2013年12月31日火曜日

人生をたった一度でも横切るもの-遠藤周作「私が・棄てた・女」(講談社文庫)より思う-

もし、ミツがぼくに何か教えたとするならば、それは、ぼくらの人生をたった一度でも横切るものは、そこに消すことのできぬ痕跡を残すということなのか(同書p254)。



平成25年も終わりですね。

今年は皆様にとって、どんな一年だったでしょうか。拙文にお付き合い下さいまして、有難うございます。

本ブログでは当初、北朝鮮に拉致された日本人の問題を書いていたのですが、左翼批判から中国問題、芸能界そして生意気ながら小説を論じるようになりました。

この一ヶ月ばかりは、故佐藤勝己氏の「統一日報」掲載論考に触発され、再び北朝鮮問題そして暴力団勢力についていろいろ論じました。

ふとしたきっかけから思考内容が変化し、少しだけ違った視野を持って元の地点に戻ったように思います。


神というものが本当にあるならば、神はそうした痕跡を通して、ぼくらに話しかけるのか(同書p255)。



自分の一年をふりかえっていたら、遠藤周作の文章をいくつか思い出しました。

私たちは日々の暮らしの中で様々な人と出会い、様々な交流をし、時期が来ればそれぞれの方向へ散っていきます。

その出会いと交流が、そのときには些細なことと思っていても、ずっと後にふりかえると大きな意味を持っていたのではないか。そう思えるときがあります。

人生劇場の主役は、誰しも自分です。重要な脇役は配偶者、親兄弟、子供、親友でしょうか。

ある友人、知人と僅かな時間しか交流しなくても、その人との出会い、あるいはその人の何気ない言動が自分の人生に大きな影響を及ぼしているかもしれません。

そうであるなら、自分の人生をたった一度でも横切ったその友人や知人は自分の人生の重要な脇役だったのかもしれません。

そのような視点から、自分を見つめ直すと違った自分、自分の異なる面が見えてきませんか。


もし、神というものがあるならば、その神はこうしたつまらぬ、ありきたりの日常の偶然によって彼が存在することを、人間に見せたのかもしれない(同書p26)。



人生には偶然が意外に大きな役割を果たしているようです。

人生をたった一度でも横切るものにより、はからずも私たちの人生行路は大きく変わりうるのでしょう。

偶然とは神がサイコロをふった結果なのかもしれません。しかし、偶然によりとんでもなく悲惨な運命、結末になってしまう人がいます。

それを思うと、私は偶然が神の働きかけであるとはなかなか思えません。

偶然により些細な悪行を始め、徐々にそれを重ねるようになってしまう人もいるようです。神が存在するのなら、悪魔も存在するのかもしれません。

悪魔とは、心中に積もっていく埃のような存在なのかもしれません。埃を常に除去すべく、心を洗うような精神活動が人間には大事なのかもしれません。

ともあれ、平成25年はもう終わりです。

拙文が本ブログを訪れて下さった皆様の人生に、僅かばかりでも良いきっかけ、新たな視点や知識を提供することになれたらと思っています。

来年が皆様にとって良いお年となることを祈願いたします。














中国が北朝鮮に約10億ドル(1050億円)支払い拒絶か(産経新聞12月29日記事)-北朝鮮、暴力団の内部抗争はどう始まるのか-

金が入らなくなると、北朝鮮や暴力団では内部抗争が始まる


金の切れ目は縁の切れ目、ということなのでしょう。

北朝鮮と暴力団の行動方式は似ています。金が入らなくなると内部抗争が始まります。

北朝鮮の場合、金というより外貨です。北朝鮮の通貨では高級物資を購入できませんから。

外貨を何とかして稼ぎ、首領様から立派な人物と認められるか否かが、幹部の重要関心事項です。

北朝鮮と暴力団には共通点もありますが、暴力団の構成員ではない「暴力団の共生者」あるいは「経済ヤクザ」とは多少異なる面もあるように思えます。以下、説明します。


長期的な取引による相互の利益享受-「経済ヤクザ」「暴力団の共生者」-



暴力団も様々な形式の脅迫により金を得て、組の上層部に毎月金を上納せねばなりません。

外貨稼ぎ、シノギ(暴力団用語で、金を稼ぐこと)が行き詰まると、幹部は部下ないしは組織の別部門に責任を擦り付けます。

金に行き詰まったとき暴力団構成員は、周囲にいる共生者により多くの金を何かの理屈で要求してくることもあるでしょう。

「暴力団の共生者」は、暴力団構成員の要求を断りにくいのです。普段は暴力団員の威力を利用して諸業務を行っているのですから。

彼らは周囲の人から何らかの理屈で金を巻き上げようとします。これに屈服すると、以後ずっと何らかの形で金を献上せねばなりません。

「暴力団の共生者」は、脅かしだけでは長続きしないことがわかっていますから、何らかの正業により周囲の人と商取引を行います。

正業での取引なら、警察、国税庁は手出しができません。

暴力団構成員ではない「暴力団の共生者」は、芸能事務所や遊興業、あるいは風俗業の優秀な経営者という一面も持っていることが多いのです。

「暴力団の共生者」は、ビジネスを十分理解していますから、長期的取引により相互で利益を享受しようとします。「経済ヤクザ」という語があります。

優秀な暴力団幹部なら、「経済ヤクザ」としての一面もあるはずです。


「他人の考えを押し付けられた」ことにより血で血を洗う抗争



あるいは、「この金は本来、俺のところに入ってくるべきものだ」と考えていたのに、上層部の何かの思惑で他の人間に金が回されてしまうと、恨みを持ち実力行使という場合もあるでしょう。

このビジネスをやるためには、ある人物の協力が必要だと考え要求したのに、断られた。その人物のせいで自分の生きる道が塞がれた、などと曲解し、復讐をする場合もあるでしょう。

米国映画The Godfatherでは、トルコ出身の麻薬業者Virgil Sollozzoが覚せい剤を米国で売りさばくため、首領Don Corleoneに政治家の懐柔を依頼します。

Don Corleoneが依頼を拒否したことにより、麻薬業者Sollozzoは自分のビジネスが円滑にできなくなりました。

SollozoはDon Corleoneにより考え方を押し付けられ、自分の誇りが傷つけられたとみなします。

そこでSollozoは刺客を放ちます。血で血を洗うような抗争が始まります。

北朝鮮と暴力団、 Mafiaだけでなく、中国の高級幹部間でも同様のことがありそうです。

張成澤処刑の背景のひとつは人民軍が石炭や鉄鉱石など外貨稼ぎができる部門を張成澤に押さえられてしまったことのようです。


北朝鮮が中国に輸出した鉱物などの売掛金10億ドル(約1050億円)の支払いが停止状態に陥っている(産経新聞12月29日記事)



産経新聞記事通りなら、中国側から北朝鮮に支払いを拒否しているようです。中朝貿易に携わってきた北朝鮮側の担当者が姿をくらまし、担当者としてのサインができなくなってしまいました。

中国側企業は、担当者不在を理由に支払いを保留しています。未決済額が海産物を含めて計10億ドルに上ると記事は述べています。

北朝鮮は人民軍系の職員を現場に送って事態収拾を図っていますが、中国側は「新参代理人には契約を履行できない」と拒絶しているそうです。


中国側企業は北朝鮮の足元を見ている-北朝鮮は地下資源を他に売れない



中国側企業は、北朝鮮が他に地下資源を売ることなどできないことを知っているのです。担当者が出てくるはずもないこともわかっているのでしょう。

中国側には、朝鮮族の人間がいるのでしょう。張成澤の影響下にある人物と取引をしてきた朝鮮族なら、その程度の判断ができるはずです。

担当者が出てこなければ、代金をいつまでも支払わずにそのままにしてしまうかもしれません。北朝鮮には地下資源の売り先が他にないのですから、どうしようもありません。

人民軍系担当者が出てきても同じ結果になるだけです。平壌の上層部が何をどう言おうと、中国側が契約改訂に応じるはずがありません。

そうすると、平壌の上層部は人民軍系担当者に責任を擦り付けることになるのでしょうか。人民軍と労働党組織指導部の抗争になってしまうかもしれません。

張成澤一派は、中国側の朝鮮族の担当者とうまく取引をして何とか契約を成立させ、外貨を得てきたというのが実態でしょう。

平壌の上層部や朝鮮人民軍大幹部には、中国とのビジネスの現場の厳しさが全くわかっていないのです。12月13日の朝鮮中央通信を読んでそう思いました。


中国を敵対視した朝鮮中央通信(12月13日)-平壌で内部抗争が遠からず生じる-



以下の記述は、中国最高指導部を暗に批判し、敵対視するものと読めます。


Jang dreamed such a foolish dream that once he seizes power by a base method,

 his despicable true colors as "reformist" known to the outside world would help his "new government" get "recognized" by foreign countries in a short span of time.


