党の理屈では、尖閣は中国領ですから、尖閣に人民解放軍の基地を作ることは主権の行使です。

日本がこれを妨害するなら、那覇空港や南西諸島の自衛隊基地を攻撃することも中国の主権行使です。

中国共産党は国際法に基づいて、香港に中国の法を適用し、一国二制度を香港住民に保証しているという理屈ですから、何でもやると考えるべきです。

日本共産党、左翼人士は中国共産党による台湾先制攻撃について思考と議論をできない

日本共産党、左翼人士は中国共産党が台湾や尖閣、那覇空港に先制攻撃を断行しうることを認められません。

これを認めたら、沖縄を守るために自衛隊を増強せねばならないという世論が高まってしまいます。自公政権による大軍拡を支持せねばならなくなる。

そこで、日本が軍拡をやるから台湾有事になるというような宣伝をすることになる。日本共産党は今後もこの類の宣伝を続けていくでしょう。

憲法九条教徒に未来はありません。



2021年12月24日金曜日

ディミトロフの反ファシズム統一戦線論をアイノ・クーシネン著「革命の堕天使たち」(平成四年、平凡社刊行)より思う

 ゲオルギー・ディミトロフ(1882-1949。ブルガリア人)とは、コミンテルン(国際共産党)の書記長を務めた人物です。

国際共産党書記長だったのですから、世界中の共産党を指導していた人物と思われがちですが、実態は大きく異なっていました。

当たり前のことですがディミトロフを指導したのは、スターリンとソ連共産党です。

ヒトラーとナチスに勝るとも劣らぬ全体主義者、スターリンにディミトロフら国際共産党は隷属していました。

これは、当時国際共産党で活動していた人の手記などからすぐにわかります。

アイノ・クーシネン著「革命の堕天使たち」(平成四年平凡社刊行)によれば、コミンテルンの資金は全てソ連政府から来ていました(同書p93)。

ソ連共産党が国際共産党(コミンテルン)に資金と活動拠点、住居を提供していたのです。ソ連共産党に逆らえば強制収容所行です。

著者のアイノ・クーシネンの夫、オットー・クーシネンは1921年7月の第三回コミンテルン大会で承認されるべき組織方針の草案を作った人物です。

今の日本共産党も高く評価する、32年テーゼを作ったのはオットー・クーシネンです。

オットー・クーシネンはコミンテルンの影の指導者だった

この本によれば、書類上ではコミンテルンのメンバーたる各国共産党が正式代表を送り続けたモスクワでの大会が、コミンテルンの最高権威ということになっていました。

しかしコミンテルンが存続した24年間(1919-1943)に大会は七回しか開かれていません。

その間の指導は執行委員会に委ねられていましたが、これの本会議も十七回しか開かれていません。

執行委員会は参加しているすべての党の代表の中から大会で選ばれた約三十人の委員から構成されていました。

野坂参三さんは日本の代表でした。

コミンテルンの日常活動は執行委員会の政治書記局によって指導されていました。

その政治書記局の中に、内務委員会として知られる三名から成る組織がありました。

オットー・クーシネンはその一人で、組織の指導方針と、資本主義国の政治的・経済的発展の観察を担当していました。

組織の指導方針を担当していたのですから、オットー・クーシネンはコミンテルンの影の指導者と言えます。

ディミトロフの演説や論文の多くは、クーシネン作だった

ディミトロフはコミンテルンの執行委員会議長でしたが、名目上の指導者でした。

ディミトロフの演説や論文の多くは、オットー・クーシネンが書いたものだそうです。

ディミトロフは1935年にコミンテルン書記長になりましたが、重要な決定は皆、ソ連共産党の指導者たちによりなされていました。

ディミトロフのファシズムの定義、「金融資本の最も反動的、最も排外主義的、最も帝国主義的な分子の公然たるテロ独裁」は、左翼人士の間で良く知られています。

ディミトロフの著作The United Front, The Struggle Against Fascism and Warにはファシズムについて次の記述があります。

