金炳植在日本朝鮮人総連合会第一副議長(1972年4月当時)の号令により、朝鮮大学校の学生が「社会主義建設の先鋒隊」(同書p48-49)-
長年追い続けてきた自分の夢が全くの幻でしかなかったということを認めるのは極めて難しいのでしょう。自分の人生を根源的に否定することにつながりかねませんから。
「兄 かぞくのくに」(小学館文庫)を読んで、監督のお父さん(大阪府の在日本朝鮮人総連合会幹部)とひと昔前の日本共産党員の姿が重なってくるような思いにとらわれました。
在日本朝鮮人総連合会の皆さんにとって、祖国とは金日成と金正日だったのでしょうか。北朝鮮と在日本朝鮮人総連合会のような関係は、共産主義運動の歴史ではさほど珍しくありません。
「クレムリンの長女」と呼ばれたフランス共産党の党員、あるい一昔前の日本共産党員は旧ソ連に心酔し、ソ連を礼賛しました。
フランス共産党は1979年暮れのソ連によるアフガニスタン侵攻を支持しました。当時の左翼の視点から見てもこれはおかしかったでしょうが、熱烈なソ連信者にはそれが見えなかったのでしょう。
フランス共産党員の中には、ソ連こそ人類の理想郷、労働者の祖国だと長年思い込んでいた方がいくらでもいたのでしょう。
革命により搾取をなくし、貧困から労働者階級を解放するといった美辞麗句の夢から共産党員が覚めるのは難しかったのでしょう。
今でも、吉良よしこ参議院議員ら若い共産党員は日本革命がありうると思っているのでしょうね。
「南朝鮮革命」「主体革命偉業」は金日成、金正日の贅沢三昧生活を維持、発展させるための「運動」
在日本朝鮮人総連合会の場合、日本帝国主義と戦った金日成将軍が必ず朝鮮半島の南半部から米軍と傀儡を追い出し、祖国を統一して社会主義の理想を朝鮮半島全土に実現して下さるだろうという話を信じ込んでしまったのでしょう。
朝鮮労働党が宣伝する「南朝鮮革命」「主体革命偉業」とは、韓国を消滅させ金日成、金正日の奢侈生活を存続させる策動なのですが、なかなかわかりにくい。
韓国政府がなくなれば、韓国の資産を金日成、金正日の思うようにできます。朝鮮人民軍が韓国に進駐し暴虐の限りを尽くすでしょうから。
「民族」「統一」「祖国への忠誠」などという美辞麗句の本音は、「民族の太陽」金日成、金正日に奢侈生活をさせろと言うだけの話です。朝鮮民族とは金日成民族だと北朝鮮は宣伝しています。
この宣伝に心酔し、身も心も捧げるようになってしまうとそこから抜け出るのは難しい。
金日成、金正日に全てを献上することが最高の美徳と思い込んでいる人々が、一種の小世界を形成してしまい、そこに所属し地位を得ることに大いなる満足感を得るようになってしまいます。
三人の兄が帰国―長兄は金日成への「人間プレゼント」
ヤン・ヨンヒ監督には三人の兄がいました。1971年秋に次男(当時、高校一年生)と三男(当時、中学三年生)が北朝鮮に渡りました。
71年秋なら、先に帰国した在日朝鮮人たちから生活の窮状を訴える手紙がかなり在日朝鮮人たちに届いていたはずですから、北朝鮮が「地上の楽園」でないことはわかっていたはずです。
それでも長兄が帰国したのは、父親が「民族反逆者」となってしまうことを避けるためだったのでしょうか。
「兄 かぞくのくに」(p47)によれば、在日本朝鮮人総連合会幹部の息子が自分たちから「帰国したい」と言い出した以上、朝鮮学校など周囲との関係から「帰国をやめる」などと言うことは無理だったそうです。
ジェットコースターを途中で降りたいというようなものだとヤン・ヨンヒ監督は述懐しています(p47)。当時7歳くらいだったヤン・ヨンヒ監督に北朝鮮の実情などわかるはずもありません。
二人の兄が帰国して少し後、朝鮮大学校一年生だった長男が北朝鮮への帰国団に指名されました(同書p48)。1972年4月15日の金日成の生誕六十周年記念「人間プレゼント」だったとあります(同書p48)。
朝鮮大学校の学生200人を「社会主義建設の先鋒隊」として金日成にプレゼントするというプロジェクトでした(同書p49)。号令をかけたのは金炳植在日本朝鮮人総連合会第一副議長でした(同書p48)。200人のうち半分近くが辞退しました。
残り半分を確保するための決死の思想闘争が繰り広げられたとあります(同書p49)。
御両親は東京の在日本朝鮮人総連合会本部に「長男だけは勘弁して下さい」と重ねて懇願したそうです(p50)が、受け入れられなかったのでしょう。
音楽家になることを志していた長男も帰国し、ヤン・ヨンヒ監督はあたかも一人っ子のようになってしまいました。
誰が金日成への「人間プレゼント」を発案したのか
金日成への「人間プレゼント」という方針ですが、これを発案したのは金炳植だったのでしょうか。金炳植は平壌の朝鮮労働党幹部、対南工作機関の誰かから指導されていたはずです。
平壌から、「もっと帰国させるように」という類の指令が出ていた可能性もあります。
金炳植は「人間プレゼント」の人選に際して、自分に従順でない幹部と、経済的に成功している商工人の子供たちを選ぶよう指示したそうです(同書p51)。
子供を「人質」にとってしまえば商工人は寄付を惜しまないだろうという打算でした(同書p51)。
