2018年3月24日土曜日

金正日の党経済・宮廷経済について考える2・「北韓経済危機10年と軍備増強能力」(韓国国防研究院発行)より

「金正日は党財政経理部から独立した『39号室』『38号室』という党経済を管理する独自の部署を設置して、金正日の直接指導下で党に属する銀行をはじめとした経済機関と企業所を管理しているのだ。

『39号室』の指導のもと、道・市・郡に至るまで、忠誠心を表す外貨稼ぎの課題を与え、輸出品になるものを探し出し集めさせて、外貨を稼いで金正日に上納させるようにしている」(黄長ヨップ『北朝鮮の真実と虚偽』1999年刊行カッパブックス、p137より抜粋)。


黄長ヨップ氏は、朝鮮労働党中央委員会の書記だった方です。北朝鮮では、思想、イデオロギー担当でした。私見では、金正日より金日成に近い方でした。

金正日の党経済(宮廷経済、首領経済)の存在については、多くの脱北者が39号室という部署が外貨集めを主に担当していると話していることから研究者には知られていました。

労働党高位幹部だった脱北者がこれを認めたのは初めてです。

その後、韓国でも金正日の党経済について、脱北者へのインタビュー調査に主に依拠した研究が進みました。

金正日の党経済・宮廷経済の構成について


そのうちの一つが、ソンチェギ他「北韓経済危機10年と軍備増強能力」(KIDA Press、2003年。韓国国防研究院発行)です。

この本のp27に、金正日の宮廷経済と軍経済に関する表「北韓経済の優先部門の構成」が掲載されていますので、紹介します。

下記です。

区分
重要組織・機構
経済単位
人力数
基本機能
宮廷経済
国防委・党と傘下機関・護衛司令部・国家安全部・人民保安省と傘下機関、その他権力機関
党財政経理部・39号室・38号室・金融機関(銀行)・貿易会社と傘下の工場、企業所・農場、牧場約150200
5060

体制維持・金正日個人の維持・対南事業・そのほか戦略事業


軍事経済

区分
重要組織・機構
経済単位
人力数
基本機能
第二経済
第二経済委員会・第二自然科学院・特殊研究所
軍需工場及び軍の部品職場、約300500個・傘下の貿易会社
軍事経済全体で約150
武器・装備の研究開発と生産
軍経済
人民武力省と傘下の部隊・機関
自前の軍需工場・貿易企業及び傘下の工場、企業所・小農場と牧場約100個・部隊による自前の副業経営、多数の工場、農場

