世界の平和と共産主義への偉大な前進-ソ連邦共産党第二十一回大会の意義-
1959年2月19日 日本共産党中央委員会幹部会の声明
最近はこちらに小説やエッセイについての感想を書いていますが、以前私は左翼批判の拙文を雑誌「正論」(産経新聞社刊)や「幻想と批評」(はる書房刊行)に出してきました。左翼批判の論点は多々ありますが、そのうちの一つが、左翼とは共産主義国を礼賛する人々である、というものです。
別言すれば、左翼とは潰れた会社の元上司を罵倒するような人々であるということです。
上記は、昭和34年2月19日に日本共産党中央委員会幹部会が出した声明の題名です。この題名を見れば、若い日本共産党員はびっくりすることでしょうね。年配の方なら、青春時代を思い出して懐かしく感じるでしょう。幹部会声明は下記のように述べています。
世界の共産主義者と勤労人民が絶大な信頼をよせていたソ連邦共産党
「ソ連邦共産党とソ連邦国民は、世界で最初の社会主義革命を指導し遂行し、困難な国際情勢のなかで社会主義の建設を完了し、今や最初に共産主義への道を切りひらき、世界史の大きな転換のために先進的な役割をはたしている。
ソ連邦共産党が今日の達成をかちとったのは、マルクス・レーニン主義の原則をかたくまもり、あらゆる種類の日和見主義、修正主義と教条主義、保守主義とを克服して党の団結をかため、国民とかたく結びついて、正しい内外政策を遂行してきたからである。
このようなソ連邦共産党とソ連邦国民にたいし世界の共産主義者と勤労人民が絶大な信頼をよせ、その経験と達成に学ぼうとしているのは当然である。」
共産主義者であるなら、世界史の大きな転換のために先進的な役割を果たしているというソ連邦共産党に絶大な信頼をよせるのは当然でしょうね。今日の共産主義者にとって、「絶大な信頼」の対象は農民と農村出身の都市下層労働者(農民工という)を徹底的に搾取して高成長を達成した中国共産党でしょう。
中国共産党幹部とその一族は大金持ちです。先日のNew York Timesに掲載された温家宝一族の資産形成に関する記事には驚きました。金正日とどっちが多いか、わかりませんね。
降り注ぐ歳月、変わっていく人々と変わらぬもの
昭和34年当時は、この声明のようにソ連邦共産党に絶大な信頼をよせていた日本共産党の皆さんですが、それから30数年後には宮本顕治さんを先頭にしてソ連共産党の解散を万歳と大喜びするようになりました。降り注ぐ歳月で人の心も変わるものなのでしょう。
宮本顕治さんは、この幹部会声明が発表された頃、日本共産党書記長という党内では重職にありました。50代前半だった宮本さんは、政治家として油がのり、精神的にも絶頂期だったことでしょう。憧れのソ連共産党の大会に来賓として出席できて、心から嬉しかったのでしょう。
若い共産党員は、昭和34年頃の日本共産党が手放しでソ連共産党を礼賛していたことなど全く知りませんから、ソ連共産党が潰れて本当に良かった、と思ったかもしれませんが、昭和34年当時に若者だった古参党員の気持ちはどんなものだったのでしょうか。
聴濤弘さんのように、ロシア語を流暢に使いこなし、ソ連通として知られた老幹部も「ソ連崩壊万歳!」だったのでしょうか。
「潰れたところとは手を切れば良いのさ。昔は昔、今は今だ」という程度の、さっぱりした受け止めをしていた古参党員が殆どだったかもしれません。
会社が潰れてしまえば、上司と部下という関係はなくなりますから、途端に以前の上司に対して冷たい態度や言葉使いをするようになる元部下はいるでしょう。
左翼の思考方式として変わらないのは、共産主義国に対する憧憬でしょうか。今日の日本共産党は中国を「市場経済を通じて社会主義へ、という旗印で、活力に満ちた新しい社会と経済への建設の取り組みが進んでいます」という調子で、高い評価を与えています。
左翼は共産主義国を礼賛する。この点は、どれだけ歳月が流れても、日本でも韓国でも変わらぬものなのでしょう。韓国左翼は北朝鮮を大真面目に進歩勢力とみなしています。
中国の高成長がさらに行き詰まったり、北朝鮮の金王朝が崩壊すれば、左翼の皆さんは手のひらを返して、中国や北朝鮮を罵倒するのかもしれませんね。
潰れた会社の元上司や元同僚を罵倒する人はいくらでもいますから。
「幻想と批評」掲載拙文について
「幻想と批評」(はる書房)に掲載された拙文の題名を以下に記しておきます。御参考までに。
「共産主義国の戦争政策とマルクス主義経済学」(第1号所収)
「不破哲三はなぜ中国を礼賛するのか」(第2号所収)
「不破哲三はなぜ「反革命」「ユーゴスラビア修正主義」になったのか-不破哲三による下部党員操縦法とマルクス主義経済学者の生態-」(第3号所収)
「残虐行為を正当化する虚偽宣伝」(第4号所収)
「官僚金融産業資本主義への困難な道のり-勝利した「走資派」-」(第5号所収)
「史的唯物論と共産党員の言論抑圧体質」(第6号所収)
「社会主義はソ連邦で完全な最後の勝利をおさめた」(第7号所収)
「「構造改革論」と不破哲三」(第8号所収)
「共産主義者の志とは何か-不破哲三と聴濤弘のソ連・中国礼賛から」(第9号所収)
そのほか、宝島社から次が出ています。
日本共産党はなぜ"史実"を隠すのか(野村旗守編2004年、「北朝鮮利権の真相」、宝島社文庫pp260-277)
社会党と共産党、どこがどう違ったのか?(野村旗守編2003年、「社会党に騙された!」、別冊宝島Real 055, pp165-176)
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