2018年9月11日火曜日

レーニン「食糧税について」(レーニン全集第32巻、1921年4月21日)より思う。レーニンは異なる意見を持つ人間の投獄、外国追放を主張した。

「当世流行のクロンシュタット式無党派という服装に着替えたメンシェヴィキやエス・エルにほかならない『無党派』分子は、用心のために監獄に入れておくか、あるいは純粋民主主義のあらゆる魅力を自由に味わわせるために、チェルノフやミリュコフやグルジアのメンシェヴイキと自由に意見を交換させるために、ベルリンのマルトフのところへ派遣することである。1921年4月21日」(レーニン全集第32巻、p394-395より抜粋)。


「用心のために監獄へ入れておけ」とは、ずいぶん物騒な主張です。

あいつはメンシェヴイキ、またはエス・エルだとボリシェヴイキにみなされたら、用心のために監獄行きですから。

近年の不破哲三氏によれば、レーニンが最晩年に「新経済政策」を提起して「市場経済を通じて社会主義へ」という道に正面から取り組みました。

スターリンはレーニンが示したこの道を否定し、ソ連は社会主義と無縁になった旨、不破哲三氏は主張します。

不破哲三氏の「党綱領の理論上の突破点について」(日本共産党中央委員会出版局、平成17年刊行、p77-81)はそういう話です。

レーニンの論考「食糧税について」には、上のように他党派の投獄、海外追放の必要性が明記されています。

レーニンがいう「純粋民主主義」とは、メンシェヴイキやエス・エルら他党派にも出版の自由や宣伝の自由を認めるべきだ、という見解です。

ベルリンには純粋民主主義があるので、他党派や彼らに近い人々をベルリンに追放するか、監獄に入れろ、とレーニンは断言しました。

「無党派分子」に変装した者も監獄に入れよう、とレーニンは断じた


最晩年のレーニンによれば、メンシェヴィキとエス・エルは「無党派分子」に変装することを学び、暴動と白衛派を助けています。

われわれはメンシェヴイキとエス・エルとして公然の者も、「無党派分子」に変装した者もおなじように監獄に入れよう、とレーニンは明言しています。

この論文の最後でレーニンは上記のように、「無党派」分子の海外追放も主張しています。

最晩年のレーニンがこの結論に達した背景の一つは、クロンシュタットの反乱でした。

「商業の自由」「奴隷解放」「ボリシェヴイキのいないソヴェト」、ソヴェトの改選、「党の独裁からの解放」とクロンシュタットでの反乱者らは唱えました。

これらのスローガンが、最晩年のレーニンには衝撃だったのでしょう。

スターリンは最晩年のレーニンの遺志をつぎ、反対派の徹底弾圧を行いました。

レーニン「食糧税について」の他党派弾圧論を、石川康宏教授はどうみているのか


マルクス主義経済学者の林直道教授は著書「経済学 下 帝国主義の理論」(新日本新書昭和45年)でレーニン、スターリンが一国で社会主義を建設できるという道を示し、実際に社会主義ソ連を建設したと主張しました。

スターリンがレーニンの道を継承したという林直道教授の主張は、レーニンの論文「食糧税について」に依拠していると考えれば、十分首肯できます。

今日のマルクス主義経済学者は、最晩年のレーニンの著作「食糧税について」をどう考えているのでしょうか。

石川康宏神戸女学院大教授は、マルクス主義経済学の立場で沢山の著作を出されています。

石川康宏教授に、最晩年のレーニンによる他党派弾圧、追放論をどうお考えなのか伺ってみたいものです。

レーニンは投機と商業活動を危険視していた―スターリンはレーニンを継承―


レーニンは論文「食糧税について」で投機を「正しい商業」と区別できないと主張していました。

レーニンによれば、商業の自由は資本主義であり、資本主義は投機です。これに目をふさぐことは笑うべきことです。

レーニンは投機を危険視し、投機に対して国家的な統制、監督、記帳を回避することを全て罰すべきものと宣言することを主張しています。

最晩年のレーニンがこれだけ投機、商業活動の危険性を訴えていたのです。

企業活動は、多かれ少なかれ投機です。市場経済なら、生産した財やサービスが販売されるという保証は全くありません。

企業に資金を提供する家計や銀行も、投機をしていると言えます。債券や株式の購入は投機であり、不労所得の取得です。

銀行は家計から預金を受け入れて、主としてそれを原資に、企業に貸出をします。

銀行の利益の主な源泉は、貸出金利と預金金利の差です。これも投機といえばそうですから、レーニンは全ての銀行の国有化を主張することになります。

勿論、スターリンはこれを継承しました。

新経済政策により大もうけした商人や農民が続出したこの数年後に、スターリンが新経済政策を廃止して「階級としての富農の撲滅」を掲げても、レーニンを知る同時代のボリシェヴイキ幹部らは違和感はなかったことでしょう。

持続的経済成長のためには金融資産市場と金融仲介機関の安定的運営が必要不可欠


経済が成長するときには社会資本(港、道路、発電所等)と実物資本(工場や機械、設備、建物)が増えるので政府や民間企業により投資が活発になされます。

政府、民間企業は投資のための資金を、国債や社債、株式発行または銀行からの借り入れにより調達します(外部金融)。

自己資金で調達する場合もあります(内部金融)。

外部金融は、家計による社債、国債、株式購入という直接金融と、銀行、保険会社など金融仲介機関による貸出、間接金融に区分できます。

銀行や保険会社の原資は、家計による預金や掛け金です。経済成長のためには、金融資産市場、金融仲介機関が安定的に運営されねばなりません。

これにより投資資金が潤沢に供給され、経済が持続的に成長するのですが、金融資産市場と金融仲介機関の安定的運営は実に難しい。

金融資産取引は所詮、投機ですから。レーニンはこれを看破していたともいえる。

しかし、大金持ちの投機により企業の競争力が向上できれば、その企業で働く労働者の雇用も保証されうる。

企業経営者が内部留保を、適切な固定資産や金融資産で保有していれば、その企業で働く労働者にとって悪い話ではない。

このあたりでは、石川康宏教授らマルクス主義経済学の方々とも違いはないように思えるのですが、どうでしょうか。















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