中年になったら誰しも、若い頃の自分を振り返り、なぜ自分はこんなことをいったのか、あんなことをやったのかな、と思い起こす事があるのではないでしょうか。
周囲の方々に迷惑をかけてしまったな、という気持ちを持っているが、今さらどうしようもないな、という調子で日々の生活を送っている方が少なくないかと思います。
殆どの場合、それは個人的な事ですから公の場でその思いを表明する必要はないでしょう。
しかし、政治家や企業経営者が重大な判断ミスをして、所属政党の党員と支持者や、所属企業の従業員、株主あるいは消費者に迷惑をかけたなら、公の場や著作等でなぜ自分が間違ったのかを表明するべきではないでしょうか。
企業の場合、経営を示す指標が株主総会で報告されますから、経営危機になったら株主から徹底批判されることになります。
それでも、発行済株の相当な割合を保有していれば、経営者交代とはなりにくい。
インターネットで様々な企業が商品を売る場を提供するビジネスを早くから初めて高成長した某大企業の現状は、そんな調子です。
日本共産党議員・職員には指導者批判は困難
共産党という組織には、株主総会に相当する会議がありません。
日本共産党の場合、2,3年くらいの間隔で開催される党大会の開催前に、執行部が提案した大会議案に関する議論がなされます。
各地域の日本共産党組織が、誰が党大会に参加する代議員になるかを事実上決めます。
一般党員の場合、日本共産党の大会に参加しても大した利点はありません。自分が代議員になりたい、という方は稀と考えられます。
一般党員なら、日本共産党の指導者をインターネットなどで批判する事は難しくありません。
しかし日本共産党職員、議員は、指導者批判を極めてやりにくい。外部では勿論、日本共産党の内部でこれを行っても、何らかの形で不利益となる可能性が高いからです。
共産党の指導者は、自分の主張や理論、政策の誤りを認めない
共産党の指導者は自分の主張や理論、政策の誤りを認められません。
レーニン、スターリン、毛沢東、金日成、金正日のうち、自分の主張や理論、政策が根本的に間違っていたという告白をした人物はいません。
フルシチョフのように自分より前の指導者が間違っていた、と主張した指導者はいます。
日本共産党の歴代指導者も同様です。
指導者が誤りを認めたら、無謬神話が崩れてしまいます。共産党指導者の権威が低下してしまい、様々な波乱がありえます。
昭和31年2月のフルシチョフによるスターリン批判の後、10月にハンガリー動乱が起きました。中ソ論争が始まったのはこの頃です。
今の日本共産党は、第十六回大会で不破さんが批判した「社会主義完全変質論」を採用
「日本共産党の百年」(p34の四段落目。第三章の最後)は、昭和52年10月に開催された日本共産党第十四回大会決定で定式化された、社会主義生成期論の問題点を指摘しています。
「日本共産党の百年」によれば、社会主義生成期論はソ連などの現状を「生成期」という、社会主義に向かうレールの上に位置付けている点で、認識の制約と理論的限界を免れませんでした。
社会主義生成期論が間違っていたなら、宮本顕治さんが「前衛」に出した論文は大失敗論文です。この論文は、宮本顕治著作集には掲載されていません。
不破さんは日本共産党第十六回大会で、社会主義国が大国主義の誤りをおかしているから、その社会主義国は世界史の中で何の積極的役割も果たさなくなったという主張を社会主義完全変質論と規定しました。
今の日本共産党は、スターリン以降のソ連を覇権主義、人間抑圧社会と規定しています。これは社会主義完全変質論そのものです。
ソ連が覇権主義で人間抑圧社会だったのなら、大韓民国を滅亡させるべく朝鮮戦争に参戦した人民中国とやらも同様ではないですか。
大会決定が間違っていても、指導部に責任はないのか
不破さんは、第十四回大会当時は書記局長でした。
第十四回大会決定が間違っていたのなら、なぜ間違いを決定として普及したのかを、最高幹部だった方の一人として説明するべきではないでしょうか。
昭和5年生まれの不破さんは、93歳の今でも、常任幹部会という日本共産党の経営陣の一人です。
今の日本共産党員には、昔の大会決定や重要論文を改めて読んで、その含意を考えるような方が殆どいないようですね。
大会決定が間違っていても、指導部の責任を追及する方が全くいないなら、日本共産党は理論的力量衰退を加速化させると考えます。