2013年10月29日火曜日

六十五年間の日ソ両党関係のうち、主要な部分は友好と協力の関係である―「日ソ両共産党関係を素描する 十月革命七十周年にあたって」(「赤旗」1987年10月22日掲載論考)より思う―

七十年前に遅れた資本主義国から出発した社会主義のソ連が、人民の生活、教育、医療などの分野で築きあげてきた大きな成果を土台に、...




中高年になれば誰しも、若い頃のほろ苦い思い出や失敗を胸の中に秘めています。

若い頃の自分の失敗を知っている旧友に久しぶりに会うと、懐かしさと恥ずかしさがふと心中に蘇ってきたりします。

失敗が些事なら、記憶から消し去ってしまっても良いはずです。些事であるなら、旧友、他人は忘れています。

政治家や知識人の中には他人が忘れてしまっていることを良いことに、失敗を都合の良いように事実や史実を歪曲してしまう人がいます。

本ブログでは、北朝鮮、朝鮮労働党や日本共産党による歴史の歪曲を何度も指摘してきました。

これは数限りないのですが、しつこく追求せねばなりません。共産主義者は徹底的に歴史を捏造しつづけますから。



共産主義者は歴史を捏造する―歴史は宣伝材料―




共産主義者にとって歴史とは、事実ではなく宣伝材料です。

上記の文章は、「赤旗」1987年10月22日掲載の無署名論文「日ソ両共産党関係を素描する 十月革命七十周年にあたって」より抜粋したものです。

ソ連崩壊のほんの四年ほど前まで、日本共産党は社会主義ソ連とやらが人民の生活、教育、医療などの分野で大きな成果を築き上げてきたと宣伝していたのです。

「大きな成果」など、慢性的な物資不足に苦しんでいたソ連社会の現実とは無縁の虚偽宣伝でしかありません。

この程度のことは、小池晃参議院議員ら「新人類」世代より上の日本共産党員で、熱心に共産主義運動に参加してきた人なら十分に承知しています。

優秀な日本共産党員は、「赤旗」無署名論文を線を引いて熱心に読みます。小池晃参議院議員なら、この論文を覚えているかもしれません。

「新人類」世代より上の優秀な日本共産党員なら、宮本顕治や不破哲三がソ連共産党を「歴史的な巨悪」などと言いだしたのはソ連共産党崩壊後であることを熟知しています。

ソ連崩壊のほんの四年前まで日本共産党は、「六十五年間の日ソ両党関係のうち、主要な部分は友好と協力の関係である」と評価していたのです。

「ソ連共産党の覇権主義的干渉は誤っている」という主張は、六十五年間の日ソ両党関係のうち瑣末な部分であるとソ連崩壊の四年前まで日本共産党は評価していたのです。




なぜ年長の共産党員は若い共産党員に真実を教えないのか




この無署名論文は、もう26年も前に発表されたものですから、吉良よし子参議院議員のような若い日本共産党員のほとんどは読んだことすらないことでしょう。

若い日本共産党員がこの無署名論文の「六十五年間の日ソ両党関係のうち、主要な部分は友好と協力の関係である」という主張を知ればびっくりしてしまうことでしょう。

若い共産党員は、日本共産党はソ連共産党という覇権主義と一貫して、生死をかけてたたかってきた、などと信じ込んでいます。

若い共産党員は、「友好と協力」の部分など殆どなかったと信じています。

小池晃参議院議員のような「新人類」世代の共産党員はそうでないことを知っていますが。

「新人類」世代より年長の日本共産党員は、いわば「空気」を読むことにより、若い日本共産党員に自分たちの若い頃の失敗―ソ連礼賛―を隠蔽しているのでしょう。

日本共産党の参議院議員だった聴濤弘の昔の著作には、ソ連礼賛が満載です。

聴濤弘も「ソ連礼賛をこれ以上広めるな」という類の、上層部からの「空気」を読み、若い共産党員には自分の昔の著作の内容を内緒にしているのでしょうね。



社会保障費を国家、企業、団体が支出―レーニンの狙い―




聴濤弘「資本主義か 社会主義か」(1987年新日本出版社刊行、p81)によれば、ソ連では年金をふくめあらゆる社会保障のための支出を個人に一部負担させるとか、年金額の切り捨てなど社会保障切りすては、まったくおこっていないそうです。

