「偉大な首領金日成同志が開拓された革命偉業を、代を継いで最後まで継承し完成していかねばならない。」(「十大原則」の十)
「自分自身だけではなく、すべての家族と後代たちも偉大な首領を仰ぎ奉り、首領に忠誠を捧げた党中央の唯一的指導に限りなく忠実でなければならない。」(「十大原則」十の四)(「世界政治-論評と資料」1988年4月上、762より抜粋。日本共産党中央委員会発行)。
「党の唯一思想体系確立の十大原則」は、北朝鮮社会では法律より上の、絶対的な社会規範です。これに背く人物は、「反党反革命宗派分子」というようなレッテルを貼られます。
一昔前の日本共産党は、この文書が北朝鮮分析のために極めて重要であることを察知し、翻訳して党員と支持者に広めていました。
吉良よし子議員、池内さおり議員ら若い共産党員はこの文書を知らないでしょうけれど。
金日成の孫、金正日の長男である金正男氏が、マレーシアの空港で悲惨な死を迎えてしまいました。マレーシア警察の発表によれば、金正男氏の体からVXガスが検出されました。
ベトナム人女性とインドネシア人女性が、金正男氏に液体をかけたようです。
二種類の液体を金正男氏の顔にかけて、VXガスが形成されるようにしたという説も出ています。
この殺人を北朝鮮工作員が直接実行したわけではないのですが、二人の女性を使嗾したのは北朝鮮以外に考えられない。
VXガスないしはそれを形成できる液体を二人の女性がどこからか入手して、見知らぬ人に散布するわけがない。二人の女性は金正男氏がどんな人物なのか、知らなかったようです。
北朝鮮工作員は、殆ど何も知らない女性二人に「殺し」をやらせ、首尾よくやったことを見届けると直ちに「高飛び」してしまったのです。
心臓麻痺で死んだと見せかけられるとでも思ったのでしょうか。これも、チュチェ思想から導かれる行動です。金正男氏の死は北朝鮮と無関係と断固主張せねばなりませんから。
金正恩なら、金日成の孫、金正日の息子の殺害指令を出せる
金正男氏はなぜ、この時期に殺されなければならなかったのか。マスコミではいろいろな議論がなされています。
北朝鮮で金日成の孫、金正日の長男の殺害指令を出せるのは、金正恩しかいません。
では金正恩はなぜ殺害指令を北朝鮮の工作部署(偵察総局という説が濃厚)に出したのか?
金正恩の内心は検証しようがありません。金正恩の内心は憶測するしかない。
金正恩の表面的な理屈としては、金正男氏が「党の唯一思想体系確立の十大原則」のどこかの条項に違反し、「反党反革命宗派分子」になったという話が考えられます。
テレビに出てくる北朝鮮問題の専門家には、朝鮮労働党の諸文献から北朝鮮工作員や北朝鮮各部署の行動を説明する方が少ないようです。奇妙ですね。
金正男氏は金正恩がアホ(con)だというフランス語メールを日本人記者に送った
金正男氏は自由奔放に西側マスコミと接触し、「北朝鮮の体制の後継者」になるのはアホ(con)だ」というフランス語のメールを、ある日本人記者に送っていたそうです。
これはテレビで放映されました。
金正男氏は金正恩がアホ(con)だと放言していたのです。北朝鮮ではこれは、「首領冒涜罪」「民族反逆罪」に相当する重罪です。
金正男氏は、金正日が提起し確立させた「革命的領袖観」を体得できなかったのです。
金正日によれば、人民大衆は党の指導の下に、領袖を中心として組織思想的に団結することで永生する自主的な生命力をもつ一つの社会政治的生命体をなします(チュチェ思想教育で提起されるいくつかの問題について」)。
自由に行動し気軽に発言する金正男氏は「社会政治的生命体」から離れた存在ですから、革命の自主的な主体ではありません。反党反革命宗派分子ともいえます。
金正男氏の息子、金ハンソル氏はリビアの革命を素晴らしいと云った
チュチェ思想から見れば、「リビアの革命は素晴らしい、金正恩は独裁者だ」とフィンランドのテレビで公言した金ハンソル氏(金正男氏の息子)も、張成澤のような反党反革命宗派分子です。
北の工作員が金ハンソル氏を狙う可能性はある。
金日成の孫、金正日の息子も「反党反革命宗派分子」として処刑するのが、チュチェ思想から導き出される行動なのでしょうから。
ところで、藤本健二氏の手記から明らかなように、「招待所」で贅沢三昧をしていた金正日は、飢餓状態の民衆と著しくかい離していました。
金正恩も、「招待所」で贅沢な暮らしをしてきました。贅沢な暮らしは、国民が朝鮮労働党に捧げる外貨や物資に依拠していました。
金日成、金正日、金正恩こそ、搾取者そのものです。日本や韓国の企業経営者より、ずっと贅沢をしている。
別荘を持っている企業経営者はいくらでもいますが、金正日の「招待所」ほどの規模と設備は考えられない。日本や韓国では無理です。株主総会で徹底批判されてしまう。
在日本朝鮮人総連合会は金正日の孫、金ハンソル氏も「反党反革命宗派分子」とみなすのか
革命的領袖観に徹したチュチェ型の革命家は、金日成、金正日そして金正恩をいつまで崇めるのでしょうか。
金日成の孫、金正日の息子殺害は、領袖と党中央に対する「絶対性、無条件性」にふさわしい行動でしょうか。
私には、愛息子を殺された金正日が草葉の陰で号泣しているとしか思えません。
金正日の妹、金慶喜の動向も不明です。悲惨な死に方をしたのかもしれません。
「金日成民族」「金正日朝鮮」の一員である、在日本朝鮮人総連合会の皆さんは、金ハンソル氏も「反党反革命分子」であり、「死に値する罪」を犯していると考えているのでしょうか。
朝鮮学校の教職員は子供たちに、「首領様の孫、偉大なる将軍様の息子でも、社会政治的生命体から離れたら生きている価値はない。VXガスでの死に値するのだ」と教えるのでしょうか。
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