「日本共産党は、朝鮮労働党の指導のもとに朝鮮人民が社会主義革命と社会主義建設でおさめた成果をたたえる。
朝鮮人民は、過去のたちおくれた植民地経済を一掃し、自立的民族経済を建設し、英雄的な奮闘によってアメリカ帝国主義の侵略戦争がもたらした困難な条件を克服し、国を発展した社会主義的な工業・農業国にかえた。
今日、朝鮮民主主義人民共和国では、政治、経済、文化生活のあらゆる領域で大きな高揚がおきている。
全人民が朝鮮労働党のまわりにかたく団結しており、人民の政治的道徳的統一は強まっている。」(両党共同声明より抜粋)。
最近の若い日本共産党員は、昔の日本共産党が朝鮮労働党と大変親密な関係を保持し、北朝鮮を礼賛していたことを知らないようです。
昔の「赤旗」を図書館などで探して読む方はいないのでしょう。
社会科学の研究者が日本共産党について何かの文章を書くのなら、昔の「赤旗」「前衛」をざっとでも読むべきなのは当然です。
私見では、その程度の知的努力もしないで日本共産党を支持すると言明している研究者、知識人は少なくない。
この声明は、ベトナム戦争の真っ最中、そして文化大革命直前に締結されました。
日本と朝鮮の共産主義運動の歴史に関心がある知識人、運動家にとって必須の文献です。
両党会談に参加した朝鮮労働党の大幹部二人は、この後追放された(不破哲三「北朝鮮覇権主義への反撃」より)新日本出版社刊行、p20より)
会談に参加したのは日本共産党は宮本顕治、岡正芳、蔵原惟人、米原いたる(米原万里さんのお父さん)、砂間一義、上田耕一郎、不破哲三、工藤晃(敬称略)。
朝鮮労働党は金日成、崔庸健、朴金チョル、李孝淳、金光ヒョップ、朴容国らです。
朴金チョル、李孝淳は朝鮮労働党の副委員長で、「甲山派」と呼ばれ、金日成とは別に日本帝国主義と戦った、ということで知られていました。
不破哲三氏によれば、この二人は会談翌年の5月に開かれた朝鮮労働党の中央委員会で追放されました。
「党の唯一思想体系」がこの会議でうちたてられたそうです。不破氏によればこれは、金日成の個人崇拝体制の確立です。
甲山派の追放により、彼らと何らかの人間関係を持っていた方や、関連すると疑われた方がかなり追放処分になったようです。
私はこの話を、北朝鮮から日本に戻ってきた方から伺いました。
追放処分を、「山へ行く」と在日本朝鮮人総連合会関係者は表現します。
「ネズミも鳥も知らないうちに連れて行く」という表現もあります。
これは、国家安全保衛部が北朝鮮の住民を政治犯収容所に真夜中に連行することを表現しています。
北朝鮮では「政治犯」に裁判はないので、収容所や山奥に連行された方はなぜ自分がそうされたのか、全くわかりません。
昔の日本共産党は日韓条約粉砕を主張していた
ところで、この時期の日本共産党は全力で、前年に結ばれた日韓条約粉砕を主張していました。両党共同声明は、日韓条約について次のように述べています。
「両党の代表団は、さきごろ佐藤内閣と南朝鮮の朴正熙一味との間に結ばれた「日韓条約」は不法、無効のものであり、粉砕されなければならないと強く主張する。
『日韓条約』は日朝両国人民の利益に反し、アジアと世界の平和をおびやかすものである。」
日本共産党と朝鮮労働党の共同声明によれば、日韓条約は日米安保条約、韓米相互防衛条約などと結びついて、米帝国主義、佐藤内閣、および南朝鮮と台湾の傀儡一味による東北アジア軍事同盟の結成を意味しています。
日韓条約は、日本軍国主義者による南朝鮮再侵略の道を切り開くそうです。
今の日本共産党の表現を借りれば日韓条約こそ戦争条約、という話になっています。
