日本共産党の規約では、除名は党の最高の処分であるから慎重に行わなくてはならないと明記されています(第54条)。日本共産党規約 (jcp.or.jp)
何らかの理由で重大な規律違反をしたとみなされた党員は、除名決定に先立ち、規律違反についての取り調べのような面談時間を指導部と持つことになっています。
日本共産党規約の第54条は、党員の除名を決定し、または承認する場合には、関係資料を公平に調査し、本人の訴えを聞き取らなくてはならないと明記していますから。
昔はこの取り調べ時間を「査問」、最近は「調査」と呼んでいます。日本共産党としては、「調査」を本人の訴えを聞き取る機会と考えているのでしょう。
松竹伸幸さん、鈴木元さんは手軽に除名された
少し前に、「査問」「調査」のこれまでの例について、いろいろな文献に依拠して要約しました。黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 3月 2023 (blueribbonasiya.blogspot.com)
「調査」の時間は松竹伸幸さんは1時間少し、鈴木元さんは30分程度だったそうですから、極めて短い。両氏は手軽に除名されたと言えそうです。
御二人の除名を決定したのは京都府の日本共産党ですが、中央本部の担当部署から何らかの指導が京都の共産党になされていたと考えられます。
担当部署を指導するのは志位さんです。
志位さんが松竹伸幸さん、鈴木元さんの除名処分を早く進めるようにと担当部署に出したと見るのが自然です。
それでは、志位さんはなぜ御二人の除名処分を早く進めねばならないと判断したのでしょうか。
志位さんは藤田論文を出して松竹伸幸さんに警告を出した、と言いたいのでしょうが、それでも除名の手続きは迅速に行われています。
志位さんは、松竹伸幸さん、鈴木元さんの主張が日本共産党内に広がる事を恐れた
私見では志位さんは、両氏を伊里一智さんと同様に日本共産党規約を蹂躙した「反党分子」と認識しました。
最近の日本共産党はこの語を用いていませんが、昔の「赤旗」では除名処分となった元党員をそのように表現していました。
共産主義運動では、何らかの論点で共産党を批判する人を極悪人であると人々が把握するべく、独特の表現を用いて宣伝します。
共産党を批判する人々は、旧ソ連では「人民の敵」、中国では「右派」「走資派」「祖国分離主義者」「反中乱港分子」、北朝鮮、在日本朝鮮人総連合会では「反革命分子」「宗派分子」などと表現されてきました。
反中乱港分子、とは最近の用語で、中国に反対し香港を混乱させる人という意味です。香港の民主化運動に参加し、今は外国に住んでいる活動家に対する用語です。
志位さんの脳裏では、両氏は「反党分子」という極悪人なのですから、一刻も早く一般党員と支援者から隔離せねばなりません。
旧ソ連や中国、北朝鮮では「人民の敵」云々と把握された人々は処刑か政治犯収容所送りにされました。
しんぶん赤旗が両氏を「反党分子」という語で表現すると、やはり日本共産党は旧ソ連、中国共産党、朝鮮労働党と同じだなという印象が広がってしまいます。
そこで志位さんは、松竹伸幸さんを「反党分子」という語ではなく、新しい語で表現するように指示を出したと考えられます。党攻撃とかく乱の宣言/――松竹伸幸氏の言動について/書記局次長 土井洋彦 (jcp.or.jp)
それではなぜ、志位さんと日本共産党は松竹伸幸さんだけを「破壊・かくらん者」と規定し、鈴木元さんには、除名決定の文書以外で一切反論、批判をしなかったのでしょうか。
鈴木元氏の除名処分について | JCP京都: 日本共産党 京都府委員会 (jcp-kyoto.jp)
志位さんは日本共産党の路線に近い主張をする松竹伸幸さんは極めて危険と判断した
志位さんは、鈴木元さんより松竹伸幸さんの方が日本共産党にとって危険と判断したと考えられます。
