「どんな疑いもありえない。富農は、ソヴェト権力の仇敵である。富農が数かぎりなく労働者を殺すか、でなければ労働者が、勤労者の権力にたいする、国民のなかの少数の強盗的富農の暴動を、容赦なくふみつぶすかである」(労働者の同志諸君!最後の決戦にすすもう!」レーニン全集第28巻より抜粋)。
吉良よし子議員、池内さおり議員ら若い共産党員はロシア革命後の内戦期にレーニンが書いた論文を読んだことがあるのでしょうか。
日本共産党の国会議員が「赤旗」を少し読むだけで、レーニンや宮本顕治氏、不破哲三氏の昔の論文を一切読まずに自分が共産主義者だと思っているなら、国民を愚弄しています。
1918年頃からのレーニンの論文を読めば、「富農」という人々を罵倒し「踏みつぶす」「全部収奪する」「抑圧する」などと主張していることに気づきます。
1917年のロシア革命以来、モンゴル、東欧、中国、北朝鮮、キューバ、ベトナム等共産主義国がたくさんできました。
政権を奪取した共産党は、反革命分子(共産党を批判する人のこと)を抑圧してきました。
日本共産党の大幹部だった宮本顕治氏はそれを正当化しました。本ブログではこれを何度も論じてきました。
共産主義思想は反革命分子の投獄、処刑、囚人労働強制を正当化する
共産主義理論(宮本顕治氏の言を借りればマルクス・レーニン・スターリン主義)では反革命分子の投獄、処刑、追放を正当化します。
反革命分子の呼称は各国様々です。
富農、トロツキスト、地主、反党分子、走資派、祖国分離主義者、民族反逆者、宗派分子、新日和見主義者などのおどろおどろしい表現が用いられてきました。
北朝鮮の金正恩の叔父張成澤は「反党反革命宗派分子」というレッテルを貼られて処刑されました。
宮本顕治氏は「マルクス・レーニン・スターリン主義」とやらへの信仰とソ連共産党への忠誠を論文「共産党・労働者党情報局の『論評』の積極的意義」(「前衛」1950年5月掲載)で表明しました。
宮本顕治氏は、レーニンとスターリンの諸論文を熟読していました。共産主義理論では、王室は旧支配階級の頭目で大地主ですから処刑ないしは追放すべき対象です。
レーニン「穀物を蓄えている富農はもっとも悪質な犯罪人であり、人民の最悪の敵」
レーニンは「モスクワ地方貧農委員会の代表にたいする演説 1918年11月8日」(レーニン全集第28巻掲載)で英仏では数百年前に皇帝が処刑されていること、ロシアではツァーリ(ロシア皇帝のこと)を処理するのが遅れていたと述べました。
「処理」とは、ニコライ2世一家の処刑を意味していたとしか考えられない。皇帝一家(皇后と皇太子、四人の皇女)はこの演説の4か月くらい前に処刑されてしまいました。
レーニンは、フランス革命でのルイ16世とマリー・アントワネットの処刑を当然視しています。
レーニンによれば、欧州の全ての革命は農村が自分の敵をかたづけることができなかったからしばらくすると旧秩序が君臨してしまいました。
従って労働者階級は、農村の貧農と同盟し富農を徹底的に抑圧せねばならない。
富農が飢えているロシアで投機のために穀物を蓄えているから、もっとも悪質な犯罪人であり、人民の最悪の敵である旨、レーニンはこの論文で力説しています。
この演説の最後でレーニンは、賃金労働を使用するもの、他人の犠牲でもうけているものからは全部収奪するであろうと述べました。
演説は「あらしのような拍手」で終わったそうです。北朝鮮、在日本朝鮮人総連合会を思い出すのは私だけでしょうか。
レーニン「富農、吸血鬼、人民の略奪者、飢えでもうける投機者を容赦なく抑圧せよ」
「労働者の同志諸君!最後の決戦にすすもう!」でレーニンは、富農が他国の歴史上、地主、皇帝、坊主、資本家の権力を一度ならず復活させた、もっとも凶悪かつ野蛮な搾取者であると述べています。
レーニンによれば、ロシアには約1500万の農家があり、そのうち約1000万は貧農、約300万は中農で富農、金持ち、穀物投機者は200万人程度です。
レーニンによれば富農、金持ち、投機者は吸血鬼、蜘蛛、蛭だそうです。
この吸血者が戦時の国民の窮乏でもうけ、穀物その他の物資の価格を引き上げて、何千、何十万の金を貯めたそうです。