The open terrorist dictatorship of the most reactionary, most chauvinistic and most imperialist elements of finance capital

この部分が上記のように日本語になっているのでしょうね。

日本共産党員や左翼人士は、ディミトロフの反ファシズム統一戦線を作ろう、との呼びかけに共鳴した各国の共産主義者が社会民主主義者と協力してファシズムと戦ったと信じています。

上記の定義は、クーシネンの作った定義をディミトロフの名前で出しただけです。

銀行や証券会社が戦争を起こすというのかー左翼人士に問う

金融資本が戦争やテロ独裁を起こす根源であるという、レーニンの帝国主義論以来の見地がこの定義に貫かれています。

クーシネンの作文、定義を、今の日本共産党員や左翼人士は偉大な共産主義者ディミトロフによるファシズム定義と信じている。

日本共産党員や左翼人士には、安倍前総理が金融資本の委託を受けた帝国主義的な分子、のように見えているのです。

自民党幹部は皆、金融資本の反動的、排外主義的、帝国主義的分子という調子です。

この定義だと、日本政府は集団的自衛権を行使できる法を銀行や証券会社あるいはトヨタの要求で成立させたことになってしまいます。

銀行や証券会社、あるいはトヨタなどの大企業が金融資本、でしょうから。

ディミトロフが野坂参三さんを赤軍情報部門の工作者に推薦した

なお、不破哲三「北京の五日間」(新日本出版社、p102-103)によれば、ディミトロフはコミンテルン解散後国際情報部長としてソ連共産党の組織に組み込まれ、ソ連のために秘密工作者を選定する仕事をしました。

