在日本朝鮮人総連合会に連帯する左翼に問う
以下は、平成13年秋にホームページに掲載したものです。当時も、在日本朝鮮人総連合会と左翼勢力は朝鮮学校への補助金を増額するべく、自治体に要求していました。
在日本朝鮮人総連合会に同調する左翼のような人は、現在の韓国にも少なくありません。北朝鮮は今や、弾道ミサイルと核実験を断行し朝鮮戦争の休戦協定の破棄まで宣言しているのに、それでも全ての責任は米国にあると主張する政党が韓国の国会に議席を持っているようです。
韓国内のそうした人々を、従北勢力といいます。従北勢力の中には金正日政治軍事大学で子供の頃から教育された筋金入りの工作員がいるのかもしれません。
下記文中に「亡命者」という語がありますが、これは脱北者を指しています。十二年ほど前には脱北者という語はさほど使われていなかったのです。韓国でも、帰順者という語が用いられていました。
在日本朝鮮人総連合会と彼らに連帯する左翼とはいかなる人生を歩んできたのか、という問題を皆さんに考えて頂くため、長文ですが再掲します。
朝鮮総聯系の民族学校への補助金支出を全額削減するべきだ!!
在日本朝鮮人総聯合会が、傘下団体としている民族学校(朝鮮学校)に、相当数の自治体が様々な名目で補助金を出している。私は補助金を出す理由について幾つかの自治体に問い合わせてみた。
概ねどこの自治体からも「朝鮮総聯系の民族学校は学校教育法が定める一条校ではないが、それに準ずる教育、日本の義務教育に近い教育を行っていると考えているので、補助金を支出している」という旨の答えが返ってきた。
自治体関係者に問う。朝鮮学校が「一条校に準ずる教育」「義務教育に近い教育」を行っているという根拠は何か。皆さんは朝鮮総連系の民族学校が使用している教科書(特に歴史、道徳、音楽)や、教育内容を調べたのか。
中学生や高校生には「革命歴史」というような科目があり、内容は金父子崇拝教育と私は聞いている。道徳の時間には金日成の反日闘争、金正日の奇妙な逸話などが教えられているらしい。
音楽の時間には金父子を礼賛する歌を歌わねばならないようだ。実際、朝鮮学校には、少し前まで「偉大なる金日成元帥万歳」「金日成元帥様有難うございます」などという標語が掲げられていた(ごく最近は見かけない)。
朝鮮学校のホームページにあるカリキュラム表を見ると、「道徳」「革命歴史」の授業はないような印象を受けるが、そうだろうか。「朝鮮歴史」という授業はあるようだ。この授業はどのような内容になっているのだろうか。
例えばこの授業で、金日成や金正日による蛮行、あるいは大韓民国はどのように教えられているのだろうか。北朝鮮帰国者の悲劇など、朝鮮学校では全く教えられていないのではないか。自治体関係者はまずはこうした調査をするべきではないのか。
朝鮮学校が日本の小学校、中学校や高校の教育に近い教育を行っているというなら、朝鮮学校の教員は日本の大学を卒業して日本の教員免許を保持している筈であるが、自治体の皆さんはそれを調査したのか。
それとも皆さんは、「日本の学校教育など、教員免許を保持していなくても担当科目の本を多少読めば十分やれる。学校教育に教員免許は必ずしも必要ない」とでも考えているのか。
近年、「規制緩和」が大流行しているが、朝鮮学校に補助金を出している自治体関係者、朝鮮学校に補助金を出すことを主張する左翼人士や政治家は、「教員免許がない人間でも教職につけるよう、小学校、中学校や高校教育に関する規制を緩和するべきだ」と本気で考えているのか。
これは「教育学部、教育学科、教員養成課程など不要だ」ということに等しいことを皆さんは自覚しているのか。
自治体関係者は、在日韓国・朝鮮人の不当な要求に屈してはならない!!
恐らく自治体関係者や左翼人士はそのような調査を全くやっていないだろう。この人たちは、朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)がどういう団体なのか、全く知らないようだ。
知っていても朝鮮総聯の歴史と実態について思考し議論することをタブーにしているという方が適切かもしれない。
真に歯がゆいことであるが、多くの日本人は在日韓国・朝鮮人の団体や運動家の理不尽な要求に対し簡単に屈服してしまう。面倒なことには関わりたくない、金を多少出せば済むならそれで解決してしまえという発想があまりにも強い。
多くの在日韓国・朝鮮人の団体や運動家は日本人のこうしたひ弱な態度を利用して、「我々は植民地支配の被害者だ。加害者であり、差別をしてきた日本人、日本政府は、我々に謝罪と償いをするべきだ」(注1)などと主張して理不尽な要求を次々と突きつけて来る。
そして在日韓国・朝鮮人に参政権を与えろ、朝鮮学校に対し自治体が補助金を出せ、歴史教科書の記述を変えろなどという暴論を吐く。
こうした暴論は共産主義者や左翼人士の「平和理論」(日本がアジアの平和を脅かしているから、日本国家を弱体化させるべきという暴論。レーニンの「帝国主義論」のような発想でみると、経済成長を達成した国には世界的な規模で活躍する企業があるから、その企業の利益を確保するために、経済大国は外国を侵略するという愚論)と概ね一致しているから、在日韓国・朝鮮人の団体や運動家は左翼や日本共産党、社会民主党と共闘することになる。
