51年8月、日本問題で長く沈黙を守っていたコミンフォルム機関紙が再び日本共産党を取り上げ、徳田・野坂派に軍配を上げたのです。この再度の介入により、「統一」運動の側が組織を解体して、徳田・野坂派の指導下にある組織に合体することになりました。(同書p25-26より抜粋)。
共産主義者は、都合の悪い史実を隠ぺいし、自らを正当化する「歴史」を宣伝します。
虚偽宣伝をやらなければ、共産党、労働党への批判に下部党員や支援者、国民が動揺し、共産党と労働党が維持できなくなってしまうからです。
下部党員の中には共産党の虚偽宣伝文献を熱心に読み続け、矛盾に気づく人もいます。しかし大方の下部党員は見て見ぬふりをし、最高指導者に追随して虚偽宣伝をします。
金正日は中国共産党員だった金日成が日本軍に討伐されて旧ソ連領(ハバロフスク近郊)に逃亡してしまったこと、金日成が朝鮮戦争を始めたことを隠ぺいしてきました。
在日本朝鮮人総連合会の皆さんは金日成、金正日に隷属し虚偽宣伝をしてきました。
在日本朝鮮人総連合会常任委員会が朝鮮労働党の大会にあてた祝賀文によれば、在日本朝鮮人総連合会は金日成民族、金正日朝鮮、金正恩天下第一強国の一員だそうです。
宮本顕治氏はマルクス・レーニン・スターリン主義を信奉していた
宮本顕治氏は「マルクス・レーニン・スターリン主義」なるものを信奉し日本革命とやらの「平和的発展の可能性」を提起することは根本的な誤りと断言しました。
本ブログはこれを何度も指摘しています。この史実を若い共産党員は殆ど知らないようです。吉良よし子議員はまだご存じないかもしれません。
これは、宮本顕治氏が「前衛」(49号、1950年5月)に発表した論文「共産党・労働者党情報局の『論評』の積極的意義」に明記されています。
この論文は「日本共産党50年問題資料集(1)」に掲載されていますから、御存知ない方は是非そちらを参照して頂きたい。
虚偽宣伝は共産党の十八番ですが、先代の最高指導者が行ってきた虚偽宣伝と辻褄があわなくなってしまうことがあります。
不破哲三氏も「時代の証言」で様々な虚偽宣伝をしていますが、宮本顕治氏のそれと矛盾してしまう点もあります。以下、気づいたことを少し指摘しておきます。
不破哲三氏は1930年(昭和5年)1月26日生まれですから、1951年(昭和26年)8月には21歳で日本共産党の東京大学細胞の一員でした。
この少し前の1950年(昭和25年)6月、日本共産党は分裂しました。不破氏は「全国統一委員会」という、宮本顕治氏らの側で活動していたそうです。
共産党の文献をあまり読んだことがない方は「細胞」という語の意味をよくわからないかもしれません。共産党員は全体で一人のように一体化し革命運動に励まねばならないという発想です。
金正日の「革命的首領観」も同様の「理論」です。首領が脳髄で人民は手足だそうです。
宮本顕治氏、若き不破哲三氏は「武力闘争の理論派」だった
閑話休題、上述の記述「51年8月に分裂していた日本共産党の一方の側が、コミンフォルムから間違っていると断定され徳田・野坂派の側に合体した」に注目しましょう。
不破氏のこの記述と、宮本顕治論文「共産党・労働者党情報局云々」より、当時の日本共産党のほぼ全員が一致して武装闘争を支持していたと言えます。
全党員が武装闘争に参加したわけではないでしょうが、武装闘争に反対した方は稀だった。武装闘争の実態については、兵本達吉「日本共産党の戦後秘史」(新潮文庫)第3,4章が詳しい。
その後の宮本顕治氏らが主張してきたように、徳田球一氏や野坂参三氏らの側だけが武装闘争をやったのではありません。
宮本顕治氏は武装闘争の必要性を「理論化」して「前衛」掲載論文にしたのですから。
「時代の証言」での不破氏の表現を借りれば、宮本顕治氏の側にいた御自分は「武力闘争の理論派」だったことになります。
兵本達吉氏の「日本共産党戦後秘史」(新潮文庫)によれば、「武装闘争」が行われたのは、1951年(昭和26年)10月から朝鮮戦争の休戦(昭和28年7月)までです。
ソ連と中国の命令により日本共産党が行った武装闘争は、朝鮮戦争での米軍の後方かく乱が主任務でしたから、朝鮮戦争が休戦になれば不要です。
不破哲三氏は日本共産党がソ連と中国の忠実なる手下だった史実を隠ぺいしています。
同志スターリンに指導され、マルクス・レーニン・スターリン主義で完全に武装されているソ同盟共産党(宮本顕治論文より抜粋)
第二に、「時代の証言」で不破哲三氏はかつての日本共産党と御自分がスターリンを礼賛していたことを隠ぺいしています。
宮本顕治氏の「共産党・労働者党情報局云々」論文が発表された当時、不破哲三氏は日本共産党東京大学細胞の一員としてこの論文を熟読したはずです。
宮本顕治氏はこの論文で次のように述べています。
「われわれはとくに、同志スターリンに指導され、マルクス・レーニン・スターリン主義で完全に武装されているソ同盟共産党が、共産党情報局の加盟者であることを、銘記しておく必要がある。」
