2021年8月29日日曜日

昭和48年頃、民主連合政府ができていたら人民解放軍が日本に侵攻ー上田耕一郎・工藤晃編「民主連合政府で日本はこうなる」(新日本新書)より思う

日本共産党が躍進した時代 -背景にベトナム反戦運動

日本共産党は第十二回大会(昭和48年11月)で「民主連合政府綱領提案」を提起しました。

この翌年、「文藝春秋」6月号に「グループ1984年」の共同執筆としてこの提案を批判する論考が発表されました。

この論考に対する反論として、上田耕一郎、工藤晃、新原昭治、宇野三郎の四氏がこの本を書いています。

昭和40年代、日本共産党は国政選挙、地方選挙で伸びていました。

1970年代の遅くない時期に民主連合政府を、と訴えていました。

東京、大阪、京都と革新自治体も増えていましたから、ありえない話ではなかった。

日本共産党躍進の背景の一つは、ベトナム戦争でした。

ベトナム反戦運動が高揚し、米国を批判する社会党や日本共産党が平和を守っていると考えた若者は少なくなかった。

団塊の世代の方々です。戦争を知らない子供たち、という歌が大流行しました。

朝鮮戦争も、米国と韓国が始めた戦争だと思い込んでいる方が多かった。金日成は朝鮮民族の英雄でした。

左翼、社会主義に対する幻想が幅広く普及していた時代だったのです。

山本薩夫監督の「戦争と人間」は、中国共産党と毛沢東、金日成への幻想を広めました。

日本共産党の戦争と平和理論ー金融資本が戦争を起こす

上田、工藤両氏によれば、日本の安全に対する脅威は、アジアのどこかの国から侵略される危険にあるのではなく、日米軍事同盟の下で日本がアメリカの侵略に巻き込まれる危険、あるいはアメリカにくっついて、再び他国を侵略する危険にあります(同書31)。

自衛隊はアメリカ帝国主義が直接指図してつくりあげ、育て上げてきた対米従属の侵略軍隊だそうです。

日米安保廃棄、自衛隊解散は日本が米国の指揮下で強盗の共犯者にされる危険を断ち切る段取りだそうです(同書p31)。

この見解は、日本共産党の平和理論の中核ともいうべき点で、今でも継承されています。志位さんや小池さんは時折、こんな話を喜んでしています。

対米従属の侵略軍隊である自衛隊がアフガニスタンに行くのは、米国の機嫌取りでしかないと志位さんは考えているのでしょうね。

この見解の背景となっている経済理論は、金融資本が戦争を起こすというレーニンの帝国主義論です。

ソ連や中国、北朝鮮には金融資本がないので、戦争を起こす経済的基盤がないという話です。

民主連合政府が実現したらどうなったか

歴史にもしも、ですが社会党が共産党と政権協定を締結し日米安保廃棄、自衛隊解散を総選挙で公約として掲げて勝ったら、民主連合政府が実現していた可能性はあります。

この本は民主連合政府で国民生活は抜本的に改善されるとか述べていますが、ありえません。

昭和48年頃に日米安保廃棄、自衛隊解散が実現したら毛沢東は人民解放軍に日本侵攻指令を出したでしょう。

毛主席は世界人民の領袖、なのです。日本人民を解放するため、人民解放軍が日本侵攻。これは毛沢東思想から導かれる当然の結論です。

人民解放軍に抵抗する日本人は、日本反動、日本鬼子、です。

日本国家には一切、反撃力はありませんから人民解放軍や紅衛兵の日本侵攻、攻撃を阻止することなど不可能です。

反撃が皆無なら、東京や大阪だけでなく沖縄にも人民解放軍を進駐させ、軍事基地を作れば「台湾解放」は容易です。

中国共産党は新疆ウイグル自治区などで核実験を繰り返し、着実に核兵器を増強していました。

上田耕一郎さんらは第九回大会決定のように中国共産党の核は世界平和を守る、と信じて疑わなかったのでしょうね。

蒋介石、蒋経国と国民党は人民解放軍との開戦を決意しうる

しかし蒋介石、蒋経国が人民解放軍の日本侵攻を黙視するはずがない。

沖縄に侵攻してくる人民解放軍に戦争を挑むか、日本侵攻で手薄になった中国本土を攻撃、侵攻した可能性もあります。

上田耕一郎さんらは中国は社会帝国主義だ、というこの頃の日本共産党の論文を読んでいなかったのでしょうか。

現実には、この本が出た五年後に人民解放軍はベトナムに侵攻します。ベトナムを懲罰するという話でした。

金日成も戦意満々です。米軍が日本からいなくなったなら、南朝鮮革命の絶好の機会到来です。

朝鮮人民軍のソウル侵攻がありえた。朴正熙大統領なら、徹底抗戦したでしょう。実に物騒な話です。

当時の日本共産党は、中朝露が平和国家と大真面目に考えていました。社会主義国ですから、侵略をする経済的基盤はないという信仰の虜になっていたのです。

今の日本共産党は憲法九条教徒です。昔はレーニン教徒。今もそうかもしれませんが。

日米軍事同盟と自衛隊が日本国家を、人民解放軍、ソ連軍、そして朝鮮人民軍から守ってきたのです。




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