左翼化した在日韓国人と日本共産党が意気投合する理由
かつての社会党、日本共産党や左翼人士は、大韓民国を国家と認めず「傀儡政権」「朴一味」などと蔑み、日韓条約の締結に全力で反対してきた。
「素直な眼で朝鮮半島の歴史をみつめてほしい」などと称し、日本共産党や左翼と共闘している在日韓国人は大韓民国を徹底的に愚弄してきた日本共産党と左翼人士の歴史を直視できない。
あるいは左翼と共闘する在日韓国人は、大韓民国が経済成長したから、「帝国主義化」しつつあり、アジアの平和を脅かす危険な存在になりつつあると大真面目に考えているのかもしれない。
レーニンの「帝国主義論」のような視点で韓国経済を分析すれば、韓国には現代や三星など世界的な規模で活動する多国籍企業が幾つも存在するから、「帝国主義化」しつつあり、「アジアの平和を脅かす」という結論がでよう。
北朝鮮は途上国だから米帝国主義とその従属下にある韓国により侵略される側だという結論がでよう。大真面目にそう考えている左翼人士もいるだろう。
左翼化した在日韓国人は、大韓民国に対する愛国心を持てなくなり、「米軍のいないアジアをつくろう」などと主張する左翼と共闘することが、大韓民国の安全保障を根源的に脅かすことが全く理解できなくなってしまったのだろう。
左翼化した在日韓国人は、朝鮮戦争の開戦の経緯と悲惨な史実を直視できないのである。
左翼人士は、自らの「理論」から見れば、「韓国は帝国主義化しつつある。韓国政府は労働者を弾圧するために国家保安法を作っている。
ベトナム戦争への参戦は侵略戦争だ。韓国はベトナムに謝罪して補償をしろ。韓国の歴史教科書にベトナムへの謝罪を明示せよ。韓国には徴兵制があるから、軍国主義だ」などという結論が出て、韓国の大統領や政府関係者、「ベトナム戦争に無反省」である韓国人を糾弾せねばならないはずだ。
時流にのることをいつも気にしている左翼人士は、今はこうした主張をしていないが、韓国でさらに左翼勢力の勢いが強くなれば、日本の左翼人士もこうした主張をする可能性を指摘しておこう。
多くの在日韓国人は左翼化しているから、共産主義理論から導かれる「平和運動」に共感し、在韓米軍撤退、国家保安法撤廃、徴兵制廃止のために日本の左翼と共闘する動きが今後出てくるかもしれない。
在日韓国人は日本の政治に参加したいなら日本国籍を取得するべきなのだ。韓国の国籍を保持したままで日本の参政権を得ようなどというのは特権要求でしかない。
日韓は別の国家であるから、それぞれの国民は二つの国の政治に参加するべきではないという程度のことが、在日韓国人にはわからなくなってしまったようだ。
在日韓国人が税金を払っているから参政権が与えられるべきだという人がいる。この場合の税金とは、消費税ではなく恐らく所得税を指すのだろうが、それなら所得が低く所得税を払っていない人からは参政権を取り上げるべきだとでもいうのか。
共産主義者と左翼人士が亡命者の証言を無視する理由
自治体関係者と政治家、左翼人士は、金日成と朝鮮労働党が「南朝鮮革命」「全世界における主体思想の勝利」「主体革命偉業」策動の中で在日朝鮮人の教育をどのように位置付け、「闘争」「実践」しているかを、認識するべきだ。
「南朝鮮革命」「主体革命偉業」と在日朝鮮人の「民族教育」の関係を検討するためには、金日成著作集、朝鮮総聯の文献、朝鮮労働党の労働新聞に掲載されている教育に関連する論文などをきちんと読みこなし、分析せねばならない。
韓国の代表的月刊誌である「月刊朝鮮」にしばしば掲載される北朝鮮からの亡命者の手記や、朝鮮総聯を脱退した在日朝鮮人の手記も貴重な参考文献である。
元北朝鮮工作員の張龍雲氏による「朝鮮総聯工作員」(小学館文庫)は、朝鮮労働党の南朝鮮革命策動について、自らの体験を通して赤裸々に語っている。
北朝鮮と朝鮮総聯を、文献と亡命者からの聞き取り調査などに基づき実証的に分析した代表的文献は玉城素「北朝鮮破局への道 チュチェ型社会主義の病理」(1996年 読売新聞社刊)である。こうした探求は、共産主義国と共産党の現状を把握するために最も基本的な知的作業なのだ。
なお、金日成や金正日の著作は、公開されたものと、実際に金父子が朝鮮労働党幹部や総聯幹部に「教示」として出したものとは異なっている可能性がある。公開される「著作」では、「朝鮮革命」「主体革命偉業」「反革命分子との闘争」の具体的な中味について触れないようにしていると考えられるからだ。
従って、北朝鮮と朝鮮総聯の実態を分析するためには金父子の著作だけでは不十分だ。亡命者や、朝鮮総聯を脱退した人の証言や手記の分析、それらの比較検討が必要になる。
亡命者の手記は多数あるが、朝日新聞アエラ編集部による「北朝鮮からの亡命者 60人の証言」(1997年朝日文庫)は多数の亡命者からインタビューし、北朝鮮の真実を把握しようとしている。
インタビューを積み重ねて真実を把握していくという手法は、開発経済学や労働経済学などでも、発展途上国の実態、企業の現場における技術の伝播、継承方法や労働の実態などを把握するために多用されている(注2)。
朝鮮労働党の元書記黄長燁氏による一連の著作も貴重である。
