2021年8月24日火曜日

日本共産党員はレーニンの蛮行指令と大量餓死の史実を直視すべきだー聴濤弘「カール・マルクスの弁明 社会主義の新しい可能性のために」(大月書店より平成21年刊行)より思う

聴濤弘さん(日本共産党元参議院議員)はソ連問題、社会主義論の専門家として知られた方です。

聴濤弘さんはソ連、社会主義について何冊も著作を出しています。私は若い頃、聴濤弘さんの著作を繰り返し読みました。

本ブログでは何度か、聴濤さんの著作について論じてきました。

黒坂真のブログ 被拉致日本人救出のために Rescue Abducted Japanese by North Korea: 8月 2016 (blueribbonasiya.blogspot.com)

最近の日本共産党員と同党を支援するマルクス主義経済学者は搾取制度の廃止、生産手段の社会化とは一体どんな企業運営、財とサービスの配分方法なのかという点についての思考と議論を拒否しています。

一昔前の共産党員はこの件について、ソ連や東欧を見よという話をしていました。

聴濤弘さんはその中心でした。「資本主義か社会主義か」(新日本出版社昭和62年刊行)という本もあります。

ソ連崩壊の3,4年前に出た本ですが、まさにソ連を見よ、という論調です。

「資本主義か社会主義か」はロシア革命により、世界で最初の八時間労働制が実施された、医療と教育が無料になり、老後の心配がなくなったという宣伝を実行しています。

マルクス、聴濤弘さんが説く「社会的理性」とは

「カール・マルクスの弁明」の第一章「マルクスの社会主義論」の十六、生産手段の社会化が新しくつくりだすもの、で聴濤弘さんはマルクスに依拠して次のように語っています。

社会主義では生産手段が社会化されているので、生産物はどれだけ社会が必要としているかを知る「社会的理性」が事前に発揮されます(同書p102)。

社会的理性の発揮により失業はいうまでもなく、不況と恐慌を防ぎ、生産を計画的に行い、効率よく生産活動を行えるそうです。

しかし「社会的理性」、とは一体何でしょうか。

「社会的理性」とやらの存在証明を聴濤弘さんはしていません。

これではマルクスかく語りき、されば信じなさい、という話でしかない。

私には社会的理性の発揮、とはマルクス教信仰の勧めとしか思えません。

近年の日本共産党は憲法九条教徒ですが、昔はマルクスやエンゲルス、レーニンを信仰していました。

人は、何かに心酔してしまうとそれ以外何も見えなくなることがあるようです。

心酔の対象を否定する事実や主張について、思考と議論をできなくなる。

聴濤弘さんはなぜレーニンによる地主、貴族、富農、ロシア正教会弾圧指令に目を背けるのか

本ブログでは繰り返し、レーニンによる残虐な弾圧指令を紹介してきました。

これらはレーニン全集に掲載されているのですから、聴濤弘さんなら随分昔から知っていたはずです。

レーニンとボリシェヴィキが当時のロシア国民に甚大な被害を与えたことについて、聴濤弘さんは思考するのが嫌なのでしょうか。

聴濤弘さんは「カール・マルクスの弁明」(p134-135)で、ソヴェト政権が農民の穀物を余剰部分だけでなく、必要部分の徴発も行ったことが指摘しています。

聴濤弘さんは餓死者が大量に出たことも指摘しています。この点では、不破さんよりましです。

自分たちが食べるための穀物まで徴発されたら、相当数の農民がソヴェト政権に徹底反抗するのは当然です。

ロシア革命後の内乱は、ボリシェヴィキによる貴族と地主の財産没収と追放、富農とレッテルを貼られた農民に対する過酷な穀物挑発、ロシア正教会弾圧策に対する抵抗運動でした。

これが反革命で弾圧されるべきなら、貴族と地主、ロシア正教会聖職者、富農とレッテルを貼られた農民は黙って餓死すべきだったのでしょうか。

ロシア皇帝一家虐殺はソヴェト権力を守るために必要だったのでしょうか。

八時間労働制と医療、教育の無償化実現のためには、農民の大量餓死が必要不可欠だったという話でしょうか。

ネップ(新経済政策)の前からソ連で大量餓死ー90年代後半の北朝鮮と同様

歴史にもしも、ですがロシア革命がなければ、失業者は出ても大量餓死は生じなかったと思えてなりません。

資本主義経済なら、穀物を加工して販売する企業は農民から穀物を購入するだけですから。

やや古い文献ですが、G. ボッファの「ソ連邦史1」(大月書店1979年、p191)は新経済政策が始まった頃のソ連の飢餓で、300万人が餓死した可能性を示唆しています。

浮浪児が至る所にあふれ、1922年にはその数が550万人に及んだとあります(同書p191)。新経済政策が始まった頃のソ連は、1990年代後半の北朝鮮と似ています。

近年の研究では、梶川伸一教授の「ボリシェヴィキ権力と21/22年飢饉」(史林(2013), 96 (1): pp.128-166)が詳しい。

この論考によれば、1920年夏にソ連の中央農業地帯は旱魃により凶作になりました。それでも穀物の徴発が継続されました。

降水量が少ない地域では凶作が続き、1921年春から夏に飢餓状態になっていきました。飢饉は伝染病を伴い、膨大な犠牲者を出しました。

近年の日本共産党は、レーニンの時代のソ連を理想郷のように描いています。大量餓死者が出ている社会がなぜ素晴らしいのでしょうか。

梶川教授によれば、この時の飢餓救済の主力はアメリカ救済局(American Relief Administration)です。

聴濤弘さんはこの時期のソ連での大量餓死は、レーニンとボリシェヴィキが始めた穀物の強制徴発は無関係と考えているのでしょうか。

聴濤弘さんらソ連を長年礼賛してきた日本共産党員、同党を支援するマルクス主義経済学者は、レーニンとボリシェヴィキによる蛮行の歴史、大量餓死の史実を直視すべきです。

ロシア革命がなければ資本主義経済として成長が実現

聴濤弘さんはレーニンのネップは1922年末にはその効果を発揮し、ロシア経済はレーニン亡き後の1926,1927年にはロシアの資本主義が一番発展した1913年の水準を凌駕したと述べています(「カール・マルクスの弁明」p151)。

これは、スターリンとソ連共産党はレーニンの遺志を継承してよくやったという話です。

歴史にもしも、ですがロシア革命などやらずに資本主義経済の成長政策を実行していた方が、ロシア国民にとってどれだけ良かったかわからない。

ロシアには石油など天然資源が豊富にあります。

天然資源の採掘、輸出を外国企業と協力して実行していけば、相当な外貨が得られる。これで社会資本を建設し、国民生活を向上できたでしょう。

内戦と大量餓死でどれだけ民衆が犠牲になったのか。当たり前ですが、大量餓死により人口が激減したら経済には大打撃です。

レーニンに心酔している日本共産党員には、想像力が全くないようですね。毛沢東語録を振りかざす紅衛兵と、憲法九条教徒は似ています。





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