2018年3月31日土曜日

若き不破哲三氏による社会党批判より思う―不破哲三著作集掲載論考「統一戦線否定のための理論的粉飾-成田氏の批判に答える―」(昭和44年1月)-

「わが党は、憲法違反で対米従属の自衛隊を解散させて『憲法の平和的条項を完全に実現させる』ことを主張するとともに、

安保条約を廃棄し、民主的な政府ができた後でも『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』ことを規定した現行憲法のもとでは、たとえ真の自衛のためのものであっても、『現在の憲法のもとで国が軍隊をもつことは正しくない』という立場を明確にとってきた」(同書p150より抜粋。「前衛」1969年1月号掲載論文)。


日本共産党はかつて、自衛隊即解散論を主張していたのです。

この論文を執筆した頃、不破哲三氏は38才くらいです。不破氏は若き理論家として、将来を嘱望されていました。

当時の社会党委員長、成田知己氏がいろいろな機会に、日本共産党を批判したようです。この論文はそれへの反論です。

民主的な政府ができた後でも、自衛隊を維持すべきではない旨、若き不破哲三氏は断言しています。

当時の日本共産党は、綱領でソ連や中国、北朝鮮など社会主義国が平和勢力であると規定していました。

平和勢力が、日本に侵攻するわけがない。米帝国主義以外に、民主的な政府ができた後の日本に侵攻しうる国はない。

レーニンの教えによれば、帝国主義が侵略戦争を起こすのですから。

若き不破哲三氏ら当時の日本共産党員はこのように、ソ連や中国、北朝鮮を盲信していたのです。

志位和夫氏ら今の日本共産党員も、中国、北朝鮮は途上国だから侵略戦争をしない、という類の盲信を抱いています。

若き不破氏は、社会党の自衛隊改編論を徹底批判した


さらに若き不破氏は、当時の社会党の綱領的文書「日本における社会主義への道」の中の自衛隊改編論を次のように厳しく批判しました。

社会党は、最終的には「自衛隊の解散」を目的とするが、社会党政権下ではそのための「過渡的措置」として

①文官統制の強化②自衛隊員の民主的権利の確保③国民警察隊と平和建設隊への再編成④自衛隊員の思想改造による軍国主義的治安的性格の一掃などを目指すとしている。

こうした部分的措置で、上から下まで対米従属と人民弾圧の軍隊として組織されている憲法違反の自衛隊が、社会党政権の支柱となる民主的な軍隊に改造されると考えること自体、

自衛隊の反民族的反人民的な実態と本質についての社会党の認識不足を暴露したものである。

要は、自衛隊は直ちに解散させるべきだということです。

将来、自衛隊を「解散」しうるときがくるまでは、社会党政権のもとでも、現憲法下での軍事力保持というこの憲法違反の事態を「過渡的措置」として容認するという立場に立っている社会党。

これに対し日本共産党は、現憲法下での「戦力」の保持を認めない。

将来「真に民主的な独立国家日本」に、軍事的な自衛措置を必要とする情勢が生まれたときには、国民の総意基づいて憲法上の制限をのぞいたうえでその措置をとるそうです。

不破哲三氏は社会党の自衛隊改編論を取り入れた


昔の社会党の自衛隊改編論は、今の日本共産党の自衛隊論と似ています。

今の日本共産党は、将来自衛隊を解散しうるときが来るまでは、現憲法下での軍事力保持というこの憲法違反の事態を「過渡的措置」として容認するという立場ではないでしょうか。

