2017年3月6日月曜日

金正日の「社会的政治的生命体論」から金正男氏殺人事件を考える―領袖の孫、息子は社会的政治的生命体の頭脳である領袖と無関係なのか―

「金日成同志は、史上初めて、個人の肉体的生命と区別される社会的政治生命体があることを明らかにしました。不滅の社会的政治生命体は、領袖、党、大衆の統一体である社会的政治的集団を離れては考えられません。


(中略)個々人の生命の中心が頭脳であるのと同じように、社会的政治集団の生命の中心はこの集団の最高頭脳である領袖です。」(金正日『チュチェ思想教育における若干の問題について」、朝鮮労働党中央委員会の責任幹部との談話―1986年7月15日)


在日本朝鮮人総連合会の皆さん。主体思想を一生懸命学んでいるのなら、金正日のこの論文を御存知でしょう。

金正日によれば、領袖を社会的政治的生命体の最高頭脳というのは、領袖がまさにこの生命体の生命活動を統一的に指揮する中心だからです。

朝鮮労働党は領袖を中心に組織的、思想的に強固に結合した人民大衆の中核部隊として、自主的な社会的政治的生命体の中枢をなしています。

在日本朝鮮人総連合会の皆さんも、金日成民族、金正日朝鮮の一員として、社会的政治的生命体に入っていらっしゃるのでしょう。

個人は党と運命をともにするとき、不滅の社会的政治的生命をもつ


金正日によれば個々人は党組織を通じて社会的政治的生命体の中心である領袖と組織的、思想的に結合し、党と運命をともにするとき、不滅の社会的政治的生命をもつようになるそうです。

領袖とは金日成を指すのでしょう。金日成死後は、金正日が「領袖」になりました。

では在日本朝鮮人総連合会の皆さんにお尋ねしたい。

領袖の孫、「党中央」すなわち金正日の息子金正男氏は朝鮮労働党の組織を離れて海外で、きままな暮らしをするようになりました。

金正男氏は社会的政治的生命体の中心である領袖との血縁的な結びつきが希薄になっていたのでしょうか?

「親バカ」金正日と「爺バカ」金日成


金正日にとって、金正男氏は「放蕩息子」「駄目息子」だったかもしれません。しかし金正日は成ヘリムさんが金正男氏を産んだとき大喜びしたそうです。

李韓永氏の手記「金正日に暗殺された私」(太刀川正樹訳 廣済堂出版)によれば、金正日は「親バカ」でした(同書p58 )。

金正日が長男の存在を初めて金日成に話したは、1975年4月ごろだったそうです。金日成は初めは金正日を𠮟りつけましたが、すぐに気を静め、会ってみようという話になったそうです。

会ってみるとその子は、大きな目だけは母親似ですが口元から鼻にかけては幼い頃の金正日そっくりで、金日成はたちまちこの子を気に入り、「正男」と名付けたそうです。

これ以降、金日成は暇さえあれば正男を側において可愛がり、「親バカの金正日」以上に「爺バカ」ぶりを発揮したと李韓永氏は記しています(同書p61-62)。

李韓永氏は成ヘリムさんの姉の息子ですから、金正日の甥です。

李氏は子供の頃、「十五号官邸」という、中央党本庁舎のすぐそばの金正日邸で金正男氏と一緒に過ごしたたそうです。

在日本朝鮮人総連合会の皆さん。

主体思想では、「領袖」の孫ないしは息子は、社会的政治的生命体のどこの部分になるのでしょうか。頭脳の近くなら、顔のどこかでしょうか。

金正日の論文は、これについて何も解明していません。

「領袖」も「偉大なる領導者」も、幼き正男を目の中に入れても痛くないぐらいに思っていたのです。初孫で長男ですから。

金正男氏は領袖と党から離れていたから、人間の本性に反する価値のない生活をしていたのか


金正日によれば、領袖は社会的政治的集団の中心ですから、革命的信義と同志愛も領袖を中心としたものになるべきです。

領袖は社会的政治的生命体の最高頭脳であり、集団の生命を代表しているため、領袖への忠実性と同志愛は絶対的で無条件的なものとなります。

社会的政治的生命体から離れて自由奔放に生きていた金正男氏は、三大世襲を批判していました。

金正男氏は領袖金正恩への絶対的で無条件な忠実性と同志愛を否定したと言えます。会ったこともない弟にそんなものを求めても無理でしょう。

金正男氏は領袖と党から離れ、孤立した生活をしていたから、人間の社会的本性に反する価値のない生活をしていたことになるのですか。

従って金正男氏は、外国人女性によりVXガスで殺害されてしかるべき存在であると、草葉の陰にいる「党中央」、金正日が考えるはずがない。

「偉大なる領導者金正日将軍」は放蕩息子金正男の面倒を見てくれと妹金慶喜、張成澤に遺言を残したのでは?


金正日は、絶対性、無条件性をもって金正男氏を愛していたのではないでしょうか?

「社会的政治的生命体」とやらから離れた「放蕩息子」でも、父親としての愛情は何一つ変わらなかった。

正男は放蕩息子だから後継者にはしないが、面倒をみてやってくれと金正日は妹金慶喜と張成澤、そして金正恩に遺言をして亡くなったのではないでしょうか。

全くの推測ですが、私にはそう思えてならない。

朝鮮学校教職員の皆さんは、子供たちに「社会的政治的生命体」から離れた金正男氏は、実父の領袖と無縁だから外国人女性によりVXガスで殺害されてしかるべきだと教えるのでしょうか。

それならば、リビアの革命は素晴らしい、金正恩は独裁者だとフィンランドのテレビ番組で語った金ハンソル氏(金正男氏の長男)も同様ですか?

金正日の孫、金ハンソル氏が、国家安全保衛省の次の的になっているかもしれないのです。

「偉大なる領導者 金正日将軍」が明らかにしたという総連事業方針は、金正日の息子や孫をどのように処遇せよと述べていたのでしょうか。

金正日の遺志はどうあれ、金正恩と国家安全保衛省の好きなようにさせるのが「自主的な生き方」なのでしょうか。


2 件のコメント:

  1. 大変勉強になりました。黒坂先生ありがとうございます。

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  2. 有難うございます。今後も文献に基づいて、在日本朝鮮人総連合会や日本共産党、左翼を批判したいと思っています。VXガスという化学兵器が、日本で北朝鮮工作員や北朝鮮工作員にそそのかされた外人や日本人により散布されたら、日本人だけでなく在日本朝鮮人総連合会の皆さんも犠牲になるかもしれません。これを朝鮮学校でどう教えるのでしょうね。

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