軍需品生産と運用、軍の運営維持



北朝鮮の社会経済は、脱北者や在日本朝鮮人総連合会関係者の話をよく聞き、金日成や金正日の著作、労働新聞などと照らし合わせてしていけば、徐々に把握しできます。


 脱北者の話は、人によって異なる点もあります。思いこみ、記憶違いなど、様々な原因が考えられます。

それでも、北朝鮮の社会経済について貴重な情報を提供していることは間違いない。

金正日の党経済・宮廷経済の規模について


この本の刊行は15年前ですから、現在とは異なっているでしょうが、宮廷経済の外貨規模に関する以下の記述は貴重です(同書p52より抜粋)。御参考までに。

宮廷経済の外貨規模は次のようにして推定した。まず、北朝鮮経済では殆ど全ての外貨と金は金正日と宮廷経済の管轄下に流入されると、脱北者たちは述べている。

これを正しいとする。

1989年の外貨調達規模は正常の輸出額16億ドルプラス武器輸出4・2億ドル、そのほか闇での獲得が4億ドル(援助の資金、献金、麻薬密売等)で約25億ドル。

1999年の外貨規模は、次のように推定できる。

正常の輸出額5・1億ドルプラス武器輸出1・4億ドル、そのほか闇での獲得が3、4億ドル(金剛山観光資金が約1・5憶ドルとその他)で合計10億ドル。

宮廷経済が獲得した外貨だけでなく、国内の部門が生産した額も含めると、1989年の宮廷経済の総生産額は75億ドル。

1989年の北朝鮮経済全体の生産が500億ドルなので、宮廷経済は15%を占める。

同様に1999年の宮廷経済規模は52億ドル。

1999年の北朝鮮経済全体の生産が223億ドルなので、宮廷経済は23%を占める。

これらはいずれも推定値ですが、金正日が外貨稼ぎを自らの奢侈生活維持、核軍拡と南朝鮮革命のための資金源として重視していたことを裏付けています。











2018年3月15日木曜日

金正日の党経済・宮廷経済について―脱北者金光進氏の北朝鮮経済論より思う

「北朝鮮の経済は、内閣が管轄する人民経済と、金正日が直接統制し管理する宮廷経済に区分できる」(金光進氏の論文「金正日の宮廷経済と人民経済の破壊」、雑誌「時代精神」2008年夏号掲載より抜粋)。


北朝鮮の経済をどのように把握すべきなのでしょうか。

この問題について、日本共産党の大門みきし参議院議員は「大門ゼミ」と題した番組で、韓国銀行などが推計している国民総所得や、米国務省筋が推計している軍事費から論じていました。