「われわれは、党を、マルクス・レーニン・スターリン主義の原則とプロレタリア国際主義にもとずき、政治的・思想的・組織的に強めなければならぬ。」
当時の共産党員でスターリンに忠誠を誓っていたのは宮本顕治氏だけではありません。徳田球一氏や野坂参三氏も当然そうだったでしょう。
不破氏によれば、野坂参三氏は昭和21年に中国から日本に戻る際、秘密裏にモスクワに呼ばれ赤軍情報部に直結する工作者となっていました。
これは史実でしょうが、共産主義者がソ連赤軍情報部に直結するのは当たり前のことです。それは日本共産党の当時の規約に全く反していない。
宮本顕治氏は赤軍の最高指導者スターリンへの忠誠を論文で繰り返し表明し、革命=武装闘争唯一論を主張しているではありませんか。
ソ連は社会主義社会の建設を完了し、共産主義社会への移行をめざして巨大な前進を開始している
勿論若き不破哲三氏も、スターリンとソ連の信奉者でした。
「前衛」1959年5月号に掲載された「現代トロツキズム批判」という若き不破氏の論文があります。
若き不破氏はソ連が社会主義社会の建設を完了し、帝国主義者のいかなる攻撃をも撃退する力をもちながら共産主義社会への移行をめざして巨大な前進を開始していると断言しています。
はじめに勝利した社会主義国家の存立をまもりぬき、社会主義を建設し、そのあらゆる力量を強化することは、「世界革命の展開の基地」をまもることであり、それ自身世界革命を推進するためのもっとも重大な課題だそうです。
要は、ソ連とスターリン万歳!という話です。
この論文はフルシチョフによるスターリン批判(1956年)の後に書かれているのですが、スターリンの「革命理論」は変わらず信奉しています。
若き不破氏にとって、スターリンの偉大さはスターリンが何百万人殺害しようと揺るがないものだったのです。
この論文は上田耕一郎氏との共著「マルクス主義と現代イデオロギー 上」(大月書店)に掲載されています。現在の不破哲三氏がこの論文を忘却しているはずがない。
不破氏は「マルクス主義と現代修正主義」でも社会主義とは中央計画経済だという「理論」からユーゴスラビアの市場的社会主義論を徹底批判しています。
「時代の証言」には、自らがソ連とスターリン信奉者だった史実は一切出てきません。
毛沢東の「ソ連社会主義完全変質論」をソ連崩壊後日本共産党が主張しだした
ずっと後に不破氏は、「講座 日本共産党の綱領路線」(新日本出版社昭和59年刊行)という本を出します。
この本のp114で不破氏は、社会主義大国の「重大な誤り」とやらについて次のように述べています。
誤りを根拠に、「この国はもはや社会主義国ではなくなった」「その存在は世界史のうえでいかなる積極的な役割も果たさなくなった」という見方は「社会主義完全変質論」で非科学的である。
不破氏によれば、毛沢東と中国共産党は昭和41年の日本共産党との会談でソ連は社会主義でなくなりアメリカと同列の帝国主義国に変質したと主張しました。
「日本共産党の綱領路線」で不破氏は、中国共産党との論争の決着は明白だと述べていますが、ソ連崩壊後の日本共産党はソ連は社会主義でなかったと宣伝しているのです。
従って日本共産党は「社会主義完全変質論」に転向したことになります。
今日の不破氏から見れば、「社会主義完全変質論」をはやくから主張した毛沢東と中国共産党のほうが大局的に正しかったことになります。
「時代の証言」で不破氏は日本共産党のソ連評価が180度変わったことを一切触れていません。日本共産党が毛沢東に「論争」で負けたことになってしまいますから、隠蔽したいのでしょう。
宮本顕治氏の「日本革命の展望」を今日の下部党員は読まない
日本共産党元参議院議員の聴濤弘氏の著作を一つ一つ読んでいけば、日本共産党のソ連評価の変遷がわかります。
聴濤弘氏は宮本顕治氏と不破哲三氏に隷属して保身をはかる生き方を選択しました。不破氏が中国共産党による人権抑圧批判をやめたことを、聴濤弘氏なら十分承知しているはずです。
不破哲三氏も、宮本顕治氏に長年隷属して保身をはかってきました。
共産主義者として生きるなら、最高指導者への隷属を喜びとする人間にならねばいけないのですが、最高指導者が変われば前の最高指導者への隷属は不要です。
宮本顕治氏が元気だったころ、下部党員が「聖典」にようにあがめていた「日本革命の展望」は今日の下部党員には、殆ど見向きもされていません。
不破氏の数々の著作が、今後そうならないという保証はどこにもないことを指摘しておきます。
すでに「マルクス主義と現代イデオロギー」「マルクス主義と現代修正主義」(大月書店刊行)を読んでいる下部党員は稀になっているのですから。
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