「韓が拉致誘拐した田中実には身よりがない。幼いころ両親は離婚し、その後両親とは一度も会っていない。1978年6月6日、成田より出国した田中は、韓の経営するラーメン店で働いていた。...韓は彼を言葉巧みにオーストリアのウィーンまで誘い出している。ウィーンには北朝鮮の情報機関『ゴールデンスターバンク』があり、西側への窓口としての役割を果たしていた」(同書p117より抜粋)。
故張龍雲さんは、日本人拉致組織「洛東江」の資金調達係だった方です。
洛東江の一員だった韓竜大という人物は神戸市でラーメン店を営んでいました。
そこで働いていた田中実さんを巧みに誘い出し、ウィーンから平壌に連れて行ったのです。
この事件と、日本人拉致組織「洛東江」の所業を張さんは平成8年12月に「文芸春秋」に掲載された論考で発表しました。
そのころ私は、被拉致日本人救出運動と北朝鮮の人権問題の運動を小規模ながら、山田文明さんらと始めていました。
萩原遼さんにも、当時いろいろと教えて頂きました。
私は「文芸春秋」発売後すぐにこれを読み、驚愕しました。
日本人拉致問題、特に兵庫県民の有本恵子さんについて、来る兵庫県議会で大前繁雄県議(当時)に取り上げて頂くようお願いしていましたが、急遽田中実さんについてもお願いしました。
大前県議は快諾して下さり、田中実さんの件を兵庫県議会で取り上げられました。
この時はまだ、横田めぐみさんの拉致事件が世間に報道されていませんでした。
マスコミの注目度はさほどではありませんでしたが産経だけでなく朝日新聞にも報道されました。
田中実さんはその後、平壌にある金正日政治軍事大学にいたなどの情報がもたらされましたが正確な事情は不明です。
南朝鮮革命戦略の一環としての日本人拉致
張龍雲さんは兵庫県議会の件で私がいろいろ努力していたことを、どこかで聞いて下さったようです。
人を介して連絡が取れ、その後何度も神戸市のお宅をお尋ねしました。
金日成の南朝鮮革命戦略の一環として日本人拉致があるのでは、と私は張さんにお話ししました。張さんはその通り、こいつは良くわかっているなと答えました。
張さんは糖尿病が悪化しており、不自由なお体でした。以降朝鮮労働党の工作組織や朝鮮商工人の実状について、沢山教えて下さいました。
張龍雲さんが語ってくれたこと
以下、張さんが語ったことを思い出せる限り、記しておきます。順不同です。
・武装工作員だった安明進は、彼の立場として知りようのないことまで話している。武装工作員は、暴力団でいえば「鉄砲玉」だ。「鉄砲玉」が大きな事を知る由もない。
・安明進の上司ともいえる呉克烈は極めて優秀な人物である。
・労働党幹部が、日本人を「つがい」で連れてくると精神が安定して良い、と話していた。
・田中実の他には、拉致された日本人について知らない。
・在日本朝鮮人総会関係者は万景峰号で巨額の金と物資を北朝鮮に運び、金正日に献上する。
・文世光事件は、韓国政府が発表した事と実態は異なる。洛東江の所業である。
・各地の朝鮮労働党の非公然組織が、いくつかの朝銀信用組合から大金を借りて金正日に献上してきた。朝鮮労働党の非公然組織は、日本人だけでなく資金と物資を金正日に献上する事を任務にしている。
・非公然組織は借りた金を返さないから、朝銀の経営は悪化する。非公然組織は会社を作っている。
・沖縄にも朝鮮労働党の非公然組織が組織づくりを行っている形跡がある。会社を沖縄に作っている。
・少人数で構成される非公然組織は、商工人を入れている場合もある。あるいは、各地の有力商工人に統一を訴えて大金を出してもらう。
・朝鮮商工人の中には、暴力団関係者もいる。大阪の某を私(張さん)は良く知っているが、やくざをやるために生まれてきたような男だ。貴方(黒坂)は奴が礼儀正しい人だとどこからかか聞いたというが、やくざは一般人には礼儀正しくするのだ。ハハハ。
・昔の商工人には大きな人物がいた。芦屋の文東建はそんな方だった。
・東京では、焼肉のたれ「ジャン」の会社を作った方が立派だった。北朝鮮で工場を作った方は多いが、殆ど失敗している。
張さんが私に御自宅で語って下さったのは随分前のことです。十数回、お宅をお尋ねしました。
張さんが熱心に取り組んでいた仕事の一つは、北朝鮮で金鉱を採掘し金を輸出することです。金正日が途中から介入して駄目になったようです。
金を掘るはずだった会社「雲山開発」に投資をした商工人の方々や、雲山開発の社員の方々は今、どうなさっているのでしょうね。
金正恩は韓国をフロント企業にしたい
張さんは繰り返し、金正日と朝鮮労働党は金と物資を在日朝鮮人に要求すると強調していました。
金と物資を得るための統一、南朝鮮革命なのです。これは今でも同じです。
少し前に、切手学者の内藤陽介氏が拉致問題のツイキャスで「金正恩は韓国をフロント企業にしたいのだ」と語っていました。
張龍雲さんがお元気だったら、その通りと言ったでしょう。
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