福音書についてのメモ―福音書研究の現状はどうなっているのか―
吉本隆明の「マチウ書試論」は、近年の福音書研究の到達点からみるとあまり実証性がなさそうに思えます。
Gérard Bessière, 「イエスの生涯」(p134-140)から、福音書についての記述を抜粋して引用しておきます。著者のGérard Bessièreはカトリック司祭です。
福音書には4世紀の完全な写本が現存するほか、断片だけならさらに古いものが残っています。写本には、「パピルス」と「羊皮紙」のものがあります。
パピルスはエジプトに多くみられる葦で、これを薄切りにし、縦横に重ねて糊付けし、延ばして紙にしたものです。
羊皮紙は羊や山羊、牛の皮を裁断して紙にしたものです。新約聖書の全体ないしは一部を収めた写本は約5000あります。
マタイ福音書は紀元80年代に書かれた
マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネという4つの福音書の相違点と独創性に関する研究が活発になされています。
マタイ福音書は紀元80年代、パレスチナ北部でギリシア語で書かれました。著者はキリスト教に帰依したユダヤ人です。
マタイ福音書を通じて、キリスト教会に属するユダヤ人と、ユダヤ教を信奉し続けているユダヤ人との緊張関係がうかがわれます。
マルコ福音書は65-70年代、異邦人向きに多分ローマで書かれました。4福音書で最も古いものです。対象はユダヤ的教養がない人々です。
殆ど旧約聖書を引用していません。通俗ギリシア語を使っています。
ルカ福音書は紀元70-80年頃、福音書に暗示されているエルサレムの破壊の後,非ユダヤ人に向けて書かれました。
達者なギリシア語で,他の福音書より豊富な語彙を駆使して書かれています。
ヨハネ福音書は1世紀末頃、小アジア、恐らくエフェソで書かれました。ギリシア語を使い、「イエスが愛した弟子」が書いたものとの体裁をとっています。
各福音書はイエスを、行動した存在、ユダヤ社会をくつがえした存在、人と神の間、そして人間同士の間に新しい関係をつくりだそうとした存在として描く点では一致しています。
「イエスの生涯」(小河陽監修、創元社)の冒頭に掲載されている「受難の日のエルサレム眺望」はイエス・キリスト処刑当時のゴルゴダの丘を描いています。
荒涼たる岩場が続いていた地なのですね。イエス・キリストはエルサレム市郊外のゴルゴダで紀元30年4月7日に磔刑に処されたとあります。
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