2015年5月24日日曜日

社会主義体制はなぜ崩壊したのか―エンゲルス「空想より科学へ」(大内兵衛訳、岩波文庫。英語ではSocialism, Utopian and Scientific)より聴濤弘氏に問う。

Karl Marxの盟友Friedrich Engels(1820-95)は、ブルジョアジーが不用であると断言した。「資本家の一切の社会的機能は今や月給取りがやっている」(同書p82)。―


社会主義体制はなぜ崩壊し、資本主義になっていったのか。この問いについては様々な議論があります。

私見では、「反革命」「宗派分子」「民族反逆者」などされた人々を追放し囚人労働をさせ、「過労死」させる社会主義体制では技術革新や品質の向上ができなくなるから、資本主義国との経済競争に負けたのです。

技術革新や品質向上を推進する能力のある人々が、「反革命」云々のレッテルを貼られてしまうからです。そのような愚行を正当化する「理論」が、エンゲルスの著作の中にありました。

以下、それを示します。

旧ソ連や東欧では、社会主義理論の元祖マルクス・エンゲルスの著作や論文が聖典化されていました。「空想から科学へ」は聖典の一つでした。

各国の共産党員は旧ソ連を社会主義の祖国、理想郷と大宣伝した


かつて世界中の共産党員は旧ソ連を社会主義の祖国、理想郷とみなし、ソ連共産党から物資両面で支援を受けていました。

ソ連では、マルクス、エンゲルス、レーニンの理論に基づき、後継者スターリンにより社会主義の体制が着々と建設され、人々は幸せな暮らしをしている旨、共産党員は大宣伝しました。

聴濤弘氏(元日本共産党参議院議員)によれば、旧ソ連では失業はなくなったそうです(「21世紀と社会主義」p44-45, 1984年新日本出版社刊行)。

「反革命」のレッテルを貼られ政治犯収容所で囚人労働をさせられていた方々は、「政治犯」という「職業」があったから、失業していなかったということでしょうか。

この件、吉良よし子議員や池内さおり議員から、聴濤弘氏に質問していただきたいですね。聴濤弘氏はどう答えるのでしょうか。

旧ソ連では政治犯が社会主義国家に囚人として雇用されていたから完全雇用が実現できた、などと聴濤弘氏は大真面目に考えていたのでしょうか。

エンゲルスは資本家(投資資金提供者)や企業経営者の社会的役割を認識できなかった


エンゲルスは、資本家(投資資金提供者)や企業経営者が種々の技術革新、経営革新を行い経済成長を実現させる存在であることを無視しました。

エンゲルス自身は企業経営の手腕を持っていたようですから、なぜ企業経営者の役割を無視するような愚論を吐いたのかは不明です。

エンゲルスによれば、資本家は収入をまきあげること、利札を切ること、取引所で投機をやり、資本家同志たがいに、資本を奪い合うこと以外に、何らの社会的な仕事をしません(同書p82)。

エンゲルスのいう「ブルジョアジー」「資本家」とは、投資資金を提供している株式会社の所有者のこと理解すべきでしょう。

儲かっている会社の発行済株式の多くを保有していれば、配当でかなりの収益を得られます。

保有株式を一部売却し、他の株式や金融資産に投資をすることもできる。しかし、金融資産の収益は実物経済と無関係ではありえません。

経済の実態から乖離した資産価格上昇は、多くの人々がそれが実体経済との反映とみなしていれば継続しますが、そうでないとわかれば停止する。

金持ちによる金融資産保有は実体経済への投資資金提供となっているのですから、何ら社会的な仕事をしていないと断ずるのはおかしい。

エンゲルスには、銀行も信用(貸出)を供給して投資を支え、経済を成長させることが理解できていない。

企業経営者や銀行家が囚人労働により「過労死」すれば、技術革新が停滞し財の品質改善もできない―資本主義との競争に負ける


エンゲルスは19世紀の人物ですから、J. A. Schumpeterの「経済発展の理論」(The Theory of Economic Development)など知るはずもなく、時代の限界とも言える。

企業経営者や銀行家がInnovatorとして技術革新や経営組織革新を行い、経済成長を支える役割を果たすという発想は、マルクスやエンゲルスにはなかった。勿論、レーニンにもない。

エンゲルスの「空想から科学へ」への企業経営者無用論、「何らの社会的役割を果たしていない」は革命後に企業経営者や地主たちを山間僻地や政治犯収容所に送り囚人労働をさせる「理論」的基礎になりました。

技術革新や経営組織革新を行う人々が「反革命」とされて囚人労働、そして「過労死」してしまえば、経済成長が困難になり、財の品質が資本主義国に比して悪くなっていきます。

殺人は凶悪行為です。百害あって一利なしです。マルクス、エンゲルスやレーニンの小難しい理屈などより、殺人は百害あって一利なしという常識の方がどれだけましかわからない。

聴濤弘氏はいま、若い頃の虚偽宣伝をどう述懐しているのでしょうか。

在日本朝鮮人総連合会のみなさんは、自らを「金日成民族」と認識しているはずです。北朝鮮の公式文献にそういう記述がありますから。

「金日成民族」には、品質改善は困難でしょうね。日本共産党の吉良よし子議員、池内さおり議員は、「金日成民族」とどんな「対話」をするのでしょうか。

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