2014年12月31日水曜日

Romain Duris主演仏映画「スパニッシュ・アパートメント」(原題L'Auberge espagnole)を観ました。

卒業を来年に控えたフランス人大学生Xavierがバルセロナでの一年留学に...Parisに残った恋人Martine(Audrey Tatou)との将来は?


若さが画面に溢れているような映画です。夏目漱石の「三四郎」をふと思い出しました。

若者は自分が何者だかわかりません。自分が何者であるかを知るためにもがき苦しみ、徐々に自分を築いていくのでしょう。

昭和36年生まれの私は、この映画の主人公の親にあたる世代です。

よしっ、精一杯頑張って勉強してこいよ!という調子で、若きXavierの肩を叩いてやりたくなります。

欧州とは何か-栄えある欧州の復活のため、共同体を形成できるのか


この映画の主題のひとつは「欧州とは何か」でしょう。欧州諸国はローマ帝国とその後継者神聖ローマ帝国(Holly Roman Empire)による統治、そして基督教という共通の歴史を持っています。

従って欧州諸国はそれぞれのidentityを持ちつつも連合として共存共栄できるはずだ、というメッセージがあるのでしょう。

欧州が共同体となり、大きな市場を形成できればビジネスチャンスが生まれ、投資が喚起されて経済成長を実現出来るという発想です。

米国やアジアよりも大きな市場を欧州でつくろうという狙いでしょう

欧州の将来、栄光の欧州を復活させられるかどうかはこの映画に出てくるような若者たちにかかっていると製作者は言いたいのでしょう。

日本人から見れば欧州諸国の言語は似ている-「家なき子」レミの師匠ヴィタリスはイタリア人


日本人からみれば、欧州の言語は似ています。

フランス語とスペイン語、イタリア語、ルーマニア語のラテン系の言葉のうち、私が多少わかるのはフランス語だけですが、それぞれで書いた文章をよく見ると何となく、どんなことが書いてあるかぐらいは見当がつきます。

この映画でもスペイン語が何度もでてきますが、字幕を観れば何となく、こんな言葉が出てきたのだなとわかるときがあります。

フランス人ならイタリア語やスペイン語は多少学べばすぐ習得できるのでしょう。イタリアにもフランス語を流暢に話す人はいくらでもいることでしょう。

「家なき子」の主人公レミの師匠ヴィタリスと無二の親友マッチーヤはイタリア人ですが、フランス語を母国語のごとく話しました。

このような関係は、アジア諸国間には殆どない。中国語、韓国語(朝鮮語)、日本語はお互い相当勉強しなければ理解できない。東南アジアでも言語ではさほどの共通性はなさそうです。

「アジア」という概念は地理上のもので、文化的な共通性はあまりない。

欧州のインテリは、英語を皆勉強していますからそれぞれの癖のある英語ならすぐに話せるようになるのでしょう。

ラテン系語と英語、ドイツ語は大きく異なりますが、それでも日本語や韓国語と英語よりはずっと近い。Xavierの友人達は皆、英語を流暢に話しています。

青春の思い出を大切に-知識は銀、経験は金(Knowledge is silver, experience is gold)


Xavierはバルセロナでの一年留学で、実にたくさんのことを学んだのではないでしょうか。

バルセロナのアパートで共同賃借人となった英国、ドイツ、スペイン、ベルギー、イタリア、デンマークの友人たちとの交流を、Xavierも友人たちも生涯忘れないでしょう。

レスビアン(Lesbian)のベルギー人女性との交流も貴重です。青春の思い出を大切にして生きていくことが大事なのでしょう。

異なる文化、生活環境で生きてきた友人の生きざまを見聞することにより、Xavierにはフランス人としての自分が見えてきたのでしょう。

「一年で何を学んだの」ときく母親に対し、Xavierが「黙って、ママ」と無愛想にいうシーンがありますが、私は頼もしさを感じました。

Xavierは母親を深く愛しているからこそ、こんな喋り方ができるのです。自分の生き方をしっかり歩もうとする若い男は親に余計なことを言わないでしょうし、それでこそ精神が鍛えられるのです。

「母親に余計なことを言うべきでない」というのは日本人の感覚かもしれません。韓国男性なら、母親に何でも相談する方が多いかもしれません。型にはめて議論するのは良くないかもしれません。

この映画でも、「-人はこうだ」と型にはめるのはよくないとスペイン人が英国人に反発するシーンがあります。

大きすぎる市場経済の管理、運営は困難-経済のグローバル化の本質的な矛盾


神聖ローマ帝国の復活そのものはありえないでしょうが、こんな若者たちが沢山欧州にいるなら様々な困難を乗り越えられるのではないでしょうか。

しかし現実の欧州は若年層の失業問題がかなり深刻です。失業の原因の根元には、欧州統合があるのかもしれません。

大きすぎる市場経済を管理、運営することは困難ですから、市場統合が進めば各国経済は不安定化し格差ができてしまいかねないのです。

通貨を統合しても、財政は別ですから困窮した地域に支援ができにくい。米国内の地域格差であれば、困窮した地域への財政支援に米国民はさほど反対しませんが、欧州内ではそうならない。

金融資産の諸国間移動自由化により、成長性のある地域に富が偏在化し、その地域の富裕層はさらに恩恵をうけて豊かになります。

しかし富が入ってこない地域には投資が十分されませんから低成長になり貧困化してしまいます。イタリアとスペインの若者はその後どうなったでしょうか。

ドイツ人の若者は立身出世を遂げていそうです。頑張れ!と声をかけてやりたいですね。

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