日本共産党は平成12年の第22回党大会で、自衛隊活用論を打ち出しました。

歳月が流れれば、人の心は変わる

若き不破氏が徹底批判した昔の社会党と同じ見解に、齢を経た不破哲三氏は到達したのです。

今の日本共産党は、急迫不正の主権侵害時、自衛隊が防衛出動することを認めるそうです。これは22回大会決議に明記されています。

今の不破哲三氏は、昔の社会党より一歩進んだともいえる。

私は若き不破氏のこの論考を最近まで知りませんでしたが、執筆者不破氏がこの論考を覚えていないはずがない。

不破氏は齢を経て、昔の社会党の見解は適切だったという結論に達したのです。

不破氏は昔の社会党の自衛隊改編論を日本共産党の政策に取り入れたのですから。

不破哲三氏は、今の日本共産党の自衛隊改編論、活用論が正しいと思うなら、昔の社会党委員長、成田知己氏の先駆性を認めるべきではないですか。








2018年3月28日水曜日

日本共産党中央委員会出版局「国際友好・連帯運動と覇権主義 日朝関係をめぐって」(昭和62年刊行)掲載の「反共右傾化路線と唱和する対外盲従主義者」より思う

「朝鮮の指導思想、キムイルソン主義を日本の革命の唯一の指導思想として日本に持ち込む尾上一派が、『日本の自主化』というとき、その意味は『日本のチュチェ思想化」、つまり日本を外国の指導者の支配下、その指導思想『チュチェ思想』の支配下におくことである」(同書p114より抜粋)。


この論文の筆者は、和田正名日本共産党中央委員会国際部副部長です。昭和60年11月18日の、「赤旗」評論特集版に掲載された論考です。

本ブログでは日本共産党を何度も批判してきましたが、この論文は素晴らしい。

上記の記述は、金正日と朝鮮労働党の日本支配策動を見事に看破しています。

最近の日本共産党は、朝鮮半島の動向について願望を表明できても、朝鮮労働党の分析は全くできない。

しかし一昔前の日本共産党は、この本に掲載されている諸論考を読めば明らかなように朝鮮労働党の文献を読み、追随者の言動と合わせて分析をしていたのです。

昔の日本共産党は、朝鮮労働党の分析をしていた


察するに、この論文が出されたころには、日本共産党中央は故萩原遼氏から朝鮮労働党の過酷な人権抑圧に関する報告を受けていました。

さらに、在日本朝鮮人総連合会関係者から「党の唯一思想体系確立に関する十大原則」の冊子を入手していた。

唱和30年まで在日の共産主義者は日本共産党員でしたから、昭和60年頃なら密接な人間関係が日本共産党幹部と在日本朝鮮人総連合会幹部では続いていてもおかしくない。

それらも考慮して、金正日と朝鮮労働党が「日本の自主化」という言葉で日本の支配を策していることを見破ったのです。

近年では、朝鮮労働党は全世界における主体思想の勝利という表現も使います。

そのためには、朝鮮労働党は主体思想の普及だけでなく核軍拡、核ミサイルと生物化学兵器大量保有により諸外国を脅迫し、隷属させねばならない。

今の日本共産党員は革命家なのだろうか―大門みきし参議院議員に問う


和夫氏ら日本共産党員は、和田正名論文を読んでいるのでしょうか。

大門みきし参議院議員は、北朝鮮を語るインターネット放送で主体思想について全く説明しませんでした。

日本共産党について説明する際、日本革命理論について一切語らないで、どの程度の説明ができるでしょうか。

大門みきし議員。革命家が革命理論を語れなくて、日本革命ができますか。

在日本朝鮮人総連合会内には、金日成や金正日の論考を読み込み、南朝鮮革命理論、主体革命偉業とやらに生涯を捧げた革命家が沢山いる。

そういう方々なら、朝鮮労働党の工作組織から直接指令を受ければ何でもやるでしょう。

生物化学兵器散布。要人暗殺。民間航空機爆破。日本人拉致。電力施設破壊。サイバーテロ。

テロを準備するためには、資金が必要です。その資金を外貨稼ぎで準備するのが、金正日、金正恩の宮廷経済部門です。

金与正の韓国大統領への微笑は、主体革命偉業とやらの一環でしかない。

志位和夫氏はこれらを熟知しています。


2018年3月25日日曜日

金正日の党経済・宮廷経済について考える3―ジョン・グワンミン「朝鮮労働党の『党経済』に関する一考察」(雑誌「時代精神」2008年秋号掲載論考)より

「党経済は首領制国家に固有の所有関係である。首領制所有の最も重要な特徴は、私的性格と公的性格が混在していることである。この点では首領制所有は家産国家的所有に近い」(本論文の4「党経済の性格」より抜粋)。