政権を掌握したあとには、自分が外部世界に改革者として知られているから、諸外国は自分をすぐ承認してくれるだろうと張成澤は浅はかな夢を見ていた、という内容です。

「改革」とは、中国の経済改革・開放でしかありません。それなら諸外国の第一は中国です。

中国は敵だ!という平壌の上層部の意思を読み取ることができます。


張成澤は「経済ヤクザ」-長期的な取引ができる人間だった-



完全な敵とは、長期的な取引関係が成立しません。北朝鮮との「商売」はいつもこんな調子です。朝鮮商工人の皆さんはこの件、よくご存知ですね。

北朝鮮には、「暴力団の共生者」「経済ヤクザ」のような長期的視点がないのです。中国とビジネスをやってきた張成澤には、「経済ヤクザ」のような一面がありました。

広域暴力団の大幹部で、内部の人間により殺られてしまった某人物と張成澤は似ているように私には思えます。

担当者が変わったということで即金すなわち現金決済を要求すれば、中国側は破格の安値でしか地下資源を買ってくれないでしょう。中国側は別のところから石炭や鉄鉱石を買えますから。

平壌の三代目首領に献上される外貨が激減する可能性が出てきました。

平壌で、血で血を洗うような内部抗争が遠からず始まりそうに思えます。○○組でもそうでした。








 




反韓感情と「統一日報」-特別論説委員の回想記の記述に責任を持てない新聞社なのか-

「統一日報」は横田滋氏を貶める必要性に迫られていた



先日、下記を「統一日報」代表取締役の姜昌萬様に送りました。ブログ掲載に際し、見出しをつけました。

真に残念ですが、「統一日報」の編集方針の一側面を私は垣間見たのでしょう。不気味な新聞社であると実感しました。


「統一日報」は特別論説委員佐藤勝己氏の主観的主張については裏付け取材などしなくても事実とみなして不特定多数に流布して良いという判断をした



「統一日報」代表取締役 姜昌萬様

 
先日来手紙を出している兵庫県在住の黒坂真です。
 
真に残念ですが貴社は横田滋氏への謝罪記事を掲載する気など、毛頭無いのかと存じます。
 
貴社は、特別論説委員佐藤勝己氏の主観的主張については裏付け取材などしなくても事実とみなして不特定多数に流布して良いという判断をしたと断言して良いかと存じます。
 
何かの理由で貴社は横田滋氏を貶める必要に迫られていたのだと私は「理解」するしかなくなりました。貴社の不気味さを心底実感いたしました。 

故佐藤勝己氏は貴社の特別論説委員でした。
 
貴社は、特別論説委員の回想記の記述に責任を持てない新聞社であるということが「理解」できました。 
 
 

奇々怪々な紙面編集方針が非公開で存在しているのか

 
 
 先日貴社の方が私との電話で話されたことは、貴社の公式見解であるのかどうか未だに不明です。
 
念のため再度記しておきます。
 

「佐藤勝己氏の論考は回想記であり、報道記事ではないから弊社として記述内容の事実関係に責任を持つことはできない。
 
黒坂はデマだから謝罪すべきなどと言うが、それでは弊社に回想記の検閲をしろと主張していることになる。」

 
こんな奇々怪々な紙面編集方針を保持している報道機関が他にあるでしょうか。
 
 

反韓感情を煽る原因を「統一日報」が提供した

 
 
 
「特別論説委員の回想記なら言いたい放題」ということですね。正直に申し上げますと、私は貴社がこれほど不気味な会社であるとは想定しておりませんでした。
 
真に残念ですが、在日韓国人が経営、運営する新聞は紙面に責任を持てないのだな、という印象を持つ人が増えてしまうことになってしまいました。
 
貴社は紙面で、「反韓感情を煽るような記事を掲載している日本のマスコミは問題だ」という旨の主張をされていますが、反韓感情を煽る原因を貴社が提供してしまったのです。
 
 

反韓感情を煽る原因となりうる紙面を提供した新聞社の経営者、姜昌萬氏

 
 
 「統一日報」の紙面は、他の新聞と同じく図書館などに末永く保存されます。
 
遠からず新聞の紙面が全てデジタル化されて誰でも簡単に過去の新聞紙面を検索し入手できるようになるでしょう。
 
日本社会に反韓感情を煽る原因となりうる紙面を提供した新聞社の経営者として、姜昌萬様のお名前は歴史の中に永く記録され、子々孫々に語り継がれることでしょう。

2013年12月30日月曜日

「暴力団と共生する者」による脅迫に屈服すれば、法秩序と健全な市場が脅かされる-国際文化協会 橋本博文理事長への要請-

ある男性が、ミスインターナショナルの協賛企業に幾度となく脅迫ともいえる電話をした


下記を、国際文化協会の橋本博文理事長に送りました。ブログ掲載に際し、見出しを付けました。

「暴力団と共生する者」は、暴力団の威力を背景として芸能界、性産業、建設業、運送業、社会運動などで利益拡大を図り、社会を脅かしています。私たちは彼らに屈服してはなりません。