近作「暗闇にいった日光は暗闇を照らすことはできない」(月刊朝鮮刊)は、単なる亡命者による北朝鮮の内幕暴露ではなく、韓国の保守派知識人による北朝鮮の民主化戦略、朝鮮半島に平和をもたらすための戦略を解明した本であるといえよう。
朝鮮半島に平和をもたらすためには韓米日同盟の強化、そして中北ロシアの同盟を弱体化させ、金正日による「南朝鮮革命」「主体革命偉業」の断行を阻止せよと黄長燁氏は主張する。
朝鮮半島に平和をもたらすためにも、北朝鮮の人権問題を重視するべきだという黄長燁氏の戦略は、いわゆる「覇権安定理論」の流れに属するもので、私もよく理解できる。
黄長燁氏と概ね同様の理論、すなわち日本の平和を守るためには日米同盟を強化し中国と北朝鮮を抑えこむべきであるという理論を、岡崎久彦氏や田久保忠衛氏が主張している。
日本共産党や左翼人士が北朝鮮における人権問題について完全に沈黙しているのは、この問題を多くの人々が認識すると金正日軍事独裁政権の危険性が明らかになり、日本の平和を守るためには日米同盟の強化が必要であるという世論が広まってしまうからだ。
「亡命者の証言など信用できない」という人は、情報収集と分析の方法、その意義を理解できないか、自らが信奉してきた「平和理論」「経済理論」に固執しようとしているだけなのである。
「民族教育の基本内容は教育でチュチェをうち立てる」ことであると朝鮮総聯は明言している
在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会が発行した冊子「朝鮮総聯」(1991年2月1日発行)では、「民族教育の基本内容は、なによりも教育でチュチェをうち立て、同胞子女が祖国と民族にたいする正しい知識をもち、民族自主意識を育むところにある」(p75)と明言している。
「教育でチュチェをうち立てる」とは、多くの日本人には意味不明な表現であるが、これは朝鮮労働党の「教育テーゼ」(正式には、「社会主義教育にかんするテーゼ -朝鮮労働党中央委員会第五期十四回総会で発表― 1977年9月5日」)に依拠している。「
教育テーゼ」は、「社会主義教育学の基本原理は人びとを革命化、労働者階級化、共産主義化することである」と規定し、以下の四点を原則としている。
第一に、教育において党性、労働者階級性を具現しなければならない。
第二に、教育において主体性を確立しなければならない。
第三に、教育と革命実践を結びつけなければならない。
第四に、社会主義国家は責任をもって教育事業をおこなわなければならない。
第二点が、朝鮮学校における「民族学校の基本内容」に該当しているのだ。「主体性の確立」について、「教育テーゼ」は次のように述べている。
「教育で主体性を確立するためには、自国のものを基本にして教え、人びとが自分のものに精通するように教育しなければならない。朝鮮人は朝鮮で革命を遂行し、朝鮮に社会主義・共産主義を建設しなければならない」
要するに、朝鮮学校を「南朝鮮革命」「全世界における主体思想の勝利」「主体革命偉業」のために奮闘する「革命戦士」を育成するための「民族教育」を行なう「学校」であると、朝鮮労働党、朝鮮総聯は規定しているのである。
これは、金日成が朝鮮学校の教員に出した以下のような「教示」からも明白である。
金日成が朝鮮学校の教員に「同胞子弟を革命化せよ」と教示していることを、自治体関係者は直視するべきだ
金日成は「総聯教育活動家の任務について -在日朝鮮教育活動家祖国訪問団および朝鮮大学校音楽・体育部祖国訪問団におこなった演説―」(1973年8月31日)で次のように「すべての同胞子弟の革命化」「教員が職業革命家であること」を「教示」した。
「それでわたしはすでに以前から教育事業は生活費をかせぐための職業ではなく、革命の継承者を育てる栄えある革命事業であり、教員は月給とりではなく職業革命家であるといってきました。
革命の前途は革命の代をつぐ継承者をいかにに育成するかに大きくかかっています」
「総聯の教育活動家は労働者、農民の子弟だけを革命化しようとせず、すべての同胞子弟を革命化するために努力すべきです。
総聯の教育活動家は、親が企業を営もうと、商店をもっていようと、料理店を経営していようと、それにこだわることなく、すべての同胞子弟を革命家に育てあげなければなりません。
商工業者の子弟をすべて革命化すれば、たとえかれらが海外にいても、祖国の統一と朝鮮革命の全国的な勝利のために大きな役割を果たすようになるでしょう」
明らかに金日成は、総聯系の民族学校を「革命家養成学校」と規定している。
そして生徒を革命家に育てるためには教員が優秀な革命家にならねばならないと、以下のように「教示」した。
「総聯の教育活動家が自分を徹底的に革命化すれば学生・生徒を革命化することができ、革命化しなければ学生・生徒を革命化することができません」
「総聯の教育活動家が古い思想を根こそぎにして、わが党の革命思想、チュチェ思想で武装し、自らを革命化、労働者階級化するためには、なによりもまず熱心に学習しなければなりません」
このように金日成は、総聯の教育活動家、すなわち朝鮮学校の教員はチュチェ思想で武装し、自らを革命化、労働者階級化せねばならない」と明言している。
許宗萬在日本朝鮮人総聯合会責任副議長に問う!
