2023年1月29日日曜日

松竹伸幸さんは、日本共産党が綱領でソ連を帝国主義と位置づけるべきだったと主張(「シン・日本共産党宣言」文春文庫、p227より)。

 松竹伸幸さんは、日本共産党の党首公選制導入を上記の著書やブログで訴えています。

松竹伸幸さんは上記の著書で、ソ連がチェコスロバキアやアフガニスタンを侵略するなど、米国と同様の行動をとっていたのだからソ連も帝国主義だったと主張しています。

これは昭和36年7月の日本共産党第八回大会で採択された綱領に関する話ですが、松竹伸幸さんはチェコスロバキア事件(昭和43年)のずっと前から、ソ連は帝国主義だったと考えているのでしょう。

ソ連がいつから帝国主義だったのかについては、松竹伸幸さんは言及していません。

宮本顕治さんら昔の日本共産党員はソ連信者だったーソ連は世界平和の砦

昭和36年7月の第八回大会で宮本顕治さんは、ソ連を世界平和の砦と礼賛しました。

松竹伸幸さんの視点なら、第八回大会当時の日本共産党は帝国主義を世界平和の砦と評価してしまったことになりますから、大失策だったことになりませんか。

宮本顕治さんら昔の日本共産党員は、ソ連信者でした。これは、第八回大会決定だけでなく、その頃の宮本顕治さんの論文や「赤旗」記事からも明白です。

松竹伸幸さんが第八回大会決定や、宮本顕治さんの昔の論文を読んでいないはずがないと思えます。

社会主義がソ連邦で完全な最後の勝利をおさめた、という論考は、ソ連信者でなければかけません。

松竹伸幸さんは中国、ロシアも帝国主義と主張

松竹伸幸さんは、米国だけでなく中国とロシアも帝国主義とするか、双方を「大国主義・覇権主義」とすることを提案しています(同書p230)。

松竹伸幸さんのお気持ちはわかりますが、それならレーニンの帝国主義論に依拠して世界情勢を把握する事をやめよう、と訴えるべきではないですか。

米国が帝国主義だ、戦争の根源だという日本共産党の主張は、言うまでもなくレーニンの帝国主義論に依拠しています。金融資本が戦争を起こす、という見方です。

近年では、多国籍企業が世界的な規模で利潤を求めて活動しているので、米国や日本は多国籍企業の利潤獲得のために戦争を起こす、という見方になっています。

旧ソ連には金融資本などなく、搾取制度が廃止されていることになっていましたから、レーニンの帝国主義論ではソ連は帝国主義ではありえません。

今の中国、ロシアにも多国籍企業は存在します。多国籍企業、と言っても、外国に工場や支店を持っている企業などいくらでも存在します。

韓国には、三星電子や現代、SKやLGなど世界的な規模で活躍する大企業が存在します。多国籍企業が戦争を起こすはずがない。

大日本帝国でも、財閥は日清・日露戦争やシベリア出兵、満州事変をやろうと軍首脳部に主張などしていません。

明治期、政府の支援で重化学工業化が実現されたからといって財閥が薩長の政治家や軍人を動かしたわけではない。

帝政ロシアでも、当時の大企業、金融資本とやらがツァーリを動かして黒海への進出や日露戦争を行ったとは考えられません。

ロシアの拡張は、エカテリーナ二世の頃(18世紀後半)、あるいはもっと前に始まっています。

レーニンの金融資本が戦争を起こす、という見方は実証に裏付けられていない。

指導者が損得を計算し、自分にとって全体としては利益となると判断したら戦争を起こす

それでは、戦争は何で起こるのか。

各国で指導的地位にある政治家や政党、独裁者が他国を攻撃し支配できれば、多少の損失はあっても全体としては自分たちの利益になる、と判断したら戦争を起こすと考えられます。

中国共産党はアリババやテンセントの利益を確保するために、台湾政府を破壊したいのではありません。中国共産党はアリババやテンセントも抑圧しています。

中国共産党は中華民族の偉大なる復興、とやらを達成して中国共産党の権威を維持したいのです。そのために、台湾だけでなく日本にも国家安全維持法を適用させたい。

中国共産党の拡張策は、伝統的な中華思想に依拠しています。

これに依拠して世界各国に国家安全維持法を適用できれば、中国共産党最高指導者、習近平の権威と権力を維持できます。

民主主義国家では、戦争を起こして沢山の戦死者を出したら、指導者が選挙民に責任を問われて次の選挙で失脚してしまいます。

民主主義国家の指導者にとって、戦争はあまり利益にならない。今の米国で、中朝露に先制攻撃を仕掛けて利益になる、と判断する政治家がいると思えません。

私見では今の米国は、戦争を起こすとしても空爆程度です。戦死者を沢山出してしまう地上戦を、米国大統領は極めて決断できにくい。次期選挙で負けるからです。

ソ連が帝国主義だったなら、昔の日本共産党(国際共産党日本支部)は帝国主義の手先だった

日本共産党の平和理論は、完全に破たんしているのです。

ソ連が帝国主義だったなら、ソ連から資金と拳銃を受け取っていた昔々の日本共産党、国際共産党日本支部を帝国主義の手先だったと評価すべきではないでしょうか。

今の中国とロシアが帝国主義なら、帝国主義の中枢である中国共産党と科学的社会主義の理論交流をおよそ二十年間行った不破さんの科学的社会主義とは何だったのか。

松竹伸幸さんにこれらを、御検討頂きたい。スターリンはヒトラーと協力して、ポーランドを分割しました。帝国主義ではないですか。

松竹伸幸さんは、米国と中国、ロシアは帝国主義もしく覇権主義で戦争国家だと言いたいのでしょうね。

繰り返しですが、今の米国は空爆程度しかやらないと考えられます。

北朝鮮、朝鮮労働党も戦争国家ですよ。お忘れなく。






2023年1月27日金曜日

鈴木元さんは、不破さんの存在は日本共産党に老害と批判(「志位和夫委員長への手紙」かもがわ出版、p139より)

