近年、暴力団関係企業以外にも、暴力団に資金を提供し、又は暴力団から提供を受けた資金を運用した利益を暴力団に還元するなどして、暴力団の資金獲得活動に協力し、又は関与する個人やグループの存在がうかがわれる(「平成19年警察白書」p9より)。
北朝鮮に相当数の日本人、韓国人が長年拉致、抑留されています。
この人たちをどうやって救出するかということは、現代日本人と韓国人にとって緊急の課題です。国家の存続に関わる問題ともいえます。
本ブログの別のところで紹介しましたが、私はこの件で「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救うための全国協議会)の会長だった故佐藤勝己氏と意見を大きく異にしました。
私は「被拉致日本人救出のためには暴力団勢力と連帯、協力すべきではない」と佐藤勝己会長(当時)、西岡力氏(現会長)、平田隆太郎氏(現事務局長)に9年ほど前、意見具申しました。
残念ながら受け入れられなかったので、役員を辞めました。
この件についてはその後、故佐藤勝己氏が「財界にいがた」(2005年新年特大号、p184-190)掲載論考「『救う会新潟問題』の全真相」の中で私の主張を概ね正確に取り上げて下さっています。
故佐藤勝己氏の主張については、本ブログの別のところで紹介しました。
「暴力団勢力」(平成9年警察白書)と「暴力団と共生する者」(平成19年警察白書)
私が用いた「暴力団勢力」という概念は、平成9年の警察白書第3章第3節1(1)ウの注に依拠しています。
これは下記です。
「暴力団勢力とは、暴力団の構成員および準構成員、(構成員ではないが、暴力団と関係をもちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、
又は暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力若しくは関与する者)をいう。」
平成19年の警察白書ではこの概念ではなく、「暴力団と共生する者」という概念が用いられています。その定義は、上述部分に次を加えたものです。
下記です。
「これらの者は、表面的には暴力団との関係を隠しながら、その裏で暴力団の資金獲得活動に乗じ、
又は暴力団の威力、情報力、資金力等を利用することによって自らの利益拡大を図っており、いわば暴力団と共生する者となっている」
「暴力団と共生する者」と親密交際する保守派言論人で基督教徒の方は、聖書をどう読んでいるのか
「暴力団と共生する者」は暴力団の構成員ではありません。表面的には暴力団との関係を隠しています。ですから、誰が「暴力団と共生する者」に該当するのかは曖昧になってしまいます。
警察当局は誰が該当するのか、承知しているのでしょう。
私たちにはわかりにくいですから、いろいろな文献から可能な限り情報を収集して暴力団の不法行為や脅迫に巻き込まれないよう、留意せねばなりません。
「暴力団と共生する者」は暴力団の威力、情報力、資金力等を利用して自らの利益拡大を図っている人たちなのですから、極めて危険です。
そんな人たちと交際すれば、個人情報を暴力団に渡され、何にどう利用されるかわかりません。
「暴力団と共生する者」と既に親密交際している保守派言論人(仏教徒も基督教徒もいる)や政治家は、何らかの経路で個人情報を収集され、暴力団に弱みを握られているのかもしれません。
「暴力団と共生する者」と親密交際している保守派言論人で基督教徒の方は一体、聖書のどんな記述に依拠して心中で御自分の行動を正当化しているのでしょうか。
聖書にはいろいろな解釈、読み方があるということなのでしょう。米国映画「The Godfather」の首領(Don)は敬虔なカトリック(Catholic)でした。
「暴力団と共生する者」について、平成19年警察白書(p9)はその例として次をあげています。
総会屋 暴力団企業 事件屋 仕手筋 社会運動標ぼうゴロ
平成19年警察白書によれば、「暴力団と共生する者」は表面上は関係を隠しつつ暴力団に資金を提供するなどして、暴力団の資金獲得活動を不透明化させるのに貢献しています。
北朝鮮に拉致されている日本人を救出するためには、「暴力団と共生する者」とも連帯・協力するべきなのか?
この件は9年前だけでなく、現時点でも大きな問題です。故佐藤勝己氏による「統一日報」掲載論考「拉致問題との関わり」19を読んで、改めてその思いを強くしました。
現時点での「救う会」が、故佐藤勝己会長が敷いた路線、私の理解では
「北朝鮮に拉致されている日本人を救出するためには、『暴力団と共生する者』とも連帯・協力する」
を採っているかどうかは私にはわかりません。
この件について関心のある方はは、西岡力氏(現会長。東京基督教大教授)か、島田洋一氏(現副会長。福井県立大教授)にお尋ねされたら良いかと存じます。
「暴力団と共生する者」と連帯・協力したら、何らかの経路で暴力団の資金獲得活動を不透明化させるのに「救う会」が貢献してしまいませんか?
