不破哲三「いわゆる拉致問題の宣伝だけ聞いていると、100%証明ずみの明白な事実があるのに、相手側はそれを認めようとしない、日本政府も弱腰で主張しきれない、そこが問題だ、といった議論になりやすいのですが、実態はそうじゃないんですね」
最近の日本共産党の宣伝物を見ると、日本共産党が北朝鮮に拉致された日本人救出のために全力で北朝鮮と対決してきたような話になっています。
虚偽宣伝です。
不破哲三氏は、「赤旗」日曜版2000年12月31日、2001年1月7日合併号に掲載された緒方靖夫氏との対談で上記のように発言しました。
緒方靖夫氏は不破氏のこの発言を受けて、次のように述べました。
「そうなんです。外務当局に聞いても警察当局に聞いても、全体として疑惑の段階であって、「七件十人」のうち物証のあるものは一つもない、と言っています。」
不破氏はさらに次のように述べ、北朝鮮に対し拉致した日本人を返せと日本政府が要求することに反対しました。
「日本の捜査の到達点自体がそういう段階なのに、これを証明ずみの事実のように扱い、そういうものとして外交交渉のテーマにしたら、やがてゆきづまって日本側が身動きできなくなることは、目に見えています。
ですから、私は日本の捜査で到達した段階にふさわしい外交交渉をしなさい、と提案したのです」
兵本達吉氏による詳細な調査報告により、不破哲三氏は相当数の日本人が北朝鮮に拉致されていることを熟知していた
この時点で不破哲三氏は勿論、横田めぐみさん、有本恵子さん、田口八重子さん、市川修一さん、増元るみ子さんら相当数の日本人が北朝鮮に拉致されていることを熟知しています。
潜水艦や武装工作船で潜入してきた北朝鮮工作員が物証を残さなかっただけの話です。悔しいことですが「完全犯罪」に近かったのです。
警察は様々な状況証拠から、北朝鮮の犯行であることはつかんでいましたが、犯人名まで完全に突き止めるのは難しい。
犯人は武装工作船や潜水艦で日本人を拉致したらすぐに北朝鮮へ去ってしまうのですから。「完全犯罪」だから黙っていよう、などと政治家に言い出されてしまったようなものです。
「完全犯罪だから黙っていよう」などと日本の国会で言われていることがわかったら、拉致された日本人はどんなに悔しいでしょう。
拉致された日本人は日本に連絡できませんから、日本の国会で何をどう言われても黙っているしかない。日本のことは何もわからない。不破哲三氏はここに着目したのでしょう。
不破哲三氏こそまさに、百戦錬磨の真の共産主義者です。
大阪の原ただ晃さんに成り変わった辛光スと彼を助けた金吉旭、神戸の田中実さんを拉致した人物くらいしか、犯人名は当時わかっていませんでした。
警察は「~の疑い」で犯人を証拠に基づき逮捕し、起訴する。
そもそも、日本の警察は様々な事件の犯人を逮捕しても、「~の疑い」で逮捕するのです。「疑い」「疑惑」が疑惑でなく事実と警察が断言できるのは裁判で判決が確定してからです。
これは当たり前です。不破哲三氏がこれを理解していなかったのなら、行政機構と司法機構それぞれの役割を理解していなかったことになります。無知蒙昧のそしりを免れません。
不破氏の矛先は橋本敦氏、和田正名氏、「赤旗」編集局と兵本達吉氏に向けられていた
不破氏の主張「100%証明ずみの明白な事実があるのに、相手側はそれを認めようとしない、日本政府も弱腰で主張しきれない、そこが問題だ」は、誰に向けられていたのでしょうか。
日本共産党の橋本敦参議院議員(元)は、これに近い主張を国会でしました。
昭和63年3月の橋本敦議員による国会質問や、和田正名氏(赤旗編集局編の「北朝鮮覇権主義への反撃」掲載論考、p118)は北朝鮮が日本の主権を侵害していると断言しています。
不破哲三氏は兵本達吉氏が全国各地の拉致日本人家族を訪問し、様々な証拠を積み重ねた結果北朝鮮が日本人を相当数拉致したという結論に達したことも報告を受けていたはずです。
不破氏の上述の発言は被拉致日本人救出運動の参加者だけでなく、橋本敦氏、兵本達吉氏、和田正名氏と「赤旗」編集局にも向けられたものと理解すべきでしょう。
北朝鮮による拉致問題をこれ以上深く追求するな、という意味が込められていたのです。
日本人拉致を実行、幇助したのは北朝鮮工作員の在日本組織-「南朝鮮革命」を実行する工作員が日本人に成り変わるために日本人を拉致した
相当数の日本人を日本国内から暴力的に拉致するためには、北朝鮮から潜水艦や武装工作船で潜入してくる工作員だけでなく、日本国内の協力者の組織が沢山なければできない。