 鈴木元さんは、この本の第五章「社会主義の理論問題で決着をつけておくべきこと」で不破さんを徹底的に批判しています。

宮本顕治さんが引退した88歳を上回っても、不破さん自ら「引退する」と言わないのは間違いであると鈴木元さんは断じています。老害だそうです。

以下、この章での鈴木元さんによる不破さん批判を列挙します。

鈴木元さんによる不破さん批判

・不破さんが説く「新しい社会主義に向かって社会主義的計画経済と市場経済の創造的結合をしている中国」などは全く事実に即していない(同書p136)。

・不破さんは自分たちの社会主義の新しい創造的発展という政治的主張のためには、平気で事実を無視して理論をこね回す人だ(同書p136)。

・不破さん、志位さんは国民に向かってかつて言っていたことが間違っていたことを認めない。これでは国民に信用されない(同書p136)。

・不破さんは、マルクス解釈について不破流でないことを述べる人を「真のマルクス主義者ではない」と切り捨てている。これではカトリック教団の聖書解釈問答だ(同書p138)。

・不破さんのマルクス研究と、彼の恣意的なマルクス理論の学習奨励は日本共産党にとって不幸なことである(同書p139)。

・不破さん一人がマルクス主義の解釈権を持っているというような閉ざされた独占的なやり方では、マルクス主義のたこ壺的解釈論から出られない(同書p143-144)。

志位さんは、内心では鈴木元さんによる不破さん批判に同調しているのか

志位さんは、松竹伸幸さんの言動は規約に反していると考えているようですが、鈴木元さんの著書については何も発言していません。

「赤旗」にも鈴木元さんへの批判は出ていません。

公の文献で不破さんが日本共産党に老害をもたらしていると言われれも、今の日本共産党は反論すらできないのです。

こんなことは宮本顕治さんが元気だった頃なら、考えられません。今の日本共産党は、驚くほど論争に弱くなっている。

日本共産党議員、職員の中には、少数ですが鈴木元さんに対する志位さんの言動を注視している方がいると考えられます。

志位さんが鈴木元さんの著書を一切批判できないなら、志位さんも鈴木元さんに同調しているのだろうという観測が日本共産党議員、職員の間で広がっていくでしょう。



2023年1月26日木曜日

鈴木元「志位和夫委員長への手紙 日本共産党の新生を願って』(かもがわ出版刊行)より思うー鈴木元さんは、政権に就こうとするなら安保容認が必要と断言ー

 昭和19年生まれの鈴木元さんは党歴60年の古参党員です。京都の日本共産党職員として長く勤務されたそうです。

そんな方が志位さんに、直ちに辞任し、党首公選を行い、改革を新しい指導部に委ねてほしいと訴えています。

この本は八章から成ります。

鈴木元さんは日本共産党に長く貢献された方ですから、日本共産党員と支援者の方は鈴木さんの訴えを傾聴すべきではないでしょうか。

鈴木元さんは政権に就くなら、日本の領土・主権と国民の命を守ることが第一義的任務と訴える

第二章「安全保障政策に関する覚悟を決めた議論を」で鈴木元さんは日本共産党が政権につくなら、日本の領土・主権と国民の命を守ることが第一義的任務であると訴えています。

日本共産党員で、国防を第一義と語る方は稀ですね。驚きました。以下、第二章での鈴木元さんの安全保障論を要約します。

日本にとって最も現実的な危険は、中国共産党による台湾(沖縄)攻撃である

中国が台湾の武力統一に動くときは尖閣を含む沖縄と、沖縄にいる米軍との戦争になる。

現状では、米国が行う戦争に日本が巻き込まれる危険より、中国が台湾(沖縄)を攻める危険のほうがはるかに現実的な危険です。

中国共産党が台湾の武力統一に動くときには、自衛隊を活用する、という程度では済まないので日米安保第5条による米軍の出動を要請せねばならない。

200万人の人民解放軍に対し、26万人の自衛隊では対応できない。軍事力の格差が大きすぎるのです。

しかし、「それを言ったらおしまいよ」の言葉通り、志位さんがそう言ったらかつての社会党と同じになります。

そこで志位さんは村山富市さんのように「安保容認・自衛隊容認」を国民と党員の印象に残るようには明言していません。

日本共産党が政権に就こうとする限り、安保容認・米軍の出動要請・自衛隊合憲・活用の立場にならざるを得ない。

これは綱領で規定している安保廃棄・自衛隊解散の主張と根本的に異なるが、現実を見つめればそうなる。

鈴木元さんの安全保障論は一昔前の自民党宏池会に近い

鈴木元さんの安全保障論は、昔の社会党というより、一昔前の自民党宏池会と同じように思えます。

鈴木元さんは集団的自衛権を行使すべきとは言っていませんが、日米安保活用論そのものを訴えているのですから。

親中的な方が多かった宏池会より、中国共産党の危険性を訴えている鈴木元さんは右よりだ、と言えるかもしれません。

一昔前の日本共産党は、中国共産党を社会植民地主義と批判

鈴木元さんは百も承知かと思いますが、一昔前の日本共産党は中国共産党が社会植民地主義を取っていると批判したことがあります。

「大国主義的干渉者の新たな破たん 『社会主義』を看板にした植民地主義」(昭和47年4月5日赤旗掲載)という論文は、毛沢東と中国共産党は社会植民地主義だと批判しました。

