何度となく北朝鮮と沖縄を往復しているが、一度も海上保安庁の船に出くわしたことがない(同書p11)。
「裏社会の密売人」の著者神崎純也氏は、1979年沖縄県生まれでかつてコロンビア・マフィアに属していた方です。2006年に「外国為替法違反」「入国管理法違反」容疑で逮捕されました。
3年10ヶ月の実刑判決を受け現在服役中とあります。あとがきが平成19年2月6日付けで記されていますから、もう出所されていることでしょう。
お若いのですから、必ずやり直せるはずです。
この本の第1章「覚せい剤取引」によれば、稲福という神崎氏の兄貴分と神崎氏は北朝鮮から3キロの覚せい剤を100万円で仕入れました(同書p12)。
末端価格を1グラム5万円で計算すれば、1億5千万円ということになるが、仕入れ値は驚くほど安いと神崎氏は述べています(同書p12)。
どういう人物の手引きにより、北朝鮮と覚せい剤取引の話がついたのかはこの本には記されていません。北朝鮮の領内にクルーザーで入り、どこかの港の近くで覚せい剤の売買をしたそうです。
沖縄から3日の北朝鮮の港とは清津でしょうか。
推測ですが、相手側は朝鮮人民軍ではないでしょうか。あるいは、朝鮮労働党作戦部でしょうか。
どちらにせよ、北朝鮮といきなり直接連絡できるはずがありません。日本の暴力団の中に、北朝鮮と密接な連携をとっている組織があるのでしょう。
あるいは、在日本朝鮮人総連合会関係者により組織されている少人数の地下革命家集団と何かのつながりにより連絡がつき、彼らから北朝鮮に覚せい剤取引の話が行ったのかもしれません。
その場合には、朝鮮労働党の社会文化部あたりが神崎氏らの取引先だったのかもしれません。
北朝鮮から覚せい剤を仕入れる前に沖縄のヤクザに話を持っていった(同書p17)。
神崎氏によれば、沖縄のヤクザに構成員の多くが覚せい剤の売買に加わっている組織があり、神崎氏としては信頼できると判断したそうです(同書p17)。
神崎氏の兄貴分「稲福」は、3キロの覚せい剤を2000万円で売るべく、沖縄の組の下っ端の人間に話しました。
沖縄は本州に比べて、覚せい剤の価格が非常に高いそうです。伝統的に0.1グラムで1万円と決まっているそうです。3キロなら3億円ということになります(同書p18)。
神崎氏らが提示した2000万円という価格に対し、沖縄のヤクザはとりあえず100万円払うが、シャブをさばいたらその金で2000万円を1ヶ月後に払うと言ったそうです(p18-19)。
一ヶ月後に沖縄のヤクザは、400万円しか払わなかったそうです(p20-22)。
関東の広域指定暴力団の三次団体組長に2000万円で売却
その後、神崎氏らは関東の広域指定暴力団三次団体の組長に覚せい剤を取引の話を持って行きました。
三次団体とは、広域指定暴力団を一次団体とすると、そのすぐ下の××組が二次団体、その××組の配下にある○○組という意味でしょうか。
羽田空港で3キロの覚せい剤と2000万円の取引が行われたそうです(p24-25)。
神崎氏は那覇空港から3キロの覚せい剤を羽田空港に持っていったのですが、空港では見つかりませんでした。
こんな調子で北朝鮮製の純度の高い覚せい剤が日本国内に「輸出」されてしまっているのでしょうね。
暴力団の中には、北朝鮮そして在日本朝鮮人総連合会関係者により組織されている少人数の地下革命家集団と親密な関係を保持している組があるのでしょう。
少人数の地下革命家集団は、覚せい剤取引だけではなく日本人拉致を断行する場合もあります。
金日成、金正日に忠誠を近い、金と物資、人を「献上」することを「主体革命偉業」と思い込んでいる連中です。
暴力団と北朝鮮は覚せい剤取引で連帯・協力している-暴力団による蛮行の歴史を直視できない保守派言論人と政治家-
