「『日韓条約』そのものが、アメリカ帝国主義のアジア侵略体制の一環であり、わたしたち日本人民が日米『安保』条約破棄のたたかいを一つ一つ具体的にすすめているのと同じ意味で、日朝両国人民は、『日韓条約』の具体化の一つ一つと着実にたたかわなければなりません」
「わたしたち日本人民が朝鮮人民の『日韓条約』破棄のたたかいを無条件に支持すべきことはもちろん、...」(同書p180-181より抜粋)。
昭和40年6月に日韓条約が締結されました。東京オリンピックの翌年です。
この本によれば、『日韓条約』本調印強行の6月22日夜、東京日比谷の野外音楽堂でひらかれた「日韓会談本調印抗議・ベトナム侵略反対緊急中央集会」に18000人が集まり、新しい段階での「日韓会談」粉砕の決意を表明しました。
最近の日本共産党、左翼人士は日韓条約、日韓請求権協定でも徴用工の個人としての請求権は残っているのだから日本政府は韓国側と誠実に話し合うべきだ、といった主張と宣伝をしています。
しかし日本共産党と同党を支援する左翼知識人、運動家は元来、上記のように日韓条約破棄を主張してきたのです。
日韓条約は不法・無効なものだから粉砕されなければならない(昭和41年3月の日朝両党声明より)
昭和41年3月の日朝両党声明には、佐藤内閣と南朝鮮の朴正熙一味との間に結ばれた「日韓条約」は不法・無効のものであり、粉砕されなければならないと強く主張する、と明記されています。
日韓会談、日韓条約粉砕。これこそ日本共産党と同党を支持する左翼知識人、運動家の共通の目標でした。
日韓条約締結の頃の日本共産党と左翼知識人、運動家にとって日韓条約と請求権協定にどんな記述があろうとそれは全て不法、無効だから粉砕されねばならないものだったのです。
この条約が不法、無効ですから、条約に基づく請求権協定は勿論不法、無効だ、という結論が、一昔前の日本共産党と左翼人の主張でした。
畑田重夫・川越敬三両氏によれば日韓条約の本質は、米帝国主義のさしずのもとに佐藤内閣と朴正熙一味が結んだ侵略と戦争のための条約です(同書p172)。
日韓条約粉砕運動が盛んに行われたのは昭和40年頃ですから、54年くらい前です。
現在、七十代後半以上の日本共産党員なら、日韓条約粉砕とベトナム戦争反対に青春を捧げた、と言える方がいくらでもいるのではないでしょうか。
東京近辺在住の七十代後半の日本共産党員なら、上記の日比谷野外音楽堂での大集会に参加された方がいるはずです。
もう少し下の「団塊の世代」の日本共産党員には、民青同盟員だった時に日韓条約粉砕、ベトナム戦争反対の運動に参加された方が多いのではないでしょうか。
「戦争を知らない子供たち」というフォークソングを歌った世代の方々です。宮原たけしさん(日本共産党元大阪府議)はこの世代かな。
志位和夫氏は日韓条約破棄を望んでいるのか―大韓民国の存在を否定した日本共産党は元祖嫌韓論者
日本共産党指導部により日韓条約粉砕、破棄論が部分的に修正されるのは、昭和63年のソウルオリンピックの頃です。
「朝鮮問題についての日本共産党常任幹部会の見解」がこの年の9月に出されています。
大韓民国の存在を日本共産党として認めるが、南朝鮮と呼ぶ、という内容だったと記憶しています。日韓条約粉砕、破棄論を反省した記述はありません。
志位和夫氏ら今の日本共産党最高幹部の内心は日韓条約破棄論なのかもしれません。
志位氏が強調するように個人としての請求権が残っているのなら、韓国に財産を残してきた日本人の請求権も残っている事になります。
自分の家を不法に取り上げた韓国人、韓国企業を特定化して日本の裁判所に訴え、朝鮮半島に残してきた財産を取り返せ、という日本人が多数出てきたらどうなるでしょうか。
両国の人民が請求権を要求しあい、泥仕合を始めたらそのうち、日韓条約そのものを破棄してしまえ、という話になりえる。
金正恩と朝鮮労働党はこれを大歓迎するでしょう。ひょっとしたら日本共産党最高幹部も、これを読み込んでいるのではないでしょうか。
日韓条約破棄により在日韓国人の日本定住権はなくなる。日本から出ていけ、ではありませんが普通の外国人と同じ扱いになります。
昭和41年3月の日朝両党声明が示す方針を、今の日本共産党最高幹部は実行しているのだと考えると、わかりやすい。
日本共産党最高幹部は、元祖嫌韓論者の流れにある方々です。
日本共産党と朝鮮労働党の関係を考察する際、日朝両党声明は貴重な文献です。両党の共通の見解がそれに記されているのですから。
日朝両党声明を無視して日本共産党、日韓の左翼運動史を語る左翼知識人は共産主義運動史の研究では共産党の文献研究が大事だ、という基本的な知識を欠いている方々です。
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