毛沢東と中国共産党が社会主義を看板にして他党支配、他国人民支配をねらっているからです。

この指摘は、極めて適切です。中国共産党は一貫して、他国の支配を策しているのです。


毛沢東と中国共産党が朝鮮半島を自らが支配するべき領域であると認識していました。そこで人民解放軍が朝鮮戦争に参戦したのです。

朝鮮戦争とほぼ同時期に、人民解放軍はチベットに侵攻しています。社会植民地主義そのものです。

日本共産党が参加する民主連合政府とやらができ、日米安保廃棄、自衛隊の大幅縮小が実現していたら、人民解放軍が日本を攻撃していたと考えられます。

金日成と朝鮮労働党も日本を攻撃したでしょう。毛沢東、金日成が国防力皆無の日本を攻撃しない、など考えられない。

日本共産党が目指す基地のない沖縄、など沖縄を捨て石にすることに他なりません。人民解放軍に沖縄侵攻を懇願するようなものです。

鈴木元さんの著作については、以前にも論じています。御参考まで。 

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 鈴木元「ポスト資本主義のために マルクスを乗り越える」(かもがわ出版)をざっと読みました。 (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 続・鈴木元「ポスト資本主義のために マルクスを乗り越える」(かもがわ出版)を読みましたー労働者階級は祖国を持ちますよー (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 続々・鈴木元「ポスト資本主義のために マルクスを乗り越える」(かもがわ出版)より思うー鈴木元さんは、マルクスの資本主義的搾取制度廃止論には無理があるとみるー (blueribbonasiya.blogspot.com)


2023年1月21日土曜日

松竹伸幸さん著「シン・日本共産党宣言」(文春新書)に対する藤田健さん(赤旗編集局次長)の批判より思うー藤田健さん、朝鮮労働党の「党の唯一思想体系確立の十大原則」を読みましょう。

 松竹伸幸さんは、日本共産党本部に長く勤務された方です。松竹伸幸さんは日本共産党と安全保障政策について、御自身のブログなどでいろいろと発言されてきました。

本ブログでも松竹伸幸さんの訴えについて、何度か論じてきました。

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 松竹伸幸さんは敵基地攻撃能力保有に賛成ーミサイル攻撃から日本国民の命を守るため、敵のミサイル基地を叩くしか手段がないならー (blueribbonasiya.blogspot.com) 

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 志位さんは、金正恩による核ミサイル攻撃受忍論者であるー日本共産党はミサイル防衛網、トマホークミサイル、敵基地攻撃能力保有に反対だから (blueribbonasiya.blogspot.com) 

松竹伸幸さんは以前から、日本共産党の党首を一般党員による選挙で選ぶ事を主張していました。上記の本で、改めて日本共産党の党首公選制導入を訴えています。

松竹伸幸さんの一連の言動は規約と綱領から逸脱しているー赤旗掲載論考より

松竹伸幸さんの主張に対し、「赤旗」に批判論考が掲載されました。規約と綱領からの逸脱は明らか/――松竹伸幸氏の一連の言動について/赤旗編集局次長 藤田健 (jcp.or.jp) 

赤旗記事は藤田健さん(赤旗編集局次長)の個人的見解という形式になっていますが、日本共産党本部のどこかの部署で討議、決定されて出されたと考えられます。

藤田健さんは、松竹伸幸さんの一連の言動は規約と綱領から逸脱していると断言しています。

松竹伸幸さんが相応の自己批判をしない限り、厳しい処分になりそうです。

萩原遼さんは日本共産党三役の公選制を訴えたがそれでは処分されなかった

萩原遼さんは日本共産党の委員長、副委員長と書記局長を一般党員の選挙で選ぶべきと著作「朝鮮と私 旅のノート」で主張しましたが、それだけでは処分されませんでした。

そこで私は、松竹さんが同趣旨の本を出しても日本共産党本部は無視するだろうと考えていましたが、甘かったようですね。


松竹伸幸さんはブログで、御自身と藤田健さんでは綱領、規約の解釈が異なっているが、循環型の規約というなら自分を「赤旗」に登場させてほしい、と訴えています。「赤旗」藤田論文について・1 | 松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Ameba (ameblo.jp)