金正日の党経済・宮廷経済をどう把握するべきか。興味深い論文をみつけたので、紹介します。韓国の雑誌「時代精神」に掲載されたものです。

ジョン・グワンミン氏は首領制所有、家産国家的所有と規定しています。

家産国家的所有という概念は、池上淳氏の著作「財政学―現代財政システムの総合的解明」(岩波書店)に依拠している旨、本論文は注26で明記しています。

家産国家とは、封建社会での貴族や、絶対主義時代の国王が自らの家族の財産と、国家の財産を分離せずに占有し、権力を経済力で住民を臣下とし、服従させる国家体制です。

荒っぽく言えば、金正日の党経済・宮廷経済は戦国武将の領土経営に近い。

日本史の研究者から怒られそうですけれど。

戦国武将が領地経営により得た収入は自分と家族の生活維持に充当されますが、同時にその収入で領土内の河川工事などをせねばならない場合もあった。

武田信玄の信玄堤(川の治水と堤防工事)は有名です。

金正日の党経済を首領による私的所有制度とみる理由


ジョン・グワンミン氏は、首領により国有財産が私的に所有されていると主張する理由について、次をあげています。

第一に、金父子と家族の外国財調達のため、党経済が動員されている。これを担当する部署は、主席宮財政経理部(73号室)あるいは39号室という部署です。

第二に党経済の機構により、金正日の秘密資金が調達、管理されています。党経済部門が得た外貨はいつでも、金正日の秘密資金に動員できる。

労働党組織指導部が、海外からの秘密資金管理のネットワークを動かしている。

第三に、金正日の執務室には金庫室があり、そこには5つもの大型金庫がある。

第四に、党経済が「贈り物政治」の財源になっている。金正日はしばしば、党、軍、政務の高位幹部に高価なベンツを贈る。奢侈財提供の財源が党経済である。

第五に、金正日が金正男に党経済の管理をさせようとした形跡がある。これは首領の一家による党経済の継承を意味している。

金正日の党経済の公的性格について


北朝鮮では、党の資金は革命資金と呼ばれています。革命資金は例えば、鶏工場の近代化や、大同江ビール工場建設、平壌市の補修工事などにも使われました。

このような面では、経済開発資金にもなっているので党経済が稼ぐ資金は皆、金正日の個人財産になっているわけではない。

金正日に捧げる資金を革命資金という場合もありますが、在日本朝鮮人総連合会関係者の間では忠誠金という呼び名もあります。

朝鮮商工人がいろいろな工場を「合弁」という契約で建設すると結局、39号室関係者に設備や機械を収奪されてしまう場合があったようです。

朝鮮労働党は契約を朝鮮商工人との契約を守らない。

張龍雲氏の「朝鮮総連工作員」(小学館文庫)には、金山の開発がとん挫した話がでてきます。

党経済は人民を搾取する部門だが、所属する人は外部世界の情報を得られる―金正男と張成澤


ジョン・グワンミン氏は、金正日の党経済は人民の搾取の上に成り立っているシステムであると述べています。

同時に、党経済は北朝鮮経済の各部門で、最も市場志向的に開発された部門でもある。

党経済所属の各企業は、外貨を得るために諸外国の企業と競争せねばならない。

今日では中国や東南アジア、ロシアは勿論中東などでも、党経済所属の企業が外貨稼ぎに奔走しています。

党経済に長年所属する人の中には、外部世界の情報に通暁し金正日、金正恩に反感を抱く人物が必ず出てくる。

金正日の長男、金正男氏はそんな人物でした。晩年の張成澤も、そういう境地だったのかもしれません。

韓国の元左翼は若い頃、日本のマルクス経済学の本を読んでいる


ところで、本論文が池上惇京都大学名誉教授の著書に依拠しているのは面白い。

池上教授はマルクス主義の財政学、国家独占資本主義に関する著作で著名な方です。

「人間発達の経済学」という立場から資本論を読む、という論文も執筆されていました。私は若いころ、これらを多少読みました。

韓国の元左翼で、現在は北朝鮮の体制を強く批判する方々の中には、若いころ日本のマルクス経済学や社会運動の本を読んだ方が少なくない。

雑誌「時代精神」と北朝鮮民主化ネットワークに参加している方々にはそんな運動家がいるはずです。

日本のマルクス経済学者は北朝鮮の現状をどう解釈しているのでしょうか。見解をお尋ねしたいものです。









2018年3月24日土曜日

金正日の党経済・宮廷経済について考える2・「北韓経済危機10年と軍備増強能力」(韓国国防研究院発行)より

「金正日は党財政経理部から独立した『39号室』『38号室』という党経済を管理する独自の部署を設置して、金正日の直接指導下で党に属する銀行をはじめとした経済機関と企業所を管理しているのだ。