推計値によれば北朝鮮の国民総所得は三重県の県民所得と大差ない。

海外での出稼ぎ労働者からの送金額が多いので、国内総生産よりは国民総所得で考えるべき旨、大門議員は説明していました。軍事費は約6000億円。

こうした把握も一理ありますが、国民総所得の大きさと軍事費だけでは北朝鮮経済の異様さを十分把握できていない。

大門議員のアシスタントをしていたマリリンという方が、国民総所得の相当大きな部分が軍事費に配分されていることに驚いていました。

マリリンさんの直感は適切です。(軍事費/国民総所得)という比率で経済の特徴を把握するのも大事です。

金正日の「党経済」(奢侈生活を支える部門と軍事部門)は外貨稼ぎを主任務とする


藤本健二氏の著作「金正日の料理人」は金正日一家の豪華な生活を暴露しました。

同時に北朝鮮は、核実験、弾道ミサイル実験を繰り返しています。

脱北者金光進氏によれば、金正日の奢侈生活と軍拡を支える財源を作り出しているのは計画経済当局ではありません。

これは金正日が直接統制し管理する、39号室ともいわれる「外貨稼ぎ」部門です。

金光進氏や、康明道氏によればこの部門は、金正日が金日成の後継者としての地位を固めた70年代に形成されました。

外貨稼ぎを主任務とするということは、外国と何らかの商売をして利益を稼ぐことです。利益追求を第一目的とする企業が、70年代の北朝鮮で作られていたのです。

輸出できる商品を生産するための原材料や資材を、内閣が管轄する人民経済部門から権力を用いて取ってしまうので、人民経済部門の設備稼働率は下がってしまう。

金光進氏によれば、金正日の党経済はこうして人民経済と庶民の生活を破壊している。

金正日の「党経済」は企業経営に利潤原理導入、市場経済化


しかし党経済(宮廷経済)は企業経営に利潤原理を導入することでもあり、北朝鮮経済の市場経済化という面もあったのです。

外国との商売は、市場経済での企業間競争でもありますから、外国の社会経済事情をよく知っている優秀な人材が育ったはずです。

共産圏という枠内で見れば、金正日による党経済づくりは、鄧小平の「改革・開放」より早い。

金正日は、中央計画経済では外貨稼ぎを効率的にできないことを早くから見通していたのです。

軍事力を強化するためには、外国から諸技術を導入せねばならない。そのためには巨額の外貨が必要です。

外貨を稼げる企業を、自分が徹底的に統制することにより金正日は作り出そうとした。これはそれなりに成功したと考えられます。

金正日がこのような判断をできた背景の一つは、数千本も外国映画を鑑賞していたことにあると私は見ています。

金正日は党経済所属の企業を増やし、資材や原材料を優先的に配分させて外貨を稼がせ、自らの奢侈生活と核軍拡を達成しました。

独裁者、王侯貴族の奢侈生活は一国の経済を破壊するのか


これだけを見ると、党経済(宮廷経済)は北朝鮮の経済成長に専ら有害だったと思えてしまいますが、社会経済はそれほど単純ではない。

王侯貴族の奢侈生活は一国の経済を破壊するのか。これは経済学の歴史では古くから問われてきた問題の一つです。

例えばマルサスは地主階級の奢侈品への需要が、完全雇用を達成するためにも必要と論じました。

ケインズによる有効需要の原理はこの理論的発展ともいえる。

金正日の党経済部門は多額の外貨を稼ぎ、それの一部は党経済部門で外貨稼ぎに従事する人々の賃金(「贈り物」を含む)支払いに配分されてきた。

王侯貴族の奢侈生活は有効需要と雇用を増やしうるのです。

金光進氏による、金正日の党経済論についてはまたの機会にふれたいと思います。本日はここまで。




2018年2月26日月曜日

大門みきし日本共産党参議院議員の北朝鮮論「経済から考える『北朝鮮問題』」より思う

「北朝鮮の最大の要求は対話です」(第一回放送開始後5分20秒頃の大門議員の発言より)


