「特別調査委員会に国家安全保衛部という強力な権限をもつ組織が入って調査した結果、被拉致日本人は皆死んでいた。日本人妻、被拉致日本人の子供たちも同様に死んだと証言している。哀しみを乗り越えて、東アジアの平和を守るために北朝鮮と国交を樹立しよう!」
朝鮮労働党の対南工作機関が策しているのは、日本でこんな世論を形成することでしょう。
世論形成は簡単ではありませんが、私は、北朝鮮が次の仕掛けをやっていると見ています。
朝鮮問題の専門家を懐柔し、その人にテレビで次のように言わせるのです。
「日本政府は平壌に何度でも担当者を派遣して徹底して話し合うべきだ。そして拉致問題が解決しないでも、国交をまず樹立し大使が正式に外交チャンネルで継続して取り組むべきだ」
「国家安全保衛部は北朝鮮の隅々まで調査する権限をもっている。強力な組織が調査して結果を出したのだから、間違いはない」
こんな見え透いた愚論をテレビ局を通じて日本社会に流布させてしまえば良い。テレビの世論形成力を、朝鮮労働党の対南工作期間は熟知している。
次の愚論も流布させようとしているでしょう。
日本と北朝鮮に「行き違い」が生じているのは日本政府に責任がある
「日本側が拉致問題を最重要課題と位置づけているのに、北朝鮮側は日本人妻や残留日本人の遺骨の問題を先行させようとしているという行き違いが生じているのは日本政府が担当者を平壌に派遣して徹底的に話し合い意思疎通を図ってこなかったからだ」
こんな見え透いた愚論、北朝鮮の対日宣伝を受け売りする専門家がいるのか?と思う方はいるでしょうが、私はある放送局の北朝鮮問題に関するテレビ討論番組でこれを確認しました。
その方が具体的にどのような手段で、朝鮮労働党に懐柔され急速に北朝鮮の対日政策そのものとも言える見解をテレビで述べるようになったのかは不明です。
平壌を訪問し「現場を見た」人はテレビに「朝鮮問題の専門家」として出演できる
一つの可能性ですが、朝鮮問題の専門家が北朝鮮を訪問し「最近の平壌を生でを観た」ということになると、テレビ局としても北朝鮮情勢の解説者として使いやすくなることを指摘しておきたい。
北朝鮮当局としては朝鮮問題の専門家に、平壌訪問を許可しそこで懐柔すればよい。
「これからも日朝友好のために協力して下さい。何度でも平壌を訪問してください」
朝鮮労働党の幹部からこの類のお墨付きを得られれば、朝鮮問題の専門家として引き続きテレビに出演できます。
平壌を頻繁に訪問しているような方が北朝鮮問題の解説者として出てくるのなら、在日本朝鮮人総連合会の皆さんも決してテレビ局に苦情を言わないでしょう。
テレビ局としても、一石二鳥なのです。
勿論、平壌を訪問した研究者の全てが北朝鮮よりの発言をしているわけではありません。懐柔されない方もいます。
しかしテレビに解説者として出演すると、虚栄心を大いに満足させられる人はいるのでしょう。自分が著名人の仲間入りをしたとでも思えるのでしょうか。
「外務省高官が国家安全保衛部と会って交渉し、主導権を握るべきだ」-「交渉」「主導権」の定義がない
ある方ほど露骨ではないですが、政府の担当者が平壌に行って交渉の主導権を握り、拉致問題解決のロードマップを示させろなどという方も少なくありません。
「交渉」「主導権」とやらは具体的に一体何を意味しているのでしょうか?
外務省高官が国家安全保衛部大幹部に「拉致問題解決の調査を優先させろよ」という荒々しい語調で要求すれば「気合勝ち」して「強い交渉」ができ、「主導権を握る」ことになるのでしょうか?
外務省高官の気迫におされた国家安全保衛部大幹部は、「党の唯一思想体系確立の十大原則」に反したということで銃殺ないしは政治犯収容所送りになる可能性を知りつつも、被拉致日本人の居住地を外務省高官に教え、そこへ連れて行って下さるのでしょうか?
外務省高官が国家安全保衛部に何を要求しようと、国家安全保衛部は次のように言い放てば良いでしょう。
「行き違いがあったのはわかった。日本の今後の態度によっては調べてやっても良い」
「早期に安倍総理が平壌に来れば、調査結果を知らせる」
「関係改善のために、制裁をやめろ。制裁を続けられているのに信頼関係が築けるか。信頼関係がないのに拉致の調査などやれるわけがない」
この程度の返事をしておけば日本側は大喜びで帰国することになりませんか。
全ての権限を持つ国家安全保衛部の大幹部が被拉致日本人の調査を「約束」「合意」してくださったのだから、粘り強い交渉の成果だという話になりそうです。
「粘り強い交渉」とやらを続けるためには外務省、厚生省が省をあげて制裁解除と安倍総理の早期訪朝を強力に主張するなどというシナリオにならないことを祈るばかりです。
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