朝鮮学校への補助金支出の必要性を主張する政治家と自治体関係者に問う。
「すべての同胞子弟を革命家に育てあげる」「総聯の教育活動家が古い思想を根こそぎにして、わが党の革命思想、チュチェ思想で武装する」ことに補助金を支出するべきなのか。
「金日成がそうした主張をしているからといって、朝鮮学校でチュチェ思想教育をやっているとは断言できないではないか」という人は、率直に総聯関係者に歴史や音楽、道徳の教科書を資料として提供してもらうよう依頼してみたらどうか。
さらに朝鮮学校の教職員に、教育内容はチュチェ思想、朝鮮労働党の「教育テーゼ」とどのような関係があるのか、金父子について実際どのように子供達に教えているのか尋ねてみることだ。
「日本の学校に準ずる教育を行っている」というなら、朝鮮学校にも学習指導要領に該当するものがあるはずだ。
朝鮮学校の学習指導要領に該当するものと、金父子の「教示」及び朝鮮労働党の「教育テーゼ」の関係について、率直に朝鮮学校の教職員に尋ねてみることだ。総聯関係者は「デマだ。南朝鮮国家情報院の手先による捏造だ」と怒るかもしれない。
この人達は自分達への批判や都合の悪い質問に対してほぼ条件反射的に「デマだ、捏造だ」と言うようだ。
許宗萬在日本朝鮮人総聯合会責任副議長に問う。
朝鮮学校の教育内容が金父子の「教示」、チュチェ思想、朝鮮労働党の「教育テーゼ」と無縁であると貴方たちは断言できるか。仮に断言できるということなら、貴方たちは「教育に主体をうちたてる」ことを放棄したのか。
「南朝鮮革命」「全社会の金日成主義化」「主体革命偉業」「全世界の自主化」のために生涯を捧げる「革命戦士」が、朝鮮学校での「民族教育」により多数育成されてきたことは、在日朝鮮人の中では常識に属することではないか。
勿論、本格的な工作員教育は平壌や元山にある「招待所」「中央党学校」などで行われているだろうから、「民族教育を受けた」という程度では「革命戦士」「工作員」とは言えない。実際のところは、卒業生の中には金父子への崇拝教育に嫌気がさし、総聯を脱退していった人もいることを私は知っている。
金日成は朝鮮総聯を「革命的組織」と規定した
朝鮮総聯は在日朝鮮人の単なる親睦団体ではない。金日成は「総聯活動家の課題について -総聯活動家との談話―」1973年六月1日)で以下のように朝鮮総聯を「たたかう革命的組織」と規定した。
「総聯は在日朝鮮公民にたいする思想活動に従事する政治組織であり、祖国の統一と朝鮮革命の勝利をめざしてたたかう革命的組織であり、在日朝鮮公民の権利と利益を擁護する民族的組織であります」
この談話で金日成は「民族教育」と「信用組合」について次のように「教示」した。
「総聯組織は、同胞商工業者の教育にも深い関心を払わなければなりません。同胞商工業者は苦労の末に楽を得た人たちですが、その子弟は苦労を知らずに育っている新しい世代です。
したがって総聯組織と総聯の各級学校では、同胞商工業者の子弟教育を正しくおこなって、かれらを革命的世界観で武装させなければなりません。
総聯が信用組合などを効果的に運営すれば、同胞商工業者を多く獲得し、かれらを一つに結集して共同闘争を成功裏に進めることができるでしょう」
このように金日成は繰り返し、朝鮮学校で同胞子弟を革命化すること、革命的世界観で武装させることを強調している。
朝鮮学校でチュチェ思想教育が行なわれていないと主張することは「偉大なる首領様」の教示に朝鮮総聯が背いていると主張していることと同じだ。
従って自治体関係者や左翼人士が朝鮮学校では義務教育に準ずる教育が行なわれており、チュチェ思想教育など行なわれていないと主張するならば、それは北朝鮮流に言えば「反共和国策動」に該当しよう。
金融当局は朝鮮学校における「民族教育」の実態を調査し、債権返済を徹底追求するべきだ
また、この談話では信用組合、すなわち朝銀信用組合を、同胞商工業者を獲得し共同闘争を成功裏に進めるための組織と規定していることも興味深い。金日成によるこうした「教示」と、朝銀信用組合による不可解な融資疑惑の関係を、左翼人士は真剣に考えるべきだ。
朝銀信用組合による不可解な融資疑惑とは、例えば朝鮮学校や朝鮮総聯関連団体の土地や建物を担保にして、担保価値を大きく上回る融資枠を設定し、朝銀信用組合から融資を受けていたという疑惑である。
このとき、朝銀信用組合に「仮名口座」「借名口座」が多数存在し、裏金つくりに使われていたという極めて濃い疑惑である。
勿論、これだけで北朝鮮への多額の不正送金が行われているとは断言できないが、朝鮮学校の土地や建物を担保に入れることを朝鮮学校の理事会は承認していたのだろうか。
借金が返せなければ、担保なのだから明渡し、処分されることになって当然だ。担保価値を大きく上回るような融資枠と融資の設定を承認、黙認した朝鮮学校の理事会の経営責任は厳しく問われるべきである。
朝鮮学校が処分されて無くなれば、子供達の「民族教育を受ける権利」とやらは「侵害」されることになろう。そうした仕組みを作ったのが、朝鮮総聯幹部だったということなら、この人達には子供達の「民族教育」より、優先して資金を作らねばならない事情があったということだろう。
その「事情」が、金父子を礼賛するための巨大建造物や金日成が奉られている豪華な「宮殿」、金父子の権威を誇示するための祭典、あるいは弾道ミサイルや生物兵器、化学兵器量産費用調達だったという可能性を、私は指摘しておきたい。
こうした愚行に全力をあげる人間をつくることが、「教育に主体をうちたてる」ことだったとのではないだろうか。金融当局は朝銀信用組合による不可解な融資と、資金の流出先、さらに朝鮮学校における「民族教育」の実態を徹底調査するべきだ。
「教育にチュチェをうちたてる」ことに公的資金を投入するべきなのか、そんなことが在日朝鮮人の子供達によりよい未来を約束するのか、金融当局は真剣に検討するべきだ。
在日朝鮮人の子供たちは「主体革命偉業」の「戦士」となるべきなのか、金融当局は真剣に考えるべきだ。
