2019年12月31日火曜日

イスラム教の聖戦論より思う―難民、移民受け入れは徹底的に制限されるべきだ―

「(四か月の)神聖月があけたなら、多神教徒は見つけ次第、殺してしまうがよい。ひっとらえ、追い込み、いたるところに伏兵を置いて待ち伏せよ。しかし、もし彼らが改悛し、礼拝の務めを果たし、喜捨も喜んで出すようなら、そのときは逃がしてやるがよい」(「コーラン」(上)井筒俊彦訳、岩波文庫p301より抜粋)。


世界各地で、イスラム教徒によるテロが起きています。

私はイスラム教の専門家ではありえませんが、この原因はイスラム教の教義のどこかにあるとしか思えない。

コーランに、上記があります。

これが異教徒、多神教徒に対する聖戦という考え方の根拠になっているのでしょう。

ホルムズ海峡を航行する日本船舶を攻撃したテロリストは、上記の考え方を実行しているのかもしれません。

日本人は多神教徒ですから。

勿論、全てのイスラム教徒が上記を字義通り解釈しているのではないでしょう。

コーランの読み方、解釈はいろいろあるのでしょうから。

しかしコーランには次もあります。

無信仰者たちにたたかいを


「これ、信徒の者よ。汝らの身近にいる無信仰者たちに戦いを挑みかけよ。彼らにおそろしく手ごわい相手だと思い知らせてやるがよい」(「コーラン」(上)p328」。

欧州各国にはイスラム教徒が大量流入し、社会的衝突が深刻化しています。

キリスト教徒は、多神教徒ではありませんが、イスラム教徒にとっては無信仰者です。

欧州に定着、定住しているイスラム教徒の中には、無信仰者に戦いを挑んでいく方が出てもおかしくない。

既に相当数出ているのかもしれませんが。

戦いを挑む、という語をどのように解釈するかという問題でしょう。この記述も、聖戦を呼び掛けていると私には思えます。

難民、移民の受け入れは徹底的に制限されるべきだ


背景とする宗教、文化、習慣が全く異なる人々を安易に移民、難民として受け入れても、働き口を見つけるのは簡単ではないことは明らかです。

働き口を見つけらなければ、自治体による生活保護を受けるしかない。自治体の負担になっていきます。

私見では、米国でトランプ氏が当選した理由の一つは、この点を強く訴えたからです。

中南米から不法入国する人々を次から次へと受け入れていけば、国境近くの州の財政が破綻してしまう。

有権者の世論掌握術に秀でたトランプ氏は、今後もこれを訴えるでしょう。欧州各国でも、同様の主張をする政治家は増えています。

これをポピュリスト(大衆迎合主義者)などと一言で退ける左翼知識人は、欧米社会の実状について真剣に思考できない方々です。

こういう方々には偽善者、という語がふさわしい。難民、移民を受け入れるなら相当な費用と社会的衝突を覚悟せねばならない。

左翼知識人、左翼政治家は難民、移民大量受け入れによる費用と社会的衝突について一切議論しません。

在留資格のない外国人が強制送還を拒否して、入庫管理局の施設に長期収容されている例があるようですが、在留資格を安易に与えるべきではない。

在留資格が得られない事にはそれぞれ理由があるのです。

外国人が入国管理局による強制送還に応じないのなら、しかるべき刑事罰を与えて逮捕する事を検討すべきです。

日本共産党、立憲民主党ら野党は桜の見物方式で大騒ぎしている暇があるのなら、難民、移民の受け入れ是非について少しは論じるべきです。


日本共産党、左翼知識人の富裕層課税強化論より思う―大門みきし参議院議員は、株式会社、金融資産市場の存在意義を理解できないのか―

「自宅や農地などには特例措置を講じたうえで純資産で5億円を超える部分に低率で課税します」(日本共産党の参議院選挙時の政策より抜粋)。


日本共産党、左翼知識人、マルクス主義経済学者は安倍内閣により大企業と富裕層が優遇され、不当に資産を蓄積しているとみなします。

大企業には研究開発減税などが適用されるから、中小企業より法人税の税率が低くなっていると宣伝しています。

富裕層は日銀の金融緩和による株価上昇による株式の売買、株の配当で大儲けしている、と宣伝しています。

日本共産党中央にお勤めの吉岡正史さんら日本共産党職員、議員はこんな発想でよく呟いています。

大企業への減税云々については、今回はふれません。富裕層への課税強化論について考えてみましょう。

