2016年5月7日土曜日

中国は北朝鮮に「集団的自衛権」を適用してきたー朝鮮戦争参戦は大韓民国への侵略ー

「朝鮮戦争の三年間、戦場での実際の主役はアメリカ軍と中国軍だった。国連軍が仁川上陸に成功し、北上を開始した後の1950年10月中旬、半島北部における残留人民軍のまとまった部隊はわずか四個師団未満にすぎなかった。

十三万の国連軍精鋭部隊の北上を阻んだのは、十月下旬に参戦した三十万近くの中国人民義勇軍だった」(朱建栄「毛沢東の朝鮮戦争」岩波書店1991年、p2より抜粋)。


何かに触発され、心中で描いてきた「現実」と実際の史実、現実が異なっているらしいと気づくことがあります。

そのとき、様々な文献や資料を調べて「現実」が虚偽であったことを認めるのは難しい。それまでの自分の主張を変えなければならないからです。

「あの人は今までこう言ってきたのに、今は違うことを言っている。変な人だ」という類の悪評判がたつことを覚悟せねばならない。現実を認識するためには、時には勇気と覚悟が必要なのです。

毛沢東の「新中国」とやらによる侵略戦争について、左翼人士が文献や資料を調べて検討するのは極めて困難です。

日本共産党の参議院議員だった聴濤弘氏は、中国を社会主義国とみなすことに疑問を持っているようですが、「新中国」が侵略戦争を行ったことまでは認識できないようです。

中国の参戦兵力は西側の推定によれば三年間でのべ500万(前掲書p2)


朝鮮戦争は昭和25年6月25日に始まり、昭和28年7月までおよそ3年間続きました。朝鮮戦争は韓国軍が北進したことにより始まったという虚偽宣伝が長年常識になっていました。

いくら何でもこれは無理があるので、朝鮮戦争が北朝鮮の南進により始まったことを、今では日本共産党すら認めています。在日本朝鮮人総連合会の皆さんはこれを認めていませんが。

朝鮮戦争は金日成と朝鮮人民軍による大韓民国への侵略でした。従って、「抗米援朝」を掲げて行われた中国人民義勇軍の参戦は、中国による大韓民国への侵略戦争です。

歴史にもしも、という問いかけは禁物なのかもしれませんが、中国人民義勇軍が参戦しなければとっくの昔に北朝鮮は崩壊し、大韓民国による朝鮮半島の統一が実現していたことでしょう。

「戦争法反対」とやらを叫ぶ左翼人士や韓国左翼にとって、中国による大韓民国への侵略はどうしても認めたくない史実の一つです。

左翼にとって、アジアで侵略戦争を行ったのは日本だけのはずですから。韓国軍のベトナム戦争参戦(侵略)も日本の左翼は内緒にしておきたいのです。

「八路軍」の後継者人民解放軍が大韓民国を侵略した


正義の権化たるべき毛沢東の八路軍の流れにあるはずの中国人民解放軍が、大韓民国を侵略し韓国軍兵士や市民を殺害したのです。

山本薩夫の映画「戦争と人間」は金日成や八路軍を解放者として美化しました。左翼人士はいまだにこの映画のイメージで中国共産党や朝鮮労働党を把握しています。

金日成は満州で山賊行為をやったから、日本軍に討伐されソ連領に逃げました。

中国共産党の主力は延安に逃げました。国民党と共産党の「合作」により八路軍は国民党の軍の一つでした。

国民党が腐敗しきっていたから、軍が士気を失って弱体化し共産党の軍に敗北したのです。

「新中国」とやらは朝鮮半島やチベット、ウイグル、モンゴル人の居住地をも自分の勢力圏とみなす伝統的な覇権国家でした。

中国共産党は農民反乱を起こす奇怪な「宗教」団体だった


中国では王朝末期になると奇妙な「宗教」の影響を受けた農民反乱が頻発し王朝の崩壊を促進してきました。

毛沢東の中国共産党は共産主義という「科学」の装いをこらした奇怪な「宗教」運動団体だったのです。

共産主義者は農村の富裕層や僧侶に「反動地主」「反動勢力」とレッテルを貼り虐殺することを「封建制度からの解放」と正当化します。

寺院が田畑を保有し小作人を使っていれば僧侶は「地主」ですから、殺せという話になります。

共産主義思想から見れば韓国政府は米帝国主義の手先で傀儡ですから、韓国兵士を虐殺することが人民の解放なのです。これは今の北朝鮮の「革命理論」でもあります。

中国は鴨緑江の向かい側まで韓米が制圧することを許さない―韓国による朝鮮半島統一を中国は妨害してきた―


「新中国」による大韓民国への侵略は、「集団的自衛権」の適用ともいえます。

朱建栄前掲著(p207)によれば、西側帝国主義敵対勢力が鴨緑江の向かい側まで制圧することは容認するわけには行かない、という認識では毛沢東は一貫していました。

その後の中国共産党最高指導部もこの視点を継承しています。中朝友好協力相互援助条約(昭和36年7月11日締結)の第二条は次です。

「両締約国は、締約相互のどちらか一方に対するいかなる国家からの侵略に対しても、それを防止する全ての措置を共同でとる義務を負う。

一方の締約国に対し、一国もしくはいくつかの国から連合して武力侵攻を受けて戦争状態に陥ったとき、他方の締約国は全力を挙げて直ちに軍事的その他の援助を提供する」。

この条項は、左翼人士が戦争法と口やかましく叫ぶ「集団的自衛権」そのものです。

左翼人士は中朝間の「集団的自衛権」の存在について沈黙していますが、これは都合が悪い史実を隠ぺいして保身をはかっているだけです。

この条約は今日でも残っていますが、そうだからと言って北朝鮮と韓国・米国が再び戦争状態になったとき中国が北朝鮮を守るために自動参戦するとは考えにくい。

中国朝鮮族と朝鮮人民軍の「外貨稼ぎ」


西側帝国主義敵対勢力が鴨緑江の向かい側まで制圧することは許せない、という視点から、中国人民解放軍が朝鮮人民軍に攻撃を加え、核やミサイル基地を制圧する可能性を指摘しておきたい。