日本共産党が松竹伸幸さんの主張を「赤旗」に掲載することはないでしょう。松竹伸幸さんの言動が規約に違反しているというのですから。

日本共産党では、綱領や規約の解釈権を本部が掌握している

日本共産党では綱領や規約の解釈をめぐって、日本共産党本部と一般党員の間で違いが生じたら、本部の解釈が正しいとみなされます。

田口富久治教授はこの点がおかしいと著書などで主張していたと記憶しています。

「先進国革命と多元的社会主義」(昭和53年大月書店刊行)という本があります。加藤哲郎教授がこれを主張していたかもしれません。

日本共産党中央委員で松竹伸幸さんの綱領、規約に同意し、藤田健さんが自己批判すべきだと主張する方はいないと考えられます。

上記の本で松竹伸幸さんは「核抑止力抜きの専守防衛」(日米安保堅持・通常兵器による抑止。同書p118より)を日本共産党の基本政策にすることを訴えています。

藤田健さんによれば、松竹伸幸さんのこの主張は日本共産党に対し、日米安保容認・自衛隊合憲の党への変質を迫るものです。

松竹伸幸さんは台湾有事の際、周辺事態法により米軍を後方支援することを主張しています(同書p165)。

これは、日本共産党の平和理論から見れば米軍の行う戦争への協力推奨だ、という話になりそうですね。

藤田健さんは朝鮮労働党の「党の唯一思想体系確立の十大原則」を御存知ですか

松竹伸幸さんには、山ほど反論があるのでしょうけれど、日本共産党本部が松竹伸幸さんに関するこの見解を変更することはないでしょう。

私見では日本共産党や在日本朝鮮人総連合会の内部では、本部と一般党員、運動家の間で何かの件について解釈の相違が生じたとき、必ず本部の解釈が正しいことになります。

朝鮮労働党、在日本朝鮮人総連合会では「党の唯一思想体系確立の十大原則」が守るべき規範として確立されています。


日本共産党には「十大原則」に相当するような文書はありませんが、理屈はどうあれ、最高指導者、本部が正しい事になり、異論を唱えた方が叩き出される点は同じです。

在日本朝鮮人総連合会には民族反逆者、という語があります。日本共産党の反党分子、に対応する語です。近年の中国共産党なら、祖国分離主義者、が対応しそうです。

藤田健さんら日本共産党本部の皆さんには、一昔前の「世界政治」に掲載された「党の唯一思想体系確立の十大原則」を読んで頂きたいですね。

萩原遼さんが翻訳をしたと伺います。








2023年1月7日土曜日

森田成也さんの「日本共産党創立100周年記念講演を読んで」(「日本共産党100年 理論と体験からの分析」かもがわ出版、p91-101)より思う

日本共産党員議員、職員の中で、どのくらいの方がこの本を読んでいるのでしょうね。一割ぐらいでしょうか。

私が言うのもおかしいかもしれませんが、森田成也さんによる志位さん講演の批判は日本共産党員にとって傾聴に値すると考えます。

さしたる根拠があるわけではないのですが、日本共産党員の社会科学の研究者の中には志位さんの講演を読んで、これでは駄目だな、と思う方が少なくないように感じます。

簡単に言えば、志位さんの講演には社会科学的な深みがないのです。政治家に歴史学や政治学、経済学の深い知識を要求するのは酷かもしれませんが。

社会科学を探求している方なら、志位さんは日本共産党の文献以外に社会科学の文献をあまり読んでいないな、と直感するのではないでしょうか。

私見では、森田成也さんもそう感じたように思えてなりません。

森田成也さんの志位さん批判とは

森田成也さんは8つの問題点を指摘しています(同書p91-95)。

社会科学者が日本共産党創立百年を語るなら、無視すべきでない事がいくつも欠けていると森田成也さんはお考えなのでしょう。

森田成也さんによる志位さん講演批判の最重要点は、以下の3点と考えます。

第一に、志位さんは日本共産党がコミンテルンの一支部として創設されたことに言及していない。志位さんは日本共産党創設の国際的な文脈が無視している。

第二に志位さんは、高度成長期の日本共産党を語る際、ソ連や中国の覇権主義とどう戦ったかという話ばかりで、日本独占資本や米帝国主義との闘争を殆ど語っていない。

第三に志位さんは、高度成長期になぜ日本共産党が躍進できたかについて社会的・階級的分析をしていない。

これができないから、志位さんはなぜその後党勢が停滞、後退したのかについての社会的根拠を提示できない。

第一については、私も本ブログで繰り返し主張してきました。黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 志位さんは来る100周年記念講演会で、昔の日本共産党の綱領的文書(27年テーゼ、32年テーゼ、51年綱領)と宮本さんの「日本革命の展望」について語れるかー (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 志位さんは昔の日本共産党(国際共産党日本支部)とソ連の関係を内緒にしたいー昔の日本共産党員、左翼知識人はロシア革命に無関心だったのかー (blueribbonasiya.blogspot.com)

第二、第三については面白い指摘と思います。

私見では志位さんは、日本共産党がソ連、中国と創立以来一貫して戦ってきた、という歴史観を日本共産党員と支援者に普及したいのです。

志位さんは、一般党員に32年テーゼや宮本顕治さんの昔の論文、宮本顕治さんが主導した時期の大会決定を読んでほしくない。

米帝国主義、日本独占資本との闘争について、志位さんがあまり語れないのは、志位さんの米帝国主義観が宮本顕治さんのそれから乖離しつつあるからだと考えます。

これを内緒にしたいから、志位さんは米帝国主義、日本の独占資本についてあまり語れなくなっていると考えます。

日本共産党は、カウツキーの帝国主義論に少し接近

私見では近年の日本共産党の米帝国主義観は、レーニンが「帝国主義論」などで批判したカウツキーのそれに少し接近しています。黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: レーニン「帝国主義」(宇高基輔訳、岩波文庫)第九章「帝国主義の批判」より思う (blueribbonasiya.blogspot.com)

志位さんは「新・綱領教室」で日本共産党が政権に参加したら、有事の際に日米安保第五条により米軍に出動要請をすると明記しています。


米帝国主義が日本を守る役割を果たしうる、と志位さんは考えているのです。これは、レーニンの帝国主義論とは大きく異なっています。

宮本顕治さんなら、志位さんは右転落したと断じるのではないでしょうか。

志位さんのASEAN云々は、カウツキーの視点でASEANの金融資本を見ているから

志位さんが講演などで強調している、ASEANのようにあらゆる紛争を話し合いで解決する平和の枠組みをつくろう、という提案は、カウツキーの帝国主義論に基礎をおいていると考えられます。

カウツキーは、金融資本、帝国主義間で同盟関係が形成されたら、戦争は不可避ではないと論じました。

マルクス主義経済学の視点なら、ASEAN諸国も金融資本、大企業により支配されています。

金融資本間で同盟関係が形成されたから、ASEAN諸国では戦争が無くなった、とカウツキー流のマルクス経済学なら見るはずです。

志位さんのASEAN云々は、カウツキーの帝国主義論に近い。レーニンに強く依拠していた宮本顕治さんの帝国主義観から、徐々に乖離しているのです。

想像ですが志位さんは日本革命などない、と悟りつつあるように思えます。



2023年1月3日火曜日

「日本共産党100年 理論と体験からの分析」(有田芳生・森田成也・木下ちかや・梶原渉著。かもがわ出版)を読みました。ー日本共産党はダイエーと似ているー

日本共産党への注目度は上昇しているのか

日本共産党は党員、赤旗読者、国会と地方議会の議員数を減らしていますが、同党への注目度は上昇しているのでしょうか。

中北浩璽「日本共産党 『革命』を夢見た100年」(中公新書)や、松崎いたるさんの「日本共産党 暗黒の百年史」(飛鳥新社)など、日本共産党に関する本が最近相次いで出版されています。