日本共産党と左翼知識人に問いたい。

株式の保有、売買により所得を得るのは悪行なのか―リスク(危険)を引き受ける事への収入は正当


富裕層が株式の売買で儲けている、との主張ですが、株価が低い時に株式を購入した方々が上昇したときに売却し、多少の利益を得るのは悪行でしょうか。

株価がいつ下落するか、予想は困難です。

株式売却後、さらにその株価が上昇している場合もある。

株式を保有し続け配当を得るのは悪行でしょうか。

庶民とかけ離れた所得と資産を保有する富裕層が存在するのは明らかですが、その方々が得た所得と資産が暴力行為などの犯罪で獲得されたものでないなら、規制すべきではない。

富裕層が日本企業の株式を大量購入すれば、日本企業はその資金を原資に設備投資を増やしうる。

株式購入はリスク(危険)のある資産購入ですから、安全な金融資産(定期預金等)購入の場合より高い収益が得られるのは当然です。

ある株式を保有しても得られる配当が定期預金の利子率より低ければ、その株式を保有する意味はほとんどない。

赤字を継続している企業の経営者が、配当をゼロにする場合がありますが、企業存続のためにはどうしようもない。

日本経済の持続的成長のために、内外の富裕層が日本企業の株式、財とサービスを大量購入する政策を


株式保有による配当所得に課税を強化すれば、株式に対する需要が減少し、株価を下げる圧力となる。

日本経済の持続的成長のためには、富裕層がその所得を、日本国内で生産される財とサービスに消費するような政策、日本企業の株式購入に向ける政策を実施すべきです。

富裕層が高級ホテルに宿泊し、贅沢な食事をすればホテルや高級料理店の売り上げになるのです。消費税の税収にもなる。

年収数億円、数十億円の高額所得者なら、一晩で数百万円の奢侈生活が可能でしょう。

外国の富裕層が日本企業の株式を大量購入し、保有しつづけるなら、その方は日本企業の持続に貢献している。

日本企業が外国企業との競争に敗北し、十分な利益を計上できなくなったら株価が下落し、配当も減少する。

企業経営者から見れば、銀行からの借り入れより、株式発行による資金調達の方が有利な場合は多い。

株式を購入してもらえば返済の義務はないのですから。企業が存続すれば労働者は雇用を維持される。

大門みきし参議院議員に問う


日本共産党、左翼知識人、マルクス主義経済学者には株式会社、金融資産市場が資源の効率的配分に貢献することがわからない。

大門みきし参議院議員は、日本共産党で経済政策部門を担当されているようですが、株式会社、金融資産市場が資源の効率的配分に寄与するという見解に対しどう考えているのでしょうか。

日本共産党は市場経済で社会主義を目指すそうですが、それなら株式会社と金融資産市場は存続することになります。

富裕層が国内の企業の株式大量購入あるいは国内の財とサービスを大量購入する政策は、どんな政党が政権をとっても必要となるはずです。

上記は概ね、新自由主義者の視点ということになるでしょうが、富裕層への課税強化については新ケインズ派でも否定的な方はいます。

私見では米国の新ケインズ派の一人、Greg Mankiwが最近Blogに発表した論考How to Increase Taxes on the Rich (If You Must)はその一つです。




2019年12月28日土曜日

日本共産党、左翼にとって中国共産党、朝鮮労働党は平和を愛する進歩勢力である―山本太郎さんも中国共産党、朝鮮労働党を「たたかう市民」とみなすのか

左翼は「たたかう市民」「たちあがる市民」という表現を好みます。


故小田実さんもよくこの表現を用いていました。

もう37年くらい前になるかと思いますが、東京都知事選挙に毎日新聞OBの松岡英夫さんが立候補しました。

この時の選挙戦の最終日に、小田実さんが池袋駅前での街頭宣伝に弁士として登場しました。

演説の詳しい内容を覚えていないのですが、社共は既成左翼だから駄目だ、という話だったように思います。

小田実さんは、社会党、共産党などの既成左翼は憲法の原理にある反抑圧、という視点がないから駄目で、「たたかう市民」の大きなかたまりを作らねばならない、という訴えをいろいろな場でしていました。

