2022年6月12日日曜日

中北浩爾一橋大教授の日本共産党はイタリア共産党化せよ論より思うー志位さんにはこれは無理ですー

6月3日の毎日新聞に、中北浩爾一橋大教授のインタビュー記事が掲載されていました。

中北教授は、日本共産党が野党連合政権を本気で目指すなら、中道左派の社会民主主義に移行するべきと語っています。

これはかつて、イタリア共産党がたどった道です。

日米安保と自衛隊を肯定し、大企業と財界に対する敵視をやめ、一定のパートナーシップを構築するべきと中北教授は提案しています。

これは無理です。中北教授は百も承知かと思いますが、一昔前の日本共産党は書籍まで出して、NATOを容認したイタリア共産党を徹底批判していたのですから。

一昔前の日本共産党は、NATOは核軍事同盟で核戦争の根源になっていると批判


この本には、「イタリア共産党の社会主義インターへの統合志向は何を意味するか」(緒方靖夫・金子逸)、「イタリア共産党第18大会が示したもの」(緒方靖夫)などのイタリア共産党批判が掲載されています。

要は、イタリア共産党が軍事力均衡論、核抑止論の見地からNATOを容認したから社会民主主義に転落したという話です。

イタリア共産党は、第一次世界大戦時に祖国擁護を唱えて帝国主義戦争を支持した欧州社会民主主義勢力と同じになったから科学的社会主義と決別したそうです。



緒方靖夫さんによれば、第二インターナショナルは第一次大戦が相互にとっての侵略戦争であることを「祖国擁護」の名で覆い隠しました。

緒方靖夫さんによれば、NATOはアメリカ帝国主義を盟主とした侵略的反共軍事同盟です(同書p50)

緒方さんによれば、イタリア社会党は1983年から1987年まで連立内閣で首相を出し政権を担当しました。キリスト教民主党との連合を軸にした五党連立体制をすすめ、NATOの核ミサイル配備、戦闘機受け入れなどの軍事ブロック強化策を進めています。

そこでイタリア共産党が欧州左翼を掲げ、社会民主主義政党との共同を推進する際に、NATO容認が最も重要な共通の前提になると緒方さんは記しています。

要は、政権に参加するためにNATOを容認するようになったイタリア共産党は転落した、という主張です。

日本共産党と昔の社会党、イタリア共産党の安全保障政策は大同小異

それなら、立憲民主党との政権に参加できたら日米安保と自衛隊を活用する今の日本共産党も、昔のイタリア共産党と大同小異ではないですか。

昔の社会党、イタリア共産党は政権に参加したら日米安保と自衛隊、NATOをそれぞれ容認する路線に転じました。

それで右転落、なら政権に参加したら日米安保と自衛隊を活用する日本共産党が平和と政治革新のためにたたかっているという宣伝は、支離滅裂です。


欧州では昔から、戦争が繰り返されてきた

欧州の歴史を少しでも調べれば、欧州諸国が戦争を繰り返してきたことがわかります。帝国主義、金融資本とやらが欧州諸国間の戦争を起こしたのではない。

ハプスブルグ家(神聖ローマ皇帝)とヴァロア家(仏)の対立から始まったされるイタリア戦争(1494~1559)は、イタリアの小さい国家やローマ教皇だけでなく、英国も巻き込んで続きました。

日本の戦国時代に、ハプスブルグ家とヴァロア家で大戦争が行われていたのです。両家の対立は、その後も長く欧州諸国間の関係に影響を与えました。

欧州には、日本の江戸時代のように長く平和が続いた時代はなかったのです。

北方戦争(1700=21年)、オーストリア継承戦争(1740~48年)、プロイセン、オーストリアとロシアによるポーランド分割(1772年)、ナポレオンの戦争、プロイセン=オーストリア戦争(1866年)、プロイセン=フランス戦争(1870~71年)等など、近現代史に欧州諸国間の戦争は沢山あります。

第一次世界大戦時に内乱を起こしたら、自国は近隣諸国に徹底的に蹂躙されてしまいます。隣国に隙があれば侵攻することが当然でした。

欧州社会民主主義者はそれ等を知らないような無知な方々ではなかった。欧州は戦国日本と大差なかったのです。

緒方靖夫さんらは、第一次大戦開戦前の欧州では、数百年間平和が維持されてきたと考えていたのでしょうか。

日本共産党員は現実の政治と経済、社会を調べず、マルクス、エンゲルス、レーニンの主張を現実にあてはめる

日本共産党員は、マルクスやエンゲルス、レーニンの主張から出発して現状を都合よく解釈します。

レーニンかく語りき、から出発して欧州情勢を語れば、欧州諸国が直面してきたソ連の軍事脅威を無視することになります。

NATOは帝国主義の産物だから、NATOを解体せよと叫ぶことになります。

マルクス主義経済学の見地では、労働者は資本家に搾取されています。

搾取の成果は、大企業に内部留保として滞留していると田村智子議員は大まじめで信じていそうです。

田村智子副委員長は、各地の街頭演説で大企業内に巨額のお金が滞留しているから回せ、回さないと経済が腐るという話をしています。

田村智子議員は、貸借対照表の見方を知らないようですね。企業の内部留保は、その企業が保有する現金・預金総額と一致すると信じているらしい。


株主は企業経営の危険を資金を提供して負担し、社会貢献をしている

大企業の内部留保は、何らかの形で投資されているのですから、大企業を構成する経営者、労働者、株主、債権者に何らかの経路で還元されていきます。

大企業が空前の利益を計上したら、株価上昇、高配当で株主は得をします。経営者と労働者も高収入を得ることができるでしょう。

その企業の株主になっている経営者、労働者は株主としても得をしたことになる。大企業が何かの投資に大失敗し、大赤字を計上したらこの逆になります。

株主は企業経営の危険を資金を提供して負担することにより、社会貢献をしています。

大企業の大株主は、その企業に自分の命運を託しているともいえる。

保有資産が数十兆円のような超富裕層が、日本株に多額の投資をしてくれるなら、その企業と日本社会の安定に大いに貢献していると見るべきです。

レーニンの富農=吸血鬼論を信じている日本共産党員に、大株主が大金を提供して社会貢献をしているなど認められるはずもない。

志位さんが中北浩爾一橋大教授の問題提起(1)日米安保と自衛隊肯定(2)大企業、財界の敵視をやめる、を真剣に受け止め、集団的自衛権の容認と大企業の内部留保肯定論を提起するなど、考えられません。

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