不破さんによれば野坂参三さんがソ連の赤軍情報部門につながる工作者となったのはディミトロフが人選してスターリンに推薦した結果です。

当時の共産党員がコミンテルン書記長の要請を受け入れるのは当然です。

野坂参三さんが赤軍情報部門の秘密工作者となることは、この時期のコミンテルンの規約とその精神に反していない。

スターリンの指導に従った野坂参三さんは、立派な共産主義者でした。

2021年12月19日日曜日

志位さんは選挙によって日本共産党の委員長になっているのかー志位さんの呟きと萩原遼「朝鮮と私 旅のノート」(文春文庫第五章)より思う

 志位さんが12月17日のtwitterで大略次のように主張しました。

自分は選挙で日本共産党委員長になっている。日本共産党大会の代議員により中央委員会が選出され、最初の中央委員会で委員長が選出されている。

誰でも委員長に立候補できるし、他の人を推薦できる。

この呟きの後段の文章は、最初の中央委員会に選出された中央委員なら委員長に立候補できるという意味でしょうね。

松竹伸幸さんは日本共産党委員長選挙が行われるなら立候補したいとのことですが、中央委員ではないので立候補できません。

それでは、志位さんは選挙で日本共産党中央委員会の委員長になっているのでしょうか。昔は中央委員会議長、幹部会委員長、という職位がありました。

今は中央委員会委員長なのかもしれません。

中央委員会委員長に選挙が存在するなら、選挙人の母体は中央委員会です。

中央委員が日本共産党大会代議員により選出されるなら、代議員はどうやって選出されているのでしょうか。

日本共産党大会の代議員はどのように選ばれるのかー萩原遼さんの説明

志位さんは全国の党組織から代議員が選ばれると呟いています。党組織、とは何でしょうか。

二十年前の著作で萩原遼さんが、次のように説明しています。

日本共産党では、大会議案を支持する代議員しか事実上党大会には出られない。

党大会の代議員は末端組織の党支部を振り出しに、その上の地区党大会、さらにその上の都道府県大会へと積み上げていって、そこから代議員が選ばれる。

一般党員が大会議案に反対だと言って代議員に立候補しても、支部会議の段階ではねられてその上の地区党会議の代議員にすらなれない。

仮に地区党会議の代議員に選出されても、その上の都道府県会議の代議員にはまずなれない。

都道府県会議で大会議案に全面的に反対の立場から討論したいので、党大会の代議員に選んでくださいと言っても選ばれることはない。

党大会の代議員になりたいと思う一般党員は稀

萩原遼さんが説明する日本共産党大会代議員選出方法は、志位さんの呟きにある代議員は党組織から選ばれる、と矛盾していません。

日本共産党の活動に多少熱心に参加している一般党員なら、地区党会議や都道府県党会議の代議員にはなれそうです。

これらなら、自分の居住地域からさほど遠くない場所で開催されるのでしょうから、日々の仕事にさほど支障を出さないで参加できます。

党大会となると、数日間続きますから面倒です。仕事を休まねばなりません。

現実には日本共産党の大会代議員に選ばれて党大会で発言したい、と考える一般党員は稀でしょう。

三十五年ぐらい前、東京大学院生の伊里一智さんが日本共産党大会の代議員になろうとしてビラ配布などをした事件がありました。

伊里一智さんは規約に違反したとの理由で除名されました。これは稀な場合です。

少なくない一般党員が日本共産党の政策、方針に何かの疑問を持っている

各党員は日本共産党の綱領や政策に賛成したから、日本共産党に入ったのでしょうが、日本革命が実現できると本気で思っている方は稀有なのが実情ではないでしょうか。

大会議案に賛成か、と聞かれれば賛成だが、何かの点で志位さんの話、日本共産党の政策、方針に疑問を持っているから、殆ど何もやらない方が多いと考えられます。

そんな一般党員が多数ですから、萩原遼さんが説明するように地区委員会や都道府県委員会職員が党大会代議員を事実上選出していても、日本共産党内では大した問題になっていないと考えられます。

結局、日本共産党大会には大会議案に賛成の方しか出てきません。現指導部、志位さんや小池さんが選んだ中央委員がすんなりと党大会で承認され、新しい中央委員になる。

中央委員は志位さんや小池さんの見解、方針に賛成の方ばかりだから、志位さんや小池さんが選んだ方が次期の幹部として中央委員会で承認される。

志位さんは幹部の中で、最高幹部に選ばれ、その中で委員長を継続することが認められて委員長になっている。

志位さんが選挙で委員長になっているなら、習近平も同様

私見では、志位さんはこんな手法で日本共産党中央委員会委員長になっています。一般党員の直接投票による選挙で委員長になっているのではありません。

現指導部の見解、方針を支持する方が投票権を持つようになっている制度下で、志位さんや小池さんは選ばれているのです。

代議員により選ばれている、というより代議員により承認されていると言うべきでしょうね。

対立候補が出るはずがない制度で委員長になっている方が、選挙で選ばれているとは言えないでしょう。

中国にも全人代(全国人民代表大会)という国会はありますが、中国共産党が容認した場合しか対立候補は出ません。

中国共産党のどこかの部署から住民に、この人に投票してくださいという指令が出るそうです。私は某中国人からそのように伺っています。

志位さんが選挙で委員長になっているというなら、習近平ら中国共産党幹部も同様です。

松竹伸幸さんは一般党員の直接投票で委員長を選ぶべき旨主張していますが、志位さんが現行のやり方を変えるなど考えにくい。

今後の国政選挙で、国会議員が多少増えることは考えられますが、日本共産党は長期的に衰退していくと考えられます。

憲法九条教徒に未来はありません。




小泉信三教授「エルフルト綱領の教訓」、梶川伸一教授の論考にみるロシア革命後の大飢饉(「共産主義批判の常識」昭和24年新潮社刊行、「ソヴェト=ロシアにおける赤色テロル」社会評論社刊行の解説)より思う