本書は有田芳生さん(ジャーナリスト。前参議院議員)、森田成也さん(マルクス経済学者)、木下ちかやさん(政治学者)、梶原渉さん(一橋大学大学院)による日本共産党分析です。

全体で共通する問題意識は、日本共産党の衰退、高齢化の原因は何か、これを打開するために何をなすべきか、かと考えます。

この問題について、私見では梶原渉さん以外の方がそれぞれ興味深い答えを提起しています。

以下の要約は私の勘違い、曲解かもしれませんが、悪しからず。

日本共産党には異論者排除体質があるー有田芳生さん

有田芳生さんは、日本共産党の衰退、高齢化要因を、御自身の経験から同党の異論者排除体質と、その最大の例として新日和見主義事件に求めています。

有田芳生さんによれば、昭和47年に分派活動をした、として査問された方は600人、日本共産党から排除された方は100人にのぼるそうです(新日和見主義事件)。

この時多くの若く優秀な党員を手放した事が、世代交代を遅らせ、党勢を弱める遠因になったと有田さんは記しています(同書p41)。

御自身が経験した異論者排除体質を解消しない限り、日本共産党の発展はないという主張です。

不破さんの安保政策凍結論は失敗だった。護憲と革新の第三極づくりと、日本共産党内の選挙制度改革が必要ー森田成也さん

森田成也さんは、不破・志位指導部が宮本共産党時代の政治的・組織的遺産を食いつぶしながら存続し続けたと指摘しています。

日本共産党が平成10年7月の参院選で過去最高の得票と議席の大幅増を獲得すると、不破さんが安保政策を凍結して野党による暫定連合政権構想を提起しました。

森田成也さんはこれが大きな失敗だったと述べています。安保凍結ではなく、護憲と革新の第三極づくりを追及するべきでした(同書p80-81)。

今後の策として、森田成也さんは次を訴えています。

第一に、日本共産党の組織的改革を党内の選挙制度を改める事から始める事(同書p86)。

第二に、日本共産党が依拠してきた社会的基盤が縮小、高齢化していることを直視し、新自由主義の40年間で貧困化、周辺化し、生存と尊厳を脅かされている庶民、非エリートの労働者層、市井の女性達に依拠する事(同書p89)。

第三に、世界の民主主義の危機を克服するため、民主主義的に刷新された新しい社会主義を目指すグローバルで多様な民衆運動を起こし、その一翼となる事(同書p90)。

その他、森田成也さんは補遺として、志位さんの日本共産党創立100周年記念講演の問題点を8点指摘しています。

日本共産党は高度経済成長下で中間集団を組織し、国家の中の国家と言える文化的公共空間を構築できたから発展したー木下ちかやさん(同書p140)。

木下ちかやさんは、中北浩璽の前掲著を高く評価しています。木下ちかやさんが訴える、日本共産党の改革案は主に以下の二点と考えます。

第一に政治史の視座からだけでなく、社会運動史として日本共産党史を総括する事。

第二に21世紀の社会構造に適応した改革的中間集団の再建(同書p140)。

1950年代初め、講和論争時に形成された日米安保か憲法の平和主義かという枠組みが、若者には現実性を持って受け入れられなくなっているー梶原渉さん(同書p183)。

梶原渉さんの論考「戦後日本平和運動の中での日本共産党・試論」は、日本共産党が戦後の平和運動の中で果たした役割について記しています。

昭和38年に米英ソが締結した部分的核実験停止条約の是非をめぐり、原水禁運動が分裂しました。

分裂の原因として、日本共産党が米帝国主義批判の立場から社会主義国の核実験はやむを得ない、原水禁運動内部で主張した事が妥当だったかどうか、社会主義国の核実験容認は適切だったかのかを検討することを梶原渉さんは主張しています。

私見では、日本共産党はソ連や中国の核が平和に貢献すると信じていたのですから、ソ連や中国の核実験を容認するのは当然です。

機会があれば、ソ連を世界平和の砦と規定した日本共産党第八回大会での宮本報告、中国共産党の核実験を支持した第九回大会決議、上田耕一郎さんの著作「マルクス主義と平和運動(昭和40年大月書店刊行)について梶原さんの見解を伺いたいものです。

梶原渉さんは、昭和59年に起きた原水協での事件を御存知ないのでしょうか。

この事件については、吉田嘉清「原水協で何が起こったか」(日中出版社)など当事者の著作や、日本共産党の反論も多数出ています。

この事件で嫌気がさして日本共産党を辞めた知識人党員が相当数いたと伺います。古在由重先生も、この事件で吉田嘉清さんを擁護し、日本共産党から除籍されました。

私の記憶では古在先生の死亡記事が「赤旗」に掲載されなかったので、おかしいと思った読者、一般党員が相当数いたようです。

なぜ掲載しなかったのかについての釈明記事が少し後の「赤旗」に掲載され、それを読んでさらに日本共産党に嫌気がさした方が相当数いたようです。

日本共産党と平和運動、というテーマなら、言及すべきではないでしょうか。

日本共産党の成長と衰退は、ダイエーの成長、衰退、破綻と似ている

私見では、戦後の日本共産党の成長と衰退は流通大手ダイエーの衰退、破綻と似ている部分が多々あります。

日本共産党、ダイエー共にカリスマ的な権威を持つ経営者が、成長していく分野を見出し、経営者としての強力な権限を生かしてその分野に大きな投資を行ったことにより高成長を達成した。