社会運動では、独裁政権の蛮行を許さないなどと言いながら、「暴力団と共生する者」と連帯・協力し暴力団の市民社会への浸透に協力する人がいます。

基督教徒にもそういう人がいます。聖書をどう読むと、心中で自分の行為を正当化できるようになるのでしょうか。

マスコミが騒ぐと困るから、大会期間中、体調不良を理由に自粛してほしい


国際文化協会理事長 橋本博文様
 
突然で恐縮ですが、私は兵庫県在住の黒坂真と申します。
 
貴会が中心となって開催されているミスインターナショナルの運営について、真に奇々怪々なお話を伺ったので事実かどうか確認したく存じます。
 
一般に、現役のミスインターナショナルは世界大会の最終審査の舞台で、新しいミスインターナショナルに王冠とガウンを渡して世界一の役目を終えるはずです。
 
ところが、昨年度のミスインターナショナル吉松育美さんのブログ(1211日)によれば、吉松さんはある男性からの脅迫と嫌がらせにより、
 
ミスとしての最後の役目を奪われてしまいました。
 
この男性は、ミスインターナショナルの協賛企業に幾度となく、脅迫とも言える電話をしたそうです。
 
そして、国際文化協会は大きなスキャンダルになることを恐れ、最終的に吉松さんに次のように言い渡したそうです。
 

「マスコミがミスインターナショナル以外のことで騒ぐと困るから、大会期間中、体調不良を理由に自粛してほしい」 

真実は一つしかない-国際文化協会は吉松さんに嘘を強要したのか-

 
 吉松さんは1211日のブログで、体調不良という嘘を強要されたことが一番ショックだと吐露しています。

私には吉松さんの話は全てが真実としか思えないのですが、貴会として現在、この件についてどんな見解を保持していらっしゃるのでしょうか。
 
理由はどうあれ、吉松さんが今年のミスインターナショナルに王冠とガウンを渡すことができなかったことは間違いないはずです。
 
渡すことができなかった理由は、吉松さんが本当に病気だったのに大嘘をついているのか、あるいは上述のように貴会が吉松さんに体調不良という嘘を強要したのか。
 
真実はこの二つのうちどちらかでしかないと私には思えるのですが、いかがでしょうか。 

この件について、橋本博文理事長に見解を公に発表していただきたく存じます。
 

公益法人が圧力に屈服して良いのか-「面倒は避ける」ということか-


仮に、貴会が吉松さんに嘘を強要したのであるなら、なぜ貴会はそんなことをしたのでしょうか。
 
まさかと思いますが、吉松さんがブログで述べているようにある男性の協賛企業に対する脅迫電話に貴会として屈服してしまったのでしょうか。 

貴会は外務省主管の公益法人です。
 
協賛企業に対する脅迫電話が存在したのなら、貴会は公益法人として断固圧力には屈しない旨公に宣言し、警察当局に警備の徹底を要望するべきだったのではないでしょうか。
 
まさかとは思いますが、貴会がある男性の脅迫めいた言辞に屈服してしまったのなら、
 
ミスインターナショナルの栄えある歴史に泥を塗るような愚行だったのではないかと思えてなりません。
 
 

「暴力団と共生する者」とは-暴力団の威力、情報力、資金力等を利用することによって自らの利益拡大を図る(平成19年警察白書)-

 

 この件で、貴会として真剣にご検討頂きたいのは、平成19年警察白書(p9 )が指摘する「暴力団と共生する者」の存在です。以下、平成19年警察白書より抜粋します。
 

「近年、暴力団関係企業以外にも、暴力団に資金を提供し、又は暴力団から提供を受けた資金を運用した利益を暴力団に還元するなどして、暴力団の資金獲得活動に協力し、
 
又は関与する個人やグループの存在がうかがわれる。
 
これらの者は、表面的には暴力団との関係を隠しながら、その裏で暴力団の資金獲得活動に乗じ、
 
又は暴力団の威力、情報力、資金力等を利用することによって自らの利益拡大を図っており、いわば暴力団と共生する者となっている」
 

私の印象では、貴会は「暴力団と共生する者」の脅迫めいた言辞に屈服してしまったように思えます。平成19年警察白書はさらに次のように述べています。

放置すれば、暴力団の威力を背景として経済取引や法制度を悪用し、利益最大化をする行為が横行する-

 
「これを放置すれば、暴力団の威力を背景として、経済取引や法制度を悪用して、不当に自らの利益を最大化する行為が横行し、
 
暴力団と共生する者の更なる増加を招くなど、我が国における公正な法秩序と健全な市場にとって重大な脅威となる」
 

貴会が「暴力団と共生する者」の脅迫めいた言辞に屈服してしまったのならば、公益法人が図らずも公正な法秩序と健全な市場に脅威を与えてしまったことになりませんか。

北朝鮮に拉致されている日本人を救出するためには、「暴力団と共生する者」とも連帯・協力するべきなのか

 
私は北朝鮮に拉致された日本人の救出運動に十七年くらい参加してきているのですが、同様のことがこの運動でも生じています。
 
「拉致された日本人を救出するためには、『暴力団と共生する者』とも連帯、協力するべきだ」
 
と考えている人が救出運動の中心におりますので、前途多難です。
 
この問題について、御参考になるかと思いましたので資料をいくつか同封しました。 

橋本博文理事長がこれらの問題について、経緯と見解を可及的速やかに公にして下さることを重ねてお願い申し上げます。

 

2013年12月28日土曜日

張成澤処刑の背景に利権争いか-「張氏粛清に動いた女帝」(AERA12月23日小北清人氏記事)と張真ソン氏の「インサイド北朝鮮」(産経新聞12月28日)より思う-

張成澤処刑の背景について、異なる分析、視点の存在を北朝鮮の人々に知らせて「主体革命偉業」を終焉させよう!


張成澤処刑について、様々な情報が流れています。

私はAERA12月23日号掲載の小北清人記者による記事と、張真ソン氏の「インサイド北朝鮮」(産経新聞12月28日)は異なる分析をしていますが、注目に値する情報を含んでいると思いました。

張真ソン氏の「インサイド北朝鮮」(産経新聞12月28日)は朝鮮労働党組織指導部の機能について詳述しています。

AERA記事は主に、かつて張成澤のもとで工作活動に従事したAという別の国に住む人物の情報に依拠しています。

私たちにとって、ある事柄がなぜ生じたかをめぐって様々な解釈が存在しうるのは当然なのですが、「主体革命偉業」のもとでは唯一の解釈しかありません。

様々な解釈、分析の仕方があるのだということを北朝鮮の人々に知らせることは、「主体革命偉業」を終焉させる一つの方法です。

以下、張成澤処刑について注目すべき点を列挙しておきます。


朝鮮労働党組織指導部の頂点は金慶喜(敬姫?)なのか



AERA記事の注目すべき第一の点は、朝鮮労働党の組織指導部の現在の頂点が、金正日の妹金慶喜(敬姫?)であるという情報です。

記事にあるように、組織指導部は党や軍の人事を扱う部署ですからかなりの権限を持っています。金正日が存命中は、本人が掌握していたはずです。

いつの間にか妹が掌握していたのでしょうか。病状との関係で、そんなことができていたのか疑問です。

張真ソン氏は、現在の労働党組織指導部の権力序列第一位は総括第一副部長の金慶玉という人物であると指摘しています。


5つの重大権限を保持する朝鮮労働党組織指導部



張真ソン氏によれば、組織指導部は次の5つの権限を持っています。

第一は、上位の権力層に対する人事権。

第二は、行政業務に深く関与できる生活指導課の権限。北朝鮮では全党員と勤労者が毎週「生活総和」を行いますが、これを統括する生活指導下は組織指導部の傘下です。

第三は、誰であっても解任、粛清できる検閲権。

第四は、北朝鮮のすべての権力機関の政策を承認する権限。

第五は、金日成、金正日の警護に関する権限。さらに、組織指導部は首領の私生活に必要な物資の補充も独占しているそうです。

黄長ヨップ氏は、労働党中央内の序列は組織部、宣伝部、国際部の順であると述べています(「金正日への宣戦布告」文春文庫p229、2001年)。

組織部長と組織秘書は金正日が直接担当しているとあります(同書p229)。


張成澤粛清に最も「貢献」したのは労働党組織指導部と国家安全保衛部なのか?




AERA記事は、張成澤粛清に最も「貢献」したのは組織指導部と国家安全保衛部であると述べていますが、国家安全保衛部には張成澤がかなりの人脈を築いていたはずなのです。

12月13日の「朝鮮中央通信」にも、それを示唆する記述があります。

AERA記事によれば、国家安全保衛部長が張成澤の長年の腹心であるが、その人物が裏切ったと述べています。金元弘のことなのでしょうか。

張成澤は保衛司令部により逮捕されたという記事も韓国報道にあったように思います。



組織指導部と張成澤が掌握する行政部の対立



張真ソン氏によれば、2007年金正日は国家安全保衛部を除く司法権限を持つ行政部を、組織指導部から切り離して張成澤に与えました。

張成澤の行政部と、組織指導部が対立するいうになりました。李済剛組織指導部第一副部長は2010年、平壌と元山間の高速道路で謎の交通事故死を遂げています。

国家安全保衛部の柳敬副部長は2011年1月、スパイ疑惑で処刑されました。日朝平壌宣言の北朝鮮側の実務担当者はこの人のようです。

いずれの事件も、張成澤の関与が疑われたと張真ソン氏は述べます。力を失っていった組織指導部は、軍部と野合していきました。

張真ソン氏は、組織指導部が張成澤処刑を主導したと述べています。張真ソン氏は、利権争いについてはこの記事では特に述べていません。

朝鮮日報のサイトにある「TV朝鮮」によれば、張成澤処刑後、呉克烈国防委員会副委員長が姿をよく見せるようになっています。軍部が復権してきたのかもしれません。


金正日のための外貨獲得機関39号室(38号室という部署もある)



