2019年8月11日日曜日

上田耕一郎氏の「マルクス主義と平和運動」(昭和40年大月書店刊行)は科学的社会主義の政治学(革命理論、平和理論)の基本文献

「社会主義の手にある核兵器はただ侵略戦争の防止、社会主義と民主主義防衛のための平和の武器である」(同書p56)。


「社会主義の平和の法則の内部においては、核兵器は社会主義の戦争抑止力と防衛力の強化を生み出し、世界戦争の宿命的な不可避性をとりのぞく過程を促進する」(同書p58)。


科学的社会主義の政治学では、ソ連や中国の核兵器をこのように把握します。

ソ連、中国の核兵器により戦争が抑止されるという結論ですから、核抑止論ともいえる。

勿論上田氏は、レーニンの帝国主義論に基づき、帝国主義、金融資本が侵略戦争を起こすと主張しています。

米帝国主義が起こす核戦争を、社会主義中ソの核兵器が抑止するという筋道です。

ざっと見たかぎりこの本には、憲法九条が国際政治で何かの力を発揮する、といった話はなさそうです。

この本は文化大革命より前に出版されています。

当時の日本共産党としては、現代修正主義者フルシチョフを批判する中国共産党こそ真の共産主義者の党でした。

社会主義ソ連と中国の核兵器が核戦争を抑止するのなら、日本の平和運動は中国の核実験を支持せねばならないはずです。

宮本顕治氏は日本共産党第九回大会で中国核実験支持を表明した


宮本顕治氏は日本共産党第九回大会(昭和39年11月)の中央委員会報告で、中国の核実験がアメリカの核脅迫から中国人民とアジアの平和をまもるための防衛力強化をめざしやむなくとられた措置である、と支持しています(9回大会決定p29)。

上田耕一郎氏によれば、ソ連が最初に核実験に成功したとき、すべての平和活動家が世界戦争防止の事業の成功に新しい確信を抱きました(同書p56)。

ソ連による最初の核実験は、昭和24年8月です。

これは事実だったのでしょうか。広島、長崎の四年後です。それでも被爆者の方々はソ連の核実験を喜んだのでしょうか。

この本についてどうお考えか、被爆者の方や原水爆禁止世界大会に参加する運動家にお尋ねしたいですね。

吉良よし子議員、山添拓議員は、上田耕一郎氏のこの本を御存知なのでしょうか。

上田耕一郎氏はソ連が強大な社会主義国であると評価していた


上田耕一郎氏がお亡くなりになって十一年くらいになります。

早大の学生だった頃の私は、上田氏の著書「現代日本の社会主義への道」を熱心に読みました。

三十八年くらい前の話です。松田聖子がデビューした頃です。

私が言うのも奇妙ですが、科学的社会主義の政治学(革命理論、平和理論)、経済学(剰余価値論、帝国主義論)をわかりやすく解説した良い本と思います。

勿論、科学的社会主義の理論そのものが宗教の一種だ、という見地がより適切でしょうけれど。

上田氏は、マルクス、エンゲルス、レーニンだけでなく関連文献もかなり読んでいました。

「現代日本の社会主義への道」には、グラムシの革命理論(発達した資本主義国の革命は陣地戦)や、米国経済学者Paul Sweezyの世界経済論なども紹介されていました。

科学的社会主義の理論家としてはかなりの方だったと思います。科学的社会主義の政治学で、ソ連をみると次の結論も導かれるのですが。

「たとえブルジョア的要素が残り、あるいは部分的に復活しつつあるとしても、ソ連は依然として強大な社会主義国であり、レーニン、スターリンの正しい指導のもとに、社会主義のためにたたかいぬいてきたソ連の労働者階級と勤労人民の国家であるからである」(同書p87)。

今の日本共産党員からすれば、上田氏のこの結論は愚の骨頂かもしれません。

しかしこの本は、当時の日本共産党の理論、あるいは日本のマルクス主義政治学の歴史の中では重要文献です。

上田耕一郎氏は在日本朝鮮人総連合会による金日成への巨額献金を指摘していた


読書家だった上田氏は、北朝鮮の実状について貴重な文献から重要な事実を紹介しています。

「北朝鮮 覇権主義への反撃」(赤旗編集局編、p64)で上田氏は、昭和47年4月の、在日本朝鮮人総連合会による金日成の還暦祝い騒ぎについて記しています。

「金炳植事件―その真相と背景」(統一朝鮮新聞特集班、昭和48年刊行)の「金日成首相還暦贈り物贈呈で日本在留「総連」系同胞から捻出された金品は総額50億円以上とみられる」という記述を、上田氏は紹介しています。

在日本朝鮮人総連合会の皆さんが金日成の還暦祝いの時、資金と物資だけでなく人間まで金日成に献上したことが、今日では知られています。

当時の朝鮮大学校の学生約200人が還暦祝いの贈り物として、金日成に献上されました。今から47年前の事ですから、朝大生たちは60代後半です。

朝鮮学校では、金日成の還暦祝いとして献上された先輩たちの事をどう教えているのでしょうか。

朝鮮学校への補助金増額を主張する大山奈々子県議(日本共産党)は恐らく、この件を御存知ないでしょう。

この時期、日本共産党と朝鮮労働党は良好な関係を維持していましたから上田氏は金炳植副議長と何度も会っていました。

上田氏は金炳植氏の言動に怪しいものを感じたのでしょう。さすがに日本人拉致、殺害までは思いつかなかったでしょうけれど。

金炳植氏の配下の秘密組織が、渡辺秀子さん殺害疑惑の組織です。金炳植氏の配下には、「ふくろう部隊」と呼ばれた組織もありました。

この部隊により、強烈な批判を受けた在日朝鮮人は少なくない。

宮原たけしさん(日本共産党元大阪府議)は上田氏のこの本を御存知だそうです。松竹伸幸さん(超左翼おじさん。日本共産党元中央幹部)もきっとご存知でしょう。

石川康宏教授が上田氏のこの本を知らないとは考えられません。

上田氏の「マルクス主義と平和運動」について、皆さんがどうお考えか、お尋ねしたいものですね。

若い日本共産党員が日本革命を志すなら、日本共産党の昔からの文献を自分なりに読んで、今日の路線との違いはなぜか、を自分なりに考えるべきではないでしょうか。




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