若い頃ベトナム反戦運動に熱心に参加なさった小田実さんは、米国や大日本帝国とたたかったという毛沢東、金日成を高く評価していました。

小田実さんは毛沢東、金日成はそれぞれ中国、朝鮮半島の「たたかう市民」の指導者だと把握していたのではないでしょうか。

山本太郎さんは中国共産党、朝鮮労働党を平和勢力とみるのか


れいわ新選組の山本太郎さんの街頭での熱い演説は、往年の小田実さんを思い起こさせます。

山本太郎さんは小田実さんのように、中国共産党、朝鮮労働党を「たたかう市民」とみなすのでしょうか。

れいわ新選組の運動員の中には、そういう方がいるらしいですね。

左翼の平和理論で世界を把握するなら、米国と安倍内閣がアジアで最大の戦争勢力です。

米国と安倍内閣の軍拡を批判する中国共産党と朝鮮労働党は平和を愛する進歩勢力です。

山本太郎さんも同様の見解なのでしょうか。街頭演説会で伺ってみたいものです。

中国共産党、朝鮮労働党は「基地のない沖縄」を支持するから「平和勢力」


私見では、日本共産党と左翼知識人は中国共産党、朝鮮労働党を平和を愛する進歩勢力とみます。

日本共産党は香港での人権抑圧で中国共産党を強く批判していますが、中国共産党は戦争勢力だ、尖閣に侵攻しうるという主張はしない。

中国共産党、朝鮮労働党は安倍内閣による軍拡を徹底批判し、「基地のない沖縄」をつくることを支持しています。

従って日本共産党、左翼知識人にとって中国共産党、朝鮮労働党は平和を愛する進歩勢力です。

習近平、金正恩を中国と朝鮮半島の「たたかう市民」の指導者と左翼はみる。

尖閣から沖縄に侵攻するためには「基地のない沖縄」をつくらねばなりませんからね。

日本への核ミサイル攻撃を断行しうる金正恩にとって、最大の妨害者は米軍です。東京や大阪にミサイル攻撃をしたら、米軍人とその家族にも沢山犠牲者が出ます。

米国世論は沸騰し、金正恩は米の核ミサイルなどで報復されうる。

強力な日米軍事同盟が、日本の平和を守っている。左翼はこれを認められない。

「たたかう市民」の指導者が戦争勢力という話ですから。

左翼政治家、左翼知識人は中朝の核軍事力について、目を背けるしかない。

事実に目を背ける。これが左翼の生き方なのです。

2019年12月27日金曜日

日本共産党の刑法改正案について思う―「暴行・脅迫要件」の撤廃と同意要件の新設は冤罪を多発させる

最近の日本共産党は「強制性交罪」(旧強姦罪)の「暴行・脅迫要件の撤廃」と同意のない性交を処罰することを提起しています。(例えば、参議院選挙での重点政策)。


私は法律には疎いのですが、性交の同意の有無をどうやって確認できるのでしょうか。

日本共産党の参議院選挙での重点政策の文書を見ると「加害者」とされた側が「被害者」から同意を得たか否かの事実を立証せねばならない。

これでは、性交後に「私は同意などしていない。貴方は私を強姦した」と訴えられたら大変です。

「加害者」にされたのですから、性交での合意の存在を何とかして立証せねばならない。

「暴行・脅迫」をしていないことは何とか証明できても、「被害者」からそれでも私は嫌だった、と嫌だと繰り返し言ったなどと主張されたらそれを覆すことは難しい。

密室での出来事、二人だけの会話の中身を、「加害者」が証拠を示して覆すことなどできるはずもない。

同意の存在を「加害者」が証明できなければ「旧強姦罪」、今は「強制性交罪」にされてしまいます。

これが刑法でどの程度の重罪なのか、私にはよくわからないのですが万引きや満員電車内の痴漢よりはるかに重い事は間違いない。

冤罪が多発しうる。

「野党と市民の共闘」を広めるためには、冤罪多発でも「同意なき性交を犯罪とせよ」論に与すべきという判断では


日本共産党には法律家が多いはずなのですが、どうしてこんな刑法改正案が提起されたのか不可解です。

察するに、「野党と市民の共闘」を広めていくためには、「同意なき性交を犯罪とせよ」論を主張する市民団体との連携が不可欠という判断ではないでしょうか。

志位和夫委員長か小池晃書記局長がそう判断し、日本共産党中央のどこかの部署がその意をくんでこの案を作成したのでしょう。

どなたがこの刑法改正案を作成したのか存じませんが、法律家の意見を殆ど聞かないで出してしまったに相違ない。

日本共産党中央は、一般党員の意見を聴いて政策や見解を作成する事ができにくい。

40年くらい前に田口富久治教授が、民主主義中央集権制では必ずそうなっていく旨、問題提起をしていました。

今の日本共産党職員、議員は不破・田口論争など知らないでしょうね。

宮本顕治氏、不破哲三氏の論文すら殆ど読んでいない方が、日本共産党の議員や職員として勤務している。

そういう方々には、御自身が革命家であるという自覚がない。普通の就職口という気分で日本共産党職員、議員になったのでしょう。

あらゆる意味で、日本革命は実現不可能です。

2019年12月22日日曜日

日本共産党、左翼に安全保障政策はない

日本共産党、左翼人士は安倍内閣がアジア最大の戦争勢力とみなす


私は繰り返し主張していますが、レーニンの「帝国主義論」の見地では帝国主義、金融資本が戦争を引き起こします。

そこで日本共産党、左翼にとって世界では米国、アジアでは米国の目下の同盟者たる安倍内閣が最大の戦争勢力です。

安倍内閣の軍拡を批判する中国共産党、朝鮮労働党と韓国政府、韓国左翼はいろいろ問題はあっても大局的には平和勢力です。

最近の日本共産党は中国共産党が覇権主義であると批判しますが、戦争国家だという批判は決してしません。

中国共産党は尖閣を自国領と規定し、繰り返し船舶を尖閣周辺に侵入させていますが日本共産党、左翼人は中国人民解放軍が尖閣に侵攻したらどうするか、という議論は決してしない。