AERA記事の注目すべき第二の点は、朝鮮労働党38号室という裏資金の調達、管理、運用を担う組織が廃止され、「第三経済委員会」という新たな機関が設立されていたという情報です。

「第三経済委員会」という組織は初耳です。他のメディアには出ていないように思います。

私が脱北者から伺っていたのは、38ではなく39号室です。39号室といえば、脱北者のほとんどは直ぐに「外貨稼ぎ」を命令する部署だとわかります。

39という番号ですが、3号庁舎の9号室という意味であると聞いたように思います。3号庁舎とは、朝鮮労働党の諜報機関の執務室がある建物のことです。

北朝鮮の庶民は、労働党の指令で「外貨稼ぎ」をやらされます。

庶民は外国に行くことなどできませんから、外貨に該当する物資の調達を義務付けられるのです。

私は砂金採取や、川に潜って貝を採ってくること、松茸採取などをやらされたという話を伺っています。各地に39号室の機関があり、そこに採取物を持参せねばなりません。

砂金、貝、松茸それぞれに外貨ならいくら相当という価格が決まっており、住民に外貨獲得・献上目標がだされます。

私は38、39号室を金正日死後、誰が掌握するのかが重要だと思っていました。恐らく、張成澤が掌握していくと予想していました。

AERA記事によれば、「第三経済委員会」を労働党行政部が実質的に支配するようになりました。張成澤の支配が及ぶようになったのでしょう。

北朝鮮でも暴力団でも、金が誰のもとにどこから入り、誰がどのように使っていくかを観察することにより、隠匿された組織の実態が見えてくるのではないでしょうか。



張成澤による政府重視策と李英ホ人民軍総参謀長の解任-



AERA記事によれば、労働党行政部は軍が独占的に所有していた鉱山や貿易会社が次から次へと政府に移管させ、実質的に支配するようになりました。

労働党行政部は旅券発行の承認権、携帯電話事業、外国の投資を呼び込む経済グループ設立までやるようになり、軍や労働党の利権を一手に握るようになりました。

人民軍の利権が取り上げられたのを怒ったのが李英ホ人民軍総参謀長でした。李英ホは昨年7月解任されましたが、これには張成澤が深く関与したそうです。

張成澤は軍から政府に利権事業を移管させていた、という点は、朝鮮中央通信の記述とも符号しています。

また金正日の晩年以後、どういうわけか崔永林首相が頻繁に「現地了解」という現地指導のようなことをやるようになっていました。

崔永林首相が実力者だ、などという話は聞いたことはありません。北朝鮮では、金日成、金正日、金正恩以外「現地指導」はできないはずです。

北朝鮮では、政府部門は資材獲得競争で人民軍や金正日の直轄部門より弱い立場にあるというのが脱北者のほぼ共通する認識です。

崔永林首相は、ポーランド映画「金日成のパレード」で、金正日を称える歌を涙を流しながら歌っていました。

「あーあーあー、親愛なる指導者同志」とかいう歌詞です。


崔永林首相が現地指導らしきものをなぜするのかと思っていましたが、張成澤が裏にいたのかもしれません。崔永林首相は中国訪問もしました。

崔永林首相は4月に首相から退いていました。


日本政府の北朝鮮向けラジオ放送への提案-徹底的に思想攻撃をやるべきだ-



張成澤がなぜ処刑されたのか?という件は、北朝鮮の高位幹部は勿論、庶民も関心を持っているはずです。

背後に利権争いがあったのか。労働党組織指導部と行政部の争いがあったのか。これらはお互いに矛盾する見解ではありません。

政府は、張成澤処刑の背景にこういう事情があるのだという説をそれぞれ、北朝鮮向けのラジオ放送で流したらどうでしょうか。

労働党組織指導部の業務と権限など、庶民は知らないはずです。3号庁舎という語は庶民には知られていないはずです。

ある事柄をめぐって外部世界ではいろいろな説があり、各人がそれらについて自分の見解を述べるのだというだけでも。北朝鮮の庶民には新鮮なものです。

李済剛組織指導部第一副部長の謎の死亡や、国家安全保衛部の柳敬副部長の処刑についても「そういう説があります」という情報としてラジオで流したらどうでしょうか。

中国朝鮮族も容易に聴取できるようにすれば、北朝鮮内部に確実に情報が流れます。

北朝鮮の庶民に、当局が宣伝する以外の解釈、視点があるのだ、ということをいろいろなやり方で示すことも、思想攻撃なのです。














2013年12月27日金曜日

北朝鮮と暴力団研究についての覚書-金の流れと誘因形成(忠誠心の育成方式)に着目する-

被拉致日本人救出のための北朝鮮研究には、聞き取り調査の積み重ねが必須だ


被拉致日本人救出のためには、北朝鮮の体制を可能な限り正確に把握し、弱点をつかねばなりません。

北朝鮮の実態、特に上層部の動向を正確に認識することは困難です。

公の文献としては労働新聞や朝鮮中央通信があります。金日成、金正日の著作も参考になります。

金日成の昔の著作集と今のそれを比較すれば、北朝鮮当局が自分たちをどのように宣伝してきたかの変遷がわかります。これについては、本ブログの別のところで論じています。

金日成、金正日の屍体が安置されている宮殿や各地の軍隊を金正恩が訪問する際、誰が同行していたかということで、多少の情報を得られます。しかしこれらだけでは不十分です。

私たちは脱北者がもたらす情報に主に頼るしかありません。あるいは、在日本朝鮮人総連合会の幹部なら、訪朝時に多少の情報を得ることができます。

故佐藤勝己氏は、在日本朝鮮人総連合会の大幹部から情報を得ていたようです。私はこれを御本人から伺ったわけではありませんが、著作や論考からそれを推測できます。

私も、在日本朝鮮人総連合会の元活動家、元教員あるいは朝鮮総連系の人々から成る非公然組織に所属していた方などからいろいろお話を伺ってきました。

脱北者や在日本朝鮮人総連合会元幹部の手記は大変参考になります。韓光煕「わが朝鮮総連の罪と罰」(文藝春秋2002年刊行)はその一つです。

脱北者や在日本朝鮮人総連合会元幹部には記憶違いもあります。脱北者の場合、意識的にあることを大きく言うこともあるでしょう。

それを考慮しつつ、暗中模索で北朝鮮の上層部の動向や実態を一つ一つ検討していかねばなりません。


韓国の北朝鮮情報も多くは脱北者に依拠している



韓国の新聞「朝鮮日報」には、脱北者がもたらす北朝鮮内部情報がよく掲載されています。「朝鮮日報」のサイトに、「TV朝鮮」というコーナーがあり、貴重な情報を提供しています。

韓国には脱北者が運営しているサイトがあり、大変参考になります。「自由北朝鮮放送」「開かれた北朝鮮放送」を私は時折見ています。

北朝鮮問題の研究機関「民族統一研究院」のサイトにも、資料がよく整理されて掲載されています。

韓国での北朝鮮情報の多くは、脱北者がもたらしています。脱北者の中には、北朝鮮に残っている親族や友人と連絡を取ることができている人もいますから、内部情報が入手可能なのです。