ソ連に憧れて共産党員となり、スターリン統治下のソ連に自ら入国した人たちの中には、「スパイ」などのレッテルを貼られて処刑されてしまった人がいました(加藤哲郎「モスクワで粛清された日本人」青木書店1994年)。
これは北朝鮮に憧れて渡りその後政治犯収容所に連行されて亡くなった元在日朝鮮人(帰国者)と似ていますが、ソ連は日本に残っている親戚から金を得ようとはしなかった。
当時のソ連が、外貨不足だったわけではありません。またスターリンはそれほどの奢侈生活をしていませんでしたから、外国の物資をむやみに高位幹部に配布するようなことはしなかった。
スターリンの腹心モロトフらが国産の車を忠誠心のある人物に優先して配布した程度です。
Valery Lazarev and Paul Gregory, Commissars and cars: A case study in the political economy of dictatorship, Journal of Comparative Economics 31 (2003), pp1-19がモロトフらによる国産車の配分決定を当時の文書に依拠して調べています。
金正日による「贈り物政治」と日本人拉致
金正日による「贈り物政治」と彼らの奢侈生活を継続するためには、外国の物資とそれを購入するための巨額の外貨が毎年必要です。
朝鮮労働党の対南工作機関は、在日本朝鮮人総連合会に命じて全力で献金を集めさせるしかない。金が十分集まらなければ、人を送れ、という程度の発想です。
実に悔しいことですが、朝鮮労働党は日本人拉致も一種の「人間プレゼント」あるいは「人間調達」として行ってきたのです。
17世紀や18世紀に欧米諸国はアフリカで人間狩りをし、新大陸に連行して奴隷として酷使しました。現代日本では日本人が朝鮮労働党の工作員により「奴隷狩り」されてしまったのです。
北朝鮮からやってきた工作員だけでなく、在日本朝鮮人総連合会関係者も日本人拉致組織、対南工作のための組織に入っていました。
在日本朝鮮人総連合会の活動に長く参加している人なら、少人数で構成される工作員の組織がいくつもあることを聞いているはずです。
対南工作組織とは、大韓民国を消滅させるために策動する人々の組織です。
祖国とは金日成、金正日なのか―叔父を処刑した金正恩も祖国か―
いまだに在日本朝鮮人総連合会に参加している人は、徹底的な経済制裁の対象となってしかるべきです。日本政府は、北朝鮮を訪問した在日韓国・朝鮮人の再入国を拒否するべきです。
特に在日本朝鮮人総連合会関係者については、外国に行った場合再入国を拒否するべきです。中国や東南アジアで対南工作機関幹部と会うかもしれませんから。
日本政府がこれを実施すれば在日本朝鮮人総連合会は抗議するでしょうが、本音では「これでもう対南工作機関幹部と会わなくて済む。もう金を出さなくて良いだろう。良かった」などと思う方がいくらでもいるでしょう。
在日本朝鮮人総連合会の皆さんにとって、祖国とは金日成と金正日だったかもしれません。しかし、叔父を処刑した金正恩も祖国なのですか?
金正恩のお母さん、高英姫は済州島の出身でした。生野区に住んでいたそうですからヤン・ヨンヒ監督のお父さんなら、高英姫一家を知っていたかもしれません。
高英姫の妹は、亡命してしまったようです。金正日の子供たちは、スイス留学により自由な西側社会を知っています。
「全社会の金日成・金正日主義化」を侵食しているのは元在日朝鮮人と「結婚」し息子や娘をスイスに留学させた金正日だったのです。高英姫が正式の妻だったかどうかは不明です。
後継者のお母さんが、元在日朝鮮人では「白頭血統」になりえない。
朝鮮民族は血統を重視します。お母さんが元在日朝鮮人では、北朝鮮社会では「富士山血統」「ハルラ山血統」(済州島の山)になってしまうとある脱北者が韓国のテレビで語っていました。
「白頭血統」そのものが大嘘なのですが、自由な日本社会を知っている元在日朝鮮人は北朝鮮社会では嫌われることが多いのです。
「帰国者(元在日朝鮮人)の息子」に朝鮮労働党幹部は忠誠心を抱けない
「帰国者の息子」に本音で忠誠を誓う北朝鮮の人は稀でしょう。朝鮮労働党の命令とは違う選択肢があることを元在日朝鮮人は知っている。
元在日朝鮮人が体得している自由な雰囲気がたまらなく嫌な朝鮮労働党幹部は少なくないはずです。
元在日朝鮮人は、北朝鮮の人々を「原住民」「アパッチ」などと仲間間で呼んで嫌います。
「人間プレゼント」にされてしまったヤン・ヨンヒ監督の長兄は、心の病にかかってしまいまいした(同書p119-121)。
チュチェ思想で全社会を一色化しろ、絶対性と無条件性が何より大事だと言われても、自由な日本社会を知っている元在日朝鮮人には受け入れようもありません。
叔父を処刑した金正恩に忠誠心を抱いている元在日朝鮮人など、皆無ではないでしょうか。金正恩は表面では天高く持ち上げられていますが、実際は孤立しています。
長年追い続けてきた自分の夢が全くの幻でしかなかったことを、在日本朝鮮人総連合会関係者は認め、「南朝鮮革命」「主体革命偉業」策動の全貌を公にして日本人と韓国人に謝罪するべきです。
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