習近平が台湾併合のために台湾を攻撃したらどうするかという議論も、左翼は決してしない。

安倍内閣の軍拡を徹底批判している同志が戦争を始めるなどという事を言い出す日本人こそ戦争勢力だ、と日本共産党、左翼人士はみるのです。

従って日本共産党に安全保障政策など存在するはずもない。憲法九条こそ最大の安全保障だ、という話です。


日本共産党、左翼人が訴える憲法九条を基礎にした外交とは―自衛隊解散が前提


日本共産党の文献を見ると、同党はまず日米安保廃棄を実現する。

その後、国民の合意が得られたら自衛隊を解散する。日米安保廃棄と自衛隊解散により、憲法九条が完全実施できる。

日本が軍事力を一切なくし、憲法九条を完全実施してこそ、周辺諸国への軍縮を呼び掛ける資格ができるという発想です。

日本が一切の軍事力を持たないようになれば、アジアで最大の戦争国家がなくなりますからアジアには平和が訪れる。

中国共産党、朝鮮労働党、ロシア、韓国と日本は真の友好関係を結ぶことができる。

自衛隊解散が今すぐに実現できないなら、自衛隊の保有武器が少しでも減るよう全力を注ぐのが、日本共産党と左翼人の使命です。

こんな視点で、日本共産党と左翼人は桜の見物方式で大騒ぎをしているのです。

日米安保廃棄、自衛隊解散は日本共産党と左翼人士の宿願ですが、日本侵攻を策す中朝露の願いでもあります。


習近平、金正恩は日本共産党、左翼の視点では平和のために戦う指導者-安倍内閣の軍拡を批判しているから―


習近平、金正恩は日本共産党の視点では、平和のために戦っている優れた指導者です。

この類の発想は、若い頃ベトナム反戦運動に参加した「団塊の世代」やそれより上の方々には受け入れられやすい。

「戦争を知らない子供たち」という歌が昔流行しました。

今聞いてみると、この歌は「団塊の世代」のテーマソングのように思えます

「戦争が終わって、僕らは生まれた。戦争を知らずに、僕らは育った~」という歌詞です。

小学校の頃、私はよくこの歌を聴きました。良い歌と思いますが。

ベトナム戦争反対、の運動に若い頃身を投じた方々は、ベトナムを支援した中朝は平和勢力そのものです。

久しぶりに、小田実「歴史の転換のなかで」(昭和55年、岩波新書)を少しめくってみました。

小田実さんによれば、金日成と北朝鮮は「非同盟政治」「非同盟経済」「非同盟軍事」を追求しています。

主体思想は「非同盟文化」の思想だそうです(同書p93)。

この本が出た頃、北朝鮮の凄惨な人権抑圧はまだあまり知られていませんでした。残念ながら、小田さんはこの後もずっと、北朝鮮の実状を把握しなかった。

ベトナム戦争反対運動に若い頃身を投じた方は、ベトナムを支援した中朝が戦争国家という事実を認めることは極めて困難なのでしょう。

左翼は中国、北朝鮮による核軍拡の実態について、思考と議論ができない。

山本太郎さんとれいわ新選組の皆さんも、習近平、金正恩は米国、安倍内閣の軍拡を批判しているから平和勢力、進歩勢力とみるのでしょうか。

金正恩の核ミサイルの標的は日本なのですけれどね。

核兵器の小型化、軽量化のためにミサイル実験を繰り返す金正恩が平和勢力なら、言葉の遊びとしか思えません。







2019年12月15日日曜日

市場経済では生産手段の社会化(資本主義的搾取の廃止)はできない―不破哲三「マルクス主義と現代修正主義」(昭和40年、大月書店刊行)より思う

「(エンゲルスは)生産者間の市場競争を存続させ、生産を自然発生的な発展にまかせてるデューリング式『社会主義』は、コンミューンが資本家にとってかわっただけで、実際には資本主義社会をすべてその欠陥とともに復活させざるをえないことを詳しく論証した」(不破哲三氏の同書p48より抜粋)。


この本を書いた頃、昭和5年生まれの不破哲三氏は35歳くらいです。若き不破氏の才気と、日本革命への熱意がひしひしと感じられる本です。

初めの章は「ユーゴスラビア修正主義批判」と題されています。

市場的社会主義、労働者自主管理社会主義といえばユーゴスラヴィアが先駆的存在でした。

ハンガリーも市場経済を早くから導入していました。

日本共産党を支持するマルクス主義経済学者が、社会主義経済について真剣に考えるのなら、ユーゴスラヴィアやハンガリーの経験に学べ、という話になるはずです。

私が早大の学生だった頃、故関恒義教授(一橋大学)がそんな話をよくされていました。

しかし今の左翼の皆さんはユーゴスラヴィアとハンガリーについて沈黙しています。

ユーゴスラヴィアは民族対立から崩壊。今のハンガリーは、移民排斥を主張する政党が政権についているらしい。

旧ソ連、東欧は悪戦苦闘の末、資本主義経済となりました。

中国は国家独占資本主義と見るべきではないでしょうか。帝国主義そのものです。

若き不破哲三氏の予測は的中したー市場的社会主義は資本主義になる―


従って、エンゲルスの「反デューリング論」を熱心に学んだであろう若き不破哲三氏の予測は、的中したのです。

上記の「コンミューンが資本家にとってかわっただけだ」という指摘は面白い。

これは次のように考えればわかりやすい。

市場経済で労働者の集団がある会社の株式を大量購入し、経営権を握って経営者になったとします。

近年はこれをEBO(Employee Buyout)と言います。

労働者が管理するその企業は勿論、同業他社との厳しい競争に直面しています。

競争に敗北し債務超過になったら、労働者管理企業の株価は暴落します。

経営者だった労働者は辞任し、企業は銀行など債権者の管理下に入り、整理解体されていくでしょう。

それが嫌なら、賃金を切り詰め、競争力を強化する投資を積極的に行い競争に勝ち抜くしかない。

これは今でも、普通の会社がやっていることです。経営者が日本共産党員でも同じです。

労働者が会社の経営者になっても、競争に勝つために利潤本位で会社を経営する

私は本ブログやtwitterで何度か、労働市場と金融資産市場が存在すれば生産手段の社会化(資本主義的搾取の廃止)はできないと述べてきました。

市場経済で財市場、商品市場が存在するのは当然です。

金融資産市場が存在すれば、株式の売買による企業経営権の獲得は可能です。

労働市場が存在すれば経営者は自由に労働者を雇用できます。

この経済は資本主義経済でしかない。宇野派の定義でも、労働力が商品になっている社会は資本主義経済です。

生産手段の社会化、という正統派マルクス主義経済学の中心的主張は、私見では下記です。

ソ連のように生産手段を国家に集中し、経済全体を中央計画経済で運営することによってこそ、「生産の社会的性格と取得の資本主義的形態の矛盾」(エンゲルス)を解消できる。

