2013年7月20日土曜日

お前は自分の弱さをそんな美しい言葉で誤魔化してはいけない―遠藤周作「沈黙」(新潮文庫)より思う―

穴で吊るされている百姓達を救うか、転ぶか―魂のためされるとき―


気軽に行った選択が人生に大きな意味を持つこともありますが、重大な選択であることを自覚して決断を下す場合もありますね。

遠藤周作「沈黙」(新潮文庫、p264-265)にある、ロドリゴ司祭がフェレイラに迫られて行った苦渋の選択はそれでしょう。

教会から「裏切り者」とみなされているフェレイラがロドリゴ司祭に問いかける部分が私には大変印象的なので、書き留めておきます。

齢を重ねれば誰しも、自分の魂の試されるときとも言うべきものに何度か直面するのでしょう。

そんなとき、自分の美しい言葉で自分を誤魔化してはいけない、とは遠藤の私たちに対する問いかけなのでしょう。

お前がこれをできないのは教会の汚点になるのが怖しいからだ、と私たちも時折、自分に問いかけるべきなのでしょう。虚栄心とのたたかい、ということでしょう。

人はいつの時代でも、虚栄心と虚無感に悩んできたのかもしれません。

英語版はSilence, translated by Wiliam Johnson, Taplinger Publishing Company出版です。この本のp169より抜粋しました。

韓国語版は침묵, 김윤성 옮김, 펴낸곳 바오로딸です。翻訳のp292より抜粋しました。


教会を裏切ることが怖しいからだ。It's because you dread to betray the Church.



「誤魔化してはならぬ」 フェレイラは静かに答えた。「お前は自分の弱さをそんな美しい言葉で誤魔化してはいけない」

「私の弱さ」 司祭は首をふったが自信がなかった。「そうじゃない。私はあの人たちの救いを信じていたからだ」

「お前は彼等より自分が大事なのだろう。少なくとも自分の救いが大切なのだろう。お前が転ぶと言えばあの人たちは穴から引き揚げられる。

苦しみから救われる。それなのにお前は転ぼうとはせぬ。お前は彼等のために教会を裏切ることが怖しいからだ。このわしのように教会の汚点となるのが怖しいからだ」


Don't deceive yourself! said Ferreira. Don't disguise your own weakness with those beautiful words.

My weakness? The priest shook his head; yet he had no self-confidence. What do you mean? It's because I believe in the salvation of these people...

You make yourself more important than them.  You are preoccupied with your own salvation. If you say that you will apostatize, those people will be taken out of the pit.

And you refuse to do so.

 It's because you dread to betray the Church. You dread to be the dregs of the Church, like me.


그대는 그들을 위해 교회를 배반하는 것이 무섭기 때문이다.



속여서는 안 된다. 그대는 자기의 약함을 그런 아름다운 말로 속여서는 안 된다.
 페레이라는 조용히 대답했다.

나의 약함, 그렇지 않소. 나는 저 사람들의 구원을 믿고 있기 때문이오.
신부는 고개를 저었지만 자신이 없었다.

그대는 그들보다 자기가 더 소중한 모양이지. 적어도 자기의 구언이 더 중요한 모양이지.
그대가 배교한다고 하면 저 사람들은 구덩이에서 끌어올려진다.

고통에서 구출된다. 그런데도 그대는 배교하려 하지 않는다.

그대는 그들을 위해 교회를 배반하는 것이 무섭기 때문이다. 나같이 교회의 오점이 되는 것이 두렵기 때문이다.


0 件のコメント:

コメントを投稿