生物・化学兵器の所在まで突き止めるのは現状では困難ですが、誰かが朝鮮人民軍の高位幹部を抱き込めば不可能ではない。

中国朝鮮族の中にそういう芸当ができる人物がいてもおかしくない。朝鮮人民軍は「外貨稼ぎ」をやっています。

北朝鮮の鉱産物を買う朝鮮族が朝鮮人民軍内に人脈を作ることは不可能ではない。平壌の中国大使館に朝鮮族が外交官として来ているかもしれません。

金正日の長男金正男が中国国内を活動の拠点としていることも気になります。

中国は金正男をいつの日か使おうとしている―金正男なら「改革・開放」を実行できる


中国共産党指導部はいざというとき、金正男を使おうとしているのではないでしょうか。張成澤に近かった金正男なら、中国式の「改革・開放」を実施しうる。

金正男なら、母親が元在日朝鮮人の金正恩より「正統性」があると言える。金正男なら、幼少時に祖父金日成と会って写した写真が残っていてもおかしくない。

金正恩には祖父金日成と一緒に写した写真がないようです。母親の高英姫が元在日朝鮮人ですから、金正日は高英姫と子供たちの存在を父の金日成に言えなかったらしい。

「正統性」とやらと母親の出身地が関係するという話は、私たち日本人には理解できにくいのですが、脱北者にそう主張する方が少なくない。

金正恩が「21世紀の偉大な太陽」などと本気で信じている人が北朝鮮内部にどれだけいるでしょうか。

朝鮮労働党組織指導部や国家安全保衛部所属の大幹部が大真面目にそう信じているはずがない。金正恩に対する彼らの大げさな挙動は専ら保身のためです。

張成澤のようになりたくない、その一心でしょう。真黒な内心を抱いていてもおかしくない。

金正恩や妹金予正、朝鮮労働党組織指導部や国家安全保衛部最高幹部の動向、内心に関する情報を、中国共産党は可能な限り得ようとしているでしょう。

張成澤が中国共産党にそれらを何らかの経路で提供していた可能性があります。

中国をいつまでたっても訪問できない金正恩は中国共産党最高幹部の面子をつぶしています。

核実験を繰り替えす金正恩が中国を訪問したら「急病」など出鱈目な理由で抑留されてしまうかもしれない。そのとき北朝鮮は何もできない。

聴濤弘氏(元日本共産党参議院議員)はなぜ北朝鮮の人権問題について発言できないのか


中国と北朝鮮の関係はかつて「唇歯の関係」と呼ばれましたが、国際政治に永遠の味方はないのです。

現時点では、中国が北朝鮮を勢力下におくために金正恩排除の手立てを考えていてもおかしくない。左翼人士には、中国共産党最高指導部のしたたかさが理解できないのでしょう。

在日本朝鮮人総連合会幹部の方々は、金正恩が中国を訪問できない理由をどう考えているのでしょうか。この件について一切思考と議論ができない方が多いのかもしれません。

日本共産党参議院議員でソ連問題の専門家聴濤弘氏は、ソ連と北朝鮮の間にも同様の条約があったことを知っているはずです。こちらにも、「集団的自衛権」条項がありました。

聴濤弘氏の最近の著作は、北朝鮮について「赤旗」紙面程度のことしか述べていません。聴濤弘氏はソ連問題の専門家だったのですから、北朝鮮について調べる能力はあるはずです。

旧ソ連と同様に、北朝鮮にも「政治犯収容所」が存在し政治犯やその家族が囚人労働を強制されています。聴濤弘氏なら、文献で調べればそれが真実であることはすぐにわかるはずです。

北朝鮮問題に深入りすると、兵本達吉氏(元日本共産党国会議員秘書)や萩原遼氏(元「赤旗」記者)のように「反党分子」のような扱いにされてしまうことを恐れているのでしょうか。

現実を認識するためには、時には勇気と覚悟が必要です。

聴濤弘氏は中国、北朝鮮という共産主義国による人権抑圧について今後も沈黙を続けるのでしょうか。聴濤弘氏の今後の選択に注目しましょう。







2 件のコメント:

  1. 初めてコメントさせていただきます。私はかねてより韓国に興味がありブログを拝見させていただきました。
    36年ぶりの朝鮮労働党大会が行われ中国はほとんど北朝鮮を無視している状態。この記事で拝見し、その所以がわかったように思いました。
    もし、中国人民解放軍が朝鮮戦争に加担しなかったら、半島の分断は早期に解決していたかもしれないと知り慚愧に耐えません。今後も様々にご教示ください。勉強させていただきたいと思います。

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    1. 拙文を見て下さり、有難うございます。励みになります。歴史にもしも、は禁物でしょうが、中国が朝鮮戦争に参戦しなければ北朝鮮はとうの昔に消滅していました。中国こそ、実は大韓民国にとって不倶戴天の敵なのかもしれません。殆どの韓国人にはそんな発想はなさそうです。
      中国と貿易をして儲かっているから良い、という調子ですね。今でも、中国は北朝鮮の現体制が崩壊しても傀儡政権を作り、韓国による統一を妨害するでしょう。最も、韓国人はそれでよしとするのかもしれません。北朝鮮の人々の生活費用を即座に負担することだけは絶対嫌だと考えている方が圧倒的多数でしょうから。中国ないしは日本がそれを負担するべきだとでも思っているのでしょうか。

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