これは、若き不破哲三氏の同書での主張と殆ど同じです(同書p42)。

各企業を労働者が直接運営しても、各企業は同業他社と競争しているのですから、利潤本位で生産を行うしかない。

EBOですが、十五年くらい前に米国の航空会社が破綻しかけたときこれがなされたと記憶しています。

最近、名前を忘れることが多く、航空会社の名前を思い出せません。

社会主義経済の中央計画と個人の主体的経済行動の矛盾ー誘因両立性―


「生産手段の社会的所有」の困難については、宇沢弘文教授が随分前に指摘しています(「現代資本主義と社会主義―その経済学的考察ー、館龍一郎・小宮隆太郎・宇沢弘文編「中国経済 明日への課題」(東洋経済新報社昭和59年刊行、第一章所収)。

宇沢教授によれば、経済計画によって指示されるものと、各個人の主体的行動様式は必ずしも一致せず矛盾しうる。

誘因両立性(Incentive Compatability)の問題があるという主張です。

これは「契約の経済学」やゲーム理論が発展した今日では常識的な事ですが、35年前に中国経済を観察して誘因両立性の問題を看破した宇沢教授の慧眼に、今更ながら敬服します。

いまだに「生産手段の社会化」や「資本主義的搾取の廃止」に固執している正統派マルクス主義経済学者は、東欧社会主義崩壊後のこの三十数年間、一体何を研究したのでしょうか。


2019年12月14日土曜日

日本共産党はなぜ中国共産党に、高野功赤旗記者の件で謝罪と償いを要求できないのか―不破哲三「日本共産党と中国共産党の新しい関係」(新日本出版社平成10年刊行)より思う

「日本共産党と中国共産党との関係正常化についての合意四より・・双方は今回の会談により、両党間に存在した歴史問題が基本的に解決されたことを確認し、日本共産党と中国共産党との関係の正常化を実現する事に合意した」(同書p74より抜粋)。