レーニンは、社会保障費は国家、企業、団体が支出すべきであり労働者や勤労者から引き出してはならないという原則を確立しました(前掲本p80)。

日本共産党の社会保障にかんする原則的態度もこれと同じです(前掲本p80)。「税金がない」という北朝鮮も同様です。

しかし国家や企業、団体の収益は、労働者や勤労者の労働の成果なのです。

共産主義者の詭弁に騙されてはいけません。

企業の売上は賃金(消費)や次期の生産活動のための投資、次期のための蓄え、あるいは法人税などで国家に収める分に配分されます。

労働者個々人が社会保障費を負担せず、企業や団体が負担するといっても、実際は労働者が所属している企業の売上から国家に収められているだけです。

労働者は所属している企業や団体の売上への貢献により、社会保障費を負担しているのです。企業や団体は、労働者から分離して存在しているのではありません。

企業や団体による法人税のみで社会保障費用を賄おうとすると、労働者個々人は自分が一体どれだけ年金や健康保険などの社会保障費用を負担しているのかわからなくなってしまいます。

レーニンの狙いはここにあったのでしょう。




旧ソ連や東欧、中国、北朝鮮の国有企業はなぜ衰退していったのか―消費者無視の企業運営―





実際には労働者が社会保障費用を負担しているのですが、レーニンはそれを曖昧にしてあたかも素晴らしき社会主義国家が負担しているように偽装することを策したのです。

社会主義になったから、労働者は社会保障費用など一切負担しなくても良いのだ、という宣伝です。

この件、少し例をあげて説明しましょう。

社会保障を充実させるために労働者個々人から費用を徴収するのでなく、労働者が所属している社会主義企業から多額の費用を徴収したとしましょう。

そうすればその企業の新投資のための資金が減ってしまい、より品質の良い製品が生産できなくなってしまいます。

激烈な企業間競争にある資本主義国の企業より、低い品質で高価な製品とサービスを生産、販売している社会主義企業は経営困難になります。

勿論、海外からの輸入を禁止して消費者に低い品質で高価な製品を強制販売すれば社会主義企業といえども存続できます。

旧ソ連、東欧、中国や北朝鮮はかなり長い期間、そうした政策を実施していました。

不破哲三によれば、社会主義では生産者が雇われる立場の人間から、経済と生産の主人公になることが第一の柱だそうです(「二十一世紀はどんな時代になるか」新日本出版社p141)。

生産者が経済と生産の主人公になってしまうのなら、消費者の需要を無視した財やサービスを供給することになり、社会主義企業とやらはたちまち経営困難になってしまいます。

社会主義企業とやらが利益をあげられず、赤字経営を続けたらいずれ倒産し、労働者は失業してしまいます。どんな社会でも、再就職は困難です。

社会主義企業が負担する費用は結局のところ、労働者が負担することになるのです。

消費者である労働者に低い品質で高価な製品やサービスを強制販売すれば、社会主義企業は存続できますが資本主義国の労働者より生活水準は低くなっていきます。

旧共産圏の電化製品、車、そのほか殆どの生活用品の品質は酷いものでした。旧ソ連や東欧、中国、北朝鮮の現実の一面はこうしたものでした。

旧ソ連で何年も生活した聴濤弘なら、実例を熟知しているはずです。



市場経済での激烈な競争に勝ち抜くために―金正日は一般国民に「外貨稼ぎ」(외화벌이)―





市場経済で、生産者が経済と生産の主人公だなどと威張っているようでは、消費者からそっぽを向かれてしまうのは明らかです。

市場での激烈な競争に勝ち抜くためには、中国のように農村出身の労働者(農民工といいます)を二束三文の低賃金で酷使するしかありません。

中国には、日本の労働基準監督署に該当するような官庁はありません。企業経営者による労働法違反は難しくありません。

酷使されている農民工が裁判で経営者を訴えるのは困難です。裁判に費用がかなりかかってしまいますから。

中国にも旧ソ連にも、美しく素晴らしき「社会主義の部門」など存在しないのです。

「社会主義の部門」とやらは不破哲三の著作に存在するだけで、現実とは無縁です。

北朝鮮の場合、39号室と言われる金正日直轄の部署(現在は金正恩でしょう)は一般国民に松茸取りや砂金収集、芥子栽培、金山や鉱山での過酷な労働をさせて外貨を稼いでいます。

北朝鮮には偽札を製造する部署も存在します。

それもこれも、市場での激烈な競争に勝ち抜くためです。北朝鮮当局は純度が高く安価な麻薬を製造し、各国の闇組織に輸出して外貨を稼がねばなりません。

麻薬販売にも激烈な競争があるのです。一般国民は必死に外貨を稼いで金正日や金正恩の奢侈生活を支えねばなりません。

北朝鮮と国交を樹立したら、外交官が外交特権を利用して麻薬を大量に持ち込みかねません。



ところで、金正日や不破哲三に、若い頃のほろ苦い思い出や苦労を語り合えるような旧友はいるのでしょうか。

金正日には皆無だったのではないでしょうか。独裁者は孤独ですね(文中敬称略)。














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