2014年2月21日金曜日

元北朝鮮工作員安明進氏による謎だらけの日本一時居住と「救う会」―「北の元工作員安明進『私の悪行、日本人の悪行』」(「週刊現代」2007年12月22・29日号掲載記事)より思う―

安氏は、高額のギャラを取ることから、”拉致成金”と揶揄され、日本のマスコミとのトラブルの末に帰国。今年7月には、覚醒剤所持・密売で逮捕された(「週刊現代」同記事より抜粋)-


鹿児島の市川修一さんを平壌の金正日政治軍事大学で見たことなど、安明進氏は私たちに貴重な情報をもたらしてくれました。しかし安明進氏の日本居住経緯は謎だらけです。

安明進氏の日本居住経緯について、2003年当時「救う会」の役員だった私は一切知りません。恐らく島田洋一福井県立大教授(「救う会」副会長)も一切御存知ないでしょう。

それでも文献を整理していくと、別のことが多少見えてきます。

安明進氏は日本定住を希望していたのだろうか


安明進氏は2003年のある時点から、2006年10月末くらいまで、ソウルと日本を頻繁に往復しつつ、日本のどこかに居住地を持っていたようです。

これは、「週刊現代」記事および「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)のメールニュース2006年10月27日号より明らかです。

「週刊現代」同記事では、「『救う会』の助力を得て日本に住み始めた」とあります。「救う会」はすべて否定していると同記事に出ていますが、説得力がない旨前回指摘しました。

「救う会」の誰が、どんな目的と権限で安明進氏の日本居住を助けたのか不明ですが、安明進氏自身にもそれなりの意思と目的があったはずです。

金正日政権の極悪非道を暴くというだけではなかったでしょう。韓国ガス公社を辞めたのですから、安明進氏は日本定住を希望していたのかもしれません。

安明進氏はマネージャー役の女性に900万円出演料を着服されたと語っている


勤務先の韓国ガス公社を辞め、「救う会」の助力で日本に住み始めた安明進氏はチヤホヤされて想定外のギャラを手にするようになりました。

自分は高慢な人間になってしまった、拉致成金と揶揄されても仕方ありません、と安明進氏は同記事内で述懐しています。

安明進氏は実際にはそれほど儲けていたわけではなく、マネージャー役の女性にテレビ出演料計900万円を着服されたそうです。

マネージャー役の女性とはどんな人物で、いったい誰の紹介によるものなのか、一切わかりません。

嘘つき呼ばわりされてテレビ業界から「追放」された安明進氏


2006年6月29日に横田めぐみさんの元夫で韓国人拉致被害者の金英男氏が金剛山で母親と再会したとき親子の脇に映っていた男について、安明進氏はフジテレビからコメントを求められたそうです。

安明進氏はこの男について、「三号庁舎(平壌の特殊機関)だったか国家情報院(韓国の情報機関)だったか、どこかで見覚えがある」と言いました。

フジテレビはその男が北の特殊工作員であるとセンセーショナルに放映しましたが、その男は韓国政府のスタッフであることが判明しました。

安明進氏は嘘つき呼ばわりされて日本のテレビ業界から追放されたと記事に出ています。

安明進氏はかなりの出演料をテレビ局から得ていた


安明進氏が一時、テレビ局からかなりの出演料を得ていたことは間違いないのでしょう。

また「救う会」が住居の紹介などをしていた可能性は十分ある。そうであるなら、当初の出演料を「救う会」が受け取っていても、それは部屋代等になっていたのでしょう。

安明進氏が日本定住を望んでいたのなら、「救う会」のどなたかが冷麵屋を出そうと持ちかけるのも十分ありうる話です。

いつまでも寵児でいられるはずがないのですから、日本定住を望んでいるなら冷麵屋をやって生活していけばよいではないか、と助言して下さる親切な方がいたのかもしれません。

そうであったなら、この助言は「日本人の悪行」などではありえません。

900万円着服の件は奇奇怪怪としか言いようがありませんが、それだけ着服されたとしても生活できていたのですから、相当な出演料収入だったのでしょう。

なぜ安明進氏は冷麵屋を開業しなかったのだろうか


寵児でいられなくても、日本で冷麵屋等をやって生活していく道があったように思えます。出演料を元手にすれば良い。支援者もいたのでしょう。

なぜ安明進氏がソウルに戻ったのか不明です。日本定住を希望しているなら、出演料を貯蓄して冷麵屋開業に備えるべきでした。ソウルには、食堂を経営している脱北者はいくらでもいます。

そのくらいの助言を、安明進氏の近くにいた「救う会」の方々はできなかったのでしょうか。冷麵屋は冷麵を作ってお客さんに食べてもらうのですから、「拉致ビジネス」ではありえません。

安明進氏が各地で講演をしてくれたので、金正日政権の極悪非道を多くの方が知ることになりました。

しかし、安明進氏が高額な出演料を受け取っていたことはマスコミ関係者に知れ渡っていたはずです。これに反感を持つ人が相当いてもおかしくない。

マスコミ関係者の中に安明進氏だけでなく、支援していた「救う会」に対する信用も失われていったのではないでしょうか。

「救う会」の朝鮮問題専門家が、テレビでコメントを求められなくなっている理由はこのあたりにもありそうです。

ソウルに戻り、国家情報院の指示により中朝国境で北朝鮮製覚醒剤を入手する仕事


ソウルに戻った安明進氏は、国家情報院の指示で、中朝国境で北朝鮮製覚醒剤を入手し、それを国家情報院に提出する仕事を始めたそうです。

そのうち入手した覚醒剤の一部を自分で保管し試すようになり、2007年7月に逮捕されました。反省していると記事にあります。

北朝鮮製の覚醒剤を入手し成分を調べることが大切な仕事であることはよくわかります。

北朝鮮の技術水準を推し測れますし、韓国内で覚醒剤を摘発したときどこで製造されたものであるかを知る手掛かりにもなります。

国家情報院が安明進氏にそのような仕事を依頼するとき、同時に国家情報院は安明進氏が日本での行動を詳細に語ることを求めたのではないでしょうか。

その程度の情報収集を、国家情報院で一生懸命働いている方々がやらないはずがありません。

国家情報院は安明進氏の日本居住経緯と日本での行動を全て把握している


安明進氏が国家情報院の要請を断るはずもありません。例の1000万円横領の件や、白紙の領収書云々についても国家情報院は安明進氏から十分な情報を得たでしょう。

そうであるなら、この件についての真実を国家情報院に把握されてしまった方々がいたのではないでしょうか。

いわば、国家情報院に弱みを握られてしまった方々がいるような気がしてなりません。

これは現在でも、「救う会」の言論そして被拉致日本人救出運動に微妙な影響を与えているのではないでしょうか。

佐藤勝巳元会長亡き今、安明進氏の一時日本居住については西岡力東京基督教大教授(「救う会」会長)と平田隆太郎事務局長がよく御存知と思えるのですが、いかがでしょうか。

私は最近「救う会」が、横田滋さんに対する誹謗中傷を行った「統一日報」紙を一切批判していない件が気になっています。

西岡力東京基督教大教授(「救う会」会長)、島田洋一福井県立大教授(「救う会」副会長)、平田隆太郎事務局長による徹底的な「統一日報」紙批判を期待します。

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