もう四十年余りの歳月が流れました。

昭和54年3月7日。高野功赤旗記者はベトナムのランソンという町で、中国人民解放軍によるベトナム侵略の現場を取材中、人民解放軍に射殺されました。

当時の日本共産党は中国共産党を強く批判しました。

しかし最近の日本共産党は、この事件について完全に沈黙しています。

香港の事態で、日本共産党は中国当局を批判する声明を出しました。

人民解放軍による高野功赤旗記者の件で中国共産党に謝罪と償いをせよ、と主張する日本共産党議員、職員は皆無です。

山添拓議員、吉良よし子議員ら若い日本共産党員はこの事件そのものを御存知ないのでしょう。

なぜ志位和夫委員長は高野功赤旗記者の射殺について沈黙しているのか


志位和夫委員長らこの事件当時の「赤旗」紙面を覚えている日本共産党幹部が沈黙する理由を推測してみます。

私は上記の中国共産党との合意「両党間に存在した歴史問題が基本的に解決された」によると考えます。

歴史問題は基本的に解決された、と日本共産党が認めたのですから、今更謝罪と償いを中国共産党に要求などできません。

「日中両党合意に反する」と中国共産党に脅かされてしまいます。この合意が存在する限り日本共産党は、人民解放軍による赤旗記者射殺を批判できません。

日本共産党は中国覇権主義に屈服したのです。日本共産党は中国覇権主義、という語を近年は用いていません。

中国共産党との交流再開を熱心に進めたのは、不破哲三氏です。

不破哲三氏にとって、赤旗記者の生命と人権より、中国共産党との科学的社会主義の理論交流のほうが大事だった。

今の日本共産党は香港の事態で中国共産党を批判していますが、中国共産党が科学的社会主義の党であるという認識は変えません。

20年ほど前に不破氏が主導して締結した日中両党合意は今日でも生きています。

日本共産党と中国共産党は、共に世界の共産主義運動を進める同志なのです。

これは今後、香港でどんなに酷い人権抑圧がなされても不変と考えられます。

中国共産党の人権抑圧は、建国以来一貫していますから。

現代中国は帝国主義だ―中国共産党は日本国家の破壊を策している


中国で人権が保障され、民主主義的な政治体制が存在した時期はありません。中国には事実上、選挙はない。

選挙らしきものはありますが、中国共産党幹部から住民に、誰に投票しなさい、という指令が来るそうです。

日本に定住する中国人の中には、領事館の在日指導担当者にいろいろと指導を受ける方がいます。

左翼は定住外国人に参政権を、と叫びますが、これが実現したら中国共産党、朝鮮労働党や韓国政府と韓国左翼が正々堂々と日本の内政に干渉できます。

日本国家の弱体化、徹底的破壊を目指す外国が存在することを、私は繰り返し訴えたい。

レーニンの「帝国主義論」の視点で中国を分析したら、現代中国は帝国主義そのものではないでしょうか。

マルクス主義経済学者には、毛沢東と中国共産党への尊敬観を未だに持っている方が少なくない。

毛沢東は人民を教師とした、などと本気で信じている方がいます。中国共産党を少しでも批判する中国人は、毛沢東にとって人民ではないのですけれどね。





2019年12月8日日曜日

左翼知識人、運動家はマルクス主義を放棄し、ベルンシュタインが唱えた社会民主主義を再検討すべきだ―労働者階級には祖国があり、国民には国防の義務がある―

資本主義的搾取の廃止、生産手段の社会化はできない。日本革命、世界革命はない。左翼知識人、運動家はベルンシュタイン以来の社会民主主義の思想、政策論を再検討すべきである。