松竹伸幸さんは、自らの主張は日本共産党の綱領・規約に沿っていると強く主張し、党首選挙が行われたら御自身が立候補すると表明していました(「シン・日本共産党宣言」第二章「私には立候補する資格がある」、文春新書)。
松竹伸幸さんは、ブログでは随分前に、日本共産党の党首公選制導入と、自分が立候補する事を明言していました。党員投票の党首選挙と共産党規約・上 | 松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Ameba (ameblo.jp)
鈴木元さんの著書は、日本共産党を批判しつつも提言をする、という論調です。仲間を募って何か行動をしようという趣旨ではありません。
鈴木元さんの著書より、松竹伸幸さんの著書とブログの方が志位さんと日本共産党の路線に近いのです。
宮本顕治さんによる春日庄次郎さん批判と同じ発想で志位さんは、日本共産党に近い主張をする人が最も危険であると判断したと考えられます。
春日庄次郎さん、山田六左衛門さんら「構造改革派」は昭和36年7月の日本共産党第八回大会の頃に除名されました。
「構造改革派」の主張の中心は、議会を通じた漸次的な改革の積み重ねにより社会主義に到達できるというものですから、今の日本共産党の革命理論と殆ど同じです。
日本共産党の革命理論、反党分子観とスターリンの「レーニン主義の基礎」
第八回当時の宮本顕治さんの脳裏には、スターリンが「レーニン主義の基礎」で訴えた革命理論があったと考えられます。
昔々の日本共産党員は、スターリンのこの著書を熟読したと考えられます。今の在日本朝鮮人総連合会の皆さんが、金日成や金正日の著作を熟読することと同様です。
スターリンによれば、ソ連共産党の結束をつくりあげることができたのは、時期を逃さずに日和見主義の汚物を掃除できたからです。
ソ連共産党が解党主義者とメンシェヴィキを党外に追放できたからです。
プロレタリア党を発展させ、かためる道は、日和見主義者と改良主義者、社会帝国主義者と社会排外主義者、社会愛国主義者と社会平和主義者からの、党の清掃をとおっているそうです。
第七回大会、第八回大会でつくられた規約と綱領は今日の日本共産党の規約と綱領の基礎になっています。
多くの日本共産党員は両氏を分派だ、という調子で憎んでいると考えられます。分派、破壊・かくらん者という表現と、日和見主義の汚物という表現は大同小異です。
日本共産党は松竹伸幸さん=破壊・かく乱者宣伝を今後も続けるー「レーニン主義の基礎」の見地
鈴木元さんの著書について、しんぶん赤旗が一切言及しなければ日本共産党員で読む人はあまり出ないだろうと志位さんは判断したのでしょう。
今後も志位さんは、鈴木元さんについては一切言及しないでしょう。
日本共産党は今後も、松竹伸幸さんに対し「党内で異論を提起しなかった」「日米安保、自衛隊堅持論は日本共産党の綱領路線と両立しない」の二点で、破壊・かく乱者であるという宣伝し続けると考えます。
1月の日本共産党大会で、そのような報告がなされるのでしょう。その後、松竹伸幸さんは裁判所に訴えををするそうですが、日本共産党の態度は変わらないと考えます。
日本共産党はレーニン、スターリンの革命路線の継承者ですから。
「レーニン主義の基礎」によれば、プロレタリアートの独裁の獲得と維持は、その結束と鉄の規律によって強力な党がなくては不可能です。
共産党の鉄の規律は、全党員の完全な、無条件な、行動の統一なしには考えられません。
このような見地で、日本共産党第七回大会、第八回大会で規約と綱領が作成されたと考えます。志位さんなら、「レーニン主義の基礎」をよくご存じでしょう。
追記
松竹伸幸さんが、日本共産党の党首公選制導入を最初に訴えたのはこの時のようです。除名より1年2か月くらい前です。
こちらで、松竹伸幸さんは党首選挙が行われるなら立候補すると明言しています。
総選挙結果に関する覚書・了 | 松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Ameba (ameblo.jp)