労働者階級、庶民は消費者ですから、新しい商品が出てくることにより消費者としての満足度が増加し、実質賃金はあまり変わらなくても満足度が向上します。

新しい商品を次から次へと生み出せれば、消費者の満足度が高まり、消費需要が増えて経済成長につながるのです。

庶民の生活は楽ではないので、新しい商品を可能な限り安くせねば購入されません。

これは近年の内生的成長理論という、経済成長理論の発想です。

中内功さんは主婦の店ダイエー、という見地を経営に徹底することにより、消費者の満足度を高める商品を可能な限り安くすれば、自社の成長につながると直感したのではないでしょうか。

ダイエーの成長と破綻については、佐野眞一「カリスマ 中内功とダイエーの『戦後』」(新潮文庫)が良い文献と思います。

ほぼ同時期に宮本顕治さんは、自主独立路線と議会を通じての革命、という路線を固めました。

この路線は、ソ連や中国を社会主義国として尊敬はしていても、暴力路線は嫌だという庶民の気分に良く適合していたと考えます。

野坂参三さんも、カリスマ的な権威を持っていました。野坂参三さんの穏やかな口調の演説を聞いて、日本共産党に心酔した方は少なくなかったのではないでしょうか。

カリスマ的な経営者の存在による組織の硬直化、異論者の排除という点でも双方は共通していると考えます。

成長と衰退について、それぞれ独自の要因は多々あるでしょう。ダイエーの場合は過剰な不動産投資が衰退の重要な原因と考えられます。

日本共産党の場合、ソ連や中国、北朝鮮、東欧を社会主義国として高評価、礼賛してきた点は衰退の重要な要因と考えます。

ソ連などでは資本主義的搾取制度が廃止されていると宮本顕治さんは長年宣伝してきました。

昭和30年まで、世界の共産党は一つと日本共産党員は考えていた

昭和30年まで、在日の共産主義者が日本共産党員だったことを著者の方々は御存知ないのでしょうか。

その頃まで、世界で共産党は一つだから、在日朝鮮人、在日中国人は日本共産党に入党する事が当たり前と日本共産党員は考えていたのです。

世界の共産党の最高指導部は勿論、ソ連共産党です。昭和28年までは、スターリンが世界の共産党の最高指導者とみなされていました。

昭和25年からの50年問題の頃、今の日本共産党の解釈ではソ連、中国が大国主義的干渉を行い、徳田球一さんと野坂参三さんが分派を形成し武装闘争を行った事になっています。

当時の日本共産党員としては、世界共産党の最高指導部から指令が下りたのですから、それに従う事が共産主義者として当然の任務でした。

世界共産党の一員として、民主主義的中央集権制度の下、任務を実行せねばならないという発想です。

私見では不破さん、志位さんはこの辺りを隠蔽したい。歴史修正主義者ですから。




2023年1月2日月曜日

志位さんの主張、一番悪いのは軍事ブロックだ、排他的でなく包摂的な平和の枠組みをつくろう、に中朝露は大賛成しますよー米軍はアジアと欧州から出ていけ論に大賛成ー

 私見では志位さんの新春インタビューの上記の部分は、日本共産党の安全保障政策の中心的主張です。

開始後1時間19分25秒くらいで、志位さんは上記の話をしています。2023新春インタビュー 「戦争か、平和か」 歴史的岐路の年をどうたたかうか - YouTube 

私見では中朝露はこれに大賛成します。日本と韓国から米軍がいなくなれば、習近平と金正恩は大喜びするでしょう。

金正恩なら核攻撃をするぞ、嫌なら韓国軍と自衛隊を直ちに解散せよ、という類の脅迫をしそうです。

日本共産党の平和理論は中朝露の平和理論と完全に一致している

中朝露も一番悪いのは軍事ブロック、すなわち欧州ではNATO、アジアでは米韓同盟と日米同盟だと考えています。

中朝露は軍事ブロックをなくし、米軍をアジアと欧州から追い出して、あらゆる紛争問題を平和的に解決する包摂的な平和の枠組をつくる事にいつでも完全に合意します。

日本と韓国から米軍がいなくなれば中朝露は共謀して台湾と日本、あるいは韓国と日本を攻撃するでしょう。

NATOが解散して欧州から米軍がいなくなるという大変な事態が起きるなら、その時米国はウクライナに一切の軍事支援をしなくなっていることでしょう。

ロシアがウクライナ全土を支配している事でしょう。そうなれば、プーチンはウクライナに隣接する東欧諸国、あるいは北欧諸国のどこかを脅迫し、軍隊の常駐を認めよと言うでしょうね。

プーチンはワルシャワ条約機構を再建したいのです。

東欧諸国、北欧諸国はこれだけはご免でしょうから、NATOから脱退などしないでしょうけれどね。

この程度のことは、国際的な活動を長く担当している緒方靖夫副委員長ならわかりそうなものですが。

中朝露は国際的な合意や共同声明、共同宣言を無視して侵略戦争を始めうる

私はtwitter等で繰り返し指摘していますが、日本共産党の平和理論の中心的命題、軍事同盟が戦争を起こす論は中朝露のそれと完全に一致しています。

従って日本共産党の平和理論では、中朝露は平和勢力なのです。

志位さんのインタビューでも、中朝露が国際的な合意を無視して侵略戦争を始めるかもしれないという話は一切ありません。

中朝露は国際法を遵守すると宣伝して侵略戦争を始めるのです。プーチンによるウクライナ侵攻、72年前の朝鮮戦争はその典型的な例です。

中国共産党の朝鮮戦争への参戦は、大韓民国への侵略です。志位さんは朝鮮戦争の話をできません。

志位さんは中国共産党に、台湾政府と話し合えと要求できない

日本共産党は台湾有事を、米中の覇権争いと把握します。中国共産党が台湾政府を破壊するために、台湾を攻撃する事態だと認める事はできません。

台湾政府は台湾国民が行う選挙で成立しているのですから、台湾国民の代表です。

志位さんは台湾問題の解決は平和的な話し合いで行われるべきだ、と主張しますが、話し合いの主体、誰と誰が話し合うべきかについては記述できません。台湾に対する中国の軍事的威嚇の強化に抗議する│声明・談話・発言│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会 (jcp.or.jp)