北朝鮮の内部情報では、石丸次郎氏の協力者による報告が貴重です。それらは雑誌「イムジンガン」に掲載されています。

ある事柄を記述する際、最後には勘に頼ることになってしまうことも少なくないでしょう。

同様のことは、歴史学や社会学、あるいは労働経済学などの分野でも多々あるはずです。

北朝鮮を研究する方で、脱北者の話を一切聞かず北朝鮮の公式文献や北朝鮮当局のインタビューだけに依拠して論文を書いている方がいます。

そういう方の論文は、結局北朝鮮当局にとって都合の良い点だけを見ることになりますから、北朝鮮の実態を深くえぐり出すことにはなりません。


聞き取り調査による技能の内実解明-小池和男他「もの造りの技能」の視点-



技術進歩が経済の長期的成長の重要な決定要因の一つであることは疑いないことですが、では技術、技能とはそれぞれの産業でどのように形成、継承されているのか。

技能の内実は一体何なのか。

小池和男他「もの造りの技能 自動車産業の職場で」(東洋経済2001年刊行)は、自動車産業における技能の内容について、聞き取り調査を重ねた結果をまとめています。


「技能の内容の解明には、職場のベテランにじっくりと話を聞くほかない。もちろん、ていねいに観察するし文書資料もあつめるが、それだけでは技能の内容なしばしばわからない」(同書p4)


この視点は、多くの北朝鮮研究者がとってきたそれと基本的に同じです。

 

暴力団と地下経済社会の実態を知るために



暴力団と、地下社会経済の実態を知るために、暴力団関係者の聞き取り調査をやるジャーナリストがいます。

これは様々な危険が伴われますから、私にはとても真似ができません。

私は、暴力団関係者の手記を読むことにより聞き取り調査のかわりにしています。

どんな経緯でその人は暴力団員となり、裏社会、地下社会経済で生きるようになったのかに留意するようにしています。

遠藤周作が言うように、誰しも心中に黒い自分を持っています。

心中の黒い自分が、何かのきっかけで徐々に蓄積、肥大化していくと、悪事をなんとも思わない自分ができてしまうのでしょう。

生来凶悪な人間は稀有でしょう。金日成、金正日のような大量殺戮を断行した人物でさえ、生来の悪人ではなかったはずです。

中保喜代春「ヒットマン 獄中の父からいとしいわが子へ」(講談社文庫)は山口組若頭、宅見勝宅見組組長射殺グループの一員による手記で、著者は服役中です。

この本は、1997年8月28日の宅見勝射殺事件を実行犯の眼から詳細に描き出しています。山口組の若頭殺害を傘下の中野会がどのように計画し、実行するに至ったかがよくわかります。

暴力団が性産業と密接に関係していることもこの本によりよくわかります。性産業の売上や利益を税務署は把握しにくいですから、裏金が発生しやすいのです。


金の流れを追うことにより、社会と組織の実態がつかめてくる



北朝鮮や暴力団の場合、金の流れをおうことが実態を把握するうえで特に大事です。

暴力団を経営するには相当な資金が必要です。金王朝も同様です。

北芝健「誰も知らない暴力団の経営学」(日文新書)は、第3章「暴力団のマネー学」と第4章「暴力団の企業経営」が貴重な情報をいくつも提供してくれています。

この本によれば、「守り代」とも別称される「ミカジメ料」は暴力団の「基幹産業」です。

ミカジメ料は風俗店、ストリップ小屋、アダルトビデオやグッズの販売店、雀荘、パチンコ点、ゲームセンターなどから徴収するのが一般的だそうです。

ミカジメ料は新宿や池袋などで月額数万円から数十万円とあります(同書p134)。ソープランドなどでは数百万円というケースもあるそうです。

最近では、現金授受だけでなく観葉植物や絵画、装飾品、玄関マットのリース料、おしぼりや氷、トイレットペーパー、芳香剤の卸売でミカジメ料を徴収するのが主流となっているそうです(同書p134)。

本ブログの別のところで紹介したように、暴力団は密接な関係にある右翼団体による街頭宣伝活動や言論活動も、様々な経路で暴力団の資金源になっているのでしょう。



企業恐喝を生業とする「総会屋」の今日の姿-企業批判記事を掲載する雑誌発行で定期購読料、広告料収入を得る-



総会屋とは、株主総会で企業側のサクラとして参加し、「異議なし」「賛成」などと叫んで株主の不満を封じ込める「与党総会屋」と、

不測発言や企業のスキャンダルとなる質問を浴びせる「野党総会屋」があります(同書p145-146)。

企業の批判記事を掲載する雑誌を発行し、定期購読料や広告掲載の名目で利益を得ようとする通称「雑誌屋」「新聞屋」「通信屋」も、総会屋の一種です(同書p146)。

パソコンの進歩により、雑誌や新聞の発行はさほど難しくありません。ブログに企業批判を書いて、広告掲載の名目で利益を得ている場合もあるかもしれません。



暴力団社会の「上納金」と北朝鮮社会の「外貨稼ぎ」




暴力団社会では上納金と呼ばれる、一種の会費を本部に納める制度があります(同書p120)。

バブル絶頂期の頃は、大手暴力団の構成員であれば、若くても月額八十万円ほどを上納していたそうです(同書p120)。

上納金を納めれば、反対給付として組織の看板と安全保障を得られます(同書p121)。「上納金」は、北朝鮮当局が住民に課す「外貨稼ぎ」と似ています。

ある指定暴力団は、末端構成員の上納額が月30万円だそうです。構成員が1万人いれば、月に30億円になります(同書p122)。


部下が仕事にやりがいと見通しを持てるよう、学習による洗脳や儀式を行う-忠誠心育成のために-



金が得られるというだけでは人は動きません。暴力団も北朝鮮も、様々な手法で得た金は上層部に上納せねばなりません。

沢山の上納をすることが、栄えある行為であり何らかの形で自分の利益や栄達に通じるという見通しができなければ、仕事を怠けてしまいます。

組織の上の人間は、部下が仕事にやりがいを見出させるように仕向けねばならない。

北朝鮮では主体思想学習を全国民に強制しています。

「最高存在」すなわち金正日や金正恩への忠誠心ある言動こそが栄えある行為であるという道徳心、価値基準を国民に普及しています。

北朝鮮当局は金日成、金正日への仰々しい礼賛を常に住民に流布することにより、当局が示す以外の生き方はないというように思い込ませ、住民に仕事への誘因を与えているのです。

当局が示す以外の生き方を選択するということは事実上、脱北か政治犯収容所送りを意味します。

暴力団社会ならこれらは、親分からの「破門」に該当するのでしょう。組から破門されれば、○○組というブランドを使用できなくなりますから、庶民の脅迫が困難になります。

暴力団の場合、盃事による親子の縁づくりの儀式を行って、部下の忠誠心を醸成しているのでしょう。

上納に励めば、自分もいずれは組の中で出世し、いつかは自分の組織を持てるかもしれません。


全体主義社会にも抜け穴-副業に精を出す人が増えている



北朝鮮の公式文献だけを見ると、全国民が「最高存在」への忠誠心を常に燃え上がらせているように思えてしまいますが、現実はそれほど単純ではありません。

深く信頼できる友人同士で、金正日の悪口をいう人は存在します。しかし、金日成を否定することは北朝鮮で生まれた人にはかなり難しいようです。

北の体制を友人間で批判する人でも、金日成までは批判できないことが多いようです。また、日本から北にわたってきた元在日朝鮮人を嫌がる傾向があります。

元在日朝鮮人は朝鮮語が流暢ではありませんし、物事に対する考え方、感じ方がかなり異なっていますから、馴染みにくいのでしょう。

元在日朝鮮人のあいだでは、北朝鮮生まれの人たちを「原住民」「アパッチ」などと呼び、蔑むことが少なくありません。

近年では、工場が資材不足や機械の故障などにより稼働率が落ちていますから、配給が滞っている地域は少なくありません。

配給がなくなれば餓死してしまいますから、人々は何らかの副業に励むしかありません。これは農業もあれば、闇で得た物資を他の地域に持って行って売りさばく場合もあるでしょう。