「南朝鮮革命」とやらを断行するための北朝鮮工作員の在日本組織です。調査、研究の結果これに気づいた兵本達吉氏は、元工作員と接触し情報を入手していたはずです。
入手した情報を、日本国民の生命と人権、日本国家の主権を守るために警察に提供するのは、日本国民ならば当たり前です。
しかし日本共産党からみれば、「南朝鮮革命」すなわち大韓民国滅亡のために日夜尽力している工作員諸兄は革命運動の同志です。日本共産党員は外国の同志の戦いを妨害してはならない。
日本共産党は朝鮮労働党との共同声明で繰り返し、北朝鮮による南朝鮮革命への熱い支持を表明しています。
大韓民国は北朝鮮により滅亡させられてしかるべきだと宮本顕治氏は大真面目に信じていました。「南朝鮮革命」とは大韓民国の滅亡です。宮本顕冶氏は武装闘争の「理論家」でした。
同志を警察に売るような兵本達吉氏は、日本共産党員の立場からみればまさに「反党分子」「転落者」です。兵本達吉氏は警察に情報を提供した疑いで、共産党から除名されました。
「赤旗」には日本人拉致を断行した北朝鮮工作員の在日本組織についての記事は掲載されたことがありません。
在日本朝鮮人総連合会の活動を熱心にやってこられた方々なら、その類の組織がいくらでもあることをよくご存知です。
元在日朝鮮人(帰国者)の中には政治犯収容所に連行された方もいる-「赤旗」は無視
在日本朝鮮人総連合会関係者が北朝鮮工作員に協力するのは、協力を拒めば帰国事業で北朝鮮へ渡った親族の生命が危ないからです。
日本共産党と在日本朝鮮人総連合会の宣伝を信じて北朝鮮へ渡った約93000人(そのうち日本国籍所有者は約6000人)の中には、政治犯収容所に連行されてしまった方もいます。
北朝鮮へ渡った元在日朝鮮人の中には、日本共産党員だった方々もいます。昭和30年まで在日朝鮮人の共産主義者は日本共産党員だったのです。吉良よし子議員は御存知ないでしょう。
帰国事業が盛んに行われた時期、日本共産党と在日朝鮮人は極めて親しい関係でした。「金日成選集」を日本共産党中央委員会出版部が発行していました。
金日成は朝鮮戦争で米国を破った偉大な将軍だ、などと大真面目に信じていたからです。偉大な共産主義者の論文を日本社会に普及するのは共産党員として当然です。
宮本顕治氏は何度も朝鮮労働党と共同声明を作成、発表しています。当時の「赤旗」「前衛」には北朝鮮を礼賛する記事や論文はいくらでもありました。
吉良よし子議員は聴濤弘氏に、在日朝鮮人と日本共産党の関係を質問するべきだ
日活映画「キューポラのある街」には、北朝鮮に社会主義の夢を抱いて帰国していく日本人妻と息子が描かれていました。
「千里馬のいきおいで社会主義を建設する北朝鮮」という、日本共産党と在日本朝鮮人総連合会の宣伝を信じて北朝鮮に渡った在日朝鮮人は、その後どうなったのでしょうか。
その方々の中で、行方不明になった人もいます。思想、信条の自由、表現の自由が全くない社会ですから、心の病になってしまった方もいます。餓死した方もいます。
少数ですが、処刑された方もいます。「政治犯」なのか、罪名は日本の親族にもよくわからない。日本の親族が在日本朝鮮人総連合会にいくら問い合せても梨の礫です。
不破哲三氏としてはこの悲惨な史実をどうしても隠しておきたいのでしょう。吉良よしこ議員、池内さおり議員は、在日朝鮮人が日本共産党員だった史実など一切ご存知ないでしょう。
嘘だと思うなら、聴濤弘氏にお尋ね下さい。聴濤弘氏なら、元在日朝鮮人と日本共産党の関係を熟知しています。聴濤弘氏は、論考から判断する限り共産主義者としての水準は高くない。
不破哲三氏の「道理ある交渉」は政治犯収容所の凄惨な人権抑圧について沈黙を貫く「交渉」
「赤旗」に北朝鮮の政治犯収容所についての記事が掲載されたことはありません。
今日の日本共産党は、「金日成民族」の在日本朝鮮人総連合会と友好関係を維持しています。
不破哲三氏は、在日本朝鮮人総連合会が日本人拉致を隠蔽してきた件や、北朝鮮の人権問題を否定している件について、完全に沈黙しています。「道理ある交渉」のつもりなのでしょう。
世紀の転換点に立つと、「全社会の金日成・金正日主義化」に尽力なさっている方々と連帯し、北朝鮮に社会主義の夢を求めて渡った元在日朝鮮人の悲劇から目を背けるようになるのです。
「科学的社会主義」に裏付けられた「科学の目」を、吉良よし子議員、池内さおり議員もいずれは体得し、史実を隠蔽する真の共産主義者になっていくのでしょうか。
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