先日、日本共産党の大門みきし議員は、you tubeで朝鮮労働党の最大の要求は対話である旨断言しました。「大門ゼミ」という放送の中です。

この発言を聞いて私は唖然としてしまいました。奇想天外です。

この発言の実証的根拠、あるいは朝鮮労働党の文献上の根拠を、大門議員は2回の放送で全く示していません。

これでは、北朝鮮への帰国事業が行われていた頃、宮本顕治氏らが行った北朝鮮礼賛と同レベルです。

千里馬の勢いで社会主義を建設する共和国、という水準の宣伝です。

数百人の日本人、韓国人を拉致・抑留し、叔父を公開処刑、腹違いの兄金正男氏を化学兵器で殺害する金正恩と朝鮮労働党の最大の目的が対話ですか。

朝鮮労働党がどれだけ悪行を重ねても、対話を望む平和な集団であるというような主張は礼賛でしかない。

帰国事業以来、60年近い歳月が過ぎました。北朝鮮については、当時とは比較にならないほど、凄惨な人権抑圧の実態がわかっています。

朝鮮労働党の最大の目的は、南朝鮮革命です。全社会の金日成・金正日主義化とも言います。

別言すれば、大韓民国を滅亡させ、朝鮮半島全体を金日成・金正日・金正恩の隷属下におくことです。

それでも日本共産党員は、北朝鮮を礼賛する。共産主義国礼賛は共産主義者の本性なのでしょうね。

大門みきし議員は日本共産党の朝鮮問題についての文献について一切言及しなかった


大門みきし参議院議員は、you tubeなどで「大門ゼミ」と称して日本共産党の経済論、経済政策等について見解を発表しています。

大門議員は、日本共産党国会議員の中ではマルクス経済学の文献を読んでいる方なのでしょう。

しかし私には、大門議員は日本共産党の朝鮮問題に関する文献を全く読んでいないとしか思えませんでした。

2回の放送で大門議員は、日本共産党の朝鮮問題に関する文献について一切言及しなかったのです。

本ブログでは何度も紹介していますが、一昔前の日本共産党は朝鮮労働党と共同声明を作成し、彼らの南朝鮮革命路線への支持を表明しています。

宮本顕治氏は朝鮮労働党第四回大会(昭和36年9月)に来賓として参加し、北朝鮮を礼賛しました。

このころ、寺尾五郎氏の「38度線の北」(新日本出版社刊)は在日朝鮮人の間でベストセラーになりました。

北朝鮮への帰国事業が殆ど行われなくなってからも、日本共産党の北朝鮮礼賛は続きました。

例えば、川越敬三氏の「社会主義朝鮮」(昭和45年新日本出版社)はその一例です。

日本共産党は80年代中ごろに、朝鮮労働党との関係を断絶します。

昭和63年頃だったと思いますが、「世界政治資料」とかいう雑誌で日本共産党は「党の唯一思想体系確立の十大原則」や、金正日の社会的政治生命体論を翻訳し批判しました。

日本共産党は朝鮮労働党との交流関係を断った後、「北朝鮮 覇権主義への反撃」(赤旗編集局編、新日本出版社)という本を出しています。

この本では、朝鮮人民軍による日本漁船銃撃事件を詳細に説明しています。

大門みきし議員は、これらの文献について一切言及しませんでした。

日本共産党国会議員が、日本共産党の文献について説明できないとは、珍現象ではないでしょうか。

主体思想を無視して北朝鮮を語る大門みきし議員


大門議員は、北朝鮮は社会主義でも共産主義でもない、個人独裁国家だと主張していました。

個人独裁国家という体制把握はマルクス主義の手法ではなく、ブルジョア政治学のそれではありませんか。

私見では、マルクス主義は経済が土台であり、政治は上部構造であると主張する。北朝鮮を経済から考える際、社会主義ではないというなら北朝鮮は資本主義なのでしょうか。

大門議員は北朝鮮経済を総合してどう把握するかについて一切説明しませんでした。

政治についても、大門議員は2回の放送で主体思想について全く説明していない。

朝鮮労働党の理論や政策について説明するとき、主体思想を無視するのは異様です。

在日本朝鮮人総連合会の皆さんがこの放送を見たら、仰天するのではないでしょうか。

大門みきし議員は、朝鮮労働党との交流再開を志位和夫氏に提言すべきだ


北朝鮮と対話することが何より大事だ、皆で対話をしようと大門議員は力説していました。

それならば日本共産党は朝鮮労働党との交流を、いかなる前提条件もおかずに再開すべきです。

「皆で対話をしよう」「対話は譲歩ではない」と大門議員は放送で主張していました。「皆」の中に、御自分や日本共産党は含まれていないのでしょうか。

大門議員は、まずは在日本朝鮮人総連合会の皆さんと対話すべきです。

奇々怪々な北朝鮮論だったとしか言いようがない。





2018年2月10日土曜日

河邑重光「反共市民主義批判」(新日本出版社昭和60年刊行)と「市民と野党の共闘」論より思う―反党分子は市民か―

日本共産党にとって、反党分子とは、みずから綱領、規約を認めて党員となりながら、個人的な主張や利害にしがみついて党に反対し、規約をふみにじって党に対する破壊活動をおこなうに至ったものである」(同書p25-26より抜粋)。


