2022年8月15日月曜日

労働市場が存在するなら、資本主義的搾取制度が存在するーベーム・バヴェルクとレーニン、スターリンに共通点ー

 資本主義的搾取制度は、労働市場と金融資産市場が存在するなら廃止できません。

これを企業経営方式から表現するなら、株式会社制度が存在するなら資本主義的搾取制度は廃止できません。この件、私は何度も論じてきました。

前回紹介したもののほかに、以下があります。黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 市場経済では生産手段の社会化(資本主義的搾取の廃止)はできない―不破哲三「マルクス主義と現代修正主義」(昭和40年、大月書店刊行)より思う (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 聴濤弘著「200歳のマルクスならどう新しく共産主義を論じるか」(かもがわ出版)より思う。 (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: レーニン「青年同盟の任務」(1920年10月2日。「レーニン全集」第31巻、大月書店刊行)より思う、 (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: レーニン「賃金労働を使用するもの、他人の犠牲でもうけているものからわれれは全部収奪するであろう」(レーニン全集第28巻より) (blueribbonasiya.blogspot.com)

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 社会主義体制はなぜ崩壊したのか―エンゲルス「空想より科学へ」(大内兵衛訳、岩波文庫。英語ではSocialism, Utopian and Scientific)より聴濤弘氏に問う。 (blueribbonasiya.blogspot.com)

マルクスの搾取理論に対する批判としては、ベーム・バヴェルクによる搾取利子説が重要です。

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: マルクスの搾取論とベーム・バヴェルク(1851-1914) (blueribbonasiya.blogspot.com)

ベーム・バヴェルクによれば、マルクスは現在財と将来財の違いを無視しています。

マルクスは、労働者が自分が作り出した製品の将来価値の全てを現在受け取らないと搾取があると主張している、とベーム・バヴェルクは批判しました(上記に引用した、根岸隆「経済学の歴史」第四章より。東洋経済新報社昭和58年刊行)。

資本主義的搾取制度の廃止とは何かーベーム・バヴェルク、根岸隆教授の見地より考える

ベーム・バヴェルク、根岸隆教授によるマルクス批判の見地を敷衍して、搾取制度の廃止とは何かについて考えてみましょう。

労働者が一人で、1年かけて何かの財を生産するとします。その財を生産するためには、材料が必要ですが、これは資本家から提供されるとします。

労働者は資本家から、賃金を前払いで受け取ります。労働者はこの賃金で一年間の暮らしに必要な財を購入します。

財の生産に直接、間接に必要な労働総量には、材料の生産に必要な労働量も含まれます。この財が一年後に完成して販売できたら、多少の利益が得られるとします。

このとき労働者が一年間に提供した労働総量と、それと引き換えに得られる賃金で購入できる財の生産に直接・間接に必要な労働総量を比較すると、後者が前者より多いので、マルクス流にいえば搾取が存在します(置塩・森嶋教授によるマルクスの基本定理)。

労働者が一年後に得られる機械の売り上げ全部をはじめに受け取ったら、搾取は勿論存在しません。資本家は何も得られないので、利潤も存在しません。

利潤がなければ、搾取はありません。

ベーム・バヴェルク流に考えると、搾取制度の廃止とは労働者が、将来得られる財の売り上げを生産の初めに資本家から得る事です。

資本主義的搾取制度を廃止するなら、将来得られる売り上げを労働者が現在取得することになり、資本家は労働者を雇用しても何も得られない。資本家は損をするだけです。

雇用という制度を無くすこととは、労働市場の廃止です。

レーニンは資本家と地主、富農とツァーリの追放を搾取制度廃止の必要条件と主張した

レーニンは、資本家階級、地主階級と富農の廃止、ツァーリの追放を搾取の廃止の必要条件と考えました(例えば、「青年同盟の任務」)。

レーニンは「青年同盟の任務」で、社会の一部が工場を持ち、株式や資本を持っていて、他の一部のものがこれらの工場で働いているなら、資本家階級雄労働者階級が存在する事になると指摘しています(「青年同盟の任務」柴田順吉訳。いづみ書房刊行のp100より)。

レーニンは全ての人が単一の共通の計画で、共通の土地で、共通の工場で働くようにしなければならないと述べています(同書p101)。

これを実現するために、レーニンは労働者階級が農民の一部を再教育し、他人の困窮で金もうけをしている金持ちの農民の反抗を撲滅せねばならないと説きました(同書p102)。

農民の再教育と富農の反抗の撲滅も、搾取制度廃止のための必要条件とレーニンは考えていたのでしょう。

単一の共通の計画云々も、レーニンがこれを搾取制度廃止の十分条件とみなしていたとは考えにくい。

レーニンはベーム・バヴェルクの著書を読んでいなかったと考えられますが、同じことを違う角度から主張していると考えられます。

レーニンとボリシェヴィキはニコライ2世一家を処刑した(1918年7月17日。大正七年)

実際には、レーニンとボリシェヴィキはツァーリだったニコライ2世一家を追放したのではなく、処刑しました。

「青年同盟の任務」執筆はニコライ一世一家の処刑より2年少し後です。

ニコライ2世一家については、以下が参考になります。ロマノフ王朝、最後の皇女、アナスタシア皇女。ロマノフ家。 - YouTube

資本家階級、地主階級と富農の追放とは、彼らの全財産を没収してしまうことです。文字通りこれをされたら、一文無しになります。

この命令がロシア全域で完全に実行されたのか、私にはわかりませんが、相当数の餓死者が出たことは間違いありません。

レーニンはこれらの残虐行為に何の反省もしていません。

レーニンは、搾取制度廃止のためにはロシア皇帝一家処刑、資本家と地主、富農の追放、餓死も、必要不可欠と考えていたのでしょうね。

不破さん、志位さんは今でもロシア革命を高く評価していますが、ロシア皇帝一家の処刑や大量餓死も社会進歩のために必要不可欠と考えているのでしょうか。

全ての人が人が単一の共通の計画で、共通の土地で、共通の工場で働くようにせねばならないなら、中央計画当局が作成した計画に従って、財と労働の配分が行われるソ連型計画経済こそ社会主義だ、という話になります。

スターリンは「青年同盟の任務」に示された、レーニンの遺志を継承しました。

不破さんはソ連を、人間抑圧社会だったと評していますが、搾取制度を廃止するなら人間抑圧型社会を建設することになるのです。

「青年同盟の任務」の上記該当部分の英訳を、下記に記しておきます(前掲書p98、100より抜粋)。

What are classes in general? Classes are that which permits one section of society to appropriate the labour of another section. If one section of society appropriates all the land, we have a landowner class and a peasant class. if one section of society owns the factories, shares and capital, while another section works in these factories, we have a capitalist class and a proletariat class. 

All should work according to a single common plan, on common land, in common factories and in accordance with a common system. Is that easy to attain? You see that it is not as easy as driving out the tsar, the landowners and the capitalists.


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