金日成のいう「共同闘争」とはもちろん、「南朝鮮革命」「主体革命偉業」のための闘争である。南朝鮮革命とは大韓民国を滅ぼし、韓国人が「内心の自由」を全面的に奪われ、金日成や金正日を礼賛せざるをえない体制を朝鮮半島全域に広げることを意味している。
朝鮮総聯と総聯系組織の究極の目的はこうした「南朝鮮革命」「主体革命偉業」なのだ。このことも金日成は次の談話で「教示」している。
金日成は総聯に「南半部の革命勢力の強化」を「教示」した
金日成は「総聯活動家は団結を強化すべきである -朝鮮民主主義人民共和国創建25周年 在日朝鮮人祝賀団との談話―」(1973年9月8日)で次のように述べた。
「総聯の代表団が来るたびに話すことですが、われわれはまだ祖国を統一していません。祖国を統一するためには、共和国北半部の革命基地を強化するとともに、南半部の革命勢力を強化しなければなりません。
共和国の革命基地は強固にきずかれていますが、南半部の革命勢力はまだしっかりかためられているとはいえません。
総聯は、南朝鮮人民を目覚めさせ、かれらを祖国統一をめざす闘争に立ち上がらせるうえできわめて重要な位置にあります。総聯は南朝鮮人民に、ファッショ体制に反対し、社会の民主化を実現し、民族の大団結をはかって自主的に統一しなければならないということをよく教えさとすべきです。
総聯がこのような活動をりっぱにおこなうためには、総聯自体をさらに強化しなければなりません」
金日成は総聯に南半部の革命勢力の強化、そしてそのための総聯の強化という「教示」を出しているのだ。この種の「教示」を金日成は何度も出している。
「在日本朝鮮人総聯合会第十一回全体大会に送る祝賀文」(1977年9月26日)で金日成は次のように「教示」している。
「わが党のチュチェ思想は総聯活動の唯一の指導方針であり、在日朝鮮人運動の勝利の決定的な裏づけです。
総聯の愛国運動に新たな転換をもたらすためには、すべての活動家と同胞をチュチェの革命的世界観で武装させ、かれらをわが党と共和国政府のまわりに一つの思想、意思でかたく結集し、朝鮮人民の革命的偉業をめざす栄えある道を屈することなくたたかいぬくようにしなければなりません」
「すべての活動家と同胞をチュチェの革命的世界観で武装させる」とは、「党の唯一思想体系確立の十大原則」からも明らかなように、金父子の一言一句に絶対服従する奴隷つくりを意味しているのだ。
朝鮮総聯が誇る「民族教育」とはこうしたものなのだ。
注意深い人なら、金日成による朝鮮半島の北半部を「民主基地」という規定が、スターリンによるソ連の「世界革命の根拠地」規定と似ていることに気づくだろう(ソ同盟共産党「ボ」中央委員会・中央統制委員会合同総会。スターリン全集第十巻 大月書店刊)。
金日成のこの規定が「テーゼ」として定式化された文献は、「すべての力を祖国の統一独立と共和国北半部における社会主義建設のために -朝鮮革命の性格と任務に関するテーゼ」1955年4月)である。
朝鮮戦争からそれほど経っていない時期に出されたこのテーゼを、今日でも朝鮮労働党と朝鮮総聯関係者は崇めている。「テーゼ」という表現は朝鮮労働党が特に重視している文献であることを意味している。
日本共産党員と左翼人士が「労働新聞」を直視できない理由
多くの日本共産党員は不破哲三氏ら指導部を盲信しているから、朝鮮労働党や朝鮮総聯が「南朝鮮革命」「主体革命偉業」「全世界における主体思想の勝利」などをめざしていることを信じられないことだろう。
昨年の第二十二回大会決議(第三)で日本共産党は、「朝鮮半島におこった平和の激動」があるとし、「南北首脳会談の成功」をその根拠とした。そして北朝鮮を「新しい平和の流れの一方の当事国」と規定した(大会決議第四章)。
数年前まで日本共産党は北朝鮮を「野蛮な覇権主義」と批判していたのだが、最近はこうした批判を一切行なわなくなっている。
多くの下部党員は不破氏ら指導部を盲信しているから、朝鮮半島では「南北首脳会談の成功」により「平和の激動」があると信じ込み、「北朝鮮も朝鮮総聯も大きく変りつつある。社会主義の復元力が発揮されつつあるのだ」という具合に大真面目に信じている。
日本共産党の朝鮮問題担当者に問う。
貴方は朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」を読んでいるのか。「労働新聞」をきちんと読んでいれば、「北朝鮮も朝鮮総聯も大きく変りつつある」などという見解が暴論でしかないことはすぐわかるはずだ。
去る10月30日の「労働新聞」掲載の論考「主体教育の花園に花を咲かせて下さって」は次のように述べている。
「わが祖国の歴史に光り輝く年輪を刻み付けた主体66(1977)年、この年の9月に偉大なる首領様は自主時代教育発展と真の人間肉声の燦然たる前途を明らかにして下さる普及の古典的労作『社会主義教育に関するテーゼ』を発表なさった」
「敬愛する将軍様の偉大なる胸の中で我々の新しい世代と全ての人民は自らの知恵と才能を咲かせ、この地で復興強国を建設し将軍様の領導に従い、主体革命偉業を最後完成させることだろう」
「労働新聞」の論考は冗長なものが多いので、着目するべき点を見出すことが難しいが、この論文で「教育テーゼ」を取り上げていること、「主体革命偉業」の「完成」を強調していることを考えれば、朝鮮労働党は何も変化していないことはあまりにも明白ではないか。
「南北首脳会談」により実現したことは、韓国社会に北朝鮮に対する甘い認識が広がり、韓国が北朝鮮に対し無防備になってきているということだけなのだ。
労働新聞を普通に読めば朝鮮労働党の危険性はあまりにも明白だ。
去る9月14日の労働新聞に掲載されている論文「自らの墓を掘る日本反動どもの再侵略戦争策動」は次のように日本を脅迫している。