 左翼人士が礼賛するロシア革命とは何だったのでしょうか。

ソ連共産党流の史観、宣伝は大略次のようになっています。

ロシア革命後に帝国主義諸国の支援を受けた反革命軍が内乱を起こし、レーニンとボリシェヴィキは対応を余儀なくされました。

資本主義的搾取を廃止し、八時間労働制を確立した労働者の祖国ソ連邦を帝国主義者と反革命分子は破壊しようと戦争を起こしました。

従ってこの時期の社会的混乱は帝国主義諸国と反革命分子の責任です。

レーニンとボリシェヴィキは社会主義ソ連を守るために戦いました。

不破哲三さんのロシア革命論は概ね、こんな調子です。山口正之教授の「社会主義の崩壊と資本主義のゆくえ」(大月書店平成8年刊行)も同様です。

私は四十年ぐらい前、山口正之教授の一連の著作を一生懸命読みました。

山口正之教授はこの本で、1921年3月にソヴェト経済が極度の荒廃状態にあり、全体として19世紀後半の帝政ロシアの水準にまで後退していたと記しています(同書p188)。

ソ連共産党による上記のようなロシア革命宣伝を信じている左翼人士は今でも多いのです。

ボリシェヴィキによる穀物徴発と赤色テロル

近年のロシア革命研究では、ソ連共産党の宣伝は否定されています。

例えば、梶川伸一教授(金沢大)によるメリグリーノフ著「ソヴェト=ロシアにおける赤色テロル(1918~23)」(社会評論社刊行、平成22年)の解説をあげておきましょう。