少し前に、沖縄県名護市の市長選挙がありました。普天間基地の辺野古への移転に強く反対した現職市長が、自民党、公明党が支援した対立候補に敗北しました。

日本共産党と左翼の皆さんはこの選挙にかなり力を入れていたようです。選挙後のtwitterでは、日本共産党は辺野古への移転は民意ではないと主張しています。

米軍基地のない沖縄をつくるため、市民と野党の共闘を一層進めていくそうです。

志位和夫氏ら日本共産党員に問う―市民とは誰か


志位和夫氏ら日本共産党員、左翼の皆さんにお尋ねしたい。市民とはどんな方々なのですか。

察するに、日米軍事同盟強化に反対する方の事を、近年の日本共産党は市民と定義していいます。

それならば、上記の反党分子の皆さんの中には、日米軍事同盟強化に反対する方はいくらでもいることでしょう。

在日本朝鮮人総連合会や、在日の中国共産党員の皆さんも市民です。習近平、金正恩も市民です。

反党分子、反党反革命分子は市民なのか。習近平、金正恩は市民なのか。

この問題を、志位和夫氏ら日本共産党員は真剣に検討すべきではないでしょうか。

小田実氏は反党分子の皆さんを市民とみなした


反党分子の皆さんと友情関係、交流を深めていた小田実氏は河邑重光氏の本では「反共市民主義」「反共分裂主義」と規定されています。

当然ですが、小田実氏は反党分子も市民であると考えていました。

河邑重光氏によれば、小田実氏が参加していた「日本はこれでいいのか市民連合」には、反党分子、反党反革命分子の方々も沢山参加していたそうです。

河邑重光氏ら、30年ほど前の日本共産党員は反党分子、反党反革命分子の方々は日本共産党を批判するから、市民ではありえないと考えていた。

反党分子との共闘を提唱する小田実氏を、河邑氏は徹底批判していたのですが、その後暫くしたら小田実氏を日本共産党は批判しなくなりました。

どういうわけか、路線転換がなされたのです。不破哲三氏がこの路線転換を主導したのでしょうけれど、理由は全くわかりません。

「党に対する破壊活動」とは何か


河邑重光氏によれば「党に対する破壊活動」を反党分子の方々がなさっているそうですが、破壊活動とは一体何でしょうか。

文字通り理解するなら、各地の日本共産党の建物に爆弾を仕掛けるなどして破壊する事でしょうか。

それならテロリストですから、市民との共闘どころか警察に逮捕してもらうべきです。

暴力を社会運動の手段として用いる方とは、一緒に行動したくないですね。

しかし、反党分子の方々が日本共産党を言論活動で批判しているだけなら、それを「党に対する破壊活動」と把握するのは不適切です。

民主主義社会では、政治家や政党がいろいろな方から、批判をされます。批判が不当と考えるなら、反論すればよい。それだけの話です。

自民党を批判する国民を、「反自民分子」と規定して社会運動から隔離しようと自民党が策したら、異様です。

「反党分子」「宗派分子」と富農、人民の敵


日本共産党や在日本朝鮮人総連合会の皆さんは、反党分子あるいは宗派分子という人間把握を長年してきました。

この人間把握は、旧ソ連での「富農」「人民の敵」以来、共産主義運動の伝統ともいえます。

私は宗教にあまり詳しくないのですが、マニ教に善悪二元論のような考え方があるようです。ロシア正教にもその影響があったのでしょうか。

レーニンの「富農は吸血鬼だ」論がボリシェヴィキに普及していった背景に、ロシア正教の教えが何か関連していたのではないでしょうか。

日本社会では、善悪二元論は普及しにくい。

小田実氏流の、反党分子も市民論を志位和夫氏が採用したら、日本共産党は見直されるかもしれません。

志位和夫氏にそれだけの路線転換を行う度胸はなさそうですが。







2017年12月30日土曜日

共産主義者と「祖国擁護」について―レーニン「プロレタリア革命と背教者カウツキー」(全集第28巻、大月書店刊行)より思う

「『祖国擁護』をみとめることは、プロレタリアートの見地からすれば、現在の戦争を弁護し、この戦争の正当性をみとめることである。

ところで、現在敵対する軍隊がどこにいるか、自国にいるか、それとも他国にいるかにかかわりなく、戦争は依然として帝国主義戦争であるから、祖国擁護の承認は、実際には帝国主義的・強盗的ブルジョアジーを支持することであり、社会主義を完全に裏切ることである」(全集第28巻、p300より抜粋)。