密造酒作りに励む人もいるようです。労働時間の多くを、副業に使う人は少なくないでしょう。北朝鮮ほどの全体主義社会にも、様々な抜け穴はあるのです。

暴力団の構成員が何らかの正業を持ちたがることが多いのですが、これと北朝鮮社会における副業従事者の増加とは異なる現象です。

暴力団の構成員は生きるか死ぬかのギリギリの選択により正業をもっているのではありません。暴力団の構成員であることを隠蔽しつつ、正業でも金を稼いで上層部に上納するためでしょう。

暴力団対策法の影響で構成員であることがかなり不利になっていますから、足を洗ったふりをして密接な関係にある右翼団体に所属を変える場合もあるようです。


北朝鮮経済はこの十数年で、中国依存が飛躍的に高まった



北朝鮮、暴力団には、正確な統計が殆ど存在しません。中国の地下経済についても同様です。

経済活動の大きさがよくわからないと、ある事柄の実態を過小ないしは誇大評価をしてしまいがちですが、それを十分留意して検討していかねばならないのでしょう。

北朝鮮経済がこの十数年で、中国依存を飛躍的に高めたことは間違いないでしょう。

韓国統計庁の「2013 北韓の重要統計指標」p83に、北朝鮮の「主要国別交易比重変化推移」という表が出ています。

中国の交易額(単位は百万ドル)と比重は次になっています。交易額とは、輸出+輸入です。

年       2008        2009      2010        2011    2012
交易額    2787        2681      3466        5629    6013
占有率    73.0          78.5       83.0         88.6     88.3

この統計は、暴力団との覚せい剤取引を含んでいません。北朝鮮当局による中国での外貨稼ぎも含んでいないはずです。

いわば、暴力団の正業収入と支出の部分だけの統計のようなものですが、それでも参考になります。

中国との交易額を輸出と輸入で見ると、次になっています(同書p82、単位は百万ドル)。

年     2008        2009     2010    2011   2012
輸出     754         793     1188    2464    2485
輸入    2033       1888    2278    3165    3528

北朝鮮の貿易赤字が継続しています。原油の他に、何を買っているのでしょうか。食糧を買っているのかもしれません。

この統計によれば北朝鮮は昨年、中国から35億2800万ドル相当の物資を輸入し、24億8500万ドル輸出しています。

交易額の占有率が昨年は88.3%ですから、北朝鮮は極端な中国依存国と言えます。

北朝鮮の輸出品目のうち、昨年最も多いのは「鉱物性燃料、鉱物類」で、12億4468万3000ドルとなっています(同書p79)。

これの全部が中国向けとは限りません。北朝鮮は石炭や鉄鉱石を中国に輸出しています。


前途多難な北朝鮮の交易担当高位幹部-中国企業が北朝鮮に有利な契約改訂に応じるだろうか-



中国と北朝鮮の経済格差を考えると、北朝鮮国内の闇市場では中国の人民元が広範に流通していてもおかしくないように私には思えます。

隣接した途上国間で経済格差がある場合、豊かな国の通貨が貧しい国で広範に流通することが時折観察されます。

中国との交易を主に仕切っていたのが、私の理解では張成澤です。

張成澤のやり方がまずいということで処刑されてしまったのですから、これから中国と物資の売買をする北朝鮮の担当者は、契約条件を北朝鮮に有利にするよう、交渉せねばなりません。

中国企業が簡単にそんな契約改訂に応じるとは思えません。契約改訂が思うように行かなければ、三代目への忠誠心を疑われてしまいます。

交易を担当する北朝鮮の高位幹部の前途は多難です。収容所行きが待っていることを心中で意識しつつ、中国企業との交渉をせねばならないのです。

金のやりくりができなくなった暴力団員は組から破門されることが少なくないのでしょう。全体主義社会から、落ちこぼれる人は常にいるものなのです。



北朝鮮の弱点は中国依存症だ!中国滞在の高位幹部の忠誠心を弱体化させるべきだ




日本政府は北朝鮮へのラジオ放送の出力を強めるなどして、思想攻撃を強化し中国滞在の高位幹部の忠誠心を弱体化させるべきです。

思想攻撃の中身としては、金日成神話の虚妄性をを古い金日成著作集と新しいそれの比較で暴くことが考えられます。

金正日の女性関係の暴露も有効です。不貞関係を持っていたのは張成澤だけではありません。




2013年12月26日木曜日

「統一日報」は回想記の記述に責任を持てないのか-代表取締役姜昌萬氏への要請-

「統一日報」は横田滋氏への謝罪記事を出すべきだ!


以下の手紙を先日、「統一日報」代表取締役姜昌萬氏に出しました。

見出しはブログ掲載に際しつけました。代表取締役姜昌萬氏に、真摯な御検討を改めて求めます。

大スキャンダルとやらの中身を知っている国会議員やマスコミの名前を「統一日報」は公表するべきだ



先日来手紙を出している兵庫県在住の黒坂真です。
 
貴紙掲載の佐藤勝己氏論考「拉致問題との関わり」には、何度も申し上げましたように、横田滋氏への誹謗中傷、名誉毀損としか思えない記述が存在します。
 
特に、17117日掲載)は酷いものです。
 
佐藤勝己氏は横田滋氏に大スキャンダル事件が存在すると断定し、それを議連、マスコミ、週刊誌などは程度の差はあれ知らない者はいない、などと言いたい放題です。
 
横田滋氏の大スキャンダルとやらの中身について、佐藤勝己氏は一切説明していませんし、貴紙にもそれに関する記事はありません。
 
何より横田滋氏に大スキャンダルなど存在しないからです。議連、マスコミ、週刊誌の一体どなたが大スキャンダルの中身をご存知なのでしょうか。
 
私は大スキャンダルとやらの噂すら知りません。
 
大スキャンダルについて中身とその証拠を知っている国会議員や地方議員、マスコミ、週刊誌の名前を貴紙は責任を持って報道すべきではないでしょうか。
 
貴社は直ちに、横田滋氏への謝罪記事を掲載されるべきかと存じます。
 

「統一日報」は横田滋氏を貶める必要にせまられていたのか

  

なぜか貴社は、佐藤勝己氏の主観的主張については裏付け取材などしなくても事実とみなして不特定多数に流布して良い、という判断をしたのではないですか。
 
そうであるなら、貴社は真に特異かつ不気味な新聞社です。そのような判断をした経緯を、読者に説明するべきです。
 
何かの理由で、貴社は横田滋氏を貶める必要に迫られていたのではないでしょうか。

 私は前回の手紙で概ねこのように申し上げました。
 
その手紙が貴社につく前だったかと存じますが、15日(日曜日)の夕方、貴社のある方から私のところに電話がかかってきました。
 
いろいろお話しいたしましたが、その方の最も中心的な主張は以下と考えます。 
 
 

「統一日報」は回想記の記述に責任を持てないのか-公式見解を紙面で発表すべきだ-


 
「佐藤勝己氏の論考は回想記であり、報道記事ではないから弊社として記述内容の事実関係に責任を持つことはできない。
 
黒坂はデマだから謝罪すべきなどと言うが、それでは弊社に回想記の検閲をしろと主張していることになる。」

 
私としては、これが貴社の公式見解であるならば貴紙の紙面で発表して下さいとお話したつもりです。

大韓民国には「回想記の記述に報道機関は責任を持てない」といった見解を保持している報道機関はあるのですか、と付け加えたところ、
 
その方は少し腹が立ったようで「統一日報は日本の法律によって経営されているのだから日本の会社です」と主張されました。 

 

「統一日報」は日本の会社なのか

 