ロシア革命後にボリシェヴィキにより行われた過酷な穀物徴発に反抗する農民や兵士の反乱が各地で起きています。

1921年3月(大正十年三月)のクロンシュタットの水兵反乱はよく知られています。

梶川伸一教授によれば穀物徴収は赤色テロルともいえる手法で行われました。

ボリシェヴィキにノルマとして課された穀物を出さない農民は富農と規定され、銃殺される場合もありました。

1920年8月下旬に発生したタムボフ県のアントーノフ蜂起は、ソヴェト=ロシア最大の農民蜂起でした。

その弾圧には赤色テロルが用いられました。1921年のソヴェト=ロシア全体が深刻な飢饉におおわれました。

近年のロシア革命研究を私なりに読みますと、レーニンによる社会主義の道とは、地主と貴族、富農の追放、処刑と飢饉による社会崩壊の道だったとしか言いようがありません。

社会崩壊については、長谷川穀「ロシア革命下 ペトログラードの市民生活」(中公新書平成元年刊行)が詳しい。

小泉信三教授は新経済政策の頃の大飢饉を指摘していたー不破哲三さんが内緒にしたい史実

ロシア革命後の大混乱と飢饉は、近年になってわかったことではありません。

小泉信三教授は上記論考で、1921年の大飢饉について餓死者の数は300~700万とも言われていると記しています。

飢えた親が幼児を生きながらヴォルガの河水に投ずるなどの地獄の光景を現出したことは、当時幾多の目撃者によって報告されたそうです。

察するに、新経済政策の時期に欧米の新聞が報道していたのでしょう。ロシア革命後の飢饉については、日本でも多少報道されていました。

小泉信三教授はどこかでこの報道に接していたのでしょう。

今の日本共産党には、レーニンがソ連を主導した時代に大飢饉があったという認識はありません。

日本共産党はスターリン以降、ソ連が変質したという史観を宣伝しています。

ソ連や中国、北朝鮮などの現実を把握するためには、公式報道、公式文献だけでは大きな限界があります。

レーニンの論考もよく読めば、凄まじい弾圧が行われたであろうことは察しがつくのですが。

共産主義者は歴史を隠蔽します。レーニンとボリシェヴィキによる、過酷な農民弾圧の史実を、不破哲三さんは何としても隠蔽したいのでしょうね。



2021年12月18日土曜日

日本共産党幹部は大日本帝国の戦争指導者と似ているかー毎日新聞コラムと小泉信三教授「共産主義批判の常識」(昭和24年新潮社刊行)より

 12月6日の毎日新聞コラム「風知草」で、山田孝男特別編集委員が大日本帝国の戦争指導者は日本共産党と共通点がある旨、指摘しました。

双方に無敵、無謬という過信、意思疎通の欠如、責任回避があるという話です。

これに対し志位さんはtwitterで、度を超した漫罵だと怒りました。

志位さんが御存知かどうかわかりませんが、日本共産党、職業革命家と大日本帝国軍人が似ているという指摘は昔からあります。

日本共産党、左翼人は小泉信三教授による革命家批判を傾聴すべきだ

小泉信三教授(慶応大)が昭和24年刊行の「共産主義批判の常識」でそう主張しています。

小泉信三教授によれば、革命家は往々にして革命家のみが民衆の真の利害を知っていると言います。

そこに革命家の偏見と誤算、私心が混ざってくる。

職業軍人は国民の利害を国民自身よりもよく知っていると信じていたので、革命家と似ている(同書掲載「エルフルト綱領の教訓」より)。

職業軍人にもいろいろな方がいたでしょうが、米国の政策決定に世論が大きな影響を与えることを認識していた方は少なかったのではないでしょうか。

小泉信三教授なら、戦争指導者と何かの場で接したことがあったのかもしれません。

小泉信三教授は共産主義者、革命家の独善ぶりを看破していました。レーニンの著作「何をなすべきか」を読んでいたのかもしれません。

「何をなすべきか」の中心的主張は、革命家が労働者に科学的理論を注入せねば、労働者は自発的には革命運動に参加しないということです。

小泉教授はソ連についてはトロツキー、ジノヴィエフをはじめとする革命の元勲とも称すべき人物で終わりをよく全うしたものがほとんどいないことを指摘しています。

小泉教授はロシア革命後も相当な惨事が起きているのではないかと推測していました。この文章はフルシチョフによるスターリン批判(昭和31年)より前に書かれています。

日本共産党や左翼人士の中に、小泉信三教授のこの本を読む人などいないでしょうね。憲法九条教徒に未来はありません。



2021年12月12日日曜日

野坂参三さんと昔の日本共産党(国際共産党日本支部)はソ連のスパイ、工作員だったのかー

 若い日本共産党員には、野坂参三さんがソ連のスパイだったから除名された、と考えている方が多いようです。

日本共産党品川区の香西かつ介さんが、twitterでそう主張していました。

これはスパイ、工作員という語をどう定義するかという問題です。

外国政府から資金を受け取ったり、活動方向を指導されている人物をスパイ、工作員と定義するなら、野坂参三さんだけでなく当時の日本共産党(国際共産党日本支部)はソ連のスパイ、工作員の集団です。