金正恩と朝鮮労働党の核ミサイル攻撃に対し、どうやって日本国家と日本人を守るべきか。

朝鮮労働党は繰り返し、日本への核攻撃を明言しています。朝鮮労働党の蛮行の歴史を考慮すれば、これは根拠のない脅かしではない。

この問題については政治家はもちろん、知識人、社会運動家、日本国民なら真剣に議論し、見解を表明すべきことでしょう。

私見では、日米軍事同盟の抜本的強化と巡航ミサイルの大量保有がどうしても必要です。

日本攻撃への徹底的な反撃力の存在を、金正恩と朝鮮労働党に誇示すれば、金正恩は朝鮮人民軍に指令を出しにくくなる。

共産主義者は朝鮮労働党の核ミサイル攻撃に対し、ミサイル防衛網を発動することに反対する


志位和夫氏ら日本共産党議員と支援者の皆さんは、安倍総理に金正恩、朝鮮労働党と対話をせよというだけです。

核ミサイル攻撃が現実のものとなった場合、安倍総理がミサイル防衛網と日米安保を全面発動して金正恩に反撃することには、日本共産党は断固反対らしい。

これでは、日本共産党は日本人は朝鮮労働党の核ミサイルにより溶けてしまえ!と主張しているといわれても仕方ない。

共産主義者が信奉するレーニンの「祖国擁護=社会主義への裏切り」論


志位和夫氏ら日本共産党員に限らず、左翼知識人や運動家は、朝鮮労働党の核ミサイル攻撃にどう対処、反撃するのかという議論と思考を嫌がる。

これは共産主義者と左翼知識人、左翼運動家が、上に記したレーニンの「祖国擁護=社会主義への裏切り」論を信奉しているからだと考えると、わかりやすい。

共産主義者にとって、米国は帝国主義、日本は国家独占資本主義です。従って日米政府が行う戦争は全て、帝国主義戦争です。

金正恩の核ミサイル攻撃に対し、ミサイル防衛網と日米安保を全面発動して反撃することは、帝国主義戦争を開始することに他ならない。

北朝鮮は途上国です。北朝鮮には金融資本がないので、海外侵略を行う経済的基盤がない、という結論がマルクス主義経済学なら導かれる。

レーニンの論文「プロレタリア革命と背教者カウツキー」は良い論文です。戦争と革命の際に共産主義者がとるべき態度が、明白に示されています。

レーニンは敵軍が自分の国土に侵入してくる場合でも、祖国を守るべきでないと断言した


この論文でレーニンは、さらに次のように述べ、「祖国擁護論」を唱えたカウツキーらを徹底批判しています。

「ドイツのカウツキー派、フランスのロンゲ派、イタリアのトゥラティ派はこう論じている。社会主義は民族の平等と自由、民族の自決を前提とする。

だから、自分の国が攻撃される場合や、敵軍が自分の国土に侵入してくる場合には、社会主義者は祖国を守る権利と義務がある、と。

しかしこの議論は、理論的には、社会主義をまったくばかにすることであるか、ペテン師的な逃げ口上であり、実践的=政治的には、戦争の社会的・階級的性格についても反動的な戦争の時期の革命的政党の任務についても考えることさえできない、全く無知な百姓の議論と一致している」。

ロシア農民の素朴な愛国心の方が、共産主義者の奇怪な理屈よりどれだけましだったろうと思うのは私だけでしょうか。

志位和夫氏ら日本共産党員が、中国共産党、朝鮮労働党の日本侵攻策動に対し具体的な反撃策を一切議論しないのは、レーニンの理論を信奉しているからです。。

日本共産党員がレーニン主義者であるならば、祖国擁護に断固反対せねばなりませんから。




2017年12月28日木曜日

レーニン「プロレタリア革命と背教者カウツキー」(1918年10月―11月執筆。全集第28巻掲載、大月書店刊)より思う。

「印刷所と紙がブルジョアジーから没収されているから、出版の自由は偽善ではなくなっている。りっぱな建物、宮殿、邸宅、地主の家についても同様である。ソヴェト権力は、こういうりっぱな建物を何千となく搾取者から一挙にとりあげた」(全集第28巻、p262より抜粋)。


日本共産党元参議院議員の聴濤弘氏は近著で、十月革命は地主の土地の没収や8時間労働制・全般的社会保障の導入などを実現する「ブルジョア民主主義革命」だったと主張しています(「ロシア十月革命とはなんだったか」本の泉社、p76)。