志位さんが中国共産党は台湾政府と話し合え、と主張すると、台湾政府の存在を認める事になります。

これは不破さんが党首として表明した見解を否定する事になりますから、日本共産党議員、職員は台湾政府の存在を認められないのです。


志位さんは台湾問題を解決するために、誰と誰が話し合うべきだと主張できないのですから、話し合いなど成立しなくても構わないと内心では思っているのでしょう。

本ブログでは、日本共産党の平和理論について何度も論じてきました。台湾問題に関連するものは、例えば以下です。

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 志位さんの、日米による台湾問題への軍事的関与反対論より思うー日本共産党は中国共産党と朝鮮労働党の応援団ー (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 小池晃書記局長、絶対に戦争を起こさない血のにじむような外交努力を訴えるなら、台湾政府を東アジアの対話と協力の安全保障の仕組みに入れようとなぜ言えないのですかー (blueribbonasiya.blogspot.com)

 黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 志位さんは日本の平和と安全を脅かす国は存在しないと信じているー日本共産党第22回大会に対する中央委員会報告よりー (blueribbonasiya.blogspot.com)

 以下はウクライナ問題について論じています。

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 日本共産党はロシアとウクライナの戦争の現状について分析できないー志位さんは、日本共産党内で軍事についての思考と議論が広がることを恐れているー (blueribbonasiya.blogspot.com)

 


2023年1月1日日曜日

志位さんは、中朝を非同盟中立国と見ている(中朝友好協力相互援助条約の第二項を無視)ー志位さんの新春インタビューより。

 日本共産党は、以前から元旦に党首のインタビュー記事を機関紙「赤旗」に掲載し、党員と支援者に読了を勧めます。

過去には、1月3日の「赤旗」に掲載されたこともあったかもしれません。

宮本顕治さんの「日本共産党の立場1 1966~1972」(新日本文庫)を見ると、昭和41年から党首インタビューが始まったようです。

宮本顕治さんが引退した後は不破さん、近年では志位さんのインタビューが掲載されています。以下です。「戦争か、平和か」――歴史的岐路の年をどうたたかうか/新春インタビュー 志位委員長 大いに語る (jcp.or.jp)

2023新春インタビュー 「戦争か、平和か」 歴史的岐路の年をどうたたかうか - YouTube

 志位さんによれば、アジアには軍事ブロックは日米軍事同盟と米韓軍事同盟の二つしかありません。オセアニアの米豪軍事同盟と合わせても三つしかない。

欧州にあるNATOのような多国間の軍事同盟は、アジアでは全て解体し、非同盟・中立が圧倒的な流れになっていると志位さんは主張しています。

2023新春インタビュー 「戦争か、平和か」 歴史的岐路の年をどうたたかうか - YouTube

開始後1時間23分38秒頃に、志位さんはアジアでは軍事同盟は二つだと主張しています。

志位さんは中朝友好相互援助条約があっても中朝を非同盟中立国とみなす

志位さんは、中国共産党(周恩来)と朝鮮労働党(金日成)が昭和36年7月に締結した中朝友好協力相互援助条約を知らないか、これは軍事同盟ではないと判断しています。

軍事同盟、という語を大国が小国に軍事基地を置く関係、と解釈すれば、北朝鮮の領土内に人民解放軍の基地などありませんから、中朝友好協力相互援助条約は軍事同盟ではありません。

しかし、中朝友好協力相互援助条約の第二項には、自動参戦条項とも言うべき次の記述があります。

いずれか一方の締約国が、いずれかの国または同盟国から武力攻撃を受けて、それによって戦争状態に陥ったときは他方の締約国は、直ちに全力で軍事上その他の援助を与える。

これは、集団的自衛権ともいえる記述です。中朝はお互いに集団的自衛権を行使する、と条約で宣言しているのです。実際に中国共産党は、朝鮮戦争に参戦しました。

人民解放軍の基地は北朝鮮にないが、中朝軍事同盟は今日でも存続している、と考えるべきでしょう。

ともあれ、志位さんが中国共産党と朝鮮労働党、中朝を非同盟中立国と見ている事は明らかです。

日本共産党第22大会で志位さんは、東アジアに非同盟、非核、紛争の平和的解決など、平和と進歩の巨大な流れが広がっていると指摘しました。


志位さんにとって中朝は非同盟中立国ですから、平和と進歩の巨大な流れを構成していることになります。

志位さんは、チュチェ思想を大局的には進歩的思想と見ているから、チュチェの核弾頭とやらを量産している朝鮮労働党が平和と進歩の巨大な流れを形成していると評価するのです。