富農、この血を吸う者、吸血鬼、人民の略奪者、飢えでもうける投機者を容赦なく抑圧することが自覚した労働者の綱領であり政策であるとレーニンはこの論文で断言しています。
200万人の財産を没収し抑圧しようとしたら、内戦になるのは当たり前です。「自覚した労働者の綱領」とやらがそういう内容なら、自覚しない人のほうがどれだけましかわからない。
スターリンは富農や反革命分子の大量殺戮、囚人労働の強制を断行しました。これはレーニンの教えに基づいています。
富農や闇商売に従事する人はなぜ吸血鬼、蜘蛛、蛭なのか
ところで、内戦、戦時そして終戦後暫くでも生産がまともにできませんから物資が不足し価格が上昇します。
その機会を狙って闇で物資を運び、金儲けをする人はいくらでも出ますが、そんなことで吸血者、蜘蛛、蛭だのと政治家に呼ばれるいわれはない。
内戦期に闇屋が存在しなければ食糧を得られませんから、餓死する人が増えるだけです。
闇屋が金もうけをしていることは間違いないのですが、比較的収穫の良い地域から農産物を購入し飢饉の地域でそれを販売する程度のことが凶悪行為であろうはずはない。
レーニンが主張したように共産主義理論では人を雇用して農業や商業、工業を行う人は他人の犠牲でもうけていることになります。
どこの地域でも、農村には地主と小作人がいました。自分の土地を僅かでも持っている農民の中には、農繁期に多少の人を雇う農民もいます。
レーニンの定義によれば多少の農地を持ち、農繁期に人を雇う農民は皆、富農で吸血鬼、蜘蛛、蛭です。
当時のロシアで約200万人が富農や投機者、すなわち吸血鬼、蜘蛛、蛭だからそいつらを抑圧し収奪せよとレーニンは大まじめに主張していたのです。
こんなレッテルを貼られて財産を没収された人々(富農の方々)が黙っていたのなら、赤軍に殺される可能性が十分にあったからでしょう。なんせ、吸血鬼なのですから。
今の北朝鮮で金正恩、朝鮮労働党の命令に背けば処刑ないしは政治犯収容所で囚人労働を強制されかねない。
宮本顕治「日本革命の平和的発展の可能性を提起することは根本的な誤りとなる」(「共産党・労働者党情報局の『論評』の積極的意義」(「前衛」1950年5月掲載)
共産主義理論からみれば、日本の農村でも相当数の農民が富農扱いされて財産を没収されることになります。
宮本顕治氏はかつて、日本革命の「平和的発展の可能性」を提起すること、議会を通じての政権獲得の理論は根本的な誤りであると断言しました。
宮本顕治氏が若い頃想定していた「日本革命」は当然、「富農」の財産没収と抑圧です。
そんな蛮行を「平和的」に、議会を通じて行えたのなら、国会議員が異常な人間だらけになっていることになります。そんな国会議員こそ吸血鬼呼ばわりされても仕方がない。
議会を通じて富農の財産を没収し抑圧するのは無理だと宮本顕治氏は判断したのでしょう。この判断自体は適切です。
「富農の財産没収・抑圧」の公約をする人間が国会議員選挙で当選するはずがない。
聴濤弘氏(日本共産党の元参議院議員。1935年生まれ)もマルクス・レーニン・スターリン主義者なのか
聴濤弘氏は著書「レーニンの再検証」(2010年大月書店刊行、p172)で次のように述べています。
戦時共産主義の時期の「血の海」をみて、十月革命はやるべきではなかった、時期尚早であった、この点にスターリン主義の起源があるとし、血の責任をレーニンにかぶせ、反革命を免罪する「十月革命」論は歴史の進歩を前向きにしようとしない議論である。
この文章を読む限り、聴濤弘氏はレーニンによる富農の財産没収、抑圧論を擁護しているとしか思えません。
聴濤弘氏は富農の財産没収と抑圧や、ロシア皇帝一家処刑を「歴史の進歩」と本気で考えているのでしょうか。200万人の財産没収と抑圧、皇帝一家処刑が歴史の進歩ですか。
皇后や皇太子、皇女処刑も歴史の進歩なのですか。「反革命」なら子供も処刑するのがマルクス・レーニン・スターリン主義なのでしょうけれど。
富農は吸血鬼、蜘蛛、蛭ですか。
聴濤弘氏がマルクス・レーニン・スターリン主義者なら、これを正当化するのは当然です。宮本顕治氏は前掲論文で次のように力説しています。
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