民主主義革命ならば、当時のロシアには民主主義が確立していたのでしょうか。

民主主義の大前提である、人々の生存権はどうだったのでしょうか。

当時のロシアは、経済が破たんしており相当数の人々が失業し、飢餓状態でした。

革命期のロシアについては、長谷川巌「ロシア革命下ペトログラードの市民生活」(中公新書)が詳しい。

ペトログラードでは革命期に社会秩序が崩壊し、犯罪が蔓延していきました。生存権の確立とは程遠い。

1918年には内戦が激化します。

8時間労働制や社会保障制度など言葉だけで、実体は何もない。ロシアの現実と無縁の宣伝に過ぎない。

そもそも社会保障制度があれば、飢餓状態になるはずがない。

失業者は働き場がないから8時間も労働できない。

衛生状態が悪化し、赤痢やコレラが流行し、暴力事件が頻発しているのが当時のロシアだったのです。

土地や住んでいた邸宅を没収された地主、貴族はその後、どうなったのでしょうか。

放浪して餓死した方は少なくなかった。

聴濤弘氏はそもそも、レーニンの「プロレタリア民主主義論」を御存知ないとしか思えません。

ボリシェヴィキはブルジョアジーと地主の邸宅を一挙に没収した


レーニンはプロレタリア民主主義について、論文「プロレタリア革命と背教者カウツキー」で詳述しています。

上記によれば、レーニンはブルジョアジーとレッテル貼りをした人たちに紙を印刷所の使用権を剥奪しました。

ブルジョアジーと地主の邸宅を何千となく一挙に没収したのです。これは私有財産制を保障するブルジョア民主主義ではありえない。

レーニンはプロレタリア民主主義の立場から、搾取者を暴力的に抑圧することを正当化しました。以下です。

「ロシアでは、官僚機関は全く破壊され、一物も残さず破壊しつくされ、旧裁判官は全部追放され、ブルジョア議会は解散された。

そしてとくに労働者と農民とにはるかに近づきやすい代議制度が与えられ、官吏は彼らのソヴェトと取り換えられるか、彼らのソヴェトが官吏のうえにすえられ、彼らのソヴェトは裁判官の選挙人とされた」(全集第28巻、p263-264より)。

レーニンはこのように認識していたのでしょうが、官僚機関が完全に破壊されたとは考えにくいですね。うまく身を処して生きのびた役人もいたはずです。

現実がこの記述どおりなら、1918年頃のソ連の裁判所はソヴェトを通じてボリシェヴィキの完全な支配下にあった事になります。

ともあれ、レーニンのプロレタリア民主主義論では、裁判所はソヴェトに従属すべき組織です。

レーニン「階級としての搾取者を暴力的に抑圧せよ」


さらにレーニンは次のように断言しています。

「独裁の欠くことのできない標識、独裁の必須の条件は、階級としての搾取者を暴力的に抑圧することであり、したがって、この階級に対して「純粋民主主義」を、すなわち平等と自由を破壊することである」(全集第28巻、p271)。