金正恩は核戦力を先制攻撃で使用する

ところで、本日の朝鮮中央通信掲載論考によれば、金正恩は核を先制攻撃用に用いる場合もあるそうです。

核戦力を防御目的でなく使用する場合もある旨、朝鮮中央通信は明記しています(朝鮮労働党中央委員会第八期第六回総会に関する報道)。

金正恩は核爆弾保有量を幾何数的に増やすそうです。

金正恩と朝鮮労働党による核軍拡は、岸田政権がトマホークミサイル保有を決めたからではありません。安保法制とも無関係です。

志位さんが新春インタビューで強調している、安全保障のジレンマなど存在しないのです。

金正恩と朝鮮労働党は、日本と韓国を攻撃、支配するために核軍拡を行ってきたのです。金正恩は、祖父も父もできなかった日本攻撃をやりたいのですよ。

日本共産党、朝鮮労働党を分析するために両党の文献を読みましょう

日本共産党を分析するためには、志位さんの新春インタビューなど日本共産党の文献に依拠する事が大事です。

同様に、朝鮮労働党を分析するなら、朝鮮中央通信などに掲載されている朝鮮労働党の文献に依拠すべきと考えます。

日本共産党を支援する研究者は、朝鮮労働党の文献を読むと厄介だから読まないのでしょうね。

厄介な事、面倒な事は避ける。今の日本共産党全体に、こんな気分が充満しているように私には思えます。

チュチェ思想を信奉する日本共産党員の研究者が沢山いるのかもしれませんが、それなら金正恩と朝鮮労働党の文献を熟読するべきでしょう。






 

志位さんはロシアによるウクライナ侵攻の原因はNATOの東方拡大、欧州諸国による外交の失敗と見ているー志位さんはプーチンの世界観、戦略を分析できない

 本ブログを訪問して下さる皆様、明けましておめでとうございます。

今年も、北朝鮮に拉致された日本人の奪還のため、中朝露による日本攻撃から日本国家を守るため、私なりに努力する所存です。

昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻には驚きました。少し前から、バイデン大統領がこれがありうると指摘していましたが、まさか、と思っていました。

私は早大の学生だった頃、ロシア語を第二外国語として選択しました。今でも、少しならロシア語の文章を読めます。

ソ連崩壊後、ロシアは多少ましになったと思っていたのですが、大きな間違いでした。ソ連共産党を支えてきた組織、KGBが形を変えて存続していたようですね。

プーチンを支えている組織の一つは、諜報機構らしい。

志位さんはロシアによるウクライナ侵攻の原因はNATOの東方拡大、欧州諸国の外交の失敗と見ている

志位さんはロシアによるウクライナ侵攻を口実として、日本と欧州諸国が日米同盟強化、NATO強化と拡大を進めているので平和への大逆流が起きていると主張しています。

志位さんら日本共産党員、左翼人士はロシアが東欧、北欧諸国や日本を攻撃することなどありえないと確信しているのでしょうね。

志位さんら日本共産党員、左翼人士にとって、戦争の根源は軍事同盟です。これはレーニンの帝国主義論に依拠しています。

志位さんはNATOが東方拡大、すなわち旧東欧社会主義諸国がNATOに加盟したことにより、ロシアがウクライナを侵攻することになったと考えていそうですね。

志位さんの新春インタビューに、それらしき部分があります。「戦争か、平和か」――歴史的岐路の年をどうたたかうか/新春インタビュー 志位委員長 大いに語る (jcp.or.jp)

 2023新春インタビュー 「戦争か、平和か」 歴史的岐路の年をどうたたかうか - YouTube

志位さんはインタビュー開始後1時間32分30秒ぐらいで下記のように話しています。

西欧諸国が東欧諸国のNATO加盟を認めたことは、軍事力によってロシアの攻撃を抑止する戦略だから外交の失敗だ、と志位さんは見る

志位さんによれば、欧州には欧州安保協力機構という、ロシアも含めて全ての国を包摂した機構があります。

1999年のこの機構の首脳会議では、欧州における紛争を平和的に解決するという宣言が出されました。

ところが、お互いに敵とみなさないという平和の枠組をつくったにも関わらず、NATOもロシアもそれを横に置き、軍事力によってお互いに相手の攻撃を抑止するという基本戦略を変えなかったから、ロシアによるウクライナ侵攻に帰結したそうです。

ロシアによるウクライナ侵攻の背景には、欧州諸国の外交の失敗があるそうです。

西欧諸国が東欧諸国のNATO加盟を許したことが、軍事力によってロシアの攻撃を抑止するという戦略だから外交の失敗だ、と志位さんは見ているのでしょう。

プーチンはウクライナを自国領と見ているが、ウクライナや他の欧州諸国がプーチンと欧州安保協力機構でじっくり話し合えばプーチンはウクライナ領有を断念したという見方です。

日本共産党員と左翼人は、米国が戦争の根源だという思考にとりつかれています。

NATO諸国がロシアに侵攻する計画を持ち、そのためにウクライナに米軍基地をつくろうとしていたと信じている日本共産党員、左翼人士がいそうです。

志位さんら日本共産党員は、プーチンの世界観、戦略について思考と議論をできない

志位さんら日本共産党員はプーチンがウクライナを自国領と考えているから、ウクライナを侵攻したと見ることができないのです。

プーチンの世界観、戦略は、欧州諸国首脳がプーチンと少し話し合えば変わるものではありえません。

志位さんら日本共産党員はプーチンが東欧諸国やバルト三国、フィンランドをロシアに隷属すべき地域と見ているから、攻撃、侵攻することがありえるなど想像すらできない。

志位さんら日本共産党員の脳裏には、宮本顕治さんのソ連観がまだ残っているのでしょう。宮本顕治さんはソ連は世界平和の強力な砦だ、と日本共産党第八回大会で報告しました。

日本共産党員と左翼人は、ソ連の軍隊を継承したロシアが、戦争国家であると把握できないのです。ロシアも元来は平和勢力だ、と見ているのでしょう。

日本共産党が参加する野党と市民の政権とやらができ、安保法制を廃止して基地のない沖縄、が実現したら中朝露は共謀して日本を攻撃しますよ。