金日成、金正日と金正恩に絶対性、無条件性の忠誠を誓い、朝鮮労働党の対日担当部署の指導下にある在日本朝鮮人総連合会と関連団体の職員の皆さんもスパイ、工作員です。

勿論、この意味でのスパイ、工作員の方々が全員テロリストであるはずもない。

スターリンとソ連共産党、金正恩と朝鮮労働党に忠誠を誓い、日本のソビエト化やチュチェ思想化を目指して本などを読んでいるだけの方々は、テロリストではありません。

昔の日本共産党はソ連を盲信し、ソ連から資金と拳銃を受け取って内乱を起こそうとしていました。今の日本共産党も高く評価する32年テーゼは、内乱を訴えています。

ソ連のスパイだから除名だ、というなら、昔の日本共産党員は全員除名すべきでしょうね。昔の日本共産党の視点では、ソ連の指導で動くことは最大の栄誉でした。

野坂さんはソ連の秘密警察の協力者だった

小林峻一・加藤昭著「闇の男」(文藝春秋平成5年刊行)によれば、野坂さんはNKVDというソ連秘密警察の直轄下の協力者でした。

NKVDとは、北朝鮮で言えば国家安全保衛部(今は保衛省)のような組織です。

これはソ連崩壊後出てきた秘密文書より明らかになりました。

野坂さんはスターリンの指導下にある国際共産党(コミンテルン)の幹部でした。

野坂さんはソ連共産党からあらゆる支援を受け、ソ連の指導下で活動していたのですから上記の定義なら、ソ連のスパイ、工作員です。

野坂さんは仲間の山本堅蔵さんを怪しい、という手紙をソ連側に出していたことが秘密文書より明らかになり、日本共産党を除名されました。

当時、怪しげな人物の通報は共産主義者の任務だった

しかし怪しい奴を通報しろ、は当時の共産主義運動の最高指導者、スターリンとソ連共産党の方針でした。

国際共産党幹部なら、ソ連共産党の方針に従うのは当然です。通報が国際共産党の方針に反しているはずもない。

怪しく思える仲間を通報しなかったら、いずれは自分が通報されてしまいます。

野坂さんの通報は生き残るための選択だったのです。怪しい人物の通報は国際共産党幹部として当然のことでした。

同じようなことが、現代の北朝鮮でも繰り返されています。

小泉総理(当時)が訪朝したころ、北朝鮮側の中心だった人物はユギョン(柳京)という国家安全保衛部の幹部だったようです。

近年韓国に逃げてきた脱北者によれば、ユギョンは処刑されました。ソ連、中国、北朝鮮でどれだけの政治犯が処刑されてきたのでしょうね。




2021年12月9日木曜日

志位和夫委員長が毎日新聞山田孝男特別編集委員のコラム「風知草」(12月6日)に激怒ー戦争指導者と重ね合わせたのは不適切かー

 去る12月6日に志位さんがtwitterで、毎日新聞の上記コラムについて怒っていました。

志位さんはこのコラムが戦争指導者と重ね合わせて共産党を攻撃したのは度を超した漫罵ではないか、と主張しています。

山田孝男特別編集委員が太平洋戦争当時の指導者たちの慢心や過信を論じた後、安保や天皇をめぐる共産党の現実離れは、度を超していると記していると記しました。

志位さんはこのあたりが頭に来たのでしょうね。

12月8日の「赤旗」は、山田孝男特別編集委員が根拠のない断定で日本共産党を叩いていると批判しています。

根拠ない断定で、日本共産党を叩く異常/――「毎日」コラム「風知草」を批判する (jcp.or.jp) 