「日本には原子力発電所が多い。それらが打撃を受けないだろうという担保はない。日本が報復打撃を受ける場合、二十世紀の四十年代に蒙った核惨禍とは比較にならず、予想もきない、とんでもない核災難を蒙りうるであろうということを予告している」
朝鮮労働党が日本の原子力発電所の破壊を策していることを公然と予告しているのだ。
原子力発電所の付近に住む政治家や自治体関係者は勿論だが、政治家と金融当局は真面目に北朝鮮問題を考えろと私は言いたい。
原子力発電所を破壊することは、強力な武器を持つ工作員が潜水艦などで侵入すればそう難しくないはずだ。バズーカ砲程度で原子力発電所の炉心の融解が可能なのかどうか、私にはわからないが、炉心の融解をおこす爆弾は製造可能だろう。
民間航空機をハイジャックされ、空から原子力発電所が自爆攻撃される危険性があるとき、総理大臣の命令一つで自衛隊が民間航空機を撃墜する権限を与えるべきだ。
北朝鮮がこうしたテロを起こした場合、直ちに平壌にある金正日の官邸や住居、金日成が奉られている宮殿、金正日がいる可能性がある場所を自衛隊が空爆することを、政府は公言するべきだ。
このためには、空中給油機と長距離ミサイルの早期購入が不可欠である。北朝鮮全域を瞬時に攻撃できる兵器が緊急に必要なのだ。金正日の一挙一動を把握する偵察衛星を設置するべきだ。
こうした備えが、原子力発電所の破壊などのテロ攻撃に対する抑止力になるのだ。左翼人士が「労働新聞」をまともに読むことができない理由は、こうした朝鮮労働党の危険性を隠蔽せねばならないからだ。
日本共産党と左翼人士の目的は「平和を脅かしているのは帝国主義国である米国だ」というレーニン、スターリン流の「平和理論」を普及して共産主義国である中国と北朝鮮による核軍拡があたかも防衛的なものであるかのように宣伝し、共産主義国の軍拡を支援することなのである。
日本共産党の朝鮮問題担当者が「労働新聞」の記事を読んでいても、上述のような脅迫、金父子への崇拝を批判する記事が「赤旗」に出ることはない。そのような批判は、日本共産党では不破哲三氏しか出来ない。
下部党員の中で個人的に朝鮮労働党を批判する人はいるが、日本共産党の職員や議員は北朝鮮と朝鮮総聯の事実がどのようなものであれ、北朝鮮問題で不破氏と別の見解を表明することは出来ない。
この人たちは「言論の自由」を完全に奪われているのである。「言論の自由」を共産党の最高指導者が独占することが、「社会進歩」「歴史の法則的発展」であると共産党の職員は大真面目に信じ込んでいる。
金日成は朝鮮労働党と朝鮮総聯を少しでも批判する人間を「敵」と規定した
共産主義国や共産主義運動についてよく知らない人には理解し難いことだろうが、最高指導者、独裁者である金日成、金正日の「教示」は北朝鮮、朝鮮総聯内では絶対的な「命令」なのである。
これは、「党の唯一思想体系確立の十大原則」からも明白だが、金日成著作集をきちんと読んでいけばすぐにわかる。
金日成は「総聯活動家は団結を強化すべきである -朝鮮民主主義人民共和国創建25周年 在日朝鮮人祝賀団との談話―」1973年9月8日)で次のように「教示」した。
「総聯組織と在日同胞は、チュチェ思想にもとづいてかたく団結すべきです。一つの組織に二つの思想があってはなりません。総聯はわが党の革命思想、チュチェ思想にもとづいて団結しなければなりません」
金日成は「総聯組織をさらに強化しよう -在日朝鮮人祝賀団との談話―」(1976年5月31日)で次のように「教示」した。
「みなさんは総聯内部に敵が潜入しかねないことをつねに忘れてはならず、不純分子の吹聴するデマをむやみに信じてはなりません。かれらのデマを信じこむならば、敵の離間策動に陥るようになります。みなさんは階級的自覚と革命的警戒心を高め、すべての問題を巧みに処理しなければなりません」
金日成が「一つの組織に二つの思想があってはならない」と明言していることに注目しよう。
これは、金父子や朝鮮労働党、朝鮮総聯を何らかの形で批判あるいは、不満を漏らすものは全て「敵」あるいは「不純分子」とみなし、「闘争」せよということだ。
朝鮮総聯関係者が、総聯を脱退した人を「民族反逆者」などと罵ることがあるが、これは金日成の
こうした「教示」に基づいているのだ。
こうした思考方式は「主体思想に基づいた民族教育」の「成果」でもある。
テレビ朝日の「サンデープロジェクト」などで朝銀信用組合が人事権を朝鮮総聯に握られているのではないかという疑惑が報道されている。朝銀信用組合の幹部が各地の朝銀信用組合の役職を歴任していることから考えても、この疑惑は極めて濃い疑惑である。
これは、「民族教育」や各種の思想教育により朝銀信用組合の関係者が総聯幹部に服従することを「南朝鮮革命」「主体革命偉業」「全社会の金日成主義化」の一環として把握しているからだ。
朝銀信用組合の幹部や朝鮮学校の教員が総聯幹部に何らかの形で反抗、あるいは朝鮮労働党や朝鮮総聯に批判的な言動をすれば朝銀の役職や朝鮮学校の教職を降ろされてしまうことがあるようだ。
これは朝銀信用組合や朝鮮学校の関係者(理事会を含む)の多くが朝鮮労働党や朝鮮総聯を批判する人を条件反射的に「不純分子」「総聯内部の敵」とみなし、「階級的自覚と革命的警戒心を高め、問題を巧みに処理する」思考習慣と行動方式を体得しているからである。
別言すれば、朝鮮総聯関係者の中では、朝鮮労働党や朝鮮総聯を批判する人を条件反射的に「不純分子」「総聯内部の敵」「変質者」などとみなし徹底的に自分たちの社会から排除することが、一種の「共同体規範」になっているとも言えよう(注3)。
日本共産党も、「除名」「除籍」した人を「反党分子」「転落者」などと罵倒し、様々な場から徹底的に排除してきた暗黒の歴史を持っている。
こうした愚行を「理論化」した論文として上田耕一郎「なぜ共産党は反党分子を共闘の相手にしないか」(「赤旗」昭和42年6月6日掲載)がある。
上田氏によれば、「労働者階級の前衛党と党の破壊者のあいだには、前衛党と反動的支配層のあいだにあるのと同じ性質の、両立しがたい根本的な敵対関係がある」「共産党と反党分子は両立できない」そうだ。