「救う会」はその後、「右翼・暴力団関係者は救出運動から手を引いてもらおう」という路線転換を行ったのか
私は9年半くらい前に「救う会」の役員を辞めてしまったので、その後「救う会」がこの件についてどんな方針をとったのかわかりません。
「サンデー毎日」(2008年7月6日号)掲載記事「元幹部が告発した『救う会』のズサン経理疑惑」には、この件に関連する「救う会」の路線転換を示唆する記述があります。
この記事を読むと故佐藤勝己前会長はその後、
「やはり黒坂君の主張が正しかった。右翼・暴力団関係者は被拉致日本人救出運動から手を引いてもらおう」
と考え、そのように行動されていたのかもしれないと思えます。
前述の「拉致問題との関わり」19にも、この件と関連する記述があります。もしかすると故佐藤勝己前会長は、次のような路線を採用していたのではないでしょうか。
「小規模の右翼団体の幹部には被拉致日本人救出運動から手を引いてもらうが、
全国的な組織暴力団と密接な関係のある右翼団体の幹部とは引き続き被拉致日本人救出のために連帯・協力する」
この件について関心のある方は、西岡力氏(「救う会」現会長。東京基督教大教授)か、島田洋一氏(「救う会」現副会長。福井県立大教授)にお尋ねされたら良いかと存じます。
暴力団と右翼の関係史を考える‐右翼問題研究会著「右翼の潮流」(立花書房)より
右翼と暴力団との関係については、右翼問題研究会著「右翼の潮流」(立花書房)が大変参考になります。
この本によれば、昭和40年代後半以降、従来とは全く違った形で暴力団が右翼運動に登場しました(p180-181)。次の記述は大変興味深いものです。
「拡声器を取り付け、スローガンを大書したバス等の大型車両を連ねて、大音量の軍歌等を鳴らしながら街頭を走り回り、
官公庁や企業等に対して国家主義的な内容に行政批判や企業批判を絡めた大音量の演説をぶつける。
そして、その中止と引き替えに経済支援を得るという形の活動を、暴力団とその構成員を同じくする右翼団体が中心となって、昭和40年代後半以降、集中的に行うようになる」
わかりやすく言えば、街頭宣伝中止と引き替えに企業から賛助金を得るという手法です(同書p182)。
「右翼の潮流」は、右翼活動は、暴力団にとって「金と引き替えの頼まれ仕事」ではなく、「それ自体が金を生む」ものとなったと指摘しています(同書p183)。
さらに次の指摘もあります(同書p183)。
「日本青年社や大行社など、住吉会や稲川会といった広域暴力団の強い影響を受けているとされながら、最初から右翼団体の看板を掲げて結成される団体まで生まれている」
暴力団と右翼の関係については、国会でも何度も取り上げられています。私は日本共産党の支持者ではありませんが、この件については同党が大変参考になる質問をしていると思います。
下記の有働正治君とは、日本共産党の参議院議員(当時)です。
資料1・国会会議検索システムより‐参議院平成8年6月6日
有働正治君 警察の方にお尋ねします。
説明員(植松信一君) お尋ねの件につきましては、日本青年社最高顧問西口茂男と住吉会会長の西口茂男については同一人物と見ております。
有働正治君 きょうは時間がありませんから具体的にお尋ねする時間はありませんけれども、私どもの調べによると、
例えば住友銀行名古屋支店が岐阜市内の指定暴力団稲川会系中島組の組事務所ビルを担保に、この組の関連企業に対し多額の融資を行っている事実等々もあるわけであります。
こういう銀行、金融機関が、暴力団あるいはそれと深く結びつく右翼との資金的なかかわりがあるということは、
この問題は非常に重大だということを指摘し、こういう点も銀行は銀行の社会的責任として、暴対法の精神その他からいってきっちり対応するということが
私は求められているということを述べておきます。
資料2・「暴力団の共生者」(平成24年警察白書p116、注1)
暴力団に利益を供与することにより、暴力団の威力、情報力、資金力等を利用し自らの利益拡大を図るものをいう。
「暴力団の準構成員」(平成24年警察白書p116、注2)
暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持もしくは運営に協力し、若しくは関与するものをいう。
0 件のコメント:
コメントを投稿