私も毎日新聞のこのコラムを読みました。

山田孝男特別編集委員が志位さんのインタビューを全て紙面に掲載する、という約束をしていたのなら志位さんが怒るのも当然と思いますがそんな約束はなさそうです。

新聞記者が政治家のインタビューと、その政党の公式文献を総合して解釈し、コラムを書くのは普通のことです。

山田孝男特別編集委員は志位さんの話と日本共産党綱領を論拠にしています。おかしなことは何もありません。

日本共産党は日本国家を無くしたいー日本革命は日本国家の廃止

日本共産党は皇室廃止、自衛隊解散、日米安保廃棄を宿願としていますが、これは日本国家を無くすことを宿願とするようなものです。

日本革命とは、日本国家の廃止に他なりません。

普通の日本人なら、日本国家の廃止、日本革命という日本共産党の宿願には大いに違和感を覚えるでしょう。

度を超している、という指摘は当然です。

「日本革命の展望」(下、新日本新書p170)によれば自衛隊は日本の国家機構、暴力装置の中枢であり、米軍事顧問団の指揮下におかれているそうです。

自衛隊が暴力装置であるというこの見地を、今の日本共産党は継承しています。

不破さん、志位さんが何かの理由で宮本顕治さんの日本革命理論は非現実的だと判断しているようですが、宮本さんの日本革命理論の抜本的に見直しなどしていません。

一般に、共産主義者は自らの歴史の見直しを恐れます。最高指導者にも誤りがあったという話になると厄介ですから。

日本人とは皇室を中心とした共同体です。日本共産党は昔から君主制廃止を唱えてきました。

日本共産党はソ連(ロシア)や中国、北朝鮮、韓国のように日本人が共同体を形成し日本国家が存在していること自体が嫌なのでしょうね。

不破さんは中朝を平和勢力とみなし、中国共産党、在日本朝鮮人総連合会と友好関係

日本共産党が宿願とする自衛隊解散、日米安保廃棄が実現したら金正恩は日本に核ミサイル攻撃を断行ます。民族の英雄になれますから。

本ブログでは何度も論じてきましたが、科学的社会主義の見地ではアジアで最大の戦争国家は日本です。

米軍と自衛隊は国民を支配する暴力装置ですから、自衛隊解散、日米安保廃棄は日本人民、労働者階級解放のために必須です。

日米安保を批判する中国共産党、朝鮮労働党は覇権主義ですが大局的には平和勢力です。

私見では、不破さんがこのようにみて中国共産党、在日本朝鮮人総連合会と友好関係を樹立しました。

不破さんにはアジア最大の戦争国家日本を包囲する国際統一戦線を樹立しよう、という発想があったと考えます。

志位さんには、山田孝男特別編集委員は科学的社会主義に裏付けられた大局観を持っていない、軽率な人物と見えているのでしょう。

習近平、金正恩を平和勢力と把握する科学的社会主義など、現実と無縁です。

中朝露の核軍事力の実情を一切分析しない日本共産党は、米国の戦力についての実証的思考と議論を拒否した昔の指導者と酷似しています。


2021年12月4日土曜日

田村智子日本共産党副委員長の呟きが削除された件より思うー田村智子さんは宮本顕治著「日本革命の展望」を再検討するべきだ

 田村智子日本共産党副委員長の総選挙に関する呟きが、なぜか削除されていました。

この件について、以下のサイトでいろいろ議論されています。日本共産党・民青同盟悪魔の辞典+ : 田村智子の総選挙反省ツイートが削除された件 (livedoor.biz) 

ここに再掲されている田村智子副委員長の呟きのどの部分が、日本共産党にとって都合が悪いのかは不明です。

田村智子副委員長御自身が、何かの理由で都合が悪いと判断したから削除されたのでしょう。

上記のサイトで太宰ファンさんが指摘しているように、田村智子副委員長は日本共産党に安全保障政策がないことにより支持を失ってきたことに気づいたのかもしれませんね。

しかし別の方も指摘しているように、自衛隊解散と日米安保廃棄は日本共産党のイデオロギー、科学的社会主義の世界観によるものです。

科学的社会主義の見地では米軍と自衛隊は支配階級による人民支配のための暴力装置ですから。

暴力装置をなくすことを日本共産党が訴えないなら、日本革命を放棄することになる。

日本革命のためには自衛隊解散、日米安保廃棄で日本国家の国防力を皆無にすることは必須です。

日本革命を放棄するなら、宮本顕治さんの「日本革命の展望」など出鱈目の書だったという話になります。

日本共産党の平和理論では、自衛隊解散、日米安保廃棄を支持する中国共産党、朝鮮労働党は覇権主義ですが大局的には平和勢力です。

私見ではこの平和理論は、レーニンの帝国主義論に依拠しています。この件、本ブログでは繰り返し論じてきました。

これらまで田村智子副委員長が掘り下げて志位さんに路線転換を主張することなど考えられない。

憲法九条教徒は「日本革命の展望」、第八回大会決定について思考と議論をできない

日本共産党員、支援者の皆さんが宮本顕治さんの「日本革命の展望」、第八回大会決定など昔の大会決定、日本共産党の「平和理論」、レーニンの帝国主義論について再検討することはタブーなのでしょう。

憲法九条教徒は自らの理論と現実の不一致についての思考と議論を恐れる。金正恩の核ミサイル攻撃に、憲法九条は反撃しません。

自衛隊解散、日米安保廃棄なら金正恩は日本に核ミサイル攻撃を断行し、民族の英雄になります。

核ミサイル攻撃をしたら米軍に核ミサイルで反撃されるから、金正恩はそんなことをしない、と言う日本共産党員は、日米安保の抑止力を認めている。

米軍の核ミサイルによる反撃に期待している日本共産党員は、日米軍事同盟の抜本的強化を支持すべきです。集団的自衛権の行使を認めるべきです。

こんな議論を提起する人を、憲法九条教徒はネトウヨ、反共勢力などと把握して一切の思考と議論をしない。

憲法九条教徒に未来はありません。