『39号室』の指導のもと、道・市・郡に至るまで、忠誠心を表す外貨稼ぎの課題を与え、輸出品になるものを探し出し集めさせて、外貨を稼いで金正日に上納させるようにしている」(黄長ヨップ『北朝鮮の真実と虚偽』1999年刊行カッパブックス、p137より抜粋)。


黄長ヨップ氏は、朝鮮労働党中央委員会の書記だった方です。北朝鮮では、思想、イデオロギー担当でした。私見では、金正日より金日成に近い方でした。

金正日の党経済(宮廷経済、首領経済)の存在については、多くの脱北者が39号室という部署が外貨集めを主に担当していると話していることから研究者には知られていました。

労働党高位幹部だった脱北者がこれを認めたのは初めてです。

その後、韓国でも金正日の党経済について、脱北者へのインタビュー調査に主に依拠した研究が進みました。

金正日の党経済・宮廷経済の構成について


そのうちの一つが、ソンチェギ他「北韓経済危機10年と軍備増強能力」(KIDA Press、2003年。韓国国防研究院発行)です。

この本のp27に、金正日の宮廷経済と軍経済に関する表「北韓経済の優先部門の構成」が掲載されていますので、紹介します。

下記です。

区分
重要組織・機構
経済単位
人力数
基本機能
宮廷経済
国防委・党と傘下機関・護衛司令部・国家安全部・人民保安省と傘下機関、その他権力機関
党財政経理部・39号室・38号室・金融機関(銀行)・貿易会社と傘下の工場、企業所・農場、牧場約150200
5060

体制維持・金正日個人の維持・対南事業・そのほか戦略事業


軍事経済

区分
重要組織・機構
経済単位
人力数
基本機能
第二経済
第二経済委員会・第二自然科学院・特殊研究所
軍需工場及び軍の部品職場、約300500個・傘下の貿易会社
軍事経済全体で約150
武器・装備の研究開発と生産
軍経済
人民武力省と傘下の部隊・機関
自前の軍需工場・貿易企業及び傘下の工場、企業所・小農場と牧場約100個・部隊による自前の副業経営、多数の工場、農場

軍需品生産と運用、軍の運営維持



北朝鮮の社会経済は、脱北者や在日本朝鮮人総連合会関係者の話をよく聞き、金日成や金正日の著作、労働新聞などと照らし合わせてしていけば、徐々に把握しできます。


 脱北者の話は、人によって異なる点もあります。思いこみ、記憶違いなど、様々な原因が考えられます。

それでも、北朝鮮の社会経済について貴重な情報を提供していることは間違いない。

金正日の党経済・宮廷経済の規模について


この本の刊行は15年前ですから、現在とは異なっているでしょうが、宮廷経済の外貨規模に関する以下の記述は貴重です(同書p52より抜粋)。御参考までに。

宮廷経済の外貨規模は次のようにして推定した。まず、北朝鮮経済では殆ど全ての外貨と金は金正日と宮廷経済の管轄下に流入されると、脱北者たちは述べている。

これを正しいとする。

1989年の外貨調達規模は正常の輸出額16億ドルプラス武器輸出4・2億ドル、そのほか闇での獲得が4億ドル(援助の資金、献金、麻薬密売等)で約25億ドル。

1999年の外貨規模は、次のように推定できる。

正常の輸出額5・1億ドルプラス武器輸出1・4億ドル、そのほか闇での獲得が3、4億ドル(金剛山観光資金が約1・5憶ドルとその他)で合計10億ドル。

宮廷経済が獲得した外貨だけでなく、国内の部門が生産した額も含めると、1989年の宮廷経済の総生産額は75億ドル。

1989年の北朝鮮経済全体の生産が500億ドルなので、宮廷経済は15%を占める。

同様に1999年の宮廷経済規模は52億ドル。

1999年の北朝鮮経済全体の生産が223億ドルなので、宮廷経済は23%を占める。

これらはいずれも推定値ですが、金正日が外貨稼ぎを自らの奢侈生活維持、核軍拡と南朝鮮革命のための資金源として重視していたことを裏付けています。











2018年3月15日木曜日

金正日の党経済・宮廷経済について―脱北者金光進氏の北朝鮮経済論より思う

「北朝鮮の経済は、内閣が管轄する人民経済と、金正日が直接統制し管理する宮廷経済に区分できる」(金光進氏の論文「金正日の宮廷経済と人民経済の破壊」、雑誌「時代精神」2008年夏号掲載より抜粋)。