私は、貴社は在日韓国人により主に経営、運営されていると考えておりましたので、日本の会社であるという主張は意外でした。
 
韓国人には、在日韓国人は韓国人ではないという発想をする方が多いと伺っていましたが、これと関係があるかもしれません。
 
いずれにせよ、貴社として上述の見解を保持しておられるのなら、紙面で発表されたらいかがでしょうか。
 
その結果在日韓国人が経営、運営する新聞は紙面に責任を持てないのだな、という印象を持つ人が増えてしまうかもしれません。
  
 

大韓民国が朝鮮半島を統一し、自由と民主主義を朝鮮半島に確立するという先人の願いはどこに

 
 
「統一日報」という社名には、大韓民国が必ず朝鮮半島を統一し、自由と民主主義を朝鮮半島に確立するのだ、自分たちもそれに言論の力で貢献するのだ

という貴社の先人の思いが込められているのだと私は考えていたのですが、それは根本的な間違いだったのかもしれません。

大韓民国が朝鮮半島を統一したら、北朝鮮経済の再建に必要な莫大な費用を韓国人が負担せねばなりません。

そこで金正恩政権がどんなに過酷な人権抑圧を行っていようと支援して崩壊を防ぎ、統一を先延ばししたほうが良いと考える韓国人は多くなっているようです。

貴社もそういう世論の影響で方針を変更されたのかもしれません。可能でしたら、貴社の紙面編集の基本的立場を改めて発表して下されば幸いです。


「統一日報」自らが嫌韓感情醸成に拍車をかけているのでは


「回想記の記述に弊社は責任を持てない」が真に貴社の紙面編集方針であるなら、近年日本人の中に醸成されつつある嫌韓感情に拍車をかけてしまうような気がしてなりません。 
 
これらも含めて、貴社の編集方針と謝罪記事の発表の件、御検討下さい。

2013年12月24日火曜日

マスコミは吉松育美さんの訴えを報道するべきだ!-ミス世界一が記者会見まで開いてストーカー被害を訴えているのに、なぜ報道されないのかー

日本人として初めて2012年ミスインターナショナル世界一に輝いた吉松育美さんが、ストーカ-被害を訴えているのに、テレビ局や大手新聞はなぜ報道しないのか!



世の中には奇々怪々なことがあるものですね。

私は昨日まで知らなかったのですが、日本人として初めてミスインターナショナル世界一に輝いた方、吉松育美さんが記者会見まで開いてストーカー被害を訴えています。

これだけでも、テレビ局や大手新聞紙は報道すべきだと思うのは私だけでしょうか?

先週の週刊文春に記事が出たらしいのですが、テレビや大手新聞には無視されているようです。

なぜマスコミは報道しないのでしょうか?故北公次さんの場合と同じでしょうか?



大手芸能事務所の幹部で芸能界やマスコミに影響力のある人物によるストーカー行為




吉松さんのブログを見ますと、次のような状況です。

一般に、ミスインターナショナルになった女性は翌年度の世界大会の最終審査の舞台で新しいミスに王冠とガウンを渡して世界一の役目を終えます。

ところが吉松さんは、ある男性からの脅迫と嫌がらせによりその役目を奪われてしまいました。

ある男性とは、大手芸能事務所の幹部で芸能界やマスコミに影響力のある方だそうです。その男性は、1年前から吉松さんにずっとつきまとい、脅迫、業務妨害を続けていました。

この男性は、ミスインターナショナル協賛企業に何度も脅迫とも言える電話をしたそうです。

国際文化協会はこれの影響なのか、吉松さんに次のように言い渡しました。


「マスコミがインターナショナル以外のことで騒ぐと困るから、吉松さんは大会期間中、体調不良を理由に自粛してほしい」


要は、前年度のミスインターナショナルとして王冠とガウンを新しいミスに渡すことを断念せよ、という話です。


吉松さんはどんなにか悔しかったことでしょう!

国際文化協会は公益法人ではないのですか?これが事実なら、脅迫に屈服してしまったことになりませんか?



男性は、吉松さんの両親に電話し吉松さんが自殺をしてしまうようなことになると言った




この男性による嫌がらせはこの程度ではなかったようです。吉松さんのブログによりますと、両親のところに電話をし、彼女が自殺をしてしまうようなことになる、とまで言い放ったそうです。


インターネットで多少検索すると、この男性は元TBSアナウンサーの川田亜子さんのお名前を出したようです。

週刊文春の記事では、この男性は電話を全面否定しているようです。

TBS報道担当の皆さん。貴女がたは悔しくないのですか!

その電話は録音されているというインターネットのサイトもありますよ。

私は吉松さんと何の面識もありませんが、吉松さんが大嘘をついているとは、考えられません。

吉松さんと訴えられている男性の双方を取材して、それぞれの主張を正確に報道すれば良いだけの話ではないですか!



大手芸能事務所幹部の悪行をテレビ局は報道できないのか-「黙殺協定」が存在するのか-



ふと思い出されるのは、故北公次さんのことです。

故北公次さんは、所属事務所の経営者に少年時代とんでもない性的嫌がらせをされたことを、著書「光GENJIへ」(データハウス1988年刊行)で訴えていました。

この本のp33には、北さんがかつて新宿の暴力団構成員から毎週覚せい剤を買っていたことまで記述されています。

途方もないことが次から次へと公にされているのに、当時のテレビ局や新聞各紙は北さんの訴えを殆ど黙殺しました。

この本の続編「光GENJIへ・再び」(データハウス1989年刊行、p36)には、北さんと知り合いのテレビレポーターが次のように教えてくれたとあります。



「北さんの件にはね、テレビ取材・報道は一切してはならぬとの協定があるんですよ。あと一部の週刊誌やラジオなんかも。

とにかく北さんの名前さえふれてはならないのだから...まあ、しょうがないですよね、相手が相手だから」



私には、「協定」なるものが存在したかどうかわかりようもありません。存在するなら、ジャーナリズムの自殺行為を言われても仕方ないですね。

「沈黙協定」ということになります。

北さんによれば、ジャニーズ事務所にたてついたマスコミ関係はそれ位後ジャニーズのタレントに関する報道を一切シャットアウトされてしまうそうです(「光GENJIへ・再び」(データハウス1989年刊行、p32).。

吉松さんにストーカー行為を行ったと言われている男性が、大手芸能事務所の幹部だという件を考えれば、今回もそういうことなのかなと思えてしまうのは私だけでしょうか?

マスコミの皆さん。特に私は、TBS「報道特集」を担当されている方々に訴えたい。

吉松さんの訴えを、まずは報道していただきたい。加害者と言われている男性の言い分も公平に報道すれば良いではないですか!

「相手が相手だから」などということで報道ができますか!

























2013年12月21日土曜日

北朝鮮に拉致されている日本人を救出するためには、「暴力団と共生する者」とも連帯・協力するべきなのか‐「平成19年警察白書」と「右翼の潮流」(立花書房平成10年刊行)より考える‐

近年、暴力団関係企業以外にも、暴力団に資金を提供し、又は暴力団から提供を受けた資金を運用した利益を暴力団に還元するなどして、暴力団の資金獲得活動に協力し、又は関与する個人やグループの存在がうかがわれる(「平成19年警察白書」p9より)。


北朝鮮に相当数の日本人、韓国人が長年拉致、抑留されています。

この人たちをどうやって救出するかということは、現代日本人と韓国人にとって緊急の課題です。国家の存続に関わる問題ともいえます。

本ブログの別のところで紹介しましたが、私はこの件で「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救うための全国協議会)の会長だった故佐藤勝己氏と意見を大きく異にしました。

私は「被拉致日本人救出のためには暴力団勢力と連帯、協力すべきではない」と佐藤勝己会長(当時)、西岡力氏(現会長)、平田隆太郎氏(現事務局長)に9年ほど前、意見具申しました。

残念ながら受け入れられなかったので、役員を辞めました。

この件についてはその後、故佐藤勝己氏が「財界にいがた」(2005年新年特大号、p184-190)掲載論考「『救う会新潟問題』の全真相」の中で私の主張を概ね正確に取り上げて下さっています。