日本共産党と朝鮮労働党、朝鮮総聯は真に似た体質を持っているといえよう。
金日成の「社会主義的民主主義」論と強制収容所
日本共産党員の「赤旗」は強制収容所や「政治犯」の公開処刑、大量餓死など北朝鮮における極度の人権抑圧と朝鮮総聯関係者による不正送金疑惑、朝銀信用組合による不可解な融資疑惑、朝鮮商工会による脱税疑惑について完全に沈黙しているので、下部党員は北朝鮮の実態、朝鮮総聯の真実を殆ど知らない。
下部党員には「赤旗」に掲載されていないことは信頼しない、事実と認めないという思考方式が定着している。
朝鮮総聯ほど極端に明示されていないが、日本共産党も「一つの組織に二つの思想があってはいけない」ことを様々な形で周知徹底させられているのだ。共産主義者は、どこの国でも同様の思考、行動方式を体得しているものなのだ。
北朝鮮からの亡命者の話をどうしても信用できない日本共産党員と朝鮮総聯関係者、左翼人士は、金日成による以下のような「社会主義的民主主義」がどのような帰結をもたらすかについて真剣に考えるべきだ。
金日成は「人民政権をいっそう強化しよう -朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第六期第一回会議でおこなった演説―」(1977年12月15日)で次のように「教示」した。
「帝国主義者が騒ぎたている社会主義諸国でのいわゆる『人権弾圧』についていうなら社会主義国家が、民主主義的秩序を乱し、社会主義制度の破壊を策する敵対分子や不純分子に制裁を加えるのは、民主主義の敵から民主主義を守るための正当な措置です。
帝国主義者の擁護する『人権』は人民の人権ではなく、人民の敵の人権であり、かれらの望む「自由」は人民の民主主義的自由ではなく、帝国主義者とその手先の破壊活動の自由です。
われわれ共産主義者は自己の党派性をかくさないのと同じように、民主主義の階級性をもかくすものではありません。社会主義的民主主義は、けっして社会主義に反対する敵対分子や人民の利益を侵す不純分子にまで、自由や権利を与える超階級的民主主義ではありません。
労働者、農民、勤労インテリをはじめ広範な人民大衆には自由と権利を保障し、少数の階級敵にたいしては制裁を加えるのが、とりもなおさず社会主義的民主主義です。われわれは社会生活のすべての分野で階級的立場と革命的原則を固守し、人民の利益を侵す敵対分子や不純分子を徹底的に鎮圧しなければなりません。
とくに『人権擁護』の看板のもとに強行されている帝国主義者の反共謀略策動に断固たる反撃を加え、社会主義的民主主義の破壊を企むあらゆる試みを時を移さず粉砕しなければなりません」
金日成は「少数の階級敵」にたいして「制裁」を加えることが「社会主義的民主主義である」と断言している。
「階級敵」とは、何らかの形で金父子と朝鮮労働党に不満を表明する人間のことである。朝鮮総聯関係者は、北朝鮮に帰国した自分たちの仲間、親族の中で相当数が行方不明になっていることを知っているはずだ。
朝鮮総聯関係者は行方不明になった帰国者のことを「山へ行った」という。
朝鮮総聯の若い運動家は帰国者がある日突然行方不明になってしまったこと、その人達は山奥に追放あるいは、「管理所」と呼ばれる強制収容所に連行された可能性があることを全く知らないようだ。
強制収容所については、統一研究院による「北韓人権白書」(第四章の1)が詳しい。年配の朝鮮総聯関係者は若者に対し、こうした史実を隠蔽しているようだ。朝鮮学校を卒業した若者、朝鮮大学校の学生諸君に私は訴えたい。
貴方たちの先輩が、貴方達の学校でかつて教鞭をとっていた方が、社会主義の夢を求めて北朝鮮に渡り、何らかの形で不満を漏らしたことを「首領冒涜罪」「資本主義の水を飲んだ」「スパイ罪」「階級敵」などという「罪」とみなされ、ある日突然どこかに連行されたのだ。
貴方達は朝鮮語を十分に習得しているのだから、黄長燁氏の著作を読むべきだ。
黄長燁氏が「階級敵」「不純分子」などと呼ばれるべき方ではないことは、貴方達にわからないのか。
つい数年前まで、貴方達は黄長燁氏を心から尊敬していたのではなかったのか。
朝鮮新報のホームページを見ると、貴方達は「偉大なる金正日将軍の領導の下に団結しよう」などといった主張をしているが、本当に偉大な人間に対しては、「偉大な」などといった形容詞をいちいちつけなくても人は自然に尊敬するようになるものなのだ。
生前は左翼人士からファシストだの、鬼だのと罵倒された故朴正煕大統領は、様々な苦難を乗り越えて国民を指導し大韓民国の高度成長を成し遂げた。
故朴大統領の生涯と大韓民国の苦難の歴史を、貴方達は朝鮮語が十分に出来るのだから、韓国の文献を読んで真剣に学ぶべきだ。黄長燁氏の著作はソウルに行けば書店で購入できるし、「朝鮮日報」のホームページから「月刊朝鮮」のホームページに入れば読むことは難しくない。
その他、韓国には北朝鮮の人権問題を扱っている市民団体が幾つかある。朝鮮学校を卒業した人の中に、金父子の崇拝教育に辟易し、卒業後は金父子の著作や朝鮮新報、労働新聞を一切読まなくなる人がいることも私は知っている。
こういう態度もまたおかしい。そういう人は概ね、「歴史認識」「参政権獲得」「戦後補償」とやらの運動に参加し、共産党や左翼人士と「共闘」して日本を罵倒している。
金父子の著作が北朝鮮という国家と国民、そして在日朝鮮人運動と組織に対してどのような影響を与えてきたか、そして現在北朝鮮がどのような影響をアジアと日本、韓国に与えているのか、金正日軍事独裁政権崩壊後の朝鮮半島はどうなるのかということは極めて重要な社会科学上の課題ではないか。
金父子と朝鮮労働党の主張がどんなに支離滅裂であろうと、実際に多くの在日朝鮮人はその主張を盲信し「南朝鮮革命」「主体革命偉業」のために生涯を捧げてきたのである。
在日朝鮮人はこの史実をどう考えているのか。そうした知的作業をすることが、真に主体性のある生き方ではないだろうか。
