2016年9月23日金曜日

アンドレ・ジイド「ソヴェト旅行記」(Retour de L' U. R. S. S. 小松清訳。岩波文庫昭和12年、1937年刊行)を読みました。

「スターリンはいつも正しいということは、とりもなおさず、スターリンがすべての権力を握っているということと同じである。人々は「プロレタリアの独裁」を約束した。しかし、約束の感情はあまりにも桁違いでなかろうか。いかにも独裁はある。だが、それは唯一人の人間の独裁であって、結合したプロレタリア、即ちソヴェトのそれではない。...人々が願ったものは、あんなものではなかった。、もう一歩向こうに行くと、こんなことも言えるだろう。人々が願わなかったものは、正しくこれだったと」(同書p98より抜粋)


アンドレ・ジイド(1869-1951)は、「狭き門」等で有名なフランスの作家です。

ジイドはマキシム・ゴーリキーの病が重いという知らせを聞き、1936年(昭和11年)6月にモスクワを訪れました。

それまでジイドはソ連を熱烈に支持していたのですが、一か月ばかりのソ連滞在でその本質を見抜きました。

ソ連ではスターリンによる専制支配体制が確立していることを、ジイドは僅かな滞在期間で看破したのです。当時の仏共産党員はこの文をどう受けとめたのでしょうか。

この本が出版されてすぐ、欧州でかなりの反響をよんだと翻訳者が解説しています。

ジイドが見たスターリン専制下でのソ連国民の暮らし―順応主義(Conformisme)


ジイドはソ連国民の日常生活を緻密に観察し、今の私たちにも参考になることをいくつも見出しています。

第一に、モスクワの民衆は呑気で無精です。ソヴェトでは労働者を少しでも放っておくと、十人中八、九までもが怠け者になってしまいます。

そこでスタハノフ運動という生産性向上運動が必要だったのだろうとジイドは述べています。

第二に、ソヴェトでは全てのことに、一定の意見しか持てません。人々は非常によく訓練された精神の持ち主となっています。

画一主義、順応主義(仏語ではConformisme)がソヴェト社会に蔓延しています。

プラウダ(ソ連共産党の機関紙)は国民が知り、考え、信じるにふさわしいことを教えています。その教えの範囲から外に出ることは危険です。

第三に、ソヴェトの市民は、外国のことについて徹底的に無知です。ソヴェト市民は、外国ではすべてのものがあらゆる方面でソヴェトよりうまく行っていないと教え込まれています。

ソヴェト市民は自分たちが外国より優れていると思い込んでいます。

第四に、ソヴェトではほんの僅かな抗議や批判さえも最悪の懲罰をうけます。

抗議や批判はすぐに窒息させられます。

ソヴェトではヒットラー独逸より、人間の精神が不自由で、圧迫され、恐怖に脅えて従属させられています(同書p85-86)。

ジイドは、人々を政治犯収容所に連行する秘密警察の存在を知っていたのでしょうか。

ジイドは農業集団化のための富農一掃が、富農とレッテルを貼られた農民の大量虐殺であることを見抜いたのでしょうか。

大量餓死の存在まで、短い期間でジイドが知ったとは考えにくい。

関貴星「楽園の夢破れて」は金日成による専制支配を看破した


この本を読み、私は関貴星氏の「楽園の夢破れて」(亜紀書房より再刊)を思い出しました。

関貴星氏も、僅かな北朝鮮滞在で金日成による専制支配の存在を見抜き、告発しました。

ジイドによるソヴェト批判は、日本ではすぐに「中央公論」誌に翻訳されて掲載されました。宮本百合子はジイドに反発し、「こわれた鏡」などと論じています。

レーニン、スターリンとボリシェヴィキを盲信していた宮本百合子には、3年ほど居住してもソ連社会の真実を全く見抜けませんでした。

宮本百合子の「鏡」こそ、完全に破壊されていたのです。

宮本顕治氏はジイドのこの文章が発表された頃監獄にいましたから、その頃はこれを読めなかったでしょう。

しかし戦後、監獄から出てきた後には読む気があれば読めたはずです。

宮本百合子がジイド批判を書いていたことを宮本顕治氏は承知していたはずですから。

「人間抑圧社会」ソ連を礼賛した宮本夫妻の生き方より―「民主主義文学運動」とは、人間抑圧社会礼賛運動なのかー


宮本顕治氏がジイドの「ソヴェト旅行記」を読んだかどうか不明ですが、ソ連とスターリンへの盲信を表明する論文を宮本氏はいくつも書いています。

本ブログを何度か訪問して下さった方なら御存知ですね。ソ連居住経験のある宮本百合子は、宮本顕治のソ連盲信を「実体験」の知識を提供して支えたことでしょう。

今の日本でも、北朝鮮を盲信し金日成、金正日、金正恩を礼賛する在日本朝鮮人総連合会で専任職員として勤務している御夫婦はいらっしゃるでしょう。

宮本夫妻の生き方と在日本朝鮮人総連合会職員の御夫婦の生き方はよく似ています。

吉良よし子議員、池内さおり議員は、中国、北朝鮮による凄惨な人権抑圧を直視すべきだ


現在の日本共産党員の御夫婦は、中国や北朝鮮における凄惨な人権抑圧をどう考えているのでしょうか。

日本共産党員には、中国と北朝鮮の核軍拡が日本の平和と安全を脅かしていることについて思考と議論ができにくい。

日本共産党員の中では、ジイドのいう「順応主義」が蔓延しています。不破さん、志位さんの言うとおりにしていればよい、という調子です。

「順応主義」は、日本共産党職員の方の中で根強いようです。有事の際に自衛隊の出動を認めるか否か、中国の人権問題などで突出した発言をすると厄介ですから。

吉良よし子議員、池内さおり議員はジイドの「ソヴェト旅行記」や宮本百合子のジイド批判を御存知でしょうか。

早大文学部卒の吉良よし子議員は読書好きだそうですから、宮本百合子のソ連礼賛文を少しは読んでいることでしょう。

宮本百合子による「人間抑圧社会」礼賛文は、「民主主義文学」「プロレタリア文学」なのでしょうか。読書好きの吉良よし子議員にお尋ねしたいですね。

関貴星氏の「楽園の夢破れて」(亜紀書房より再刊)を、吉良よし子議員、池内さおり議員ら若い共産党員の皆さんには読んで頂きたい。

ソ連を礼賛した宮本夫妻の生き方を、「民主主義文学運動」に参加している作家の皆さんや吉良よし子議員、池内さおり議員は一切批判できないのでしょうか。

「民主主義文学運動」とは、日本共産党を盲信する人々を描く文学運動なのでしょうか。

不破哲三氏や金日成、金正日を盲信する共産党員や在日本朝鮮人総連合会の皆さんの内面をえぐりだしていく文学こそ、「民主主義文学」ではないでしょうか。




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