故佐藤勝己氏の主張については、本ブログの別のところで紹介しました。

「暴力団勢力」(平成9年警察白書)と「暴力団と共生する者」(平成19年警察白書)


私が用いた「暴力団勢力」という概念は、平成9年の警察白書第3章第3節1(1)ウの注に依拠しています。

これは下記です。

「暴力団勢力とは、暴力団の構成員および準構成員、(構成員ではないが、暴力団と関係をもちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、

又は暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力若しくは関与する者)をいう。」

平成19年の警察白書ではこの概念ではなく、「暴力団と共生する者」という概念が用いられています。その定義は、上述部分に次を加えたものです。

下記です。

「これらの者は、表面的には暴力団との関係を隠しながら、その裏で暴力団の資金獲得活動に乗じ、

又は暴力団の威力、情報力、資金力等を利用することによって自らの利益拡大を図っており、いわば暴力団と共生する者となっている」

「暴力団と共生する者」と親密交際する保守派言論人で基督教徒の方は、聖書をどう読んでいるのか


「暴力団と共生する者」は暴力団の構成員ではありません。表面的には暴力団との関係を隠しています。ですから、誰が「暴力団と共生する者」に該当するのかは曖昧になってしまいます。

警察当局は誰が該当するのか、承知しているのでしょう。

私たちにはわかりにくいですから、いろいろな文献から可能な限り情報を収集して暴力団の不法行為や脅迫に巻き込まれないよう、留意せねばなりません。

「暴力団と共生する者」は暴力団の威力、情報力、資金力等を利用して自らの利益拡大を図っている人たちなのですから、極めて危険です。

そんな人たちと交際すれば、個人情報を暴力団に渡され、何にどう利用されるかわかりません。

「暴力団と共生する者」と既に親密交際している保守派言論人(仏教徒も基督教徒もいる)や政治家は、何らかの経路で個人情報を収集され、暴力団に弱みを握られているのかもしれません。


「暴力団と共生する者」と親密交際している保守派言論人で基督教徒の方は一体、聖書のどんな記述に依拠して心中で御自分の行動を正当化しているのでしょうか。

聖書にはいろいろな解釈、読み方があるということなのでしょう。米国映画「The Godfather」の首領(Don)は敬虔なカトリック(Catholic)でした。

「暴力団と共生する者」について、平成19年警察白書(p9)はその例として次をあげています。


総会屋 暴力団企業 事件屋 仕手筋 社会運動標ぼうゴロ


平成19年警察白書によれば、「暴力団と共生する者」は表面上は関係を隠しつつ暴力団に資金を提供するなどして、暴力団の資金獲得活動を不透明化させるのに貢献しています。

北朝鮮に拉致されている日本人を救出するためには、「暴力団と共生する者」とも連帯・協力するべきなのか?

この件は9年前だけでなく、現時点でも大きな問題です。故佐藤勝己氏による「統一日報」掲載論考「拉致問題との関わり」19を読んで、改めてその思いを強くしました。

現時点での「救う会」が、故佐藤勝己会長が敷いた路線、私の理解では


「北朝鮮に拉致されている日本人を救出するためには、『暴力団と共生する者』とも連帯・協力する」


を採っているかどうかは私にはわかりません。

この件について関心のある方はは、西岡力氏(現会長。東京基督教大教授)か、島田洋一氏(現副会長。福井県立大教授)にお尋ねされたら良いかと存じます。

「暴力団と共生する者」と連帯・協力したら、何らかの経路で暴力団の資金獲得活動を不透明化させるのに「救う会」が貢献してしまいませんか?

「救う会」はその後、「右翼・暴力団関係者は救出運動から手を引いてもらおう」という路線転換を行ったのか


私は9年半くらい前に「救う会」の役員を辞めてしまったので、その後「救う会」がこの件についてどんな方針をとったのかわかりません。

「サンデー毎日」(2008年7月6日号)掲載記事「元幹部が告発した『救う会』のズサン経理疑惑」には、この件に関連する「救う会」の路線転換を示唆する記述があります。

この記事を読むと故佐藤勝己前会長はその後、


「やはり黒坂君の主張が正しかった。右翼・暴力団関係者は被拉致日本人救出運動から手を引いてもらおう」

と考え、そのように行動されていたのかもしれないと思えます。

前述の「拉致問題との関わり」19にも、この件と関連する記述があります。もしかすると故佐藤勝己前会長は、次のような路線を採用していたのではないでしょうか。


「小規模の右翼団体の幹部には被拉致日本人救出運動から手を引いてもらうが、

全国的な組織暴力団と密接な関係のある右翼団体の幹部とは引き続き被拉致日本人救出のために連帯・協力する」


この件について関心のある方は、西岡力氏(「救う会」現会長。東京基督教大教授)か、島田洋一氏(「救う会」現副会長。福井県立大教授)にお尋ねされたら良いかと存じます。

暴力団と右翼の関係史を考える‐右翼問題研究会著「右翼の潮流」(立花書房)より


右翼と暴力団との関係については、右翼問題研究会著「右翼の潮流」(立花書房)が大変参考になります。


この本によれば、昭和40年代後半以降、従来とは全く違った形で暴力団が右翼運動に登場しました(p180-181)。次の記述は大変興味深いものです。


「拡声器を取り付け、スローガンを大書したバス等の大型車両を連ねて、大音量の軍歌等を鳴らしながら街頭を走り回り、

官公庁や企業等に対して国家主義的な内容に行政批判や企業批判を絡めた大音量の演説をぶつける。


そして、その中止と引き替えに経済支援を得るという形の活動を、暴力団とその構成員を同じくする右翼団体が中心となって、昭和40年代後半以降、集中的に行うようになる」


わかりやすく言えば、街頭宣伝中止と引き替えに企業から賛助金を得るという手法です(同書p182)。


「右翼の潮流」は、右翼活動は、暴力団にとって「金と引き替えの頼まれ仕事」ではなく、「それ自体が金を生む」ものとなったと指摘しています(同書p183)。


さらに次の指摘もあります(同書p183)。



日本青年社や大行社など、住吉会や稲川会といった広域暴力団の強い影響を受けているとされながら、最初から右翼団体の看板を掲げて結成される団体まで生まれている



暴力団と右翼の関係については、国会でも何度も取り上げられています。私は日本共産党の支持者ではありませんが、この件については同党が大変参考になる質問をしていると思います。


下記の有働正治君とは、日本共産党の参議院議員(当時)です。

資料1・国会会議検索システムより‐参議院平成8年6月6日


有働正治君 警察の方にお尋ねします



日本青年社の最高顧問西口茂男なる人物は、住吉会とはどういうかかわりがありますか。


説明員(植松信一君) お尋ねの件につきましては、日本青年社最高顧問西口茂男と住吉会会長の西口茂男については同一人物と見ております。


有働正治君 きょうは時間がありませんから具体的にお尋ねする時間はありませんけれども、私どもの調べによると、

例えば住友銀行名古屋支店が岐阜市内の指定暴力団稲川会系中島組の組事務所ビルを担保に、この組の関連企業に対し多額の融資を行っている事実等々もあるわけであります。

こういう銀行、金融機関が、暴力団あるいはそれと深く結びつく右翼との資金的なかかわりがあるということは、

この問題は非常に重大だということを指摘し、こういう点も銀行は銀行の社会的責任として、暴対法の精神その他からいってきっちり対応するということが

私は求められているということを述べておきます。
 

資料2・「暴力団の共生者」(平成24年警察白書p116、注1)


暴力団に利益を供与することにより、暴力団の威力、情報力、資金力等を利用し自らの利益拡大を図るものをいう。
 

「暴力団の準構成員」(平成24年警察白書p116、注2)


暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持もしくは運営に協力し、若しくは関与するものをいう。