脚注(注1)植民地期の朝鮮半島について
近年の歴史学では、朝鮮半島の植民地期においてかなりの経済成長、工業化が実現していたことの原因は、朝鮮社会内に存在していたという見方が提起されている。
植民地期の朝鮮半島を単なる「大陸兵站基地」「日本帝国主義への従属」などとみなすだけでは、当時の朝鮮社会を余りにも受身的、没主体的に把握しすぎており、実証性にも欠けているという主張だ。
安秉直・中村哲共編著「近代朝鮮工業化の研究 ―1930~1945年」(1993年 一潮閣)、安秉直「韓国近現代史研究の新しいパラダイム」(「創作と批評」 1997年秋号掲載論文)、中村哲編「東アジア資本主義の形成」(1994年青木書店)などがこうした主張をしている。
また1910年からの土地調査事業について、実証研究の結果、「日本帝国主義による農民の土地収奪」という認識は適切でなく、基本的には近代的土地所有権の設定であるという見解が一般的になっている。
この点については堀和生「朝鮮・韓国と台湾の工業化」(「東アジア経済の軌跡」東アジア地域研究会編 第六章2001年青木書店)参照。
(注2)「情報」について
開発経済学や労働経済学では、途上国や企業のインタビュー調査による情報の収集と分析を重視している(小池和男「仕事の経済学」1999年 東洋経済新報社刊など)。
ミクロ経済学の一分野として、「情報の経済学」という分野があるが、ここでいう「情報」とは取引される財の価格や品質に関するものである。
「情報の経済学」では、財の品質を買い手が事前に十分に把握出来ないことにより、「悪貨が良貨を駆逐する」ような現象が生じうることを主張する(アカロフ「ある理論経済学者のお話の本」 ハーベスト社刊)。
村上泰亮氏は、情報を「個々の主体の抱く世界イメージが、他の主体の世界イメージに影響を与えるとき、その世界イメージ」と定義し、「情報の経済学」で用いられている意味より広く把握することを主張した(村上泰亮「反古典の政治経済学要綱 来世紀のための覚書」第五章 中央公論社刊)。
そして情報を①第一種の情報-手段的・部分的情報②第二種の情報―本質的・総括的情報に区分した。
情報をこのように幅広く定義しそれが人間の相互作用に与える影響を考える必要性を考慮すると、第二種の情報は市場経済を支える制度や組織に大きな影響を与えるから、第二種の情報の流通、内容を分析するべきということになる。
例えば朝鮮労働党の「革命理論」は「第二種の情報」の一つであり、それは朝銀信用組合や朝鮮総聯の動向に大きな影響を与えている。
オーソドックスなマクロ経済学やミクロ経済学しか勉強していない人が朝鮮労働党の動向を無視して日本経済の安定的成長が可能であるような議論を展開するのは、人間社会に流通している情報を極めて狭くしか把握しない立場を「分析的」「実証的」などとみなしているからだ。
日本人を白昼公然と拉致し二十数年間も抑留している国家が我が国の平和と安全を脅かしていることがわからない「社会科学者」があまりにも多い。
これは、レーニンの「帝国主義論」のような立場で世界を把握している人が多いことと、経済の現状の決定要因として契約の施行を保証する制度や組織の存在、そして経営者や投資家の長期的な期待があるという視点が弱いからだ。
朝鮮労働党の行う凶悪行為が日韓の安全保障を大きく脅かし、経営者や投資家の抱く経済に関する長期的な期待に否定的な影響を与えるということがわからない。
期的な期待がどのように形成されるかという問題は、様々な学問を総合して検討せねばならないが、アメリカの経済学のみしか知らない人にはそうした議論は「分析的でない」と映り、「業績にならない」から何も考えないのである。
(注3)「共同体規範」について
朝鮮総聯にとって朝鮮労働党に従うことが「共同体規範」になっているので、総聯は朝鮮労働党に従うという解釈も考えられる。
「共同体規範」については、青木昌彦氏の「比較制度分析に向けて」(NTT出版2001年 第二章)で、江戸時代の日本における灌漑システムの建設、維持、利用が村落共同体による自立的な制御に委ねられていた例がモデル化されている。
灌漑システムは、一度建設されると技術的にはある農家をその灌漑システムの利用から排除することは不可能であるから、そうした労働を回避する村人が出るかもしれない。
しかし、灌漑システムの維持、建設労働に参加しない農家を他の面で社会的な恩恵を享受できないようにする「村八分」のメカニズムが存在することにより江戸時代の日本では灌漑システムの建設、維持において高い水準の協力が村人間で実現していた。
村人の間では、灌漑システムの建設に協力すること、建設に参加しなかった村人を排除して社会的な恩恵を享受できないようにすることという戦略の組み合わせが、サブゲーム完全均衡になっていたという議論である。
朝鮮総聯の中でも、朝鮮労働党に従うこと、朝鮮労働党に従うならば恩恵を享受できるようにすること、そして朝鮮労働党に従わない総聯のメンバーを総聯社会の中から排除し、総聯社会における社会的な恩恵を享受できないようにするという戦略の組み合わせが、ゲームの均衡になっていると解釈できないだろうか。
また共産主義国では、共産党に従い革命運動、社会主義建設に従事すること、そして革命運動と社会主義建設に参加しないあるいはサボタージュする人々を排除、抑圧し、社会主義建設の成果を享受できないようにすることが、ゲームの均衡になっているといえないだろうか。この点に私は現在四苦八苦している。
このように制度を人々が演ずるゲームの均衡と考え、複数ある均衡のうちのどれが実現されるかについての「焦点」の役割を果たすのが、例えば文化であるという考え方がある。こうした発想で終身雇用制度の重要性、文化と経済理論の関係を分析した文献として、荒井一博「文化の経済学」(文春新書)がある。
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