京都の渡辺輝人弁護士は、最近韓国の最高裁が徴用工に対して出した判決の件で、日本政府をtwitterで強く批判しています。
渡辺輝人弁護士は、この問題で志位和夫氏が出した見解を高く評価しています。
日韓条約粉砕を長年主張してきた政党が、日韓条約の存在を前提にして元徴用工の対日請求権について論じるのは、おかしくないでしょうか。
渡辺輝人弁護士は昔の日本共産党と朝鮮労働党が共同声明で日韓条約粉砕を主張していたことを御存知なのでしょうか。
ある問題について日本共産党の言論活動や政策を論じるなら、その問題についての同党のこれまでの言論活動や政策を踏まえて論じるべきではないでしょうか。
昭和63年9月の論文で日本共産党は、韓国を南朝鮮と呼ぶべきと主張
「赤旗」を調べると、日本共産党が日韓条約に対する見解を変更したのは昭和63年9月9日の論考「朝鮮問題についての日本共産党中央委員会常任幹部会の見解」です。
この論考で、日本共産党は韓国に政権が存在している事を認め、日韓条約粉砕論から改正論に路線転換しました。
この論文は日韓条約にある、韓国が朝鮮半島の唯一の合法政府である、という条項の改正を主張しました。
それまで粉砕論を主張してきた事をどう考えているのかについては、何も説明していません。
この論文は、韓国を南朝鮮と呼ぶことを主張しています。南朝鮮という呼び方を、韓国人は嫌がります。朝鮮人という呼び方も同様です。韓国人ですから。
日本共産党が韓国と表現するのは、もう少し後です。
レーニン主義なら、日韓条約は日本独占資本が南朝鮮人民を搾取、抑圧するために締結されたとみる
この論文は、日韓条約を東北アジア軍事同盟、南朝鮮再侵略を招くなどと宣伝していた事について沈黙しています。
日韓条約が戦争を招くという話は、レーニン主義、帝国主義論の見地から導かれて当然です。
日韓条約が締結されれば、日本企業は賃金の安い韓国に工場を作りますから。これは独占資本の帝国主義的進出なのです。
南朝鮮人民を搾取、抑圧するために日本独占資本は、米国の傀儡と手を握る。自民党佐藤内閣は、この独占資本の意を受けて日韓条約を締結した。こんな話です。
林直道教授はマルクス主義経済学者として数々の著作を著した方です。
林直道教授(大阪市立大)の「経済学下 帝国主義の理論」(新日本新書昭和45年刊行、p123)によれば、日韓条約による朴政権への10億ドルの援助は米国と朴政権による朝鮮民主主義人民共和国への侵略と南朝鮮南部の革命運動弾圧を助ける資金です。
現実はどうあれ、レーニンの帝国主義論の見地なら、この結論は当然導かれます。
実際の韓国政府は日韓条約で得た資金を社会資本建設に費消しました。韓国への侵略を策していたのは、金日成と朝鮮労働党です。
朝鮮戦争は朝鮮労働党の南進により始まったのです。
石川康宏教授(神戸女学院大)は日本共産党によるソ連、中国、北朝鮮礼賛の歴史をどう見ているのか
石川康宏教授は、「若者よ、マルクスを読もう」(かもがわ出版)など沢山の著作を出されています。
石川康宏教授の「若者よ、マルクスを読もうⅢ」の第三部では、日本共産党が自主独立の党であり、世界の共産主義運動では独自の存在だったと高く評価されています。
石川康宏教授は、日本共産党によるソ連や中国、北朝鮮礼賛の史実をどうお考えなのでしょうか。
昭和36年7月の第八回大会での宮本顕治報告は、ソ連礼賛そのものです。
石川康宏教授は、日韓条約を林直道教授の著作のように評価されているのでしょうか。
レーニンの「帝国主義論」ならこのような結論が出て当然と思えてなりません。
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