階級としての搾取者、すなわち地主、貴族、富農やロシア正教会関係者を暴力的に抑圧する事が、プロレタリア民主主義であるとレーニンは考えていたのです。

レーニンとボリシェヴィキの暴力を強く批判したカウツキーの理論は、「純粋民主主義」であるからマルクス主義と無縁である旨、レーニンはこの論文で繰り返し述べています。

住居が邸宅であれ、突然暴力的に没収されたら怒らない人がいるでしょうか。

住居から追放されたら、寝泊まりする場所がなくなってしまいます。酷寒のロシアで、長く生きられるはずもない。

地主や貴族、富農がボリシェヴィキに抵抗するのは、自らが生きのびるためだったのです。

レーニンのプロレタリア民主主義論は、愛弟子スターリンに継承されました。

ソ連はスターリンにより変質させられた、などと志位和夫氏らは宣伝しています。

レーニンの「プロレタリア革命と背教者カウツキー」や、富農撲滅を唱える諸論文を志位和夫氏、聴濤弘氏らは一体どのように読んでいるのでしょうか。

レーニン全集を真面目に読めば、レーニンの教えをスターリンが忠実に実行したから、多くのボリシェヴイキ幹部に支持されたのだと考えるべきです。









2017年11月26日日曜日

レーニンの時代の大飢饉とロシア正教会弾圧指令について思う。H. カレール=ダンコース「レーニンとは何だったか」(石崎晴巳・東松秀雄訳。藤原書店刊)より。

「飢饉がロシアに襲いかかったのだ。旱魃ですべてを説明するのは無理な話だった・強制徴発を初めとする農村部で実行された暴力行為が、農村の社会組織を破壊し、農民たちを餓えさせ、その生産能力を打ち砕いたのである」(同書p560より抜粋)。


ロシア革命とは何だったのでしょうか。この問題に、日本共産党員と左翼人士はもっと関心を持るべきです。

仏のソ連史学者ダンコースによれば、1921年7月頃飢饉はヴォルガ川中・下流地域の一部、カフカス北部とウクライナの一部で顕著でした。

死者が500万人、家族を失い放浪と犯罪に身を任せた孤児が数百万人とのことです。

レーニンによる富農弾圧指令について、本ブログは何度か指摘してきました。相当数の地主、富農が財産を没収されたと考えられます。

ロシア正教会のチーホン総主教はボリシェヴィキに抗議した


この時期に、相当数の餓死者が出ていたことは、レーニンがモロトフに出した教会の財産没収指令にも記載されています(1922年3月19日)。

この指令はソ連共産党により長年秘匿されていました。

日本語に翻訳されている「レーニン全集」には掲載されていません。ダンコースの前掲書にこの指令が掲載されています(p565)。次です。

「飢えた地域で人々が人肉で飢えをしのぎ、数百ないし数千に及ぶ死体が路上で腐敗して行く今この時においてのみ、われわれは最も粗暴にして最も情け容赦ない活動をもって、教会の宝物の没収を実現することができる」。

1918年頃から、レーニンとボリシェヴィキはロシア正教会を徹底弾圧してきました。

ロシア正教会のチーホン総主教がソヴィエト政府に宛てて発したメッセージが残っています。

これは廣岡正久「ロシア正教の千年 聖と俗のはざまで」(日本放送協会刊。p144-146)に掲載されています。

チーホン総主教によれば、何の罪もない主教、司祭、修道士そして尼僧たちが、反革命などという大雑把で曖昧な罪名で射殺されています。

不破哲三氏、聴濤弘氏(日本共産党元参議院議員)はなぜレーニンによる凄惨な弾圧指令を直視しないのか


レーニンとロシア革命について、不破哲三氏は数々の著作を出していますが、レーニンによるロシア正教会弾圧指令について不破氏は何も述べていません。

日本共産党元参議院議員の聴濤弘氏は、ソ連問題の研究家として知られています。

聴濤氏がレーニンの時代の飢饉と、富農弾圧指令、ロシア正教会弾圧について一切知らないとは考えにくい。

聴濤弘氏の近著「ロシア十月革命とは何だったのか」(本の泉社刊)にも、これらについての言及はありません。

ロシア語の本をいくらでも読み込める聴濤氏なら、これらについて詳述した近年のロシア人歴史学者による本を知っているはずです。

不破哲三氏がこれらの史実を無視しているのに、日本共産党の元国会議員が自分なりの見解を出すと厄介な事になりかねない、という判断があるのでしょうか。

500万人の餓死者という数値は、誰しもにわかに信じがたい。ともあれ、相当数の餓死者が出たことは間違いない。

全ての史実を網羅して歴史を語る事はできません。

しかし大量餓死とロシア正教会の徹底弾圧がロシアの社会経済に与えた影響を無視してロシア史を語るのはあまりにも近視眼的です。