2019年8月4日日曜日

故上田耕一郎氏の論考「『大衆社会』理論とマルクス主義」(不破哲三氏との共著「マルクス主義と現代イデオロギー」所収。昭和38年大月書店刊行)より思う―上田・不破両氏は51年綱領が正規の綱領と認めていたー

「だがあのような重要な誤謬、朝鮮戦争下に共産党の新綱領が掲げた独立と平和と民主主義の旗の画期的な意義にもかかわらず、. . . 」(同書p51より抜粋)。


昭和38年に出版されたこの本で上田耕一郎氏は、「51年綱領」が独立と平和と民主主義を掲げたという点で画期的な意義があったと認めています。

今の日本共産党は、51年綱領は日本共産党の正規の綱領ではないと主張していますが、当時の日本共産党員は殆ど皆、51年綱領が正規の綱領だったとみなしていました。

この論文は「講座『現代マルクス主義』Ⅰ『マルクス主義と現代』所収、昭和33年5月刊)と出ています。

この本は不破氏との共著です。当時の不破氏も、51年綱領が正規の綱領とみなしていたのです。

上田耕一郎氏らが51年綱領の「独立と平和と民主主義を掲げたという画期的な意義」を認めていた史実を、たつみコータローさんら若い共産党員は知らない事でしょう。

昭和25、26年当時の日本共産党員の圧倒的多数が、暴力革命、武装闘争を日本共産党の正規の方針として認めたからこそ、「極左冒険主義」の方針を全面実践したのです。

極左冒険主義とは何か―過激派の理論と運動―


上田氏によれば、昭和25年から昭和28年にいたる極左冒険主義の理論的原因は次の二つです。

第一に日本を植民地・従属型の国であると誤認し、アメリカ帝国主義に従属はしていても高度に発達した独占資本主義国であるという事実を過小評価しました。

第二に植民地・従属国の解放の道として国際的に示されていた劉少奇の武力解放コースを無批判的に適用しました。

極左冒険主義とは、日本の支配権力と支配的秩序を合法的な大衆闘争によらず、将来直接的行動によって粉砕するために、即時最初の行動を開始しようという理論と闘争です。

今の視点で見れば、昔の日本共産党はソ連、中国を盲信する過激派集団だったのです。劉少奇の「理論」をそのまま信じて「実践」してしまったのですから。

今の日本共産党は、極左冒険主義を実行したのは分派で自分たちとは関係ない、と総括しています。

従ってこの本で上田氏が問いかけている、35名の代議士数がなぜ一挙にゼロにまで凋落してしまったのかという疑問を検討する必要すら、今の日本共産党員には感じられない。

分派が国会での議席を減らしただけだ、という結論になってしまうのです。

諸先輩が苦闘しつつ歩んできた道を素直に振り返り、失敗の原因を分析する事が、今の日本共産党員にはできない。

昔の上田耕一郎氏は「なぜ議席をゼロにしてしまったのだろうか」という苦悩の中、政治学者や当時の革命家の文献を読み込んで教訓をくみ取ろうとしていました。

失敗の原因を数々の文献を読んで検討する、という知的誠実さが、若き上田・不破氏にはあったのでしょう。

分派が議席を減らしただけさ、という「総括」をしていた日本共産党員は当時いなかったように私には思えてなりません。

若き不破哲三氏はソ連が「世界革命の展開の基地」(スターリン)であると主張した


この本には、不破哲三氏の論文「現代トロツキズム批判」も掲載されています。

不破氏によれば、帝国主義の時代には社会主義は世界史的な規模で同時に勝利することはできません(同書p217)。

はじめに一か国ないし数か国で勝利し、二つの体制の闘争の中で、さらに一連の新しい国々が帝国主義から離脱するという過程をとおって、世界的な規模で社会主義の勝利に到達します。

そのなかでは、初めに勝利した社会主義国家の存立をまもりぬき、社会主義を建設し、そのあらゆる力量を強化することは、「世界革命の展開の基地」(スターリン)を守る事です。

ソ連を守る事は、世界革命を推進するためのもっとも重要な課題です。

今の若い日本共産党員は、日本共産党が一貫してソ連覇権主義とたたかってきたと盲信しています。

昔不破氏がスターリンの理論を盲信し、ソ連は世界革命展開の基地だなどと宣伝していたと言われても大嘘だと思うのではないでしょうか。

若き不破哲三氏は大真面目に、社会主義ソ連を守ることは世界革命推進のための最も重要な課題と明言しています。

この論文は、昭和34年6月の「前衛」に掲載されています。

はじめに勝利した社会主義ソ連が社会主義から離脱するという過程をとおって、世界史的な規模で帝国主義の勝利に到達した、という史実を不破氏はどうしても認められないのではないでしょうか。

若い頃執筆した論文と、その後の歴史は真逆になったことを今の不破氏は認められないのではないでしょうか。

今の不破哲三氏は中国共産党が中国社会における科学的社会主義の党、中国社会の変革の担い手であると認め、中国共産党との科学的社会主義の理論交流を重視しています。

不破氏にとっては、今の中国が「世界革命の展開の基地」に見えているのでは、と私には思えてなりません。

宮原たけしさん(日本共産党元大阪府議)なら、京都大学の学生だった頃に上田・不破著「マルクス主義と現代イデオロギー」を線を引いて読んだのではないでしょうか。

今の日本共産党員は、知的誠実さを著しく欠いていると思えてなりません。









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