北朝鮮の経済をどのように把握すべきなのでしょうか。

この問題について、日本共産党の大門みきし参議院議員は「大門ゼミ」と題した番組で、韓国銀行などが推計している国民総所得や、米国務省筋が推計している軍事費から論じていました。

推計値によれば北朝鮮の国民総所得は三重県の県民所得と大差ない。

海外での出稼ぎ労働者からの送金額が多いので、国内総生産よりは国民総所得で考えるべき旨、大門議員は説明していました。軍事費は約6000億円。

こうした把握も一理ありますが、国民総所得の大きさと軍事費だけでは北朝鮮経済の異様さを十分把握できていない。

大門議員のアシスタントをしていたマリリンという方が、国民総所得の相当大きな部分が軍事費に配分されていることに驚いていました。

マリリンさんの直感は適切です。(軍事費/国民総所得)という比率で経済の特徴を把握するのも大事です。

金正日の「党経済」(奢侈生活を支える部門と軍事部門)は外貨稼ぎを主任務とする


藤本健二氏の著作「金正日の料理人」は金正日一家の豪華な生活を暴露しました。

同時に北朝鮮は、核実験、弾道ミサイル実験を繰り返しています。

脱北者金光進氏によれば、金正日の奢侈生活と軍拡を支える財源を作り出しているのは計画経済当局ではありません。

これは金正日が直接統制し管理する、39号室ともいわれる「外貨稼ぎ」部門です。

金光進氏や、康明道氏によればこの部門は、金正日が金日成の後継者としての地位を固めた70年代に形成されました。

外貨稼ぎを主任務とするということは、外国と何らかの商売をして利益を稼ぐことです。利益追求を第一目的とする企業が、70年代の北朝鮮で作られていたのです。

輸出できる商品を生産するための原材料や資材を、内閣が管轄する人民経済部門から権力を用いて取ってしまうので、人民経済部門の設備稼働率は下がってしまう。

金光進氏によれば、金正日の党経済はこうして人民経済と庶民の生活を破壊している。

金正日の「党経済」は企業経営に利潤原理導入、市場経済化


しかし党経済(宮廷経済)は企業経営に利潤原理を導入することでもあり、北朝鮮経済の市場経済化という面もあったのです。

外国との商売は、市場経済での企業間競争でもありますから、外国の社会経済事情をよく知っている優秀な人材が育ったはずです。

共産圏という枠内で見れば、金正日による党経済づくりは、鄧小平の「改革・開放」より早い。

金正日は、中央計画経済では外貨稼ぎを効率的にできないことを早くから見通していたのです。

軍事力を強化するためには、外国から諸技術を導入せねばならない。そのためには巨額の外貨が必要です。

外貨を稼げる企業を、自分が徹底的に統制することにより金正日は作り出そうとした。これはそれなりに成功したと考えられます。

金正日がこのような判断をできた背景の一つは、数千本も外国映画を鑑賞していたことにあると私は見ています。

金正日は党経済所属の企業を増やし、資材や原材料を優先的に配分させて外貨を稼がせ、自らの奢侈生活と核軍拡を達成しました。

独裁者、王侯貴族の奢侈生活は一国の経済を破壊するのか


これだけを見ると、党経済(宮廷経済)は北朝鮮の経済成長に専ら有害だったと思えてしまいますが、社会経済はそれほど単純ではない。

王侯貴族の奢侈生活は一国の経済を破壊するのか。これは経済学の歴史では古くから問われてきた問題の一つです。

例えばマルサスは地主階級の奢侈品への需要が、完全雇用を達成するためにも必要と論じました。

ケインズによる有効需要の原理はこの理論的発展ともいえる。

金正日の党経済部門は多額の外貨を稼ぎ、それの一部は党経済部門で外貨稼ぎに従事する人々の賃金(「贈り物」を含む)支払いに配分されてきた。

王侯貴族の奢侈生活は有効需要と雇用を増やしうるのです。

金光進氏による、金正日の党経済論についてはまたの機会にふれたいと思います。本日はここまで。