日本共産党は日本革命を実現し、資本主義的搾取制度を廃止して日本を社会主義、共産主義にすることを目指す政党です。
しかし日本共産党は与党になれたら、日本有事の際に政府が日米安保第五条により米軍に出動要請する事を認めます。
違憲の自衛隊を合憲と認め、防衛出動を認めます。
要は、日本共産党は与党になれたら、日米軍事同盟により日本の平和と民主主義を守る路線に転換するのです。
志位さんはこれを九年ぐらい前に記者会見で明言しました。
松竹伸幸さんは志位さんの発言を心強く思った
松竹伸幸さんは上記の著書で志位さんのこの発言を、予想外だったが心強く思ったと記しています(同書p. 134)。
日本共産党本部で仕事をしている幹部の中で、志位さんのこの探求を受け止めて発展させようという方がいなかったので、元本部職員だった自分がそれをやるしかないという問題意識から、「シン・日本共産党宣言」(文春新書)を執筆したそうです。
「シン・日本共産党宣言」は日本共産党の基本政策として、核抑止抜きの専守防衛、日米安保を堅持するが米国の核抑止には頼らず、通常兵器による抑止にとどめる事を主張しています(同書p. 118)。
松竹伸幸さんを批判した日本共産党幹部の保身行動
志位さんの探求を無視していた幹部達は、松竹伸幸さんのこの政策提案に対し、激しい批判を浴びせました。
松竹伸幸さんは日本共産党幹部達のこの行動を、大略次のように解釈しています(「不破哲三氏への手紙」p. 135より)。
・彼らの本音は、旧綱領と同じでただただ日米安保廃棄と自衛隊解消だけである。彼らは志位さんの上記提案を、苦々しく思っている。
・志位さんに自分の本音を告げると厄介なので、幹部としての地位保全や給与継続を優先し、本音を隠して日本共産党大会や中央委員会総会では賛成票を投じてきた。
・松竹提案批判が許容されると分かると、幹部達は志位さんの上記の見解を無視し、松竹伸幸さんに鬱憤をぶつけるような感情的な批判を展開した。
幹部達、というとき松竹伸幸さんがどなたを想定しているかはわかりません。
藤田健さん(赤旗編集局次長)は志位さんの日米安保・自衛隊活用論について沈黙
松竹伸幸さんの諸提案を批判した藤田健さんの論考は、松竹伸幸さんの日米安保堅持・核抑止抜きの専守防衛論が志位さんの日米安保・自衛隊活用論とどう違うのかについて一切説明していません。
規約と綱領からの逸脱は明らか/――松竹伸幸氏の一連の言動について/赤旗編集局次長 藤田健 (jcp.or.jp)
日本共産党による松竹伸幸さん批判については、同党京都府委員会が次で一覧にしています。【一覧】松竹伸幸氏の除名処分をめぐる論説 | JCP京都: 日本共産党 京都府委員会 (jcp-kyoto.jp)
この中でどなたが、幹部としての地位保全や給与継続を優先し、本音を隠していると考えられるのかはわかりません。
志位さんは、上記の九年ほど前の自分の提案を内緒にしたいようです。黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 志位さんは、自分の日米安保活用論を内緒にしたいー「日本共産党の百年」(新日本出版社刊行、p300)より思う。 (blueribbonasiya.blogspot.com)
日本共産党中央の幹部人事決定方式、基準は不明
そもそも、日本共産党の中央幹部人事は誰により、どんな基準で決定されているのでしょうか。
日本共産党中央に、普通の会社の人事部のような部署はなさそうです。組織部、とかいう部署がそれに対応しているのかもしれません。
(追記)日本共産党中央に、「人事局」という部署があるそうです。
幹部会委員長と書記局長、副委員長のどなたかが何らかの基準で幹部の人事配置、人事異動を決めているとしか考えられません。
昔は、宮本顕治さんが幹部の人事配置、異動を決定していたようです。高尚な理想実現を掲げる集団でも、幹部になるためには最高指導者との人脈形成が重要となりそうです。
故萩原遼さんは松竹伸幸さんと同様の結論に達していた
故萩原遼さんは赤旗記者を長く務めた方です。
萩原遼さんは「朝鮮と私 旅のノート」(文春文庫第五章、p. 230。平成12年刊行)で、一人の指導者を長期にトップの座においておくと、ゴマスリの出世主義者や無気力なイエスマンがはびこると指摘しています。
この指摘は、松竹さんが描く幹部像と大差ありません。
また萩原遼さんは、日本共産党の委員長、副委員長、書記局長の三役を党員の公選制で選出する事を提唱していました(同書p. 227)。
党首だけでなく、副委員長と書記局長まで公選制で選出しようというのですから、松竹伸幸さんの提案より大きな改革案と言えます。
どんな組織にもゴマスリの出世主義者、無気力なイエスマン、本音を隠して幹部としての地位保全を最優先する人は存在するのではないでしょうか。
そんな人ばかりが大幹部となり、大きな権限をふるうようになれば、企業なら経営が悪化すでしょう。
日本共産党の最高指導者、幹部には、萩原さん、松竹さんが訴えたような組織改革を受け入れる誘因がない
上場企業なら、業績が悪化すれば株主総会で経営者は株主から批判されます。赤字になれば無配当になるのですから、批判されるのは当然です。
発行された株のうち相当部分を保有する方が経営者なら、赤字になったからといって退陣させることは困難ですが、赤字経営が何年も続けば債権者、銀行から退陣を迫られるでしょう。
非上場企業でも、経営が悪化したら債務を返済できなくなってしまいかねません。中小企業では多くの場合、経営者が債務保証をしています。経営者が責任を取る事になります。
経営者は勿論、これらを熟知しています。普通の感覚を持った経営者なら、赤字経営にならないよう努力しているでしょう。
株式会社制度には、経営者が企業存続のために努力する誘因があると考えられます。
その企業で長く雇用されることを望む労働者なら、経営者から課された業務に励む誘因があると考えられます。
日本共産党の場合、株主がおらず株主総会がないのでどれだけ業績が悪化しても、同じ方が最高指導者を継続する事が可能になります。
日本共産党の最高指導者が債務保証をしているとは考えにくいので、業績悪化の責任を取る必要はありません。
日本共産党の最高指導者、幹部は、党首や三役公選制といった改革を受け入れる誘因などありません。
そんな改革を受け入れようと仲間の前で呟いたら密告され、厄介な事になりかねません。
日本共産党幹部の皆さんは、保身を最優先する行動を継続すると考えられます。
保身策」の一環として、志位さんが九年前に行った上記提案について、幹部の皆さんは沈黙を続けることでしょう。
志位さんがこれを内緒にしたがっていることを、幹部の皆さんは察知していると考えます。