2019年4月6日土曜日

日本共産党の経済観、経済政策について思う―日本共産党員と左翼経済学者は投資と労働者の雇用維持の関係を検討できない―

「大企業と富裕層はアベノミクスで空前の利益を得た。大企業と富裕層に応分の負担をさせ、中小企業に交付金を出し、労働者に減税をして家計をあたため、消費を増やす。


最低賃金を全国一律で時給1500円にする。総需要の約6割を占める消費が増えれば景気が良くなる」


日本共産党の経済政策は、このようにまとめることができるでしょう。

日本共産党は日本革命を志向する科学的社会主義、マルクス主義の政党です。

しかしマルクス主義経済学の立場だと、必ずこのような結論が出るとは私には思えません。

日本共産党の経済観、経済政策の問題点については、本ブログやtwitterで何度も言及していますが、改めて私見を述べます。

大門みきし参議院議員に問う―日本共産党の経済観、経済政策論の非現実性―


日本共産党で経済政策の立案を主に担当しているのは大門みきし参議院議員でしょうか。

私の疑問は以下です。

第一に、大企業と富裕層がアベノミクスで空前の利益を得たという認識ですが、これは不当ですか。

ある企業の利益が以前より大きく、内部留保が増えていれば、その企業は不当なもうけをしているのでしょうか。

その企業の利益は経営者と労働者が一丸となって努力した結果なのかもしれません。

トヨタの利益が増えていればそれは専らアベノミクスの恩恵、と断言できる証拠がどこにあるというのでしょう。

ある企業が得た「空前の利益」は不当な利益とは必ずしも言えない。

富裕層の儲けですが、これが株式の譲渡所得や配当所得から得ているのなら、危険に対する報酬とも言えます。

不当な儲けとみるべきではない。

第二に、富裕層への課税強化論ですが、これの現実性が大いに疑問です。

日本共産党は保有金融資産が5億円を越える方を富裕層と定義しているらしい。

金融資産を5億円以上持っている方の株式配当所得や、株式譲渡所得税率を上げる事を想定しているようです。
これを実行するためには国税庁が全住民の保有金融資産額を把握せねばなりません。

銀行預金だけでなく株式や債券、投資信託、あるいは外貨建て資産、金(gold)も把握せねばならない。

税金逃れのため、保有金融資産が絵画など美術品購入に変えられてしまうことも考えられる。

国税庁の権限を強化する必要はあると思いますが、日本共産党の富裕層増税案は非現実的です。

中小企業への交付金支出論は中身がない


第三に、中小企業への交付金支出とは一体いくらで、理由は何かという点です。

中小企業への交付金支出ですが、日本共産党は時給1500円の最低賃金を実現するため、中小企業に交付金を出して中小企業が経営破綻しないように、という発想なのでしょう。

大門みきし議員は、交付金として各中小企業にいくら支払い、総額でどれくらいの予算を想定しているのでしょうか。

各中小企業に一回一万円出す、というだけなら財源についてさして議論する必要はない。

しかし一万円では時給1500円の費用増加に耐えられず、廃業せざるを得ない中小企業が続出するでしょう。

年間1000万円出すなら時給1500円でも十分やっていけるでしょうが、中小企業だという理由だけで1000万円もらえるなど変です。血税のばら撒きでしかない。

要は、日本共産党が訴える中小企業への交付金論は金額、規模が不明なので中身がないのです。

第四に、消費が総需要の約6割を占めているから消費を増やす政策を、という発想ですが、消費は簡単には増えない。

将来の見通しに不安のある方は減税されても貯蓄に配分する。

日本共産党、左翼経済学者は投資の意義を認められない


総需要の中での割合は高くないですが、企業経営者が設備投資を増やすように誘導することが大事です。

日本共産党や左翼経済学者には、投資が経済成長、企業経営には極めて重要だという発想はない。

投資が企業の競争力と経済の供給力を強化し経済成長と企業経営の維持、発展に貢献しうることを認めると、労働者は賃金向上要求を控えて設備投資を増やすことを認めるべきだ、という話になりえる。


日本共産党中央は十年くらい前、代々木にある中央委員会の建物を大幅改造したそうです。

これにより日本共産党の競争力が向上したのなら、建物改造という投資は日本共産党職員の雇用を維持することに貢献したといえる。

同じことが、各企業でもいえる。設備投資により、その企業の競争力が向上できれば、社員の雇用が維持される可能性が高くなります。

企業経営に対する視野の違いと利害関係の対立-非正規労働者や短期保有予定の株主は設備投資と無関係


しかし、いつでも雇用関係を経営側の都合で切られうる非正規労働者には、投資がなされて企業の競争力が向上されても無関係ではないか。

こんな反論がありそうですね。その通りと考えます。

非正規労働者は、良い設備投資をするためのコスト削減策の一環として雇用契約を切られる可能性すらあります。

非正規労働者には、その企業に定年まで勤めようという発想はあまりない。従ってその企業の競争力など、どうでもよい。

利益を設備投資に配分するより、時給を上げてほしい。非正規労働者ならそう思って当然です。

同じことが、短期保有の株主についても言えます。利益を設備投資に配分するより、当面配当を増やして欲しい。

短期保有の株主にとっても、設備投資など二の次で良いのです。

非正規労働者と短期保有予定の株主は、その企業への関与の度合いが薄く、短い視野でしか企業経営を考える必要がないという点で一致しています。

正規労働者と経営者は企業の存続を重視する


しかし、その企業の行く末に生活の多くが依存している正規労働者や、経営者にとっては設備投資、企業の競争力強化は大事です。

競争に負けて赤字経営を続ければ、企業が存続できなくなりうる。経営者は返済不能になった企業の債務の保証人になっているかもしれない。

その企業が倒産したら、正規労働者は当面の給与を失うだけでなく、それまでその企業で働くことにより得てきた技能、技術も無駄になりうる。

上司との人間関係も、その企業で生き抜いていくためには貴重な「資産」と言えるでしょうが、それも無駄になる。

正規労働者と経営者は、その企業への関与の度合いが強く、長い視野で企業経営を考える必要があるという点で一致しています。

長期保有予定の株主も同様です。

企業の存続を第一に考える正規労働者、経営者と当面の存続、当面の現金支払い増加を重視する非正規労働者、短期保有予定株主の間には、深い利害関係の対立がある。

これにどう折り合いをつけていくかが、現代の企業経営者と役員、人事担当者に問われているのでしょう。

左翼の労働運動が往年の勢いを失った原因の一つは、企業経営に対する視野の違いを直視して労働者の権利擁護を訴える姿勢がないからではと考えます。











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