2020年3月19日木曜日

若き不破哲三氏はユーゴスラビアをどう批判したのか―労働者自主管理社会主義はブハーリンら右翼降伏主義の方針(「マルクス主義と現代修正主義」(昭和40年大月書店))

「ユーゴスラビア修正主義批判-現代修正主義の世界綱領」という論考が、この本の巻頭にあります。


不破氏はこの論考を、昭和38年に書いています。

ユーゴスラビアと言ってもどんな国だったか、御存知ない方が多いかもしれません。

ユーゴのチトーは昭和23年にスターリンを批判しました。非同盟運動の指導者としても有名です。

ユーゴスラビアは労働者自主管理社会主義という、労働者が直接、企業の経営を行うというソ連型社会主義と大きく異なる道を探求していました。

社会主義の青写真どころか、下絵も考えない日本共産党


今の日本共産党はソ連は社会主義と無縁と主張し、社会主義では生産者が社会の主人公にならねばならないと宣伝しています。

生産者が社会の主人公と宣伝するだけでは、とはどんな企業経営方式を目指しているのか不明です。

日本共産党員だけでなく、マルクス主義経済学者なら、資本主義的搾取制度の廃止を目指しているはずです。

ソ連型の経済、企業運営では駄目というなら、どんな経済、企業運営を目指しているのか、詳細な青写真は無理でも下絵くらいは示すべきです。

現実には、日本共産党を支持するマルクス主義経済学者で社会主義経済の下絵を考えている方は稀有です。皆無かもしれません。

左翼知識人は若き不破氏によるユーゴスラビア批判を学ぶべきだ


左翼知識人であるなら、若き不破哲三氏がユーゴスラビアの労働者自主管理社会主義をどう批判したのか、検討すべきです。

若き不破氏はソ連型社会主義こそ唯一の社会主義だ、という理屈でユーゴスラビアを批判しているだけなのですが。

簡単に紹介します。

若き不破氏によれば生産手段を国家の手に集中し、経済全体の国家的統制と計画化をおこなうことは、社会主義経済の存立をなす大原則です。

ユーゴスラビアは、生産手段の国家的所有と経済の国家的管理を拒否しているので、マルクス主義と敵対するアナルコ・サンジカリズムの理論の後継者です。

若き不破氏によれば、市場関係の自由な発展をつうじて社会主義を建設するというユーゴスラビアの路線は、ブハーリンら右翼降伏主義の方針です。

結局、社会主義の解体と資本主義の復活の路線とならざるをえないそうです。

若き不破氏によれば、ブハーリンは小商品生産者は平和的に社会主義に成長転化していく必然性にある事、市場の自然成長力を解放し、富農経営に対するあらゆる制限をとりのぞくべきと主張しました。

富農擁護論者ブハーリンは、経済成長を志向


ブハーリンは市場的社会主義者の元祖とも言えますね。

富農経営に対するあらゆる制限を取りのぞけ、とは面白い。

ブハーリンは富農による資本蓄積が経済成長を実現し、国民生活を豊かにしていくと考えたのでしょう。

富農が農業の企業経営を拡大すれば、雇用が増えます。ここから税を取り、社会資本を建設していけばよい。

ブハーリンの富農擁護論は、G. Mankiwの富裕層への課税反対論の元祖ともいえそうです。

若き不破氏の予言は正しかったー市場的社会主義は資本主義復活の道―


ところで、若き不破氏が労働者自主管理社会主義、市場的社会主義は資本主義の復活となると喝破したのは見事です。

市場的社会主義と早くから唱えたハンガリーは資本主義国となりました。

ユーゴスラビア社会主義は民族問題により崩壊。

マルクス主義経済学者、左翼知識人は東欧社会主義が資本主義国となったことを直視すべきです。

マルクス主義経済学者、左翼知識人はブハーリンの理論と悲劇の生涯について、何の関心持てないのでしょうか。

スターリンによる右翼降伏主義者、ブハーリン処刑は正しい、と本気で考えているのでしょうか。

蔵原惟人、宮本百合子は本気でそう考えていたかもしれませんね。昔の日本共産党はスターリンに心酔していました。


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