山本太郎さん(れいわ新選組)の演説をインターネットで見ました。

私は山本太郎さんの安全保障観、原発論には到底共感できませんが、マクロ経済学を熱心に勉強されていますね。

銀行による信用創造の仕組みを、街頭演説で説明する政治家を見たのは初めてです。

熱意のある左翼政治家を久々に見ました。小田実さんの世界観と近いものを持っている方と思います。

れいわ新選組の中心的な支援者には、小田実さんの「日本をよくする市民連合」に参加していた方がいるらしい。

山本太郎さんには小田実さんが毛沢東、金日成という大量殺人を断行した独裁者を礼賛してしまった事を知って頂きたいものです。

労働者階級には祖国がある


本ブログでも何度か触れましたが、私は若い頃左翼でした。

旧友や大学院の先輩には、左翼運動に熱心に取り組んでいる方が少なくありません。

そんな方々に私が申し上げたいことは、上記の「労働者階級には祖国がある」です。

革命など存在しえない。選択すべき体制は、資本主義経済なのです。

マルクス、エンゲルスの資本主義の未来論は全く間違っており、ベルンシュタインの予見が正しかった。

左翼知識人、運動家はこれを認めるべきです。

ベルンシュタインによるマルクス、エンゲルス批判は多岐にわたりますが、その中の最重要命題は「労働者階級には祖国がある」であると考えます。

生産手段の社会化など不可能で、資本主義経済の枠内で失業の減少、非正規職から正規職への転換増を訴えるのなら、それは国家による経済政策を考えるしかない。

財政、金融政策をどう実施するか。財政政策により、社会資本をどう建設するのか。社会資本とは何か。

国家による経済政策が必要なら、国家を核ミサイルやテロなどで滅ぼそうとする外敵から守る軍事力が必要です。

強力な自衛隊と日米軍事同盟は日本国家存続のために必要な社会資本です。

仏のミッテラン政権は、国防を重視して核軍拡を推進したのではないでしょうか。仏左翼なら、日本に核武装を勧めることでしょう。

生産手段の社会化、搾取の廃止などできないという件については改めて論じたいと思います。

簡単に言えば株式会社が存在し、労働市場と金融資産市場が存在するなら資本主義的搾取が広範に存在すると考えます。

民主主義を実現するために、国民には国防の義務がある


ベルンシュタインは、民主主義を実現するためには国民が国家に対する義務、特に国防の義務を果たさねばならないと説きました。

ベルンシュタインはロシアが危険だから、戦争を国外で行うべきであると述べています。

自国内で戦争を行うことになる「専守防衛」は自国民の大量犠牲を伴うので、危険るという発想です。

ロシアによる南進の危機に直面していた明治日本が日韓併合を行ったのは、この視点でした。

今の日本人が、当時の国際法では合法だった日韓併合を謝罪する事は、日本はロシアに併合されるべきだったと主張するようなものです。

上記の件、もう16年も前になりますが、私は野村旗守さん編「社会党に騙された!」(別冊宝島Real55号)に「社会党と共産党、どこがどう違ったか」と題して書きました。

繰り返しですが山本太郎さんには、小田実さんが毛沢東、金日成を礼賛してしまったことを知って頂きたいものです。

ベトナム反戦運動に参加された小田実さんは、米国と朝鮮戦争で対決した中国共産党、朝鮮労働党こそ、「たたかう市民」だったのでしょうね。

習近平、金正恩は市民ですか。れいわ新選組を支援する皆さんに、御検討頂きたい。