溝口敦「暴力団」(新潮新書、p44-45)によれば、覚せい剤の末端価格は「一パケ」(ビニールの小袋で覚せい剤が約0.3グラム入っている)で1、2万円です。
3キロは3000グラムですから、末端価格では1、2億円ということになります。神崎氏の記述と概ね一致していますね。本土の方が安いことになります。
暴力団にとって北朝鮮は、純度の高い覚せい剤を破格の安値で売ってくれるとても良い取引先です。
北朝鮮にとって日本の暴力団は、貴重な外貨を即金でくれる大切なお得意さんです。
米国映画The Godfather Part 1で、Corleone Familiyの長男がDonの父親に「白い粉は金になるぜ」と言う場面を、ふと思い出しました。
北朝鮮に拉致された日本人を救出するためには、「暴力団勢力」とも連帯・協力するべきだ、などと主張する保守派言論人は、暴力団による蛮行の歴史を直視できない人たちです。
左翼勢力が、中国や北朝鮮による蛮行の歴史を直視できないのと同じです。
暴力団の蛮行について、一切の思考と議論を停止してしまう保守派言論人、政治家が少なからずいるのは真に深刻な問題です。
保守派言論人で基督教徒の中にもそういう方はいるようです。
そういう方は、聖書のどういった記述に依拠して「暴力団勢力」との親密交際を自分の心中で正当化しているのでしょうか。
それとも、「主は主、俺は俺」という気分なのでしょうか。そんな聖書の解釈がありうるのでしょうか。
The Godfatherの二代目首領は、家族を守っていくためには殺人を重ねねばならないという矛盾に苦しんでいました。
基督教徒で保守派言論人の方も、家族を守っていくためには「暴力団勢力」と親密交際を続けねばならない、と苦悩しているのかもしれません。
機会があれば、お尋ねしたいものです。
神崎氏を知る者です
返信削除彼は既に出所して今は完全に『カタギ』として生きています
若くして裏社会で頭角を表しただけあって非常に頭が良く、刑務所内で大検を初め、沢山に資格を取り、現在は国立大に通いながら執筆活動やカタギの仕事をしているようです
『裏社会の密売人』では出版社側の意向で北朝鮮絡みの事は深く書けなかったと言ってました。
僕も実際にお会いした時に、その辺に興味が有り質問したところ、やはり、かなり中枢部迄入り込んでたようで、かなり細かく教えてくれました
ただ、内容についてはオフレコですが、かなり衝撃的な内容でした
また何度も『民主政権が全てをぶち壊した』と言っていたのも強く記憶に残っています
それと余談ですが稲福氏は実名だそうです
神崎氏は裏社会用の名前をそのままペンネームにしたそうです
にい 様
返信削除情報を有難うございます。神崎さんは立派に更生されたのですね。北朝鮮の内部事情や暴力団と北朝鮮の関係について、どこかの出版社から文章を出してくださると良いのですが。一層の御活躍を期待します。
これは他人の私が言って良いものか憚れますが、「裏社会〜」で書けなかった北朝鮮絡みについては別な作家の名前を借りて出版しています
返信削除それに日本の暴力団との絡みや故金正日との酒宴でのエピソード等、具体的に書かれています
それを読むと先のコメントで「民主政権がぶち壊した」の意味が、実は日本の公安が長年努力して構築した北朝鮮の情報網、特にダブルスパイなどをみんなバラして粛正の対象に追いやったという事を指していた事が良く判ります
面白い本があるのですね。神崎さんの著書であるか否かは別として、暴力団や北朝鮮についてこんな面白い本があるよということで幾つか本を御紹介頂けませんか。暴力団は現在も、様々な経路で北朝鮮と覚せい剤や小火器の取引をやっている可能性が十分あると私は考えます。
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