2021年12月31日金曜日

不破哲三さんはレーニンとボリシェヴィキによる赤色テロルをどう擁護したかー「レーニンと『資本論』干渉戦争の時代6」(新日本出版社)より

 レーニンとボリシェヴィキによる赤色テロルすなわち皇帝一家処刑、ロシア正教会高位聖職者の処刑、貴族と地主、富農の財産没収と処刑をどう見るか。

ソビエト権力を守るためには、反革命分子、および反革命分子に協力する可能性が高い人々の処刑は正当化されるのか。

この問いに対し不破さんは、レーニンとボリシェヴィキによる赤色テロルを帝国主義諸国による干渉戦争という非常事態の下で、それに対抗する軍事的手段として余儀なく採用されたものだと擁護しています(同書p191)。

不破さんによれば帝国主義が大規模な干渉戦争に乗り出したので、その戦争や反革命に対抗するため、ソビエト政権が軍事的な対抗手段をとることを余儀なくされた時期がありました。

この時期の、レーニンの文献の断片的な引用はレーニンが大量弾圧を統治の手段にしたことの証拠にはならないと不破さんは力説しています(同書p193)。

私見では、この類のテロ正当化はレーニン以来、ソ連共産党の伝統的な宣伝です。

これで赤色テロルが正当化されるなら、現代の中国共産党や朝鮮労働党による政治犯弾圧も反革命に対抗するためにこれを余儀なくされているのだ、と正当化できます。

中国共産党による香港の民主派弾圧も、反革命や帝国主義に対抗するために余儀なくされた手段という水準の話です。

中国共産党によれば、香港では一国二制度が完全に維持され、香港市民は十分に民主主義を享受しています。中国を批判する人は祖国分離主義者、帝国主義の手先です。

不破さんもソビエト政権による非戦闘員処断は正当化できないと認めた

さすがの不破さんにも、レーニン以来のソ連共産党宣伝と同じではまずいな、という気持ちがあったのかもしれません。

同書p192でソビエト政権の行動の中に非戦闘員に対する処断など、非常事態だからと言って正当化することのできない問題点が含まれていたと不破さんは述べています。

非戦闘員に対する処断、としてロシア皇帝一家やロシア正教会高位聖職者、富農の処刑を不破さんが想定しているかどうかは不明です。

不破さんは厄介なことをあまり説明したくなかったのでしょう。

ロシア皇帝一家やロシア正教会高位聖職者は戦闘員ではありえない。武装していませんから。

貴族や地主、富農、も通常は戦闘員ではない。

ボリシェヴィキにより財産を没収され、家屋敷から追い出されてしまったので反革命軍とやらに入っていった方はいたでしょうけれど。

レーニンが出した弾圧指令はレーニンのプロレタリア民主主義論と表裏一体

不破さんが想定する断片的な引用、とは一体何でしょうね。1918年頃のレーニンの著作を読めば、過酷な弾圧指令が次から次へと出てきます。

過酷な弾圧指令は、レーニンが「プロレタリア革命と背教者カウツキー」などで提起したプロレタリア民主主義論と表裏一体です。

レーニンは出版の自由、集会の自由などをブルジョア民主主義だから偽善と断じました。不破さんもこの本でレーニンのプロレタリア民主主義論を極論と批判しています(p317)。

出版の自由や集会の自由を偽善とみなしたレーニンが、反革命分子の自由を抑圧するのは必然です。

不破さんが歴史を語るとき、参考文献があまり出てきません。E. H. カーの「ボリシェヴィキ革命」程度です。

ロシア革命当時の史料を不破さんが読んでいないのは仕方ないですが、今は数えきれないほど研究成果が出ているのですから、もう少し読んでロシア革命史を語るべきです。

私には、不破さんのロシア革命論の基本はソ連共産党の昔の教科書と同じに思えます。岡本博之さんの「科学的社会主義」も同様です。




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